スッキリせず、鬱陶しい梅雨時に、気持ちを和らげてくれるのは、何と言っても季節を彩る色とりどりの花たちだった。なかでも一番人気はアジサイ『紫陽花』だろう。人間ばかりではなく、虫たち『ヒラタアブ』もガクアジサイの蜜に釣られて群れていた。蔓の先にオレンジ色の美しい花を咲かせているのは、ノウゼンカズラ『凌霄花』だった。漢名で『凌霄花』、空を凌ぐ花、高い所によじ登ると言う意味からその名が付けられたと言う。夏の花と言えば、ヒマワリ、カンナ、ダリアなどと言う花の名前が挙げられる。今朝は、そのうちのダリアとカンナに出会った。ダリアは、メキシコの高原が原産地なので暑さに弱く、日本では東北や北海道のほうが色鮮やかな花が咲くと言われている。そして、ダリアはメキシコの国花にもなっている。真っ赤なカンナの花が咲いていた。花の形が他の花とは違って、花らしさがないのは、雄しべが花に変化したもので、雄しべは6本あるのだが、本来の雄しべを1本残してすべて花になったと言う。ヤナギハナガサに似たシュッコンバーベナ『宿根バーベナ』の紫色の花も見つかった。
昨日から降り続いた雨も今朝になってようやく上がり、午後には晴れ間が出るとの天気予報を聞きながら家を出た。すっかり雨にぬれた草木は、緑を深め生き生きとしていた。藪の中の、所々からオレンジ色の顔を出していたのは、ワスレグサ『忘れ草』、別名をカンゾウ『萱草』と呼ばれる草だった。中国原産の、ヤブカンゾウ『藪萱草』は、日本の北海道から九州まで分布しており、百合に似た八重咲きの赤オレンジ色の花を咲かせる。また、ヤブカンゾウに良く似た花に、ノカンゾウ『野萱草』があるが、こちらは、同じく赤オレンジ色の花だが、一重の花である。また、同じくワスレグサ科で、東アジア原産のヘメロカリスは、ユリに似て、赤、ピンク、オレンジ、黄色、白などの花があり、暑さ寒さに強く、ガーデニングに適している。また開花したら一日で枯れてしまうため、『一日花』と言う別名を持っているが、一本の花茎に10~20個の蕾を付け、次から次へと開花するため、開花期が長く人気がある。
シトシトと降る雨だったので、ウォーキングに出かけたものの、時々強い雨が襲ってくる嫌な天気だった。雨を避けながら竹藪の中で、やり過ごしていると、尻が丸い面白い姿をした、ハチ、虻かと思う虫を見つけて、ひまつぶしにその虫の行動を眺めていた。落ち着いて周りのものを改めて見ていると、いろいろなハエが見つかった。虻かと思っていた、尻の丸い虫も調べてみると、ヒラタヤドリバエ『寄生蝿』というハエだった。気持ち悪い、嫌なものを見たなどと、目を伏せたり、画面を消したりしないでください。あなたの知るハエ『蝿』は、イエバエや、肉などに止まるキンバエくらいかと思うが、野道を歩いていると、ここに上げたハエの他に、まだまだたくさんのハエが見つかります。錦の鎧を付けた様にきらびやかなハエもいれば、ヒラタヤドリバエのように、一見、ハチ『蜂』かな、アブ『虻』かと、思わせるようなハエもいる。少し興味本位で、ハエを調べて驚いた。何と、日本には、3000種もハエがいた事だ。また、五月蠅と書いて『うるさい』と読むくらい、身近に止まっているハエを、払っても、払っても、しつこく、やって来てはまた止まる。最後には、何かで叩き殺そうとしても、逃げられてしまう。よく考えると、ハエからすれば、嫌われものとされ、そして、姿を現わすと、意味なくすぐ殺そうとする人間は、残酷な生き物だと思われている事だろう。
歩道側面に、見上げる程高木のニワウルシ『庭漆』に花が咲いていた。和名に『ウルシ』の名前が付いているが、ウルシ科のウルシと別種で、かぶれる事はない。原産は中国で、日本には明治初期に渡来し、街路樹などに利用されている。地上では、背の高いリアトリスの花が咲いていた。和名でキリングサ『麒麟草』と呼んでいる。確かにキリンの首のように長かった。最大180cmまで伸びるという。花は、頭部から咲き、下に向かって咲いて行く。そして、花の色は、紫、紅、白色がある。原産地は北米で、草原や森林などに自生し、日本には大正時代に渡来した。アカメガシワの星形の赤い小さな花が、小枝の先に円錐形集まっているのが見えた。名前の由来を調べてみると、新芽が鮮紅色で、そして葉がカシワのように大きくなることから、『あかめがしわ』と呼ばれた。南アフリカ原産で、ユリ科のアガパンサスの花が咲いていた。名前の由来は、ギリシャ語のアガペー『愛』とアントス『花』の2語の組み合わせから生まれたと言う。花の色は、青、青紫、白花がある。
最近小さな虫に興味を感じている。と言うのも、今まで全くの未知の世界であったからだ。あえて目を凝らして探していないと見つける事が出来ない虫たちだからだ。今朝も素晴らして虫との出会いに興奮していた。歩いていると、枯葉が風に舞ったのかなと思ったものが、舞っているのではなく、飛んでいるのだった。とても色鮮やかな虫で、どこかへ止まるのを待ったがなかなか止まりそうもないので、手で払ったら、地面に落ちた。その姿を見てびっくり、こんなきれいな虫がいるのだと、スマホで撮影の手が震えた。黒地に細かな斑紋があり、左右の翅の縁がオレンジ色に染まった、初めて見る美しい虫だった。また、スマホで覗いてもどちらが頭で、どちらが尻なのか良く分からない姿をしていた。興味津々、さっそく調べてみたところ、ビロードハマキと言う蛾の仲間で、大きさは、3cm位だった。壁に点の様な五ミリ位の虫を見つけた。スマホを近づけて覗いて驚いた。黒い虫で、何と触角が、体の三倍位の長さがあった事だ。クロミャクチャタテと言う難しい名前の虫だった。他に、瑠璃色の光沢のある鎧を付けたような、ルリホソチョッキリと言う、これも舌を噛みそうな、難しい名前の虫だった。ほかに、ホタルに似た『ウリハムシ』と言う虫も見つかった。
梅雨に入り、雨に濡れて咲く、色鮮やかに変化するアジサイ『紫陽花』は、季節の主役を果たしていた。草原の道を歩いていると、ハギ『萩』に似た花が咲いていた。コマツナギ『駒繋』の花だった。この花は、太い根を地中に張り巡らせるため、枝に馬『駒』を繋ぎとめることが出来た事からその名が付いたという。花の一つ一つは、萩の花に似ているが、花全体を見ると、クズ『葛』の花を小さくした様な感じに見える。杉林を通して陽射しが射し込む場所に、チダケサシ『乳茸刺』の淡い桃色の花が咲いていた。名前の由来は、むかし信州でチダケ『乳茸』と言うキノコを採ると、この花茎に刺して持ち帰ったと言う事によるらしい。ガンクビソウ『雁首草』と呼ぶ、面白い草がある。『雁首』と言うと、人間の首や頭をいう俗語である。昔、煙草を詰めるキセルの頭が、曲がりくねって、そこの部分を、人が頭『首』を、垂れているように見えるという所からその名が付いたという。一見、何ともない雑草としか見られない草たちにも、それぞれの歴史や、由来があり、興味を持たせようと植物関係の学者たちは、もっともらしい名前をつけたり、難解なものや、何でこんなひどい名前をつけたりしたのだろうかと思うものや、可哀そうな名前までつけられた草まであった。名前一つで、その植物のイメージが、変わってしまうことだろう。
いよいよ梅雨入りし、本格的な雨のシーズンを迎えた朝になった。背中にクリーム色のハートマークのあるカメムシを見つけた。正式名は、エサキモンキツノカメムシと、長ったらしい覚えにくい名前だった。さらに調べてみると、学名記載者のエサキさんの苗字と、黄色い紋が、ツノカメムシの名前の前に付いたためだった。ハートマークが可愛いと触ったりすると、カメムシだから、臭い匂いを出すので注意だ。さらに珍しいカタツムリを発見した。コハクオナジマイマイ『琥珀同蝸牛』と言う、黄色い蝸牛で、特に中央部分は、鮮明な黄色をしている。従来西日本に生息しているカタツムリだが、近年北上しており、1991年房総半島の館山ではじめて発見されたという、珍しい蝸牛だった。また、面白い事だったのは、カタツムリだと思ったら、大間違い、オカモノアラガイ『陸物洗貝』と言う、水辺付近に生息する陸生巻貝だった。殻は非常に薄く半透明で、巻貝だが、水中に入る事はない日本固有種の陸貝だった。ミゾソバに良く似た、ママコノシリヌグイ『継子尻拭い』を見つけた。ミゾソバとの違いは、茎に棘がある事や、ミゾソバの花は桃色で、ママコノシリヌグイの花は、花の先端がピンクである。名前の由来は、棘だらけの葉で、憎い継子の尻を拭いてやろうという、棘のある話のようだ。雨降りの朝でも、『人が歩けば、何かの発見がある。』
ウォーキングへ出掛けが小降りだった雨は、帰る途中のAM8:OOを回った頃から、土砂降りの雨になった。傘を叩く雨音は、『ショパンの調べ』などと洒落ているほど余裕なく、まるで、ベートーヴェンの『運命』、ジャジャジャジャーンが、相応しい降り方だった。生暖かい南風が雨を運び、容赦なく降りかかった。あと15分ほど歩くと家にたどり着くのだが、止みそうもない強い雨に、たまらなくなって、泉光院のお堂の軒先を借りて雨宿りと決め込んだ。軒先から落ちる雨垂れは、大豆ほどの大きさでボタボタとお堂の前の敷石を叩いていた。お堂の軒先を借りて、40分ほど経ったが、バラバラと激しくお堂の屋根を打ち付ける雨は容赦なく降り続いていた。ザーザーと言う雨音は、辺りの物音を消し去り、聞こえてくるもの音は、目の前近くで起こる、ボタボタ、ビシャ、ピチョン、ドタドタ、バラバラ、バシャなど、まるで雨が演奏するコンサートをいているようだった。一時間程経った頃、雨は小止みになったので、お堂に礼を言い、家に向かった。
昨日、関東地方は、例年に比べ遅い梅雨入りをした。今朝は、梅雨入りした初日であるが、これからしばらく愚図ついた雨の日が続くと思われる中での、貴重な晴れ間に恵まれた朝になった。ネムノキ『合歓の木』が、小枝の先に薄紅色の柔らかな刷毛を思わせるような花を咲かせていた。ネムノキは、『眠る木』を意味し、夜になると、葉が合わさって閉じる。その姿が眠るように見えるところから『ネムノキ』と呼んだ。また、漢字で『合歓の木』と書くのは、中国に於いて葉が合う所からの名前で、夫婦円満の象徴とされていた。芝の間から背伸びしたネジバナ『捩花』が3本、花茎の周りに桃色の花をらせん状に並んで咲いているのが名前の由来になっていた。そして、茎に対して花の巻き方は、皆同じかと思いきや、私の間違いで、右巻きと左巻きの両方があり、なかには捩じれないものもあるそうだ。久しぶりに総合公園の四阿にやって来て、一休みしていると、顔見知りのウォーキングの仲間が、三々五々集まって来て、次から次へと、話題が飛び交い楽しいひと時を過ごすことが出来た。
ムラサキシキブノ『紫式部』の花は、前を通り過ぎる人の足を引き留めるかのように、甘い香りを発していた。その香りに応えてやろうと、振り向いて香りを発する木を探すと、薄桃色の花が目に入った。おや、その花に張り付いている虫がいた。前翅に黒と黄色の4本の帯模様のある、ヨコスジハナカミキリ『横筋花髪切虫』だった。歩いて行く足元近くを、ゆっくりと飛んで行くカノコガ『鹿子蛾』がいた。はじめて見る人に蛾だと言っても、中々信じてもらえない程綺麗な色をした蛾なのだ。そして、指先で羽を触ると、鱗粉の模様が判子で押したようにそのまま指に付く。名前の由来は、翅の鹿の子模様からと言われている。枯草が吹きだまっているゴミの中から、虫が飛び出して来たのは、緑色の金属製の光沢をもつ、ミドリオサムシ『緑筬虫』だった。早い動きに、カメラでなかなか追うことが出来なかった。諦めかけた時、石垣の所で動きを止めた。何を考えているのか、ジッとしているのでここでシャッターが切れた。イラクサの葉の上でじっと動かず、獲物の来るのを待ち構えているササグモ『笹蜘蛛』を見つけた。このクモは、網を張らずに徘徊性を持つ、歩き回って餌をとる、敏捷的行動の虫だった。そのため、カメラで近づくと、サッと葉の裏側に隠れてしまうのだった。地面を這っているのは、大きなアリ『蟻』かと、思ったら、全身真っ黒なワシグモだった。このクモも、網を張らず、地上を走り回って餌をとる徘徊性の蜘蛛だった。
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