巨大マグロに挑んだ男たち
3年連続となったニュージーランド南島のアベレージ250キロの巨大クロマグロ。
今年も8人の男が挑んだ。
この海域には200キロ未満のクロマグロはほとんどいない。たまに180キロくらいのが釣れるが現地では「ベイビー」と言われてしまう。10匹に1匹くらいミナミマグロが混ざるが、これも150キロ前後という大型である。最大は358キロが上がっている。ファイティングタイムは10時間を超すこともある。エンチャンターのランス船長の話では18時間もかかったことがあるそうだ。ただし3人で交代だったらしい。
ほとんどの船はファイティングチェアーを装備している。そしてほとんどの人が座ってファイトしている。そこに一回り小さい日本人がスタンドアップで毎年挑んでいる。しかも確実に結果を出しているのだ。昨年合計10匹釣ったときは他の船に仕掛けを売ってくれと言われたし、俺が250キロを18分で釣ったときは奇跡だと言われた。確かに奇跡かもしれない。もう一度やれと言われてもやれる自信は全然ない。今思えば「マグロが油断していた」としか考えられない。とにかく200キロを超すマグロはタフで化け物である。しかも南島沖は水深が700~900メートルある。七里や竜飛より難易度は高いと思う。深く潜られると数倍キャッチは難しくなる。壱岐の漁師はドラグ22~23キロで200キロくらいのマグロを40分から1時間で上げているそうだが、ここ南島のマグロは25キロのドラグで1時間以上かかるのが普通である。今回も26キロのドラグで8時間50分ファイトして上がらないマグロがいた。
日本式巨大マグロ釣りスタイルといえば電動リールにウインチ(船べり固定)だが、釣りをスポーツと考える白人圏では電動リールは絶対に使わない。そしてライン強度、リーダー、ギャフの長さなどIGFAルールを遵守している国が多い。日本では松方弘樹さんが電動リールのウインチファイトで300キロのマグロを釣ってビッグニュースになった。そんな釣り方で何が凄いのか?本人はスイッチを押しただけでは?俺はそんな釣りは漁と断言する。
俺はそんな釣りは死んでもやりたくない。仲間にもやってもらいたくない。
最強の魚に礼をつくして挑む。交代は絶対にしない。最後まで立って戦うのだ。
前半組のトップバッターは昨年から引き続いて参加のKさんだ。大物釣りのキャリアが少ないので1回目はファイティングチェアーを使った。1匹釣ったら次回はスタンドアップで挑む。
1匹目は2時間10分で250キロをキャッチしたものの、2回目のスタンドアップは気迫のあるファイトをしたもののラインブレイク。スタンドアップでの挑戦は来年に持ち越した。
2番手はイリュージョン。スピニングマーリンなら3匹釣ったベテランである。研究熱心で努力家。船が出ないときは連日公園でプラクティスをやった。結果1時間15分で281キロと35分で230キロを危なげなくキャッチ!
3番手はニュージーランド在住のあっちゃん。ジギングでは大型ヒラマサを数多くキャッチしている。スタンドアップで1匹目は240キロを1時間25分。2回目は6時間10分一度も座らず終始スタンドアップで310キロをキャッチ!勝負が終わったあとはしばらく体が動かなかった。
後半組一番手は昨年に引き続き挑戦のイソギン。1匹目は55分でラインブレイク。2回目に速効25分で260キロをキャッチ!3回目は47分でリーダーブレイクだった。
2番手はY君。釣り具メーカー勤務。1回目は35分でフックアウト。2回目は4時間45分で265キロをキャッチ!3回目は25分でラインブレイク。
3番手はビルダーK。数多くの大型GTとキャスティングで大型マグロをキャッチしているベテラン。日本のソルトルアー界の先頭に立つメーカーの経営者。1回目から落ち着いたファイトで1時間25分で240キロをキャッチ!2回目は33分で250キロをキャッチしてパーフェクトだった。
4番手はH船長。数年前に大間でスピニングで3時間30分ファイトして船長推定200キロを船べりまで浮かした男。IGFAルールにこだわり、船長にモリではなくてギャフで取り込みを依頼してバラシた惜しい過去を持つ。カジキはルアーキャスティングで2匹。トローリングでは数え切れないほどキャッチしているベテラン。1匹目は1時間10分で250キロ。2回目は何と10時間50分のファイトを最後まで立ったままで続けた。最後は残り10メートルで惜しくもリーダーブレイク。元自衛隊の空挺団。腕の力は凄く、途中からほとんど左腕でポンピングしていた。今回一番の感動ファイトだった。
結果、一人も交代者はいなかった。3年連続全員単独キャッチである。ハーネスを使ったスタンドアップはほぼ完成されたと言っていいだろう。
来年も挑戦します。チャレンジャー募集!