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有栖川有栖「折れた岬」(127)
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「お忙しいのに呼び止めて、すみませんでした。――今西先生宛てのお手紙は、このまま転送しておきます。ちょうど重版分の見本をお送りするところだったので、それと一緒に」
須賀が無駄話を打ち切ろうとするが、すぐに立ち上がるのがなんとなく億劫だった安村は、バッグからグミを取り出した。
「食べる? グレープ味」
「あ、いただきます」
後輩の仕事の邪魔をしているのかな、と思いかけたが、迷惑そうではない。
「...
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