[社説]待機児童の減少に油断せず保育拡充急げ
希望しても保育所などに入れない待機児童の数が4月1日時点で2567人になった。昨年より113人少なく、6年連続で過去最少を更新した。
ただ、これで保育の問題はほぼ解決と思うのは、早計だ。想定を超える少子化が背景にあるうえ、親子を支えるインフラとしての保育の役割はむしろ高まっている。待機児童の減少を、拡充に向けた大事な一歩としたい。
こども家庭庁によると、全国の自治体のうち87.5%で待機児童がゼロとなった。人数自体もピークだった2017年(2万6081人)の10分の1になった。
一方、家に近い特定の園のみを希望して入れないといった「隠れ待機児童」は約7万1千人で、なお高水準だ。あくまで4月時点の数字であり、年度途中に入りたい子どもの数なども含まれない。
25〜44歳の女性の就業率は上昇傾向にあり、共働きも増えている。保育利用率は1.2歳児で59.3%と、10年前より24.2ポイントも高まった。安心して通える園が身近にあってこそ、少子化対策にも女性の就労支援にもなる。自治体は地域の実情に応じ、必要な整備を進めてほしい。
さらに取り組むべきことは多くある。まずは質の向上だ。4.5歳児の職員配置基準は今年4月、76年ぶりに見直されたが、具体的な改善はなお途上だ。保育士が余裕をもって子どもと向き合い、きめ細かく目配りができる環境を整えることが欠かせない。
保護者の就労を問わず保育を利用できる新制度「こども誰でも通園制度」が、26年度から全国で始まる。3歳未満の未就園児が対象だ。保育所などが果たす役割への期待も大きくなるだろう。
気になるのは、保育の人手不足だ。今回、待機児童が解消できなかった要因として「保育人材の確保困難」を挙げる自治体が目立った。誰でも通園制度でも、24年度の試行事業では利用は月10時間が上限だ。全国で体制が整わなければ、利用時間は影響を受ける。保育士の処遇改善や就労環境の整備を着実に進める必要がある。
大事なのは、共働き家庭も専業主婦家庭もみな安心して子育てでき、子どもが様々な経験や交流を通じて成長できるようにすることだ。待機児童対策から踏み出し、地域の保育基盤をどう整えていくか。国も自治体も新たなグランドデザインを考えるときだ。
合計特殊出生率とは一人の女性が生涯のうちに産む子どもの数の平均のことで、人口を維持するには2.06~2.07が必要とされます。日本は終戦直後は4.0を超えていましたが、団塊世代が20代後半になった1975年に2を割り込みました。