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有栖川有栖「折れた岬」(126)
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後輩のぼやきは止まらない。
「職人の世界だと、教わろうとせず師匠の技をよく見て盗め、なんてことを言ったりもするようですけれど、編集者はそれもできません。先輩がどんな箇所にどんなことを鉛筆で書き入れているのかさえ、見る機会がないんですから」
安村は頷くしかない。
「そうね。同じ部署で机を並べている編集者でも、ゲラにどう鉛筆を入れているのかは知らない。だけど、作家さんの方は編集者ごとの違いが判ってい...
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