2015/05/27

科学的根拠とはなんぞや?

今日から南米に旅立つので、急いで書き上げた。まだまだ言いたいことは山ほどあるけど、帰国後に第2弾を書く。

25日の参議院農林水産委員会

やたらと科学的根拠を連発していた舞立議員と本川水産庁長官だった。

舞立議員<日刊水産経済新聞より抜粋>
「太平洋クロマグロの資源回復には産卵親魚の規制を強化すべきだという科学的根拠に基づかない議論が展開されている。一部のマスメディアやインターネットを利用し、感覚論や感情論に訴える動きがあり、遺憾に思う。」
※舞立昇治:鳥取県(境港のある県)選出の参議院議員

では、その科学的根拠とは?

水産庁が科学的根拠のある資源管理をやった結果、太平洋クロマグロは絶滅危惧種になり、ピーク時1300万トンあった我が国の水揚げは480万トンまで落ち込み、かつては世界一位の水産大国だったが8位まで後退、ピーク時100万人いた漁業者は17万人まで激減、しかも漁業者の平均年齢は60歳を超え、毎年約1万人ずつ減少、漁業者の年収はどんどん減って200万円を切る直前、サバもニシンもホッケもスーパーに並んでいる魚は外国産だらけになった。
これが水産庁の言う科学的根拠に基づいた資源管理なのです。素晴らしいではありませんか、世界広しと言えどもこんな頓珍漢な話は聞いたことがありません。

長々とした茶番だったが、主なところを拾って、俺なりに答えます。
※ほとんどが俺の知り合いの学者作成ですけど。

舞立議員様
その前に感覚論、感情論、そんな風に言われて心外です。俺は真剣に日本の未来を考えてます。そして現状の資源管理では未来が心配です。俺は現場を見てすべて話してます。無学なので見たことしか言えません。現場論とか現実論とかに言いかえてください。そしてあなたのは机上の空論と言わせていただきます。事実、委員会では机の上ばかり見てました。誰かに作っていただいた作文を読んでいたのですか?
東大卒なら記憶力は優れていると思います。自分の書いた質問書は、いちいち見なくても話せるはずです。


机の上ばかり見てる舞立議員。
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今回はWedge5月号の勝川先生の記事がやり玉に挙げられてました。俺が尊敬する先生です。日本の水産業にはなくてはならない存在です。日本全国の零細漁業者が一番頼りにしている学者です。

本川水産庁長官の答弁

(勝川先生のWedgeの記事に対して)

①本川長官:ISCは日本海での産卵場での漁獲が親魚資源の減少に繋がったとは指摘していない。
→ISCは日本海の産卵群の巻き網が資源に悪影響を与えていないとは全く言っていない。


科学的根拠とは関係ないグラフ?
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②本川長官:加入量は、親魚資源量とは無関係に変動している。
→ISCは、親魚資源量と加入量に関係はないとの見解を採択していない。
 最近の低加入は、環境条件か親魚資源量の低下(加入量を維持できない水準に)から起きうるに留意したのみ。
http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/ISC14pdf/Annex%2016-%20PBFWG%20Report%2010Sep14.pdf (16頁)
→「散布図」1つで因果関係は否定し得ない。
 資源状態がよいときは、密度効果が働かないので、資源状態が低位の時の親魚資源量の増減と加入量の増減の関係を解析する必要がある。


加入量の減少は親魚とは関係ないって・・・

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加入量と比例して成熟マグロ(親魚)は減少してます。
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③本川長官:加入量は、海洋環境により決まる。
→水研の研究者が作成したISCの報告書にて、最も重要な水温がクロマグロの生存にとって良好な状態が続いていると報告している。

④本川長官:日本海の大中巻き網は、2000トンの自主規制措置を導入。
→2000トンもとれたのは2008年に遡る。
 北委員会で親魚は2002-04年平均を越えてはならないと決定した。
 日本海の巻き網も同期間平均の943トンに自主的に規制しないの?


確かに2002年から2004年の平均は943トン。しかも自主規制2000トンはなんの意味も無し。獲れないのだから。
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未成魚は今年から4007トン(2002年から2004年の漁獲の平均)に規制されたが、ここ3年間の漁獲はそれを下回っている。これで効果はあるの?科学的根拠?
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⑤本川長官:ISCでは、近年0-1歳魚の漁獲が増大したことと、未成魚の発生が少ない年が頻発した結果、親魚まで生き残る魚が少なかったことが主な原因と分析している。
→ISCは、近年の資源量の減少の原因について言及していない。
 同じ重量を漁獲する場合、成魚よりも幼魚の方が資源への悪影響が
 大きいことを確認したのみ。
→ISCは、3-5歳の成魚の漁獲死亡率の激増を確認(平均で50%アップ)
http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/ISC14pdf/Annex%2016-%20PBFWG%20Report%2010Sep14.pdf(29頁)


舞立議員と水産庁長官の質疑応答

・確実に資源が回復するという科学的根拠に基づいて冷静に議論する必要がある
→北委員会がISCに分析を依頼した各シナリオについて、歴史的最低水準を超えて資源が減少する可能性を検討しようとしたが、北委員会から委託を受けていないとしてISCのクロマグロ作業部会では検討を加えなかった。
たぶん水産庁傘下の日本の研究者が反対したのでしょう。

・ISCのシミュレーションに基づく科学的根拠により規制を北委員会で決定。
→シミュレーションをしたのはISCではなく、水研の研究者たち。

・苦渋の決断として、2000トンから1800トンにさらに削減。
→2000トンや1800トンとれたのは2008年より前のこと。どこが苦渋?

・獲れるのに我慢している状態
→いないから我慢しなくても1800トンは獲りえない。自主規制2000トンの2012年に583トンしか水揚げしなかった理由を聞きたい。

・定置など末端まで把握できるのか疑問に思っている。沿岸も正確な把握管理体制を整備すること。
→同じ大中巻き網が長崎に大量に水揚げする幼魚について、長年漁獲ゼロとデータ報告をしているが、ちゃんと大中巻き網の漁獲を把握できているのか不安です。

・日本海側のクロマグロは2004年から減ったわけではない。
→厳密にいうと2004年から減り始め、2010年ころから急激に減少しています。

・クロマグロはほんとに減少しているのか?
→七里が曽根、八里が曽根、五島沖、現場へ行くことをお勧めします。減少してないなら絶滅危惧種にはなりません!


2004年からまき網船団は日本海の産卵期を狙うようになった。それまでは北海道東方沖がまき網の主たる漁場で、生クロマグロの水揚げ日本一は宮城県の塩釜港だった。さらに昔にさかのぼると日本国内で大中まき網船がクロマグロを巻くようになったのは1980年ころからである。それまでは大中まき網船はクロマグロを獲る認可が降りなかった。EEZ(排他的経済水域)が世界中で採用され始め、日本の遠洋漁業は世界中の沿岸200海里から締め出された。経営が苦しくなったまき網会社を救うために(たぶん)、大中まき網船が漁獲してよい魚種に「その他」を加えた。これが1980年前後である(正確な年月は時間がなくて調べてません)。
それから日本のあちこちでクロマグロを巻くようになった。その一部は五島沖でも巻いていた。五島沖なんて、今ではほとんどクロマグロは獲れてない。ところが1980年代初めのころは100キロ級1800本、200キロ級400本、100~300キロ級を700本、こんな大漁が1回の網で獲れたのである(ソースは朝日GLOBE5月3日号)。しかも産卵期の6月、7月である。1800本巻いたときは産卵中だったと当時の漁労長は話している。
その後、まき網船の漁場は北海道東方沖を中心に巻いていた。そして獲れなくなると再び日本海の産卵期を狙うようになった。2004年からである。その年から境港の漁獲が一気に増えているのが何よりの証拠である。
やがて産卵場だった萩沖の八里が瀬はクロマグロがほぼ消えた。すでに5年以上前から産卵行動は確認されてない。そして次に壱岐と対馬の間にある七里が曽根。ここも3年前から産卵が見られなくなった。俺は18年前から日本海のクロマグロを見ているが、資源量は2007年ころから減っていったと実感している。七里が曽根の風物詩だった「巻き落とし漁」は毎年5月から6月の間、七里が曽根に100隻以上の漁船が集結してやっていた漁である。これが2012年からパッタリと見られなくなった。原因はマグロがいないからである。


2004年からまき網は日本海を狙い始めた。
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俺はいま無性に日本海のまき網船に乗りたい。どこで、どのようにマグロを探して巻いているのか、この目で見たい。そしてVMS装置(船舶位置管理システム)がちゃんと常時作動しているかも確認したい。そして境港での水揚げ現場も見たい。カナダでは釣り船にさえオブザーバー(監視員)が乗り込んでくる。ちゃんとレギュレーションを守って釣りをしているかチェックするのだ。


ちなみに大西洋クロマグロは実漁獲量を8割も削減したことにより、資源は急激に回復している。
産卵場の規制は以下の通り

1982 産卵場であるメキシコ湾でのクロマグロ漁を禁止(現在も継続)
2006 地中海:産卵期における巻き網漁業の禁止(7月1日~ 12月31日)
2008 地中海:産卵期における巻き網漁業の禁止(6月15日~翌年5月17日)
2009 地中海:産卵期における巻き網漁業の禁止(6月15日~翌年5月17日)
2012 地中海:産卵期における巻き網漁業の禁止(6月15日~翌年5月25日)


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大西洋クロマグロは厳しく規制した結果、資源は急激に回復。
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言うまでもなく、アメリカ東海岸、カナダ東海岸は大型のマグロがたくさん釣れます。カナダ・プリンスエドワード州のクロマグロはアベレージが350キロ以上。こんなモンスターが毎日釣れます。


カナダはこんなのが毎日釣れますよ。
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なんで大西洋はできて、太平洋はできないんだろ。その科学的根拠を知りたい。


まき網漁は兵器で言うと「大量殺人兵器」です。使い方を間違えると滅びます。他の漁法以上に厳しい規制が必要です。


ここで

インドネシアのお話を。これは水産庁とよく似ている科学的根拠です。

インドネシアのジャワ島東部にシドアルジョという埋もれた村がある。


この泥の下に8つの村が埋まっている。
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なぜ埋もれたかと言うと

2006年5月に天然ガスを試掘中に泥とガスが大量に吹き出し、2008年6月までに8つの村が埋まってしまった。

この天然ガスを試掘していた会社のオーナーは有力な次期大統領候補である。

8つの村の住民3000人は家も土地も失った。

そして次期大統領候補の会社を告訴した。

告訴された次期大統領候補はこう言い放った。

「これは人災ではなく、天災である」

水産庁のいう科学的根拠とまったくよく似た話である。

「マグロが減ったのは親魚の獲り過ぎではなく環境要因です」



ではペルーに旅立ちます!


2015/05/22

シンポジウム「水産資源管理に地方創生あり」

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photo by nobuyuki aoki


5月16日に開催されたシンポジウム「水産資源管理に地方創生あり」に釣り人代表として出席した。

主催 : 早稲田大学環境総合研究センター W-BRIDGE
共催 : 早稲田大学持続型バイオ研究所、一般社団法人「海の幸を未来に残す会」他

一般社団法人「海の幸を未来に残す会」の顧問を依頼されたのは昨年11月だった。それまでの資源管理に関しての活動が評価されたのだと思った。いままでもやってきたけど、これからはもっと頑張らなくては。
写真集も単に大きな魚を並べるだけでなく、資源管理に結び付く写真集に作りあげた。釣り人の写真集では今までなかった試みである。

一般社団法人「海の幸を未来に残す会」
http://www.uminomirai.or.jp/


早稲田大学大隈講堂に到着。無学の俺は「オオスミコウドウ」と言ってた(-_-;)
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控室で生田さん(左)、平副大臣(左から二人目)、勝川先生(右)と未来に向けてのミーティング
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松尾典子さん(NHK)の司会で始まった。


早稲田大学上級研究員でW-BRIDGE副代表、岡田久典氏の開会の挨拶。
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続いて特別招待基調講演は「シーフードサミット国際会議優秀賞」受賞の片野歩さん。
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日本の水産業を復活させるための4つのポイント。
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次は富士通総研・上席主任研究員の生田孝史さん。
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太平洋クロマグロ漁獲制限と漁業の持続可能性
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そして東京海洋大学准教授で水産資源学の第一人者、勝川俊雄先生。
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太平洋クロマグロの現状とその対策
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そして壱岐の一本釣り漁師、尾形一成さん
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漁師からの手紙
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そして15分の休憩をはさんで総合討論会


トップバッターは俺。
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データなど何も持ってないので、持参した俺の写真集を見せながら話した。声が大きすぎて、すぐに音量を下げたそうだ(-_-;)。簡単に言うと、「日本のクロマグロはどんどん釣れなくなっている」「この10年間で七里は50分の1、竜飛は10分の1まで釣れなくなった」「ところが資源管理をしっかりやっているカナダやニュージーランド、アメリカは今でも昔のように釣れる」「カナダのアベレージは350キロ。しかもアマチュアの釣人でも毎日釣れる。こんなの日本では漁師が一生かけても釣れない」「アメリカのマイアミでは毎日200キロクラスのハタが釣れる。日本では30センチ以下ばかり」「離島の経済は漁師が支えている。魚が獲れなくなって島はどんどん活気がなくなっている」

すべて現場に行って見てきたことを言った。


続いてLOHASビジネス専門家・認定NPO法人「女性の活力を社会の活力に」理事長・他肩書きいっぱいの大和田順子さん
大和田順子さんのプロフィール
http://www.owadajunko.com/archives/2015/04/post.html


続いて大和総研・主席研究員の河口真理子さん

水産資源管理・消費者への意識づけ&企業への働きかけ
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続いて一般社団法人「シーフードスマート協会」代表・築地仲卸3代目の生田よしかつさん。一気に笑いが増えた(^O^)


そして一般社団法人「海の幸を未来に残す会」代表理事・加寿翁コーポレーション社長の竹内太一さん。海の幸を未来に残す会を立ち上げるきっかけから活動などをお話した。


そして傍聴席最前席に座っていた早稲田大学元総長の堀口賢治さん。多種多様の方々が集まってとても有意義なシンポジウムとお褒めをいただいた。「産卵期に待ち伏せて一網打尽」ということは初めて知ったそうです。


そして総括コメントは内閣府の平将明副大臣。切れのある話はとても力強く聞こえた。地方創生に必要なのは持続可能。資源管理、付加価値、一次産業、そして日本はやり方次第でまだまだ伸びると。


皆さんの未来を考えた貴重なお話はYouTubeで聞くことができます。



そして副大臣が総括を話しているときに、俺の目の前に1枚の紙が舞い込んだ。

「パネラーを代表して最後のシメを」

これ、他の人に渡すはずが、風がいたずらして迷い込んだのでは???

最後の締めは血圧300くらいまで上がって何を話したか覚えてません(-_-;)



閉会後、竹内さんと。
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勝川先生と坂口先生。写真集の中で対談した二人です。俺のスーツ姿にビックリ。
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阪口先生は国際学の専門家だけど、最近は水産学に没頭してます(笑)


宮崎からは20年来の俺の釣り仲間、古賀先生(古賀総合病院理事長)が日帰りで傍聴に来てくれた。
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来場は250名くらいでした。その中に10名くらいの釣り仲間がいました。来てくれてありがとう。


写真集は今回のシンポジウムで大活躍してくれました。第2弾は2016年1月に出します。

購入を希望する方は「茂木陽一 アマゾン」で検索してください。また日本の有名プロショップ(12店舗)でも扱ってます。


懇親会は竹内さんが経営する祢保希(ねぼけ)・新宿店で。
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たくさんの方が参加。俺は名刺20枚しか持参しなかったので、あっというまになくなった。大手メディア、研究者、水産関係者ばかりでした。釣り人は俺と九州から来た織田君の二人だけ。

祢保希(ネボケ)
http://www.kazuoh.com/shop/neboke.html


2次会。いつもの飲み仲間が中心でした。素晴らしく壊れてました(^O^)
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皆さんパワーありありでした。これからさらに大暴れしそうです。
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そして2日後に暴力団関係の作家第一人者の溝口敦さんと都内で対談。俺は堅気なんで話しが合わないだろうと思っていたら、メチャクチャ意気投合して銀座を3軒ハシゴ。暴力団の話はほとんどしないで、水産庁と資源管理で盛りあがった。
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この対談の内容は6月20日発売のWedgeで。東海道新幹線のグリーン車には全席置いてあります。



そしてむかつく新聞記事

ここまで資源を減らした張本人の一人が「強化なら科学的根拠を」とは・・・

日本海を潜って来いと言いたくなった。

なんなら俺が飛行機代も船代も払うからカナダへ行くかあ(怒)

現場を見りゃ一目瞭然だぜ。

先進国でこんなとぼけたことを言ったら笑われるぜ。
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科学的根拠

そんなもんは水産庁が公平に真面目に研究することだろ。

とりあえず、知りあいの学者(担当は水産とは関係なし)がこんなコメント



巻き網ゴールド・続報!「鳥取県知事、水産庁次長に要望」

「(境港の)巻き網は2011年から成魚の漁獲を2000トンに自己規制」
→2008年以降、2000トンを超える漁獲なし。過去3年平均は1160トン

「8月の操業を自粛する予定」
→昔から、8月はほとんど操業していなかった(写真2)

「2000トンの漁獲で失われる産卵量は、03-12年の平均推定産卵量比で6%相当(水産庁資料)」(写真3)
→03年の半分の産卵親魚量の状態で2000トンも取れば6%ではすまない。

「(巻き網)漁業者の納得できるような根拠を」
→水産庁が出したのは円グラフ1つ(写真3)のみ。算出根拠提示なし。
→南西諸島では6歳魚以上、日本海では今は主に3,4歳魚が産卵。
→6歳魚以上を主に漁獲する延縄の漁獲量は2475尾→271尾(03-12年)
→6歳以上の資源量の激減が推定。
→南西諸島での産卵量の割合は過去10年平均より大きく減少。
→3、4歳魚が産卵する日本海の割合は、近年は28%を遙かに超えるはず。
→巻き網が、日本海で3、4歳魚の漁獲を、過去3年平均の1160トンから2000トンに激増(=自主規制?)させれば、全体の産卵量は激減する危険性。
→日本海の産卵魚群の漁獲の激増を認める「自主規制措置」で、資源が悪化しないことを示す資料を出すこと。

なお、4枚目の写真にあるように、昔は5歳魚以上の産卵魚が日本海での漁獲の中心でしたが、今は3,4歳魚が大多数を占めます。

初期資源量の3.6%まで産卵親魚資源量が低下し、絶滅危惧種指定されているのだから、2000トンの「自主規制」で安全とする挙証責任は鳥取県にあるのでは?

水産庁次長「しっかりと受け止めたい」
→ほぼ確実に来年のワシントン条約会議で、付属書Ⅰ提案が出てきます。

国際的な恥の上塗りになりませんように。


写真2
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写真3
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写真4
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さらに学者は語る



法律用語に「挙証責任」という言葉があります。

環境の世界では、昔は規制する側、したい側に挙証責任が求められましたが、予防原則が一般化した現在では、利用したい側、排出したい側に挙証責任が移りつつあります。

漁業の世界でも同じです。

例えば、大西洋のマグロ資源を管理するICCATでは、2011年に「No Data、No Fish Principle」が採択されています。
http://www.atuna.com/NewsArchive/ViewArticle.asp?ID=10350

以前は、ちゃんとしたデータを出さないことで、意図的に科学的な不確実性を高め、規制には科学的根拠がないという議論が、まかり通っていたのですが、今はデータ出さないなら、現在の漁業の持続性は証明され得ないので、漁獲を認めてはならないという風になっています。

サメ漁は、こういったデータ報告の怠慢が甚だしく、それが環境NGOの規制の運動にガソリンを提供しています。

例えば、インド洋を管理するIOTCでは、データ提出状況を極めて詳細にウエブ公開していますが、サメの漁獲(混獲を含む)データ報告の欠落は甚だしいものがあります。

太平洋クロマグロの管理では、水産庁は挙証責任を規制を求める零細漁民に押しつけています。

でも、資源が崩壊の危機に陥っている状況では、もっともクロマグロを漁獲している巻き網業界、あるいは規制に消極的な水産庁が、現行の資源管理の「十分性」を証明する挙証責任を追うべきです。

だいたい、データを保有し、なおかつ非公開にしているのは、水産庁なのだから、挙証責任を零細漁民に求める行為は、ナンセンスです。


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PS.このブログをアップした直後に水産庁が2014年生まれの加入量水準速報を公表した。

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http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/150521.html

3月の予定が2か月も遅れたのは、水産庁はデータの収集に時間がかかったと言ってるが、こんな少ない量で時間がかかるわけがない。資源管理WTが終わるまで、都合が悪いデータは出さなかったということだろう。そして6月に入るとマグロはまき網で一網打尽。
このグラフを見ると絶滅寸前としか思えない。これでも巻くというなら我が国の資源管理は完全に

狂ってる!



2015/05/09

第2弾!産卵期のマグロを守れ!

日本海のクロマグロは滅びる直前である。
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2007年に初めてニュージーランド南島にクロマグロを釣りに行って衝撃を受けた。200キロを超すクロマグロが次々とヒットしたのだ。結果は経験の浅さから完全ノックアウト負け。それから4年連続で行った。結果は28匹のマグロを釣り、そのうち19匹をリリースした。

2007年 2匹キャッチ
2008年 10匹キャッチ(7匹リリース)
2009年 11匹キャッチ(9匹リリース)
2010年 5匹キャッチ(3匹リリース)
合計 28匹キャッチ(19匹リリース)

スタンドアップ 26匹
チェアー 1匹
スピニングでハーネスなし 1匹

200キロオーバー 26匹

最大陸上実測 322キロ
最大推定 400キロオーバー

最長ファイティングタイム 10時間50分

交代 0

4年連続挑んだ巨大クロマグロ総集編3
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-94.html




2011年からはカナダに挑んでいる。

1年目は再び強い衝撃を受けた。なんとアベレージ350キロオーバー。船は巨大マグロに囲まれた。

衝撃のカナダ巨大マグロ
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-162.html

4年間で40本以上をキャッチ。最大は1050ポンド(476キロ)。キープしたのは1年目の1匹だけで、あとはすべて船べりでリリースした。




資源管理のしっかりしている国では今でも巨大魚はいっぱい釣れている。

さて

日本はどうなんだろう?


漁獲が産卵期に集中している。
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離島では水揚げが急降下に減っている。
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子供(0歳魚)の数が激減。
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何の意味もない自主規制(境港は2004年から本格的に産卵期のマグロを獲りはじめた)
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クロマグロだけではない。

日本の水産業は衰退の一途。ところが海外は成長を続けているのだ。
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ニシン・・・

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サバ・・・

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将来予測は日本の1人負け
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平成23年から25年にかけて産卵場を調査した。太平洋クロマグロの産卵はほとんどが我が国のEEZ内。

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近年、産卵は南西諸島が中心らしい。
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日本海側は6月から8月にかけて山陰沖から能登沖が多い。
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玄海灘でアーカイバルタグを打たれて放流された4匹のクロマグロ未成魚の回遊(1995年~1999年)。

日本海を北上して津軽海峡から太平洋に出るマグロと、太平洋を北上するマグロがいる。太平洋を北上したマロは日本海へ入らない。
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1970年代から2000年ごろまでは北海道東方沖がまき網船団の主な漁場で、当時は宮城県の塩釜港が生クロマグロの水揚げ日本一だった。
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ところが北海道東方沖が獲れなくなり、まき網船団は日本海の産卵期を狙うようになる。産卵期はマグロが浅いところに集まるので効率よく巻けるのだ。

そして日本海のクロマグロは急激に減少した。産卵期の規制に関してはほとんど無しに等しい。規制しない理由は「日本海のクロマグロが資源に与える影響はほとんどない」「日本海の漁獲が減少したのは海水温の上昇が原因」と大本営は発表している。※大本営=水産庁(御用学者を含む)

しかし

日本海で産卵するマグロと南西諸島で産卵するマグロは違う遺伝子らしい。ということはこのまま産卵期の漁を続ければ日本海で産卵するクロマグロは絶滅すると考えられる。それはもう目の前である。


朝日GLOBEに衝撃的な記事が載っていた。
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その記事を抜粋

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長崎県小値賀(おぢか)島。五島列島の北部に浮かぶこの島で、小西藤司(76)は猫と暮らしている。良材をふんだんに使った自宅の長押(なげし)には額装の表彰状がずらり。「優秀漁労長第一位」などと記されている。


父親が南方で戦死し、母一人子一人の家庭で育った。小値賀の中学校を出ると、熊本市にあった国立熊本電波高校の専攻科に1年行って通信士の資格を取る。通信士として漁船に乗り、漁労長の仕事を近くで見ながら漁のやり方を覚えた。

漁労長に抜擢されたのは25歳の時。1991年まで、山口県の会社が経営する巻き網船団を率いた。最初は人集めから始め、実績を残すことで求心力をつけていった。


1980年、ある情報を聞いた。巻き網船団の一つが山口沖でクロマグロを獲ったという情報だった。壱岐沖でマグロを巻こうとして網を壊された船団があるとも聞いた。


翌81年。「マグロが泳いどるかもしれんなあ」と注意しながらアジ漁を続けていたとき、船団の運搬船から急報がきた。「マグロがいる!」。


場所は壱岐と対馬の間。その後、壱岐の一本釣り漁師たちがクロマグロを釣るようになった海域だ。群れを巻き、うまく揚げることができた。100キロから300キロのクロマグロが660本。水揚げ1億円。


翌年から6、7月はクロマグロばかりを狙うようになる。


「マグロの群れを見つけるときは、まず鳥を探す。接近すると、ちょこっと分かるですもんね、マグロのひれがね。それを今度はソナー(魚群探知機)で捉えて、群れの動きを見て網を打ち回す。95%は獲れる」


ソナーでマグロの動きを見るが、動かない群れもあった。


「動かないのは産卵。それが一番獲りやすいんですよね。1800本巻いたときは産卵中だったと思う」


その1800本を巻いたのは84年の五島沖。100キロ級のマグロだった。続いて五島沖で200キロ級を400本、対馬海峡で100~300キロを700本獲る。獲りすぎで品質は落ちたが、それでも1キロ1千円になった。合計水揚げ額、実に3億数千万円。


小西の腕には船団70人の生活がかかっていた。当時を思い起こしながら小西が言う。


「1億揚げるとでしょ、経費を引いて6千万円残る。親方(会社)が7割取って3割が船方。3割の1800万円を、たとえば漁労長が3人前、船長が2人前と取る。18万円プラス歩合が1人の給料で、マグロで3億獲ったときは歩合だけでも100何万あったんじゃないかな。一人前で」


船を下りたのは52歳のときだった。体力の衰えを感じ、「こんなことしよったら死ぬばい」と思った。

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この記事でわかったこと。

日本海(主に西側)で産卵をするクロマグロは1980年代まではいっぱいいたのである。大本営が言う「日本海のマグロが資源に与える影響はほとんどない」。これはすでにほとんど獲りつくしたからなのである。

本来ならば、ここまで資源が減れば規制して保護するのが世界の常識である。

大本営はこんなことも言ってるらしい。

「欧米式の資源管理は日本の水産業には合わない」

まったく江戸時代である。

鎖国を続ける我が国水産行政。

一刻も早く目を覚ましていただきたい。

資源はもうすでに崖っぷちです。





「昔は大きな魚が釣れた」「昔は大きな魚がいっぱいいた」

これは日本のあちこちでよく聞く話である。

すべてが過去形。



ところが資源管理をしっかりやっている国は現在も大きな魚がいっぱい釣れるのである。

300キロオーバーを船べりでリリース(カナダ)。
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ファイティングタイム90分以内にリリースすれば生存率は96パーセント。
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ニュージーランドではタグ付きのヒラマサがいっぱい釣れている。
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レギュレーションは叉長75センチ以上1人4匹だが、ほとんどのアングラーが99パーセント以上リリースしている。5人乗ったら10キロのヒラマサを1匹で充分である。
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禁漁区もあちこちに設定されている。これはオーストラリア。
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その詳細。
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南太平洋の小さな島国でも資源管理をしっかりとやっている。赤い線で囲まれてるのは禁漁区。ここで釣りをすると罰金3万ドルのうえにタックルすべて没収となる。
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太平洋の島国で日本の水産業をお手本にしている国はない。多くは欧米の資源管理をお手本にしている。


かつては世界一の水産大国だった日本。


すでにその面影はなく


世界の笑われ者になりつつあります。