遊漁関係者と水産庁の意見交換会・その1
目的は水産庁との意見交換会である。
この意見交換会をセッティングしていただいた立憲民主党の梅谷先生、そして新潟県の人気遊漁船海遊丸の藤井船長に心から感謝申し上げます。
国会議員さんとお話しするのは2021年12月に農水副大臣だった中村先生(自民党)以来である。
連載5 今年のクロマグロはどうなる?そして我々にできることとは。 - YOICHI MOGI (fc2.com)
梅谷議員を囲んで
当初1時間の予定だったが、白熱の意見交換は時間を大幅に超過することになった。
まずクロマグロの論文と科学的データをたくさんプリントして持参した。釣り人は感覚や感情で話す人が多い。それでは説得力がないし、相手に突っ込まれたときにそういうものを用意してなかったら反論もできない。
キャッチ&リリースが定着している国のほうが実は一人当たりの採捕量は多いのだ。そしてアベレージサイズも大きい。そしてサイズリミット、バッグリミットなどのレギュレーションを設ければさらに資源評価もよくなり、安定して大きな魚が釣れるようになる。
対して何も設けてない国は乱獲が進み、魚は減り、とくに大きな魚が減少する。そして結果的に採捕量も減少する。それは日本以外の国でもレギュレーションが無ければ同じ道を歩んでいる。
日本も昔はチョウザメがいた。そしてハリバット(オヒョウ)、タマカイやナポレオンなどの大型魚がたくさん生息していたのである。チョウザメは明治時代に絶滅、ハリバットやタマカイ、ナポレオンもぱったりと釣れなくなった。
ところがレギュレーションや禁漁区、禁漁期間を設けている国ではいまでもたくさん生息していて、釣り人は釣ることもできる。そしてほとんどの釣り人を幸せにしている。
意見交換会を効率よく進めるためにあらかじめ質問書を作成、そして水産庁に渡した。
意見交換会質問書
■現場からの報告
クロマグロ採捕の無報告が増えている
採捕禁止期間中もクロマグロ狙いで出る船が増えている
(地域差がある。プレジャーはほぼ守ってない)
飲食店などにクロマグロを売る釣り人、釣り船が増えている
釣り船がリリースを強制すると客が減る
釣り客が30キロ未満をリリースしたら船長に出入り禁止にされた
採捕禁止となると旅館、コンビニ、飲食店、ガソリンスタンドなどの売り上げが激減
正直者が馬鹿を見るという現実が全国に広がっている
■現行規制の問題点
1.現行の月単位の枠配分は問題が多すぎる。
(釣り人からアンケートを取ったところ月単位に賛成する人は0人だった。地域別、バッグリミット制、ライセンス制に賛成する人が多かった)(今年7月の青森、北海道はベストシーズンを迎える前に採捕禁止となってしまった)
2.遊漁の枠が少なすぎる。
日本40トン、アメリカ太平洋側1161トン(2021年実績)
(過去に水産庁は資源管理の枠組みに支障をきたすと言っているが、我が国の全漁獲のわずか0.4パーセントで支障をきたすような枠組みに問題がある)
3.遊漁の枠は何を根拠に決めているのかが不透明。
アンケートや採捕報告だけで遊漁の採捕実績を決めるのは義務化して罰則を設けないと大幅に少ない採捕実績となる。
(我が国は報告よりも無報告のほうが多い。現在のやり方では永遠に正確な採捕量はわからない)
(アメリカは24時間以内の報告を義務付けている。報告するのは釣り船。無報告には厳しい罰則が適用される。また洋上での監視、マリーナ等での監視も徹底している。クロマグロ以外の採捕調査はアプリでの報告と、多くの人員を使っての現地調査の2段構えでやっている)
4.釣り人の意見を聞くべきだ(パブリックコメントなど)
(広域漁業調整委員会の参考人はクロマグロ釣りの経験が乏しいうえにリリースなどはしたことがない人ばかり。また参考人の発言が取り入れられたケースは一度もない。ようするに参考人に話させることが目的。話をさせましたという実績は残る)
5.採捕禁止となるとキャッチ&リリースもダメとなるが、なぜダメなのか?
(水産庁はリリースに関しては死亡率などの科学的検証が必要と2年前に言っているが、その後その検証はどうなっているのか?)(採捕の定義というものがあるらしいが、世界基準のキャッチから大きくずれている。海外はキャッチというと船べりまで寄せてラインを掴んだ時点でキャッチとなる。日本は魚が針に掛かり、自由を奪われた時点で採捕となる。釣りとは針に掛かり、そこから船べりまで寄せてキャッチするまでのファイトが一番楽しいのであり、日本の採捕だとその楽しい部分が除外されてしまう)
(予算的に科学的検証ができないのであればアメリカ、カナダ、アイルランドなどの公的機関が発表している死亡率を採用すればよい)(キャッチ&リリースは資源をほとんど減らさずに地方経済に貢献できる)(キャッチ&リリースは死亡率が低いことが証明されて有効な資源管理のツールとなる)(海外の公的機関が発表しているリリース後の死亡率はおおむね5~6パーセントの範囲内)
キャッチ&リリースを否定している国は日本だけである。カナダにはキャッチ&リリースプログラムがあり、アイルランドとイギリスにはキャッチタグリリースプログラムがあり、国が推進している。
6.キャッチ&リリースに関する研究報告、論文は海外にはたくさんあるが、水産庁は知っているのか?
(広域漁業調整委員会では委員の一人が「論文などない」と断言していた)(広域漁業調整委員会では委員の一人が100キロ200キロのクロマグロなんて危険すぎてできないと発言していた)
(論文は海外にたくさんある)(遊漁者による100キロオーバーのリリースは国内でも確実に50回以上あるし、YouTubeやインスタグラムなどに公開されている)(海外では300キロオーバーも連日のようにリリースされている)
7.釣り人は納税者である。日頃賢明に働き、余暇に釣りに行くことを楽しみにしている。納税者の遊びを不当に扱っている。
(ほとんどの先進国は「海は国民共有財産」という扱いであり、公平に管理されている)(アメリカは各州が漁獲枠を魚種ごとに設けているが、コマーシャル(漁業)よりスポーツ(遊漁)のほうが枠が大きい魚種が多い)
8.クロマグロを狙う遊漁船は全国に500隻以上あると思う。水産庁は何隻くらいあるか把握しているのか?
(現行の37.4トンという枠は1船当たり75キロとなる。プレジャーを含めると1船当たり50キロを割るだろう。ということは1船当たり1年間で1匹しかキープできないことになる)
9.意味のない1日1人1匹のバッグリミット
(クロマグロを狙う釣り人は全国に5000人以上いるだろう。その5000人が50キロのクロマグロを1匹ずつキープすれば250トンとなる。ただし枠が37.4トンしかないので1人当たり1年間7.5キロとなる。7.5キロのクロマグロをキープすると違反である。そしてすぐに採捕禁止となる)(アメリカ太平洋側は1日1人2匹のバッグリミットがあるが、途中で採捕禁止になったことがない)
10.国は遊漁の経済効果を無視している。
(アメリカは海釣りだけで経済効果は10兆円を超す。そして釣り人口は5000万人以上にまで増えている。対して日本の釣り人口はどんどん減って550万人であり、なおかつ経済効果は不明)(海外にクロマグロ釣りに毎年行っているが、船長もクルーも大きな新車を購入して広い家に住んでいる。釣り人が地方経済に大きく貢献していることが現地に行けばよくわかる)
11.水産庁は水産業の管理がお仕事。しかし遊漁は水産業ではなく、スポーツ、レジャーの類に入る。水産庁が遊漁を管理している限り、遊漁が対等に扱われることはない。
(遊漁部門を水産庁からを国土交通省、もしくは文科省、経産省に移して管理する)
結論
1.クロマグロの遊漁枠を500トンとする
2.キャッチ&リリースを周年認める
3.監視と罰則を強化する
4.採捕報告を義務化する
5.ライセンス制にする
6.クロマグロに関してはフック形状、ライン強度などのレギュレーションを設ける
7.遊漁部門を他省庁に移す
※遊漁者の発言は次号に記載します。
用意したデータ1 ISCの資料より
日本のクロマグロ漁獲量だが、遊漁の漁獲量は不明である。
これが結果的に不公平な枠の配分へと繋がった。
用意したデータ2 ISCの資料より
アメリカの漁獲量データだが、スポーツ(遊漁)も50年以上前から報告されている。
このようにしっかりとしたデータがあるから、本格的な厳しい規制が始まった2015年以降も多くのスポーツ枠を認められたのだ。
用意したデータ3 ISCの資料より
これほど大きな差となった。その原因はいろいろあるが、正確な採捕量を調べて無かった。バッグリミットなどのレギュレーションがなかった。これは遊漁の近代化を怠った国(水産庁)に一番の責任があるだろう。
用意したデータ4 ISCの資料より
将来予測にも西太平洋は数字が無い。東太平洋(アメリカ、メキシコ)にはスポーツも数字が出ている。いつになったら西側は東側と対等になるのか。今の動きを見る限り50年経っても変わらないだろう。
タグ&リリースは2019年に開始したが、1年前から本格的になり、すでに70匹以上のクロマグロにタグを打っている。そのタグを洋上で見たという報告も来ている。GTとヒラマサはすでに再捕報告がある。
※高価なポップアップタグも一部の釣り具メーカーが昨年、今年の2年間で3本を打っている。昨年はリリース後の生存が確認されている。今年もまもなく結果が発表される。
2019年は東大とNHKと合同チームを作り、カナダのクロマグロの生態調査を行った。これは人気自然番組「ダーウィンが来た」で紹介された。
次号「遊漁関係者と水産庁の意見交換会・その2」へ続く