2009/08/23

巨大マグロに挑んだ男たち

マグロ2

3年連続となったニュージーランド南島のアベレージ250キロの巨大クロマグロ。
今年も8人の男が挑んだ。

この海域には200キロ未満のクロマグロはほとんどいない。たまに180キロくらいのが釣れるが現地では「ベイビー」と言われてしまう。10匹に1匹くらいミナミマグロが混ざるが、これも150キロ前後という大型である。最大は358キロが上がっている。ファイティングタイムは10時間を超すこともある。エンチャンターのランス船長の話では18時間もかかったことがあるそうだ。ただし3人で交代だったらしい。

ほとんどの船はファイティングチェアーを装備している。そしてほとんどの人が座ってファイトしている。そこに一回り小さい日本人がスタンドアップで毎年挑んでいる。しかも確実に結果を出しているのだ。昨年合計10匹釣ったときは他の船に仕掛けを売ってくれと言われたし、俺が250キロを18分で釣ったときは奇跡だと言われた。確かに奇跡かもしれない。もう一度やれと言われてもやれる自信は全然ない。今思えば「マグロが油断していた」としか考えられない。とにかく200キロを超すマグロはタフで化け物である。しかも南島沖は水深が700~900メートルある。七里や竜飛より難易度は高いと思う。深く潜られると数倍キャッチは難しくなる。壱岐の漁師はドラグ22~23キロで200キロくらいのマグロを40分から1時間で上げているそうだが、ここ南島のマグロは25キロのドラグで1時間以上かかるのが普通である。今回も26キロのドラグで8時間50分ファイトして上がらないマグロがいた。

日本式巨大マグロ釣りスタイルといえば電動リールにウインチ(船べり固定)だが、釣りをスポーツと考える白人圏では電動リールは絶対に使わない。そしてライン強度、リーダー、ギャフの長さなどIGFAルールを遵守している国が多い。日本では松方弘樹さんが電動リールのウインチファイトで300キロのマグロを釣ってビッグニュースになった。そんな釣り方で何が凄いのか?本人はスイッチを押しただけでは?俺はそんな釣りは漁と断言する。
俺はそんな釣りは死んでもやりたくない。仲間にもやってもらいたくない。

最強の魚に礼をつくして挑む。交代は絶対にしない。最後まで立って戦うのだ。

前半組のトップバッターは昨年から引き続いて参加のKさんだ。大物釣りのキャリアが少ないので1回目はファイティングチェアーを使った。1匹釣ったら次回はスタンドアップで挑む。
1匹目は2時間10分で250キロをキャッチしたものの、2回目のスタンドアップは気迫のあるファイトをしたもののラインブレイク。スタンドアップでの挑戦は来年に持ち越した。
神田


2番手はイリュージョン。スピニングマーリンなら3匹釣ったベテランである。研究熱心で努力家。船が出ないときは連日公園でプラクティスをやった。結果1時間15分で281キロと35分で230キロを危なげなくキャッチ!
田中2

田中


3番手はニュージーランド在住のあっちゃん。ジギングでは大型ヒラマサを数多くキャッチしている。スタンドアップで1匹目は240キロを1時間25分。2回目は6時間10分一度も座らず終始スタンドアップで310キロをキャッチ!勝負が終わったあとはしばらく体が動かなかった。
佐藤1

佐藤2


後半組一番手は昨年に引き続き挑戦のイソギン。1匹目は55分でラインブレイク。2回目に速効25分で260キロをキャッチ!3回目は47分でリーダーブレイクだった。
前田1

前田2


2番手はY君。釣り具メーカー勤務。1回目は35分でフックアウト。2回目は4時間45分で265キロをキャッチ!3回目は25分でラインブレイク。
八柄1

マグロ3

八柄2


3番手はビルダーK。数多くの大型GTとキャスティングで大型マグロをキャッチしているベテラン。日本のソルトルアー界の先頭に立つメーカーの経営者。1回目から落ち着いたファイトで1時間25分で240キロをキャッチ!2回目は33分で250キロをキャッチしてパーフェクトだった。
小西

マグロ1


4番手はH船長。数年前に大間でスピニングで3時間30分ファイトして船長推定200キロを船べりまで浮かした男。IGFAルールにこだわり、船長にモリではなくてギャフで取り込みを依頼してバラシた惜しい過去を持つ。カジキはルアーキャスティングで2匹。トローリングでは数え切れないほどキャッチしているベテラン。1匹目は1時間10分で250キロ。2回目は何と10時間50分のファイトを最後まで立ったままで続けた。最後は残り10メートルで惜しくもリーダーブレイク。元自衛隊の空挺団。腕の力は凄く、途中からほとんど左腕でポンピングしていた。今回一番の感動ファイトだった。

八田1

八田2

八田3

八田4

八田5

八田6

八田7

八田8

八田9

八田10


結果、一人も交代者はいなかった。3年連続全員単独キャッチである。ハーネスを使ったスタンドアップはほぼ完成されたと言っていいだろう。

来年も挑戦します。チャレンジャー募集!
2009/08/20

限界に挑む!

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スピニングリールで限界に挑んだ1日

1回目(7日の夜)の挑戦は完敗だった。それは気持ちのいい負けだった。
100回やっても勝てない相手だろうなと思った。

不可能はないと信じているけど、今回ばかりは弱気になった・・・

勝てないかも・・・

でも相手が強いことはいいことだ。

自分の限界を試すいいチャンスとも思った。

かといってブチブチやられるのも考え物だ。

勝算がなければ挑むべきではない。

どうしたら勝てるか1回目の挑戦のあと8日間いろいろと考えた。

そして

やるべきか、やめるべきか・・・




1回目のファイトでリールに問題が起きていた。
(詳しいことは書けないが・・・)
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さらにインフィニットが壊れていた。

どうやら25キロ以上のドラグでは長時間ファイトに耐えられそうもない。

というか、25キロでは俺自身が1時間持たない(^^;


8号を360メートル巻き、130ポンドナイロンを15~20メートル繋いだ。その先にクランキングリーダーを繋いだ。とにかくラインキャパが欲しいので目いっぱい巻いた。

そして初期ドラグは13~14キロくらいにセットした。不足分は手ドラグで補う。そして時間が経ったら徐々に上げていく。

しかし300メートルくらい走られるとドラグは2倍くらいに強くなる。そうなるとリールにトラブルが発生する。その前にドラグを緩めなければならない。そして船をバックして一気に近づくときは再びドラグを締めなければならない。それと手ドラグを加えてプレッシャーをかける。

近づくときはとにかく渾身の力で早く巻く。マグロが水面近くにいるときに一気に寄らなければならない。モタモタしているとまた潜られてしまう。次のランに備えて少しでも回収しなければならない。ラインキャパが少ないということは集中力の持続が大切なのだ。油断や手抜きは敗北につながる。


それと体力が持つかどうかの問題。

1時間経過して体力に余裕があればドラグを16キロ以上に上げる作戦だ。


そして一番の問題は潜られたら万事休すということ。

この海域は水深800メートルある。300メートルくらい一気に潜ってしまうマグロが多いのも事実。ラインキャパが少なくなれば船を前進させて浮かせるということが不可能になる。そのためには最低でも200メートル残ってないとできない。

潜らせないようにするにはどうしたらいいのか?

マグロにもやたらと潜るタイプとあまり潜らないで横方向へ走るタイプとがある。

頼むから潜らないでくれ(笑)



前半組と同じように後半組も天気に恵まれて15日には全員キャッチしていた。
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(マグロは1匹だけキープして他はタグ&リリースなので写真はY君の265キロを持ち回り)


16日の昼過ぎまで挑戦するか、しないか、悩んでいた。

相次ぐ長時間ファイト(^^;

Y君の4時間45分、H船長の8時間50分(ファイト直後にドラグを測ったら26キロだった)

そんなファイトを続けて見ると、正直挑戦するのが怖くなる。
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午後3時ころに決断した。

「やるぞ!」

1回目と同じくテーブルの上に緊急時のニトロを置いた。

そして「絶対に交代はしない!」と誓った。


午後6時45分にヒット!

ファーストランは手ドラグで応戦した。
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あまり潜らないで止まった。

「取れるかも」と思った。

しかし最初の15分ぐらいはすごく長く感じた。

30分頃から徐々に体がなじんできた。

1時間経過頃にドラグを16キロ以上に上げた。
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このころは絶対取るぞという気持ちになっていた。

1時間30分経過頃のファイト(まだまだ余裕がある)



1時間10分経過頃と2時間経過頃にチャンスはあった。しかしあと1メートル寄せきれずまた200メートル以上走られた。
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心が折れた方が負けだ。

クルーのヒルがハーネスを持ってきて「付けるか?」と聞いてきた。
俺は迷わず「ノー」と答えた。

体は2時間経過してから一番動きが良くなった。

2時間20分、3度目のチャンスがきた。

残り15メートルくらいになってから一気に寄せた。
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ヒルがクランキングリーダーを掴んだ。
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スティーブがタグを打った。
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タグを打つ瞬間



「勝った!」
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ファイティングタイム2時間20分(ランス船長の報告は2時間45分)
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スピニングタックル、そして最後までスタンディング、さらにハーネスなしでの快挙!

ニュージーランドでも誰もやってないそうだ。

ランス船長は「アンビリーバボー」と何度も吠えていた。

H船長もビルダーKもイソギンもY君も心から祝福してくれた。


しばらくしたらニュージーランドの友人とアメリカの友人からお祝いのメッセージが届いた。

いつも他人の評価なんてどうでもいいと考えている。

自分が納得できればいいのだ。


でも友人のメッセージはやはり嬉しかった。


そのあとミクシイに報告した。

多くのお祝いのコメントをいただいた。


ありがとう!


タックル
ロッド:バレーヒルEXP53XXS・MOGIスペシャル
リール:ステラSW20000PG(スプールは20000MAX)
ライン:サンライン・PEジガー8HG8号
ショックアブソーバー:ナイロン(ダイリキ)130Lb15~20メートル
クランキングリーダー:400Lb6メートル
ハリス:フロロ(マンユウ)150号3メートル
フック:サークルフック16/0

ファイティングタイム:2時間20分
重さ:船長推定250キロ



PS.体はいたって健康です。何の心配もいらないようです(笑)
2009/08/11

スピニングで挑んだ巨大マグロ

スピニングマグロ13

出発直前の精密検査で一度は諦めた挑戦だけど、日に日にメラメラとしてきてしまった。

栓抜きがダビングしてくれた24(トゥエンティーフォー)を見ているうちに挑戦するぞという気持ちにどんどん傾いていった。

よしジャック・バウアーになってやる!(笑)

ただしいつものように順番は最後なので全員がキャッチしなければ俺にチャンスは来ない。

しかし悪運なのか幸運なのか、今回は天候に恵まれて釣行3日目で俺以外は全員キャッチとなった。

そして俺の順番となった。

心臓緊急用にニトロをテーブルの上に置いて仲間に「ニトロと叫んだらこれを持ってきてくれ」と伝えた。

リールシートにテープをぐるぐる巻きにして補強した。ハーネス用のストラップは限界が来たとき用に最初から装着した。限界が来たらハーネスを付ける。絶対に交代はしないと誓った。

ヒット!

一気に200メートル以上のラインが出た。
スピニングマグロ1


その後しばらく一進一退の攻防が続いた。一時は取れると思った。
スピニングマグロ2


しかし何度も走られて残りのラインがほとんどなくなった。
スピニングマグロ3


そして巨大マグロは真下にずるずるとラインを引き出していった。

ラインが少なくなるとドラグは反比例して増していく。自転車のギアと同じ理由である。ラインを含めたスプール径が半分になればドラグは2倍になる。

ロッドの曲がりから25キロ以上のドラグがかかっているだろう。

マグロは300メートルまでは一気に潜るが、それ以上になると動きが鈍くなる。水圧の問題か水温の問題とだろう。

ジリジリと3センチずつラインを引きずり出して潜っていく。
スピニングマグロ4


10分経過したあたりから腕がパンパンになり、握力もなくってきた。

相手は潜り続けている。ロッドの角度は限界、ラインはほぼ真下に向いている。

どうにもならなかった。
スピニングマグロ5

ラインキャパに余裕があれば船を前進することができるのだが・・・
スピニングマグロ6


後部に突き出ているランディングデッキの手すりに触れた瞬間。

「バチッ」

ブレイクしてしまった。
スピニングマグロ7

動画Youtube




これが問題の手すり
スピニングマグロ10


直後25キロ用のバネ秤でドラグを計ると振り切ってしまって計測不能だった。
スピニングマグロ8


推定ドラグ30キロ!


挑戦した結果として水深のあるところでは難しいと思った。このポイントは水深800メートル。そのため300~400メートル潜ってしまうマグロがほとんどだった。
ただし400メートル以上は潜らなかった。ラインキャパがあと100メートルあったら取れると思った。ただしドラグ25キロで1時間以上のファイトになると思う。

ロッドはカーペンターOH55XH。2.5キロのジグをしゃくっても大丈夫な竿だ。
リールはステラSW20000PG(スプールは20000MAX)。ラインはサンラインPEジガー8HG8号、その先にナイロン130ポンドを20メートルつなぎ、先端に400ポンドのクランキングリーダー6メートル+フロロ150号3メートルつないだ。
ナイロンの130ポンドはPEの高切れを防ぐためのショックアブソーバーである。

また挑戦します。

勝つまで!
スピニングマグロ9




PS.同行者はハーネスを使用したスタンドアップファイトで310、281、240、230キロを、チェアーを使用したファイトで250をキャッチした。最長ファイティングタイムは6時間10分だった。ドラグ25キロで6時間以上も戦うマグロはやはり最強の相手である。

スピニングマグロ12

スピニングマグロ11