2023/08/22

遊漁関係者と水産庁の意見交換会・その1

一年のうち一番暑いときの8月4日に衆議院第2議員会館を訪れた。総勢7人、内訳は遊漁船長4人、釣り具メーカー1人、有識者1人、そして俺だった。

目的は水産庁との意見交換会である。

この意見交換会をセッティングしていただいた立憲民主党の梅谷先生、そして新潟県の人気遊漁船海遊丸の藤井船長に心から感謝申し上げます。

国会議員さんとお話しするのは2021年12月に農水副大臣だった中村先生(自民党)以来である。
連載5 今年のクロマグロはどうなる?そして我々にできることとは。 - YOICHI MOGI (fc2.com)

クロマグロ

梅谷議員を囲んで



当初1時間の予定だったが、白熱の意見交換は時間を大幅に超過することになった。

まずクロマグロの論文と科学的データをたくさんプリントして持参した。釣り人は感覚や感情で話す人が多い。それでは説得力がないし、相手に突っ込まれたときにそういうものを用意してなかったら反論もできない。


クロマグロ

キャッチ&リリースが定着している国のほうが実は一人当たりの採捕量は多いのだ。そしてアベレージサイズも大きい。そしてサイズリミット、バッグリミットなどのレギュレーションを設ければさらに資源評価もよくなり、安定して大きな魚が釣れるようになる。




クロマグロ

対して何も設けてない国は乱獲が進み、魚は減り、とくに大きな魚が減少する。そして結果的に採捕量も減少する。それは日本以外の国でもレギュレーションが無ければ同じ道を歩んでいる。




クロマグロ

日本も昔はチョウザメがいた。そしてハリバット(オヒョウ)、タマカイやナポレオンなどの大型魚がたくさん生息していたのである。チョウザメは明治時代に絶滅、ハリバットやタマカイ、ナポレオンもぱったりと釣れなくなった。
ところがレギュレーションや禁漁区、禁漁期間を設けている国ではいまでもたくさん生息していて、釣り人は釣ることもできる。そしてほとんどの釣り人を幸せにしている。



さて本題に戻ろう。

意見交換会を効率よく進めるためにあらかじめ質問書を作成、そして水産庁に渡した。


意見交換会質問書

 

■現場からの報告

 

クロマグロ採捕の無報告が増えている

採捕禁止期間中もクロマグロ狙いで出る船が増えている

(地域差がある。プレジャーはほぼ守ってない)
飲食店などにクロマグロを売る釣り人、釣り船が増えている

釣り船がリリースを強制すると客が減る

釣り客が30キロ未満をリリースしたら船長に出入り禁止にされた

採捕禁止となると旅館、コンビニ、飲食店、ガソリンスタンドなどの売り上げが激減

正直者が馬鹿を見るという現実が全国に広がっている

 

■現行規制の問題点

 

1.現行の月単位の枠配分は問題が多すぎる。

(釣り人からアンケートを取ったところ月単位に賛成する人は0人だった。地域別、バッグリミット制、ライセンス制に賛成する人が多かった)(今年7月の青森、北海道はベストシーズンを迎える前に採捕禁止となってしまった)

 

2.遊漁の枠が少なすぎる。

日本40トン、アメリカ太平洋側1161トン(2021年実績)
(過去に水産庁資源管理の枠組みに支障をきたすと言っているが、我が国の全漁獲のわずか0.4パーセントで支障をきたすような枠組みに問題がある)

 

3.遊漁の枠は何を根拠に決めているのかが不透明。
アンケートや採捕報告だけで遊漁の採捕実績を決めるのは義務化して罰則を設けないと大幅に少ない採捕実績となる。

(我が国は報告よりも無報告のほうが多い。現在のやり方では永遠に正確な採捕量はわからない)
(アメリカは24時間以内の報告を義務付けている。報告するのは釣り船。無報告には厳しい罰則が適用される。また洋上での監視、マリーナ等での監視も徹底している。クロマグロ以外の採捕調査はアプリでの報告と、多くの人員を使っての現地調査の2段構えでやっている)

 

4.釣り人の意見を聞くべきだ(パブリックコメントなど)
(広域漁業調整委員会の参考人はクロマグロ釣りの経験が乏しいうえにリリースなどはしたことがない人ばかり。また参考人の発言が取り入れられたケースは一度もない。ようするに参考人に話させることが目的。話をさせましたという実績は残る)


5.採捕禁止となるとキャッチ&リリースもダメとなるが、なぜダメなのか?
水産庁はリリースに関しては死亡率などの科学的検証が必要と2年前に言っているが、その後その検証はどうなっているのか?)(採捕の定義というものがあるらしいが、世界基準のキャッチから大きくずれている。海外はキャッチというと船べりまで寄せてラインを掴んだ時点でキャッチとなる。日本は魚が針に掛かり、自由を奪われた時点で採捕となる。釣りとは針に掛かり、そこから船べりまで寄せてキャッチするまでのファイトが一番楽しいのであり、日本の採捕だとその楽しい部分が除外されてしまう)

(予算的に科学的検証ができないのであればアメリカ、カナダ、アイルランドなどの公的機関が発表している死亡率を採用すればよい)(キャッチ&リリースは資源をほとんど減らさずに地方経済に貢献できる)(キャッチ&リリースは死亡率が低いことが証明されて有効な資源管理のツールとなる)(海外の公的機関が発表しているリリース後の死亡率はおおむね56パーセントの範囲内)
キャッチ&リリースを否定している国は日本だけである。カナダにはキャッチ&リリースプログラムがあり、アイルランドとイギリスにはキャッチタグリリースプログラムがあり、国が推進している。


6.キャッチ&リリースに関する研究報告、論文は海外にはたくさんあるが、水産庁は知っているのか?
(広域漁業調整委員会では委員の一人が「論文などない」と断言していた)(広域漁業調整委員会では委員の一人が100キロ200キロのクロマグロなんて危険すぎてできないと発言していた)
(論文は海外にたくさんある)(遊漁者による100キロオーバーのリリースは国内でも確実に50回以上あるし、YouTubeやインスタグラムなどに公開されている)(海外では300キロオーバーも連日のようにリリースされている)

 

7.釣り人は納税者である。日頃賢明に働き、余暇に釣りに行くことを楽しみにしている。納税者の遊びを不当に扱っている。

(ほとんどの先進国は「海は国民共有財産」という扱いであり、公平に管理されている)(アメリカは各州が漁獲枠を魚種ごとに設けているが、コマーシャル(漁業)よりスポーツ(遊漁)のほうが枠が大きい魚種が多い)

 

8.クロマグロを狙う遊漁船は全国に500隻以上あると思う。水産庁は何隻くらいあるか把握しているのか?
(現行の37.4トンという枠は1船当たり75キロとなる。プレジャーを含めると1船当たり50キロを割るだろう。ということは1船当たり1年間で1匹しかキープできないことになる)


9.意味のない111匹のバッグリミット
(クロマグロを狙う釣り人は全国に5000人以上いるだろう。その5000人が50キロのクロマグロを1匹ずつキープすれば250トンとなる。ただし枠が37.4トンしかないので1人当たり1年間7.5キロとなる。7.5キロのクロマグロをキープすると違反である。そしてすぐに採捕禁止となる)(アメリカ太平洋側は112匹のバッグリミットがあるが、途中で採捕禁止になったことがない)

 

10.国は遊漁の経済効果を無視している。
(アメリカは海釣りだけで経済効果は10兆円を超す。そして釣り人口は5000万人以上にまで増えている。対して日本の釣り人口はどんどん減って550万人であり、なおかつ経済効果は不明)(海外にクロマグロ釣りに毎年行っているが、船長もクルーも大きな新車を購入して広い家に住んでいる。釣り人が地方経済に大きく貢献していることが現地に行けばよくわかる)

 

11.水産庁は水産業の管理がお仕事。しかし遊漁は水産業ではなく、スポーツ、レジャーの類に入る。水産庁が遊漁を管理している限り、遊漁が対等に扱われることはない。
(遊漁部門を水産庁からを国土交通省、もしくは文科省、経産省に移して管理する)

 

結論
1.クロマグロの遊漁枠を500トンとする

2.キャッチ&リリースを周年認める

3.監視と罰則を強化する

4.採捕報告を義務化する
5.ライセンス制にする

6.クロマグロに関してはフック形状、ライン強度などのレギュレーションを設ける

7.遊漁部門を他省庁に移す

※遊漁者の発言は次号に記載します。




クロマグロ

用意したデータ1    ISCの資料より
日本のクロマグロ漁獲量だが、遊漁の漁獲量は不明である。
これが結果的に不公平な枠の配分へと繋がった。




クロマグロ

用意したデータ2   ISCの資料より
アメリカの漁獲量データだが、スポーツ(遊漁)も50年以上前から報告されている。
このようにしっかりとしたデータがあるから、本格的な厳しい規制が始まった2015年以降も多くのスポーツ枠を認められたのだ。




クロマグロ
用意したデータ3   ISCの資料より
これほど大きな差となった。その原因はいろいろあるが、正確な採捕量を調べて無かった。バッグリミットなどのレギュレーションがなかった。これは遊漁の近代化を怠った国(水産庁)に一番の責任があるだろう。




クロマグロ
用意したデータ4   ISCの資料より
将来予測にも西太平洋は数字が無い。東太平洋(アメリカ、メキシコ)にはスポーツも数字が出ている。いつになったら西側は東側と対等になるのか。今の動きを見る限り50年経っても変わらないだろう。





クロマグロ

タグ&リリースは2019年に開始したが、1年前から本格的になり、すでに70匹以上のクロマグロにタグを打っている。そのタグを洋上で見たという報告も来ている。GTとヒラマサはすでに再捕報告がある。
※高価なポップアップタグも一部の釣り具メーカーが昨年、今年の2年間で3本を打っている。昨年はリリース後の生存が確認されている。今年もまもなく結果が発表される。





クロマグロ

2019年は東大とNHKと合同チームを作り、カナダのクロマグロの生態調査を行った。これは人気自然番組「ダーウィンが来た」で紹介された。



次号「遊漁関係者と水産庁の意見交換会・その2」へ続く




2022/02/14

連載5 今年のクロマグロはどうなる?そして我々にできることとは。

昨年12月16日に農水省に行き中村農水副大臣にお会いした(水産庁から3人が来て隣席に座って傍聴した)。

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副大臣は釣りが好きらしく、バッグリミットなどレギュレーションの専門用語もすぐに理解しました。俺が渡した要望書にも、すぐに大切な部分は赤ペンを入れてました。釣りの経済効果、キャッチアンドリリース、そしてレギュレーションにもとても関心を持ってました。海外のお話を真剣に聞いてました。俺がプレゼントした写真集もとっても喜んで、大きな魚に驚いてました。アメリカを例に出し、釣り人口は年々増えて5,000万人、そして経済効果は20兆円というとビックリしてました。無規制の日本より、ちゃんと規制をしているアメリカは釣り人口がどんどん増えて、野放しの日本はどんどん減り続けていると話すと悲しそうな顔をしてました。副大臣もキープすることより、魚とやりとりすることが好きだと言ってました。
お話が終わると副大臣は出口まで送ってくれて、最後に「茂木さんがまっすぐな人だとわかりました。今日お話したことは前向きに検討させていただきます」と。

そして副大臣に渡した要望書です。原文です。
※ただし200トンはあくまでも要望です。水産庁が管理している限り、それが実現することは100パーセントありません。


遊漁に関しては、バッグリミットを設けること。そしてキャッチアンドリリースを認めること。枠は最低でも200トン。海域別もしくは都道府県別、もしくは月単位で枠を設けるべき。30キロ未満は採捕不可。
バッグリミット(案):年間1人3匹。サイズリミット(現状):30キロ未満はリリース。
海域別(案):北海道40トン、東北60トン、関東10トン、中部20トン、北陸20トン、九州30トン、沖縄10トン、他10トン、合計200トン、など。
月単位(案):6月20トン、7月40トン、8月40トン、9月20トン、10月10トン、11月10トン、12月10トン、1~5月は各10トン、合計200トン、など。

200トンでも全漁獲のたったの2パーセントにすぎない。地方経済への貢献などを考えて枠を設けるべき。
地方経済への貢献:宿代、船代、飲食、買い物、給油、交通費などなど。

今年のやり方はいわゆるオリンピック方式でした。資源管理先進国ではもう20年以上前から否定されている方式です。現在ほとんどの国がIQ(個別割り当て)、ITQ(譲渡性個別割り当て)です。
オリンピック方式とは「よーいドン」で一斉に始めるので早い者勝ちです。今年は6月1日からよーいどんで開始。九州、富山、石川、新潟のシーズンインが早い地方で枠の半分以上を2週間で達成してしまいました。


世界基準(先進国)
アメリカの大西洋側はスポーツの枠が500トン以上もある。バッグリミットは船中1匹でサイズリミットは叉長27~72インチ以内。キープしたら24時間以内に報告の義務がある。キャッチアンドリリースはOK。
Atlantic Bluefin Tuna Recreational Bag Limits | NOAA Fisheries


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カナダにはキャッチアンドリリースプログラムがあり、国や州が推奨している。

公平に管理すれば、違反に対して厳しい罰則を設けても納得する。現時点ではとてもじゃないが納得できない。広域漁業調整委員会に釣り人、釣り団体が1人もいない。そこで決めることは極めて非民主的。
水産庁は発令する前にパブリックコメントは必ずとること。

さらにその枠を有料にすると良いのではないでしょうか?
遊漁船もプレジャーもライセンス料を払いキャッチ可能とするなど。
その収益で、漁港、マリーナ監視と生態調査に使ってはいかがでしょうか?


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要望書の他に、国民共有の財産提言、世界のスポーツフィッシング、日本と海外の遊漁の現状、日本とアメリカの釣り人口の推移などたくさんお渡しした。

要望書には書いてないが、キャッチアンドリリースに関しては死亡率もお話した。

公的に採用されているリリース後の死亡率
アメリカの太平洋側 6パーセント
カナダの大西洋側 5.6パーセント
アイルランド 5パーセント
日本 データ無し

日本はデータがないことを理由にリリースを認めないという決定だった。
これは今まで調査してこなかった行政の怠慢なのですが。



アメリカの太平洋側は1日1人2匹のバッグリミットが設けられている。期間中に釣りが禁止になったことはない。
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海外のリリース後の死亡率が低い理由は使っているフックがほとんどシングルフックということが大きい。カナダはさらに厳しくてサークルフック(眠り針)のバーブレスが義務付けられている。ファイティングタイムも60分に制限されている。短時間で釣るために使用するライン強度も180ポンド以上となっている。アメリカの大西洋側はルアーキャスティングが盛んでトレブルフックの使用を認めている。死亡率はICCAT(大西洋まぐろ類国際保存委員会)やNOAA(アメリカ海洋大気庁)の資料を調べたが見つからなかった。ただし、スポーツの枠がとんでもなく大きいのでリリースしたマグロの10パーセント以上が漁獲として報告されているのかもしれない。




海外の漁獲データなどを調べて驚いたことはいくつもあった。
ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)のデータを見ると2018年のアメリカの遊漁の漁獲は809トンもあった。日本はISCのメンバーである。水産庁は知らないはずはないのだが。対して2018年のアメリカ太平洋側のまき網の漁獲はわずか12トンだった。同じ太平洋クロマグロを獲っている日本のまき網は約5,000トンの枠が配分されている。
青の部分:漁業(コマーシャル)、赤の部分:遊漁(レクリエーショナル)

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対して日本はわずか20トンで遊漁は釣り禁止となった。キャッチアンドリリースも認めないという厳しい指示だった。禁止の理由は「資源管理の枠組みに支障をきたす」だった。わずか0.2パーセントの漁獲だったが・・・

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昨年の主な漁場(6月~8月)
赤丸:遊漁
緑の線:旋網
黄色の線:延縄
※遊漁は新潟と山形沖は6月に報告が多く、青森と北海道は7月と8月に報告が多かった。

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そして現状で我々釣り人ができることは、キャッチ&リリース後の死亡率を下げる努力である。多くの釣り人は1にマグロとのファイトをやりたいのだ。キープももちろんしたいが、聞き取り調査をして声が多かったのはマグロとのファイトである。青森の小泊の旅館の経営者もリリースも否定した8月23日以降にキャンセルが殺到したと言っていた。それまではキャンセルは1件もなかったと。

日本中のクロマグロアングラーにお願いします。

「シングルフックバーブレスでクロマグロに挑んでください」

「できる限りキャッチアンドリリースをお願いします」

※2021年度はリリースしたクロマグロは報告をしなくてOKでした。2022年はリリースも報告することになるかもしれません。そのとき水産庁は採捕と放流を分けて報告書を作成すべきです。



アイルランドでは長さを計ってからリリースします。

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アメリカ大西洋側も船べりリリースが基本です。

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昨年の北海道・松前沖はあちこちにクロマグロのナブラが沸いた。

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返しのないギャフを使う。

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シングルフックのバーブレスなら安全に簡単に外せます。

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ギャフでしばらく引っ張り、回復させてからリリースする。

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大型はシングルフックバーブレスをカンヌキか下顎に刺してロープで引っ張ってからリリースする。ロープは引っ張り用と外し用の2本を使う。

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SFPC(スポーツフィッシング推進委員会)は毎年電子タグによる生態調査にも協力してます。

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お腹を切って電子タグを埋め込む。

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再捕率は約27パーセント。アメリカ側はさらに再捕率は高いそうです。

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日本側がリリースしたクロマグロの回遊経路。1歳から2歳の間に太平洋を横断してアメリカまで行く。

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20歳以上の大型は南太平洋まで泳いで行く。ただし日本に戻ってきたクロマグロは現在1匹も確認されてない。

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アメリカ側がリリースしたクロマグロの回遊経路。
4歳から6歳くらいで日本に戻ってくる。そのあとは2度とアメリカに行かない。最近は100キロを超すクロマグロがカリフォルニア沖でかなり釣られている。7歳になっても戻らないクロマグロが増えているらしい。

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皆さん、優しく素早くリリースすればクロマグロはほとんど生きているのです。


そして

海は国民共有の財産です!


データは水産庁とISCの資料を主に使わせていただきました。
2021/11/09

連載4 クロマグロの遊漁の規制は釣り人不在で決められた。

俺と水産庁のやりとりはもう5年以上になるが、今回のクロマグロ新ルールに関しては2020年9月から開始した。

昨年の9月14日に俺が水産庁に送ったメール

クロマグロの遊漁、プレジャーもライセンス制を取り入れたらどうですか?
レギュレーションは30キロ以上を1人1日1匹です。
そして遊漁の枠を漁業の枠とは別に設けることです。
アメリカはコマーシャル(漁業)とスポーツ(遊漁)の枠が別々に設けられてます。ですから漁業者と遊漁のトラブルはありません。そして海洋水産資源は国民共有の財産として公平に管理されてます。

北海道の沿岸(知事管理)は30キロ未満が102トン、30キロ以上が288トン、合計390トンの枠があります。このうちの3パーセントにあたる13トンを遊漁の枠にしたらどうでしょうか?
そしてレギュレーションは1人1日1匹。30キロ未満は採捕不可、もし釣れてしまった場合はリリースすること。捕獲したマグロの売買は禁止とする。捕獲の報告は1週間以内(アメリカは24時間以内)にする。

罰則も設けないと効力は半減。悪い人が得することになります。
違反したら罰金の他にライセンスの取り上げ、もしくは停止でいいと思います。

俺の案は水産庁内で共有されて、新ルールの骨格の一部となった。

そして3月18日の日本海・九州西の広域漁業調整委員会に釣り人として初めて傍聴参加した。

驚いたことはこの広域漁業調整委員会の委員に釣り人は1人もいないのである。その会議で釣り人の規制が決められているのだ。民主主義はここには存在しない。


今回出された(案)
※画像はクリックすると大きくなります。


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そのときの発言の一部(議事録から)

○山内委員
遊漁者についての最終的には枠を与えて管理するというようなお話もありましたけれども、そもそもこの遊漁者、700万人ほどいらっしゃるということですが、数の多さにちょっとびっくりしております。ですので、漁業者よりは多いのかなと思ったりはしますが、厳格な管理をしていただきたいなと思います。
今回の内容については非常に甘いんじゃないかなと思っております。小型魚に関しては直ちに放流しなさいということではあるんですが、大型魚についてはなぜ釣り上げることを許しているのか、そして報告するのは当然のことだと思いますけれども、遊漁者の皆さんには放流という文化もありますので、大型魚についても放流すべきじゃないのかと思ったりもします。

○中島委員
ただし、5トン、6トンといいますけれども、大型魚、各都道府県に配分されている量というのは、各都道府県ごとに言いますと、5トン、6トンもないところもあるわけですね。ですから、漁民感情からすれば、ちょっと許せる数値じゃないのかなというような気もいたします。

この5トン6トンに関して調べてみると、5トン以下の都道府県はほとんど瀬戸内海だった。クロマグロが回遊してこない地域であり、クロマグロを生業とする漁師もいない。姑息な発言としか思えない。

しかも釣り人の漁獲は我が国の全漁獲10,400トンの0.2パーセントしかない。これを規制しても資源回復への効果はほとんどない。


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6月1日に遊漁によるクロマグロ釣りの新しい規制がスタートした。
30キロ未満が釣れてしまった場合は速やかに放流。30キロ以上を釣ったときは10日以内に水産庁に報告。このときも遊漁の枠は未公表だった。どのポスターにも20トンという数字は書かれてない。


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釣り人は30キロ以上のクロマグロを釣った場合、枠の制限が決められてないのだから報告をちゃんとやれば何匹キープしてもよいと思ったのは事実である。そして直前の採捕実績が資源管理の基本となることが国際会議では常識である。海外のそのような例を参考にして、俺も釣り人に「採捕報告は必ずやってください」と伝えていた。20トンという枠がわかっていたならリリースする釣り人が多かっただろう(リリースすれば採捕報告はしなくてよい)。
その結果、開始2週間で報告は10トンを超えた。


突然、水産庁から「30キロ以上も採捕自粛のお願い」のメールが採捕報告をした釣り人に届いた。

これが6月18日水産庁から釣り人に送られたメールだが、俺には届かなかった。


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釣り人からのメールが午前中次々届いた。まったく予想もしてなかった水産庁の対応に裏切られたという怒りがこみあげてきた。何度も電話をするが担当者は不在という返事。このコロナ禍の中で3人とも不在なんてあるわけない・・・
メールを送っても返事がなかった。

送ったメール

真面目に報告した結果が採捕禁止ですか?
青森や北海道の遊漁船や旅館、ホテルは経営難になりますよ。
そして今後水産庁へ協力することはなくなります。
10トンを超すなんて、真面目に報告すれば誰でもわかっていたことです。
それと俺には無報告というのも腹が立ちます。
全国に出向いて釣り人、船長に会い、今後の対策を話し合ってきました。
交通費も宿泊費も自腹です。

ようやく夜の9時過ぎに水産庁から返事が来た。

茂木様

 お世話になっております。
ご連絡いただきありがとうございます。
また、お電話も頂いており、不在で失礼しました。

 電話にて対応した者からも説明有ったかと思いますが、
今回の措置は採捕禁止ではありません。

 また、キャッチ&リリースしていただく分には大丈夫ですし、本措置は、現在、漁獲が著しい日本海への注意喚起であり、太平洋側は大丈夫ですが、文書の本文にも記載しておりますとおり、国の枠が決まっている以上、このままの状況が続けば、採捕禁止などの措置も検討せざるを得ない状況ではあります。

 また、遊漁で年間10トン程度を採捕するであろうということは、過去の実績値から想定はしていましたが、2週間で超えるとは予想していませんでした。

 茂木さんへの報告が出来なかったことは、素直にお詫びいたします。申し訳ございません。

 失礼いたします。      水産庁


7月29日太平洋広域漁業調整委員会の会議で初めて20トンという枠の話が出た。

また、クロマグロの我が国の漁獲枠の中で、国の留保枠として留保しておりますのが81.7トンございますが、遊漁による漁獲というのはこの中で吸収していかなければならないというものなのですが、ただ、この81.7トンのうち50トン程度は漁業における突発的な漁獲の積み上がりに備えておく必要があると。それから、10トン程度は試験研究、実習船などによる漁獲への充当分として取っておく必要があるという状況にあります。
 すなわち、遊漁による漁獲に充当できるのは、これらの差引き20トン程度の数量が限界ということになります。

いまさら20トンと言われても・・・

遅すぎます。


参考人として出席したJGFA代表の森さんの会議での発言の一部
※参考人は意見を言うだけで議決権はない。

特にクロマグロ、今回のクロマグロに関して採捕禁止の意味合い、リリース前提で釣りはしていいのかどうか、そこを明確にしてほしいと思います。
 もしキャッチ・アンド・リリースが認められるんであれば、「採捕禁止」という言葉ではなく、別の言葉を使っていただきたいと思います。

それに対する水産庁の返事

それから、JGFAの森様から幾つか御指摘を頂いていた話のうち、まず最後の方で頂きました採捕禁止の意味合い。キャッチ・アンド・リリースの取扱いというものを明確にする必要があるということなんですけれども、キャッチ・アンド・リリース、放流との関係につきましては、この委員会指示の39号、今回の40号もそうなんですけれども、明確にしてはおります。資料の1-2を御覧いただければと思うんですが、今回の大型魚の採捕の制限につきましても、資料1-2の2の(2)の後段、まず「採捕してはならない」とありますけれども、「意図せず採捕した場合には、直ちに放流しなければならない」という書き方にしております。これは39号の小型魚についても同じです。これ「意図せず」というところが若干引っかかるかもしれませんけれども、仮に釣り人がキャッチ・アンド・リリースをしたという場合には、これは採捕禁止の違反になるのかというと、これはならないですし、報告義務というのも発生しないということで、お問合せ、照会があれば、そのようにお答えしておりますし、規制の意図としては、キャッチ・アンド・リリースは対象としないということになります。これはここにこうはっきり書いてあるからなんですけれども。


8月20日水産庁から俺へのメール

 キャッチ&リリースについては、先日行われた広域漁業調整委員会でも、当室の松尾室長から、確かJGFAの立場として出席されていた森さんと、何度も議論したと記憶していますが、採捕禁止の措置を出している以上、狙って良いかと聞かれれば、公式見解として「良い」とは言えませんが、他方で、速やかに海中に放流すれば違反とはならないことも何度も説明させていただきましたので、その文脈で当方の意図を汲んでいただければと思います。

公式的にC&Rを認めるには、リリース手法の確立、リリース後の生残についての科学的知見の積み上げにより、欧米のようにC&Rが一般化する必要が有りますが、現状では、確か、太平洋の広域漁業調整委員会だったと思いますが、どこかの大学の先生から、茂木さんたちが行っているリリース方式について、疑問が投げかけられていたと記憶しています。



ところが

そして8月21日に突然採捕禁止となった。


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さらに8月23日の午後5時ころにキャッチアンドリリースも認めないと発表があった。

ここには公開できないが(電話をしたのは別人なので)、23日の昼ころまで「キャッチアンドリリースをすれば違反ではない」という回答だった。


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なぜ突然キャッチアンドリリースも認めないとなったのか?

数日後、自民党関係者から「自民党の某代議士が動いた」という話を聞いた。派閥の領袖クラスの代議士である。

パブリックコメントも取らず、民主的な方法を一切無視して釣り人の「釣り禁止」は決定されたのである。

※パブリックコメントの定義
行政機関が規制の設定や改廃をするとき,原案を公表し,国民の意見を求め,それを考慮して決定する制度。1999年(平成11)から全省庁に適用された。


水産庁のFacebookページには反論、不満のコメントが圧倒的に多かった。

俺も全く納得がいかないのでコメントした。



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水産庁の二転三転する返事にも振り回されたが、肝心なところは電話で話すやり方は姑息としか言いようがない。iPhonには通話を録音する機能がない。

8月24日 委員会で参考人として発言した森君のFacebookコメント

初日(太平洋側)の会議が終わり、2日目(日本海側)の会議が始まる前に、水産庁から直接お電話を頂き、キャッチ&リリースは認めるから、会議に於いてあまり採捕禁止の意味合い等について追及しないで欲しいと言われました。
そして2日目の会議に於いて、採捕禁止の意味合いについて水産庁から説明があり、意図的に狙う事を良いとは言えない、そして採捕禁止とは、準備行為も含めて違反となると言われましたが、先の電話の件もあったので、ぐっと堪えて追及しませんでした。
結果的には議事録として残るのは水産庁の意図的に狙う事は良いとは言えないと言った発言。電話は議事録に残りません。
キャッチ&リリースは認めるから、あまり深く公の場では話し難い事を追及しないで欲しいと電話で言われ事は、議事録にもメールにも残らず、結果的に私は会議で黙らされ、騙されたと言う感想を抱いています。証拠は残ってませんが、私の記憶は消せませんし、水産庁に対する不信感も、きちんと納得がいく説明が無い限りは消えません。


水産庁にたいする不信感。これは修復不可能なレベルである。


そして、多くの釣り人が自粛した。


ところが、釣り人が自粛しても資源回復の効果がゼロになるような出来事が日本のあちこちで起きた。



五島沖でクロマグロを100トン以上捨てたまき網


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青森のスーパーには1匹100円、重さ300グラム未満のメジ(クロマグロの子供)が大量に並んだ。

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対馬沖でまき網が6キロ前後のメジ(クロマグロの子供)を合計200トン以上も水揚げ。匹数に換算するとなんと3万匹以上である。

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大間漁協のクロマグロ無報告事件。国と県は1000本以上の無報告があったと指摘している。漁獲報告をしないで仲買に渡していたのである。これは脱税でもある。

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愚かすぎる我が国のクロマグロ漁業。

資源管理を無視した漁業。

我々釣り人はなんのために自粛したのか?

釣り人は釣りをするために一生懸命働き納税の義務を果たしている。そして地方経済に大きく貢献している。そんな釣り人の楽しみを勝手に奪っていいのだろうか?


それは現在も続いている。


来年は水産庁に従わない釣り人と漁業者がさらに増えるだろう。


その原因は水産庁にある。