2022/02/14

連載5 今年のクロマグロはどうなる?そして我々にできることとは。

昨年12月16日に農水省に行き中村農水副大臣にお会いした(水産庁から3人が来て隣席に座って傍聴した)。

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副大臣は釣りが好きらしく、バッグリミットなどレギュレーションの専門用語もすぐに理解しました。俺が渡した要望書にも、すぐに大切な部分は赤ペンを入れてました。釣りの経済効果、キャッチアンドリリース、そしてレギュレーションにもとても関心を持ってました。海外のお話を真剣に聞いてました。俺がプレゼントした写真集もとっても喜んで、大きな魚に驚いてました。アメリカを例に出し、釣り人口は年々増えて5,000万人、そして経済効果は20兆円というとビックリしてました。無規制の日本より、ちゃんと規制をしているアメリカは釣り人口がどんどん増えて、野放しの日本はどんどん減り続けていると話すと悲しそうな顔をしてました。副大臣もキープすることより、魚とやりとりすることが好きだと言ってました。
お話が終わると副大臣は出口まで送ってくれて、最後に「茂木さんがまっすぐな人だとわかりました。今日お話したことは前向きに検討させていただきます」と。

そして副大臣に渡した要望書です。原文です。
※ただし200トンはあくまでも要望です。水産庁が管理している限り、それが実現することは100パーセントありません。


遊漁に関しては、バッグリミットを設けること。そしてキャッチアンドリリースを認めること。枠は最低でも200トン。海域別もしくは都道府県別、もしくは月単位で枠を設けるべき。30キロ未満は採捕不可。
バッグリミット(案):年間1人3匹。サイズリミット(現状):30キロ未満はリリース。
海域別(案):北海道40トン、東北60トン、関東10トン、中部20トン、北陸20トン、九州30トン、沖縄10トン、他10トン、合計200トン、など。
月単位(案):6月20トン、7月40トン、8月40トン、9月20トン、10月10トン、11月10トン、12月10トン、1~5月は各10トン、合計200トン、など。

200トンでも全漁獲のたったの2パーセントにすぎない。地方経済への貢献などを考えて枠を設けるべき。
地方経済への貢献:宿代、船代、飲食、買い物、給油、交通費などなど。

今年のやり方はいわゆるオリンピック方式でした。資源管理先進国ではもう20年以上前から否定されている方式です。現在ほとんどの国がIQ(個別割り当て)、ITQ(譲渡性個別割り当て)です。
オリンピック方式とは「よーいドン」で一斉に始めるので早い者勝ちです。今年は6月1日からよーいどんで開始。九州、富山、石川、新潟のシーズンインが早い地方で枠の半分以上を2週間で達成してしまいました。


世界基準(先進国)
アメリカの大西洋側はスポーツの枠が500トン以上もある。バッグリミットは船中1匹でサイズリミットは叉長27~72インチ以内。キープしたら24時間以内に報告の義務がある。キャッチアンドリリースはOK。
Atlantic Bluefin Tuna Recreational Bag Limits | NOAA Fisheries


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カナダにはキャッチアンドリリースプログラムがあり、国や州が推奨している。

公平に管理すれば、違反に対して厳しい罰則を設けても納得する。現時点ではとてもじゃないが納得できない。広域漁業調整委員会に釣り人、釣り団体が1人もいない。そこで決めることは極めて非民主的。
水産庁は発令する前にパブリックコメントは必ずとること。

さらにその枠を有料にすると良いのではないでしょうか?
遊漁船もプレジャーもライセンス料を払いキャッチ可能とするなど。
その収益で、漁港、マリーナ監視と生態調査に使ってはいかがでしょうか?


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要望書の他に、国民共有の財産提言、世界のスポーツフィッシング、日本と海外の遊漁の現状、日本とアメリカの釣り人口の推移などたくさんお渡しした。

要望書には書いてないが、キャッチアンドリリースに関しては死亡率もお話した。

公的に採用されているリリース後の死亡率
アメリカの太平洋側 6パーセント
カナダの大西洋側 5.6パーセント
アイルランド 5パーセント
日本 データ無し

日本はデータがないことを理由にリリースを認めないという決定だった。
これは今まで調査してこなかった行政の怠慢なのですが。



アメリカの太平洋側は1日1人2匹のバッグリミットが設けられている。期間中に釣りが禁止になったことはない。
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海外のリリース後の死亡率が低い理由は使っているフックがほとんどシングルフックということが大きい。カナダはさらに厳しくてサークルフック(眠り針)のバーブレスが義務付けられている。ファイティングタイムも60分に制限されている。短時間で釣るために使用するライン強度も180ポンド以上となっている。アメリカの大西洋側はルアーキャスティングが盛んでトレブルフックの使用を認めている。死亡率はICCAT(大西洋まぐろ類国際保存委員会)やNOAA(アメリカ海洋大気庁)の資料を調べたが見つからなかった。ただし、スポーツの枠がとんでもなく大きいのでリリースしたマグロの10パーセント以上が漁獲として報告されているのかもしれない。




海外の漁獲データなどを調べて驚いたことはいくつもあった。
ISC(北太平洋まぐろ類国際科学委員会)のデータを見ると2018年のアメリカの遊漁の漁獲は809トンもあった。日本はISCのメンバーである。水産庁は知らないはずはないのだが。対して2018年のアメリカ太平洋側のまき網の漁獲はわずか12トンだった。同じ太平洋クロマグロを獲っている日本のまき網は約5,000トンの枠が配分されている。
青の部分:漁業(コマーシャル)、赤の部分:遊漁(レクリエーショナル)

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対して日本はわずか20トンで遊漁は釣り禁止となった。キャッチアンドリリースも認めないという厳しい指示だった。禁止の理由は「資源管理の枠組みに支障をきたす」だった。わずか0.2パーセントの漁獲だったが・・・

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昨年の主な漁場(6月~8月)
赤丸:遊漁
緑の線:旋網
黄色の線:延縄
※遊漁は新潟と山形沖は6月に報告が多く、青森と北海道は7月と8月に報告が多かった。

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そして現状で我々釣り人ができることは、キャッチ&リリース後の死亡率を下げる努力である。多くの釣り人は1にマグロとのファイトをやりたいのだ。キープももちろんしたいが、聞き取り調査をして声が多かったのはマグロとのファイトである。青森の小泊の旅館の経営者もリリースも否定した8月23日以降にキャンセルが殺到したと言っていた。それまではキャンセルは1件もなかったと。

日本中のクロマグロアングラーにお願いします。

「シングルフックバーブレスでクロマグロに挑んでください」

「できる限りキャッチアンドリリースをお願いします」

※2021年度はリリースしたクロマグロは報告をしなくてOKでした。2022年はリリースも報告することになるかもしれません。そのとき水産庁は採捕と放流を分けて報告書を作成すべきです。



アイルランドでは長さを計ってからリリースします。

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アメリカ大西洋側も船べりリリースが基本です。

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昨年の北海道・松前沖はあちこちにクロマグロのナブラが沸いた。

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返しのないギャフを使う。

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シングルフックのバーブレスなら安全に簡単に外せます。

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ギャフでしばらく引っ張り、回復させてからリリースする。

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大型はシングルフックバーブレスをカンヌキか下顎に刺してロープで引っ張ってからリリースする。ロープは引っ張り用と外し用の2本を使う。

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SFPC(スポーツフィッシング推進委員会)は毎年電子タグによる生態調査にも協力してます。

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お腹を切って電子タグを埋め込む。

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再捕率は約27パーセント。アメリカ側はさらに再捕率は高いそうです。

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日本側がリリースしたクロマグロの回遊経路。1歳から2歳の間に太平洋を横断してアメリカまで行く。

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20歳以上の大型は南太平洋まで泳いで行く。ただし日本に戻ってきたクロマグロは現在1匹も確認されてない。

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アメリカ側がリリースしたクロマグロの回遊経路。
4歳から6歳くらいで日本に戻ってくる。そのあとは2度とアメリカに行かない。最近は100キロを超すクロマグロがカリフォルニア沖でかなり釣られている。7歳になっても戻らないクロマグロが増えているらしい。

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皆さん、優しく素早くリリースすればクロマグロはほとんど生きているのです。


そして

海は国民共有の財産です!


データは水産庁とISCの資料を主に使わせていただきました。

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