全国のカップルが注目 京都社寺での結婚式なぜ人気
上賀茂神社の挙式数、5年で5割以上増加
式当日。紋付き羽織はかまの新郎と、色打ち掛けの新婦に続き、重要文化財の細殿へ。祝詞奏上、三三九度、指輪交換が、雅楽の生演奏の中で執り行われる。神職の先導で、普段は入れない本殿も参拝。張り切って着物姿で参列した友人たちは大はしゃぎだ。
上賀茂神社の挙式件数は2011年度約700件。5年で5割以上増え、府外のカップルも多い。「和婚ブームで、婚礼業者がPRした効果」という。同神社の指定業者の1つ、エルエスティ(京都市)に向かった。
同社が「京都の和婚」をテーマにした婚礼サービスを始めたのは約10年前。谷口聡社長は「当時は明朗な価格設定で、和装、神社仏閣での挙式、料亭での披露宴を丸ごと提供している業者がなかった」。
上賀茂神社(挙式料10万円)、下鴨神社(同8万円)、知恩院(同20万円)などでの挙式サービスを提供。白無垢(むく)なら20万円、色打ち掛けなら26万円で、衣装レンタル、着付け、ヘアメーク、移動車をセットにしたプランが受け、今では年間約500組の挙式を手掛ける。09年には東京にも出店した。
観光にも便利、京都は絶好のリゾート地
一方、全国をターゲットにしたのが大手のワタベウェディング。竹本啓太・京都本店支配人は「京都は絶好のリゾート地」と話す。
同社は約40年前、ハワイなど海外リゾートの挙式を提案、広めたことで有名。国内では沖縄、軽井沢などでサービスを手掛けていたが、和婚人気の高まりを受け、05年に京都も加えた。
観光に良い、和装が絵になる、などの理由で選ぶ例が多く、約6割が京都府外在住のカップルだ。親族を中心に20人前後の会が一般的で、費用は披露宴も含めて100万円程度。会場は世界遺産の上賀茂神社や下鴨神社が人気だ。
海外を選ぶカップルの中心は20代半ばだが、京都は30歳前後が中心。「ドレス姿の女性はかわいい印象。神社で着物を着た女性はしっとりと美しい。大人の女性に似合います」と竹本支配人。「京都の神社仏閣は別格。本格志向の方が好みます。晩婚化で人気はさらに高まるでしょう」
法事や葬儀の印象が強く、神社よりハードルが高そうなのが寺院。動向を知るため、10年以上前から寺院での婚礼サービスを手掛ける京鐘(京都市)を訪ねた。
9割が京都府外、30~40代が中心
同社の提携先は延暦寺、泉涌寺、清水寺など約20寺院。挙式料は神社が3万~15万円程度だが、寺院は10万~50万円程度だ。式次第は宗派により若干異なるが、念珠の授与や参列者による般若心経の読経などがある。「人生の大切な儀式ととらえ、静かに挙式したいカップルが選ぶ」と辻順子社長。9割が京都府外のカップルで、30~40代が中心。宗派より、建物や庭のたたずまいを気に入り、申し込むケースが目立つ。
檀家でないのに式をお願いするのは気が引けるが、寺院はどう考えているのか。浄土宗の大本山、金戒光明寺に疑問をぶつけると、執事長の芳井秀教さんが答えてくれた。
「仏様とご先祖様に結婚を報告するのが仏前式。人の苦しみを取り除くのが我々の使命で、安らかで幸せな生活の手助けができるならうれしい限り。寺院はそんなに堅苦しいところではありません」。現在は春と秋を中心に、年10組弱が利用する。CMにも使われた見事な庭で写真を撮ったら、さぞ映えるだろう。
結婚情報誌「ゼクシィ」の調査では11年度の挙式形式は、キリスト教式が58%、人前式が24%、神前式が16%、仏前式が1%。ここ10年でキリスト教式が減り、神前式などの人気が高まっている。未婚の女性は、京都観光のついでに、理想の会場を探してみてはいかが。
(大阪・文化担当 佐々木宇蘭)
[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2013年1月9日付]