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甲子園口・鞍馬口… 関西の駅名なぜ「口」ばっかり

全部で45 関東は「新」が好き

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 関西に赴任したてのころ、阪神甲子園球場の最寄り駅と勘違いしてJR甲子園口駅で降り、だいぶ歩いた経験がある。それから電車に乗ると「口」が付く駅が気になるようになった。数えてみると関西2府4県で接尾語的に口が付く駅は45。関東は1都6県で10駅にすぎない。関西はなぜ「口」ばっかりなのか?

まず西日本旅客鉄道(JR西日本)広報部に駅の命名法を聞いてみた。「わかりやすく長く親しまれるように所在地の地名を基本に地元の要望も考慮して決めます。移転の可能性もある民間施設や企業名はまず使いませんが、同志社前駅のような例外もあります」とのことだ。甲子園口駅は球場や住宅地「甲子園」への近隣駅という意味だろう。

口駅はいくつかに分類できる。まず甲子園口駅や近畿日本鉄道・信貴山口駅のようにある地域・施設や山などへの「玄関口」や「入り口」。現地への距離は様々だ。関東にも京王電鉄・高尾山口駅などがあるが数は少ない。

もう一つが阪急電鉄・西宮北口駅のような「方角+口」。「西宮北口は旧西宮町への北側の入り口という意味でつけられたようです」と、西宮文化協会の山下忠男会長。阪急・宝塚南口駅のように既存駅からの方角を示す場合も多い。地図研究家の今尾恵介さんは「関東なら北西宮や南宝塚になったのでは」と話す。

神戸電鉄粟生線では鈴蘭台駅―鈴蘭台西口駅―西鈴蘭台駅と続く。「西口はすぐ近くというイメージ。逆に鈴蘭台―西鈴蘭台―鈴蘭台西口ではおかしいでしょ」(同社)。なるほど微妙な感覚なのだ。

京都では街道の関所を「鞍馬口」「丹波口」など「京の七口」と呼んでいた。日本語語源研究所(京都市)の吉田金彦所長は「関西では昔から東寺口のように人の出入りが多い場所に口をつけました」と語る。

頭に「新」がつく駅は関東61駅、関西19駅。特に京都府は少なく、京都市内はゼロ。「京都は地名にこだわりが強く、なるべく昔からある地名を使います」と吉田所長は説明する。

一方、関東はJR京葉線など比較的新しい路線に多い。「JR武蔵野線はほぼ半数が東・西・南・北か新で始まる駅名。昔からある大字(おおあざ)レベルの地名を嫌い一般に知られる地名を一部に使うわけですが、逆にわかりにくい例もあります」と今尾さん。

「前」は関西と関東がほぼ同数。関西より関東が1.3倍ほど駅が多い点からすれば関西が健闘している。関東は駅間が短い都電に10駅あり、関西は阪堺電気軌道や近江鉄道に多い。

注目は地下鉄対決。東京は10駅で国会議事堂前、明治神宮前、新宿御苑前、二重橋前、東大前などさすが首都といえる重厚な布陣。一方の大阪は動物園前駅のみだ。都庁前駅はあるのに府庁前駅や大阪市役所前駅がないのは大阪府・市が統合していないからというよりも中心部に新線が少なく、お上意識も薄いからか。

「○○台」や「○○ケ丘」は宅地開発に伴うケースが多く、関東が圧倒的。関西には宅地開発系で阪神電鉄・香櫨園駅など「園」、阪急・武庫之荘駅など「荘」もある。

総括すると「口」と「前」の関西、「新」と「台・ケ丘」の関東になる。すぐそこは「前」、玄関口は「口」と区別する実益重視の関西と、イメージ重視の関東ともいえそうだが、取材した鉄道会社の多くは「駅名が決まった理由は古すぎてわからない」という答えだった。

(編集委員 宮内禎一)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2013年3月27日付]

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