2012/11/25(日)
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 13:56:50.86 ID:y572Ovw+0
その2です。
その2です。
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 13:56:50.86 ID:y572Ovw+0
――クレープ専門店
佐天「白井さんお待たせー」
初春「正午回ったら一気に混んできましたねー」
美琴「危うく炎天下での立ち食いになるところだったわ。席取りありがとね、黒子」
黒子「いえいえ。どれを食べようか悩んでいただけですので、お気遣いなく」チラ
黒子(お姉様は――苺スペシャルですのね)キラーン
黒子(初春は生チョコバナナ。そして佐天さんはおかず系、と)
黒子「さて、と。わたくしも買って参りますわね」
初春「はい、戻ってくるまで待ってますねー」
佐天(うーん、しっかり学んでるなー)
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 13:58:33.05 ID:y572Ovw+0
美琴「うーん、美味しーい!」
初春「やっぱここのクレープは格別ですー」ハム
黒子「……ふぅ、やっぱりわたくしもお姉様と同じものを頼めばよかったかしら」
美琴「ええ? あんたのだって美味しそうじゃない?」
黒子「気分の問題ですの」
美琴「んー、そうね。じゃあわたしの少し食べてみる?」
黒子(……ふひ)
黒子「で、ですけど、一方的にいただくのは申し訳ないですの」
佐天(……!?)バッ
美琴「だったら、わたしもあんたのを分けてもらうわ。ね、それでおあいこでしょ?」
黒子「そ、そこまで仰っていただけるのでしたら、お言葉に甘えさえていただきましょうかしら」クネクネ
佐天(……し、進化してる)ヒク
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:00:13.47 ID:y572Ovw+0
――ジャッジメント第177支部
固法「報告事項は以上になります。二人とも、質問はあるかしら?」
初春「来月度のローテーション、今月に比べて休養日が多いんですね」ペラリ
固法「ええ、スキルアウトの能力者狩りで負傷していた人たちが完全復帰したから」
固法「今までより連携も捗るでしょうし、各支部の負担も軽減されるはずよ」
黒子「それは何よりですの」
黒子(……この日程なら、少しくらいは差支えませんわね)
固法「あら、白井さん? 何かいいことでもあったの?」
黒子「え?」
固法「あ、気のせいだったかしら? いつもより機嫌がいいような気がしたんだけど」
黒子「そうですの? 特に何があったというわけでも、ないんですけれど」ハテ
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:02:01.36 ID:y572Ovw+0
――常盤台女子寮トイレ
黒子「一応、鍵はかけておきませんとね」
黒子「すー、はー、すー」
黒子(って、なんで緊張しなきゃいけないんですのっ。ただ話すだけですのにっ)カチカチカチ
――――trrrrrr
黒子(…………)ドキドキ
――ガチャ
上条『はい、もしもし』
黒子「……ぁ……も」パクパク
上条『あれ? もしもし? 黒子だよな?』
黒子「は、はいですのっ。か、上条さんですの?」
上条『はは、俺の携帯にかけたんなら俺が出るのは当たり前だろ』
黒子「そ、そうですわよね。おほほほほ……」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:03:43.67 ID:y572Ovw+0
上条『んで、どうした?』
黒子「あ、あのぉ。昨日のお誘いについてなんですけれども」
黒子「次月のスケジュールがだいたいわかりましたので、同行できそうな日をお伝えしておこうかと」
――ワイワイガヤガヤ
黒子(ん、少し周りが騒がしいですわね。外出中ですの?)
黒子「あ、あの、もしお手すきでなければまた改めて」
上条『いや、少し話すくらいなら。――っと待ってくれ。声が聞き取――んで場所変えるわ』
黒子「あ、はいですの」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:06:28.52 ID:y572Ovw+0
上条「悪い、待たせたか?」
黒子「いいえ、お気にならさず」
黒子「それで、繰り返しになりますがお買い物にいく日取りについてなんですけれど」
上条「あー、黒子。その話なんだけどさ」
黒子「……? どうかなさいましたの?」
上条「実は、出費が当初の想定を上回っちまってさ。しばらく切りつめないと無理そうなんだ」
黒子「あ……そ」
黒子「そうでしたのね」ニコ
上条『こっちから頼んでおいて本当にごめん。この埋め合わせはきっとするから』
黒子「期待しないで待っていますわ。では、ご都合がつき次第そちらからご連絡くださるかしら」
上条「あぁ、そうさせてもらうよ。じゃあ、またな」ピッ
黒子(……はぁ、まぁ、しょうがないですわね)パタン
黒子(……べ、別によろしいじゃありませんの。がっかりするほどのことでも)ショボン
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:15:54.75 ID:y572Ovw+0
――どよどよ
上条「……はぁ。悪いことしちまったなぁ」ガチャ
上条(気を悪くしていなそうだったのが、せめてもの救いか)
上条(また顔合わせた時にでも、もう一度謝っとこう)
インデックス「あ、おかえりとうま!」
上条「おう――……あれ?」ポカーン
上条(き、気のせい…………じゃ、ねえ)ゴシゴシ
上条(な、なんでたかだか五分席外しただけで皿が丸々一列分も増えてんですかー)タラー
インデックス「板さん板さんっ、中トロと炙りサーモン! それに甘エビもお願いするんだよ!」
上条「…………」ダクダク
板長「へいっ、お嬢ちゃんはホントに気持ちのいい食いっぷりだねぃ!」
上条(な、なんかいつも以上に食欲あるんじゃないか?)
小萌解説(※エステによるマッサージはよりカロリーを消費しやすいため、食欲増進の効果もあるんですよー?)
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:20:08.81 ID:y572Ovw+0
上条「あ、あのぅ、インデックスさん?」
インデックス「ん? ふぁに? ふぉうま」パクパクモグモグ
上条「そんなに詰め込んで、お腹の方は、大丈夫なんでせう?」
インデックス「まだまだ、へっちゃらなんだよ!」ゴックン
上条(そ、底なしかよ)
インデックス「ねぇねぇ板さん、他のネタでおすすめはないの?」
板長「おすすめか? そうだなぁ、活きのいいアナゴなんてのはどうだ?」
インデックス「あ、じゃあそれも一つ……じゃなかった、ねぇ、とうまも食べるよね?」
上条「あ、いや、俺は……」
インデックス「食べない、の? ……じゃあやっぱり、インデックスも」
上条(ぬぐ……)
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:22:14.93 ID:y572Ovw+0
上条「い、いやいやいやっ、食べないなんて一言も言ってないだろ?」
上条「板さんっ。アナゴ二つよろしく」
板長「おう、ちっと待ってくんな」
インデックス「だ、だよねだよねっ! やっぱり美味しい物は誰かと一緒に分かち合わなきゃ損だよね!」キラキラキラ
上条「そ、そうだな、はは」
インデックス「あ、とうまとうま! 向こうから流れてくる青いお皿も取って欲しいんだよ!」
上条「……はは……ははは」パシッ
インデックス「お寿司っ、お寿司っ、マグロッ、ヒラメッ、イクラにマダイッ」ルンルン
上条(み、見積もりが甘すぎた……)
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:26:04.03 ID:y572Ovw+0
――二週間後
黒子「……はぁ、予報通り雨ですのね」
黒子「こんな日くらいは出動要請がないといいのですけど……」
黒子(……あんにゅいですの)グテー
御坂「ね、ねぇ黒子。何かあったの?」
御坂「わたしでよかったら相談くらい乗るわよ?」
黒子「いえ、何でもないですの」
黒子(……ないからこそ、なんですの)
御坂「ここんところ、少し忙しすぎたんじゃないの? 二、三日休暇貰ってゆっくりしたら?」
黒子「負担が軽くなったとはいえ、そこまでの余裕はありませんの」ムク
黒子「初春にせよ固法さんにせよ、戦闘向きの能力ではありませんし」
黒子「現場に急行できる空間移動能力者は制圧行動の要なんですのよ?」
黒子「わたくしが抜けたら、一番重要な治安維持の業務が開店休業状態になってしまいますの」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:37:12.86 ID:y572Ovw+0
御坂「それだったら、ひとつ妙案があるんだけど?」
黒子「はぁ、それはどのような?」
御坂「簡単よ。あんたが休んでる間だけわたしがジャッジメント――じょ、冗談だって、そんな睨まないで」
黒子「今の顔は絶対に本気でしたの」ムスッ
御坂(う、鋭い)ヒク
黒子「まぁでも……お姉様を窘める資格などわたくしにはありませんわね」
御坂「……あんたホントどうしたの。そんな弱気、らしくないわよ?」
御坂「初春さんも佐天さんも随分と心配してたんだから。近頃あんたが元気ないって」
黒子「案じていただけるのはありがたいですけど、大丈夫ですの。黒子はそんなにやわじゃないですの」
御坂「……バカね。だからなおさら心配なんじゃないの」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:41:25.19 ID:y572Ovw+0
――ザアアアア
不良A「おいおい、兄ちゃんよお。俺たちぁ返さないとは言ってないんだぜぇ?」
不良B「そーそー、ちょっと財布をなくしちまってよぉ。家に帰る交通費を借りたいだけなんだよ」ヘヘ
学生「だ、だったら、その額を言ってください。そ、それくらいなら、なんとか」オドオド
不良C「アァン!?」ドン
学生「ひっ……」
不良C「つべこべ言ってないで財布出せや。それとも中身全部治療費に費やす気かぁ?」
不良B「Cクンったらホントわっるーい」キャハ
不良A「でもそこに痺れる憧れるぅ」クネクネ
学生「そ、そんな。ひ、ひどいですよ」
不良A「……あー、もう面倒くせえなあ」コキン
不良C「ま、二、三発殴ればちったぁ気が変わるだろ」ポキポキ
???「……お待ちなさい」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:50:02.47 ID:y572Ovw+0
不良A「あん、なんだぁ――げっ」
不良B「腕章……このガキ風紀委員かよ」チッ
黒子「……ジャッジメントですのー。学園の風紀を乱す輩は許しませんのー」ハァ
黒子「何より、この纏わりつくような気だるい雨の中を出動させた罪、万死に値しますのー」ハァ
不良B「……な、なんてやる気がなさそうなんだ」
不良A「見てるだけで気持ちが滅入ってくるぜ。……つうか、チョー私情混じってんじゃねえか」
不良C「……相手はたかがガキ一人。構うこたぁねえ、増援が来る前に畳んじまうぞっ」ダッ
不良B「おうっ」ダッ
黒子「……はぁ、たまには素直に引いてくださる方々がいらしてくれてもよろしいのに」グテー
黒子「ま、いいですの。考えようによっては」スッ
不良たち「うおおおおおおっっっ!」
黒子「少しは憂さ晴らしになるかも知れないですものねっ!」スチャッ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:56:08.03 ID:y572Ovw+0
不良A「ち、ちきしょう! お、覚えてろっ!」ズルズル
黒子「やれやれですの、台詞にまで負け犬根性が染みついてしまっていますのねぇ」
不良B「こいつ重っ、お、おいっ、ちゃんとそっち持ってんだろうなっ!」ヨロヨロ
不良A「うっせっ、黙って歩けやっ! 俺だって体中いてえんだよっ!」ヨロヨロ
不良C「…………」チーン
黒子「口ほどにもないですの」スッ
学生「あ、ありがとうございますっ」ペコ
黒子「いえいえ、大したことでは」ニコ
黒子「それよりこれからは、大通りからあまり外れないことですわね。この界隈は治安があまりよろしくないですの」
学生「は、はいっ。失礼しますっ」タッタッタ
黒子「……ふぅ、濡れた服の重みに押し潰されそうですの」
黒子「早く帰ってシャワーを……」
???「おいいたぞっ、そっちに回り込めっ!」タッタッタ
???「あんのくそガキャーっ! チョロチョロ逃げ回りやがってっ!」ビシャビシャビシャ
黒子「…………残業ですの?」ヒク
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:04:15.88 ID:y572Ovw+0
黒子「こちらの方でしたわね」ヒュン
黒子(ううぅ、下着がべったり張り付いて気持ち悪いですの)イライラ
黒子(……この先は確か三叉路ですわね)
黒子(先回りして待ち伏せした方がよろしいですわね。集まったところを叩きましょう)
黒子(ちょうど雨ですし、多少荒っぽくやっても、痕跡は残りませんわよね)ニタァ
???「まてやゴラァっ! 男だったらちゃんと足止めて勝負しやがれっ」
???「うっせ、脳みそ筋肉っ! 悔しかったら煙草やめて長距離走れる体になってから出直してきやがれっ」
黒子(……? ……今の声は)
黒子「……まさかとは、思いますけれど」ヒュン
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:11:11.11 ID:y572Ovw+0
上条「はっ、はぁっ、くそっ、しつこすぎだろあいつら」
上条「一人だと思って声かけっときまって後から数が増えるとか」
上条「ああもぅなんなんですかぁ、この不幸はっ!」
黒子(…………ふ)
黒子「ふふ……くふふふ……」
黒子「そうでしたの。このわたくしが全身びしょ濡れになって任務に勤しんでいる間」
黒子「約束を先延ばしにしているあなたは、どこぞの馬の骨とのんきに追いかけっこを……」プルプル
黒子「…………ぐ」ミシミシ
黒子(~~~~っ)ギリギリ
黒子「っざっけんなっですのっ」ヒュン
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:22:17.11 ID:y572Ovw+0
上条「よし、なんとか撒いたか――って」
不良F「……悪いが、はっ、こっちは行き止まりだぜ」ハァハァ
上条(くそっ、一度戻って――い゛い゛っ!?)
不良D「よっ、ようやく……追いついた、ぜぇ」ゼエゼエ
不良E「舐めた真似しやがってぇ。……か、覚悟はできてん、だろうなぁ」フゥフゥ
上条「お、お前ら、そんなフラフラの体でやろうってのか? やめとけって、転んで怪我すんぞ」ハハ
不良F「……んな心配すんなよ。手段は選ばねえからさ」ブン
上条(……相手三人で鉄パイプ有りかよ、……いくらなんでも)
上条「い、いやぁ、歓迎されすぎて涙出そうだなぁ」ジリ
不良E「俺たちにも慈悲はあっから、半殺しで勘弁してやんよ。ただまぁ」
不良E「目ぇ覚めたらすっぽんぽんで街路樹に吊るされてっかも知れねえがな」ニヤ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:28:47.67 ID:y572Ovw+0
上条「そ、そいつはさすがに勘弁してほしいな。……人として」
不良D「んだったら、まずは土下座だ。それから財布と」
不良F「キャッシュカードの番号もだ」ニタァ
上条「……どっちも御免だな。しゃあねえ」ミシミシ
――パキィ
不良F「……はっ、雨どいなんかで、どうにかなるとでも」
上条「こっちだって必死だかんな。後遺症残っても、恨むなよ」ギロ
不良E「……じょっ、上等――」
???「なるほど」ポツリ
不良D「――だ、誰だっ」バッ
黒子「……お姉様があなたにイラついていた理由が、なんとなくわかりましたの」スゥ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:48:05.99 ID:y572Ovw+0
黒子「学園三位を手玉に取るあなたが」
黒子「どこぞの馬の骨とも知れぬ連中を相手に後手後手に回っているのを見れば」
黒子「腹立たしさを抑えるのも一苦労ですわね。今のわたくしのように」ヒヤ
上条「く、黒子……どうして」
黒子「どうしてここに……ですの?」
黒子「それ、はっ、わたくしの台詞ですの」ピキ
黒子「あなた、こんなところで何を遊んでいるんですの!」
上条「べ、別に遊んでるわけじゃ――」
不良D「おいおいお嬢ちゃん。痛い目に遭いたくなかったらとっとと消えな」ニタニタ
不良E「そーそー、じゃないと、お兄さんたちにあんなことやこんなことをされちゃうぜぇ?」ワキワキ
上条「お、おいてめえらっ! こいつはまったく関係ない――」
黒子「現行犯ですわね。そういった脅し文句は」
――ギュッ
黒子「れっきとした恐喝に値するんですのよ」ザッ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 16:08:26.53 ID:y572Ovw+0
不良F「げっ、風紀委員の腕章!?」
黒子「いかにもジャッジメントですの。学園の規律や風紀を乱す輩はこのわたくしが成敗しますの」
黒子「それと」チラ
上条「」ビクッ
黒子「あなたも、彼らが片付くまで逃げないでくださいね。後ほどお聞きしたいことがたっぷりとありますの」ニコォ
上条「まっ、満面の笑みを見て嫌な予感が鰻登りなのはわたくしの気のせいですかっ?」ダラダラ
不良F「は、はっ。そういうことか、彼氏のピンチにいじましくも駆け付けたってわけか」
黒子「だっ、誰が彼氏ですのっ!///」
不良D「ちっ、何がジャッジメントだ。笑わせるぜ」
不良E「路地裏にしけこんでイチャイチャと、かぁ? 風紀乱してんのは、お互い様じゃねえか」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 16:12:46.54 ID:y572Ovw+0
黒子「なっ、な、なんっ! 黙って聞いていれば言いたい放題ぃ!」ワナワナ
不良E「つうかこいつもよ。こんな乳臭そうなガキに守られて恥だとは思わねえのかね」
不良F「まったくだな、男として終わってんぜ」
黒子「だ、誰が乳臭いですってっ! 取り消しなさいっ! さもなくば――」ガシ
上条「バ、バカ、やめとけって」
黒子「バっ……助けにきたわたくしに向かってバカとはなんですのっ!」
上条「お、落ち着いてくれよ」
不良D「あーあ、なんだかしらけちまったな。ゲーセンにでも行こうぜ」
不良E「サンセー」
黒子「まっ、待ちなさい――ちょっとっ、この手を放しなさいっ」
上条「冷静になれって。せっかく向こうから退散してくれるってぇのにこっちから波風立てることはねえだろ」グッ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 16:31:55.20 ID:y572Ovw+0
黒子「何をのんきなことをっ。あなただって侮辱されたんですのよっ?」
黒子「あそこまで言われて悔しくなりませんのっ?」
上条「そりゃ、少しは腹も立つけどさ」
上条「いちいち挑発に乗ってたら体がいくつあっても足りねえよ。まともに相手にしたって時間の無駄だって」
黒子「よっ、よくもそう平然としていられますわね」ジロ
黒子「今のあなたの態度は、回りまわってわたくしたちへの侮辱に他なりませんの」
黒子「もしあんな連中に敗北してごらんなさい。あなたのみならず、お姉様も後ろ指を指されるんですのよっ」
黒子「それに、それにわたくしだって……」
上条「んなこと言われてもな。俺の能力はパンピーにはまったく意味がないんだぜ?」
上条「高校生同士の喧嘩なんて数がなんぼだろ。敵が二倍三倍いる時点で逃げの一手しかねーっつうの」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 16:47:41.21 ID:y572Ovw+0
黒子「だったらジャッジメントやアンチスキルを呼べばよろしいでしょうっ」
黒子「ましてや、あなたにはわたくし個人の連絡先をお教えしているんですのよ?」
上条「冗談はよしてくれよ。そりゃおまえの強さはわかってっけど、年下の女の子に助けを求めるなんて」
黒子「年下だろうが性別が違おうがわたくしはジャッジメントの一員ですのっ」
上条「……あのぉ、もしかして。黒子さんは俺が連絡しなかったからイジけてるんで――どわっ」グギュ
黒子「誰がいつっ、どこでっ、何時何分何秒そのようなことを申しましたのっ!!」グイグイ
上条「くっ、首が締ま……ギブ、ギブっ」パンパン
黒子「…………っ」バッ
上条「けほっ……す、少しは加減してくれよ」
黒子「ふ、ふんっ、身から出た錆ですの」プイ
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 17:13:21.49 ID:y572Ovw+0
黒子「そもそも、そちらから連絡すると申し出ておきながら音沙汰なしってどういう了見ですの?」クドクド
上条「ま、まぁ、それはこっちにも非があるけどさ」
黒子「自覚していらっしゃったのならなお質が悪いじゃありませんの」
上条「か、返す言葉もない」
黒子「おまけにこちらからかけても一向に繋がらないですし」クドクド
黒子「なんで今まで連絡が取れなかったんですの?」
上条「いや……そこはまぁ、なんといいますか、ですね」
上条(い、言えねえ。光熱費と食費を確保するのに精いっぱいで携帯を止められてましたなんて)
上条「そ、そうだ黒子。例の買い物の件についてなんだけど」
黒子「……何を今更」ジト
上条「お、俺の買い物に付き合わせるだけってのも気が引けるからさ。どこか遊べそうな場所にしないか?」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 17:18:08.41 ID:y572Ovw+0
黒子「では再度確認しますが、四日後の日曜日の午後12:30にアミューズメントパークのゲート前」
黒子「それで間違いありませんわね?」ジト
上条「あ、ああ。俺はそれでいいけど、ジャッジメントの方は大丈夫なのか?」
黒子「ええ。幸いその日はフリーですから問題ありませんの」
上条「そっか、じゃあそれでよろしく頼む」
黒子「了解ですの。それから」チラ
上条「わ、わかってるって。謝罪の意味も込めて、飯代くらいはこっちで持つよ」
黒子「大変よろしい」ニコ
上条「」ドキッ
黒子「もしすっぽかしたら」ニコニコ
黒子「どこかの高層住宅から上条さんの頭目がけて植木鉢が」ニコニコ
上条「……お、覚えときます」ガクブル
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 17:26:37.67 ID:y572Ovw+0
――常盤台女子寮
黒子(まだ残暑も厳しいですし、ニーソックスはパスですわね)ウーン
黒子(ここは縞のハイソックスにしておきましょう。足も幾分細く見えますし)
黒子(とすると、このスカートでは……ちょっと丈が短く感じますわね)ピタ
黒子(この際ブリーツじゃなくてフレアにしてみたら、色合いはどうかしら)スッスッ
黒子(んん、まぁまぁ、悪くないですわね)クルリンッ
黒子(続いて羽織る物は、と……こちらのカーデガンだと少し幼い感じが……小学生から使っていたものですものね)
どこかの不良『こんな乳臭そうなガキに――』モヤァ
――ドスッ
黒子(……あの間抜け面、今度会ったら覚えてらっしゃい!)ピクピク
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 17:39:06.38 ID:y572Ovw+0
黒子(……そりゃ、そうそう釣り合いなど取れませんわよ。三つも歳が離れてるんですのに)
黒子「せめて三年、いえ、二年もすれば……って」
黒子(わ、わたくし何を言ってるのやら)ババババ
黒子(あっ、そういえば以前に購入した夏用のジャケットが)クルッ
黒子(確かクローゼットの奥の方に……よっ、とっ)ゴソゴソ
黒子「あったっ! これこれ、これですの~」パァァ
黒子(んん、ちょっとナフタリン(樟脳)の匂いが気になりますわね)クンクン
黒子(ま、明日のうちに外干ししておけば問題ないでしょう)カチャカチャ
黒子「さて、小物入れは……」
黒子(途中で化粧直しなどもしたいですし、そこそこ大きめの方が便利ですわよね)ルンルン
黒子(日焼け止めもそろそろ尽きそうですの。必要な物ともども、薬局にいって揃えてしまいましょう)
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 18:03:19.89 ID:y572Ovw+0
――遊歩道
初春「……うーん」チラ
佐天「初春、さっきから何唸ってるの?」
初春「あ、いえー。白井さん、なんだかいつもと雰囲気が違うなって」
黒子「あら、そうですの?」
初春「うまく言えないんですけど、華やかというか大人っぽいというか」
黒子(ふふ、普段から一緒にいる初春が気づくのでしたら、問題なさそうですわね)
美琴「その薄手のジャケットってさ。確か春先にわたしと買いにいったやつよね」
黒子「え、ええ。そうですわね」
美琴「汚したくないからって滅多に着てるとこ見ないけど」
佐天「へぇ、そうなんですか?」チラ
黒子「た、たまにはよいかと思いまして。ずっと仕舞っておいても宝の持ち腐れですし」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 18:07:09.47 ID:y572Ovw+0
――ジリジリジリ
御坂「今日も暑くなりそうねぇ。そろそろ図書館にでも退散しようかしら」
御坂「みんなはこれからどうする?」
初春「わたしは家に戻ります。まだ宿題が手つかずですので」
佐天「あ、じゃあわたしも初春んちで一緒に」
初春「……写すのはなしですよ?」ジロ
佐天「わ、わかってるってぇ。んじゃ、いったん部屋に戻って勉強道具取ってくるね」
御坂「黒子は――そっか。朝出るとき、用事があるようなこと言ってたわね」
黒子「ええ、前々からのお約束がありまして」
黒子(冷房の効いた空間でお姉様と二人きりで過ごすというのも、なかなか誘惑に駆られますが)ジュル
黒子(ま、約束を反故にするわけにもいきませんものね)フッ
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 18:14:07.12 ID:y572Ovw+0
――アミューズメントパークゲート前
上条「ふぅ、あちぃ。思ったより早く着いちまったな」
上条(ま、いっか。散々引き延ばした手前、万が一にも遅刻するわけにいかねえもんな)
上条(黒子は、と……さすがにまだ来てないみたいだな。先に案内所でパンフレットでも――)
???「おーそーいーでーすーのっ!」
上条「うわっ、すんませんっ……って」
黒子「まったく、自分から誘っておきながら後れを取るとは」プン
上条「さ、先に着いてたのかよ。俺にしては随分と早く来たつもりだったんだけど」
黒子「それは、命拾いしましたわね。これ以上遅れたら何か罰ゲームでもやってもらおうかと考えていたところですの」
上条「つってもさ、まだ約束の時間まで20分以上もあんだぜ?」
黒子「だからなんですの? こういうお約束事は30分前到着を目安にするのが社会常識(スタンダード)ですの」
上条「き、厳しいなぁ」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 18:17:17.06 ID:y572Ovw+0
黒子「さっ、時間が惜しいですの。行きますわよっ」グイッ
上条「わっ、ちょっ、引っ張るなって」
黒子「ここに来たからには、やっぱりフリーフォールからですわよねっ!」
上条(ま、まぁ買い物は最後でいいよな。荷物になるし)
黒子「ほらぁ、上条さん、早く早くっ。置いていきますわよっ!」
上条(……こうしていると、ほんと普通の女の子だな)
上条(早く来てくれたってことは、ちっとは楽しみにしてくれてたってことだろうし)
上条「へへ、まぁ、悪い気はしないよな」ポソ
黒子「ん、なんのことですの?」
上条「いーや、こっちの話だ」
黒子「……? 変な上条さんですの」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 20:24:05.63 ID:y572Ovw+0
係員『間もなく稼働しまーす! 安全ベルトがロックされているかもう一度ご確認くださーい!』
黒子「あらあら、どうなさったんですの? 顔色が悪いですわよ」ウププ
上条「絶叫系の乗り物って昔からどうにも苦手なんだよ。そういうおまえは……全然リラックスしてんな」
黒子「それはまぁ、わたくしの空間移動は上空へのテレポート→タイムラグによる落下→再テレポートが基本ですし」
上条「日常茶飯事ってことかぁ」
黒子「無論、地面からでも移動するには困りませんけれど」
黒子「逃走する犯人を捕まえるには上空からの方が色々と都合がいいですの」
上条「込み入った街中なんかじゃ、空から追跡した方が圧倒的に発見しやすいもんな」
黒子「それだけではなく、自分の身の安全のためでもありますのよ」
上条「身の安全?」
黒子「ですの。相手が好戦的な性格ですと思わぬ反撃や待ち伏せに出くわすこともありますから」
黒子「ただ闇雲に追うより、目の行き届きにくい空から角度を変えつつ追った方がずっと安全なんですの」
上条「……こうして改めて聞くと、おまえって本当に危険な任務をこなしてんだなぁ」
黒子「あら、もしかして心配してくれているんですの?」
上条「当たり前だ――――っと、動き出したな」ガクン
黒子(…………)
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 20:36:19.44 ID:y572Ovw+0
――カタカタカタカタ
黒子「あぁ、この落下までの緩慢なひとときがたまりませんの」ウットリ
上条「空を自由に飛び回ってるおまえには物足りないんじゃないか?」
黒子「ノンノン。自由落下と機械による強制的な落下とでは、また違う類のスリルを味わえますの」ゾクゾク
上条「あれですか、おまえはマゾですか」
黒子「人聞きの悪いことをおっしゃらないでくださいな。刺激に対する健全な欲求ですの」
上条「ほんと、口が達者だよなぁ。……うぅ、あんなに地面が遠くに」ブルリ
黒子「もう見慣れた光景ですの」ヘーゼン
上条「……こんな光景を日常的に見てれば、そりゃ度胸もつくわけだ」ウヒー
黒子「わたくしの見ている世界が少しはわかっていただけましたかしら? さ、特等席に着きましたわよ」ガクン
上条「うっ、ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ――――…………」ヒュウウウウ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 20:50:54.72 ID:y572Ovw+0
黒子「さっ、次はあのジェットコースターに乗りますわよっ」
上条「く、黒子、少しだけ休憩しようぜ。絶叫モノ四連発はさすがにきついって」フィー
黒子「もぅ、上条さんたらもうへばりましたの? そんなことでは全部回れませんわよ」
上条「へ、へばっちゃいないけどさ。ほら、あそこの行列見てみろって」
黒子「行列? ……て、あら、ほんと。最後尾が見えませんわね」
上条「炎天下ん中待ってるのもバカバカしいし、少し涼しくなるまで施設内の催し物でも見て回ろうぜ」
黒子「まぁ、それも一つの手ですわね」
黒子「ですけど、その前にー」チラ
上条「……あぁ、移動屋台だな」
黒子「ですわねぇ……ちょうどお昼時ですものねぇ」チラッチラッ
上条「…………見に行ってみるか」
黒子「さっすが上条さんですの」ニパッ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 21:27:37.52 ID:y572Ovw+0
上条「黒子、まだ決まらないのか?」
黒子「そう急かさないでくださらない? もうすぐ決めますから」ウーン
黒子「メープルワッフル……いやいや、この生ハムサンドも捨てがたいですわね」ブツブツ
上条「あのさ、なんだったら欲しいやつ二つ頼んでも」
黒子「それじゃあ意味がありませんの。両方買ったらまた来た時の楽しみがなくなってしまいますの」
黒子「それに、いくら奢りだからといってそこまで甘えられませんの」
上条「そうか。じゃあ、ま、じっくり選んでくれ」
黒子「……決めましたの。すみません、こちらとこちらをくださいな」
販売員「はいっ、かしこまりましたっ。少々お待ちくださいねっ」
上条(黒子って、行動力は俺以上のくせに変なところで真面目だよなぁ)
上条(ま、そういうところがこいつの魅力なのかもな)
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 21:41:52.66 ID:y572Ovw+0
上条「その顔からすると、迷った甲斐があったみたいだな」
黒子「ええ。定番メニューですけれど、バジルソースの味がいいアクセントですの」
黒子「ところで、上条さんのそれって、お好み焼きですの?」
上条「いや、手巻きピザだってさ。頼むのは初めてだけどうまそうだったから」
黒子「ふむ、興味深いですわね。一口よろしいですの?」
上条「ああ、もちろん――っあ、黒子っ、ちょっと待っ」
黒子「今更ダメっていうのは無しですの――はむっ」
上条「……」ドキン
黒子「んんっ! これは新しい発見ですのっ」
黒子「カリカリのピザに蕩けるチーズ、それに甘辛の照り焼きチキンが絶妙ですわね」
上条「そ、そか。うまかったんなら、うん、よかった」ジー
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 21:53:24.35 ID:y572Ovw+0
黒子「ほらぁ、上条さんも早く食べてみなさいな。熱々の方が絶対美味しいですわよ?」
上条「そ、そうだな。じゃあ」ジー
黒子(……?)
黒子(気のせい、かしら。妙に食べにくそうにしていらっしゃる…………あ゛)
上条「……い、いただきます」アーン
黒子(や、やっちまったですのっ! お、お姉様たちとのいつものノリで、つい……)バッ
上条「……う、うん、確かにうまいな。これ」ムシャムシャ
黒子「で、ですわよねっ。そう、洋風の春巻きみたいな感じで手軽に――」
黒子(く、黒子のバカバカッ! これじゃあ間接キ……じゃありませんのっ!)アグアグ
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 22:09:43.06 ID:y572Ovw+0
上条「ふぅ、食った食った」
黒子「け、結構ボリュームがありましたね。見た目より」
上条「確かに黒子の小さな口じゃあ、食べるのは時間かかるよな」
黒子(口……)ドキン
黒子(うぅ……せっかくの室内ですのに、全然涼しくなった気がしませんの)カッカ
上条「しっかし、立ち食いピザってのもいいもんだな。もうちょい値段が安けりゃ文句なしなんだけど」
黒子(……この方はこの方で淡々としていらっしゃいますし)
黒子(もしやわたくしって、意外に自意識過剰なんですの?)ウーン
――ピンポンパンポーン
放送『午後2時より、ウェストリージョンのアトラクションステージでイベントが始まります。参加する方は――』
上条「イベント? そんなのパンフレットに載ってたったっけか」パラッ
黒子「あ、上条さん。ここ、裏側に詳細が記されてますわよ」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 22:38:28.43 ID:y572Ovw+0
――アトラクションステージゲート前
上条「すみません。先ほど放送されていたサバイバルイベントって、こちらが会場ですか?」
案内員「会場はそうですが、この先は観覧スペースになります」
案内員「お二人は参加希望ですか? でしたら正面左手の窓口で受け付けていますけれど」
黒子「いえ、まだ考慮中でして、説明を聞いてから決めようかと」
案内員「ああ、それくらいならお安い御用です」
案内員「大雑把に説明しますと、本イベントはアトラクションステージを戦場に見立てたサバイバルゲームです」
案内員「配布されたエフェクトガンを駆使しつつ生き残りを狙うものでして」
案内員「より長く生き残ることができれば豪華景品がもらえます」
黒子「能力の使用は、無しなんですのね?」
案内員「そうです。詳しくは中で説明がありますが、不正防止のための対策を何重にも講じてます」
案内員「もちろん意図的な暴力も即退場となります。銃口から発射されるエフェクト弾のみで戦っていただきます」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 22:59:45.17 ID:y572Ovw+0
黒子「時間制限は、あるんですわよね?」
案内員「ええ、イベントでの戦闘時間は20分になります」
黒子「では、もし制限時間が一杯になった時点で生存者が複数いた場合は、どうなるんですの?」
案内員「その場合には、残った生命力の数値がより高い参加者が上位となります」
上条「生命力?」
案内員「どれだけ撃たれたかを知る目安となる数字です。一般的なRPGのHPと思っていただければ」
黒子「なるほど、意外と面白そうですわね」
上条「どうする? 参加してみるか? 黒子」
黒子「いいですわよ。勝負事となればあなたが相手でも手加減いたしませんわよ」ムン
上条「い、いや、おまえが参加するんだったら俺はパス。どうも勝てる気がしないし」
黒子「んま、不利な勝負だからと敵前逃亡するのは卑怯ですの」
案内員「あのぉ、カップル限定なのでお二人一緒に参加していただかないと困るんですけど」
上条「え、い、いや、俺たちはそういう――///」
黒子「だっ、誰と誰がカップルですのっ///」クワッ
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:09:05.74 ID:y572Ovw+0
案内員「えっ、あ、し、失礼いたしました。ご兄妹だったんで――」
上条「ええと、違います、ハイ」ポリポリ
案内員「あれ……、ええっと」
案内員(カップルでも兄妹でもない男女が……どうして遊園地などに)ハテ
黒子「……な、なんですの?」
上条「べ、別に?」
――その時案内員に電流走る
案内員「おっ、お二人は、お友達なんですねっ」
上条&黒子『そ、そうなんですの(だよ)っ』
案内員「でしたら何ら問題ありませんね。出場の規定は二人組の男女、ですから」ニコニコ
黒子「ま、まぁ……」チラ
上条「……そういうことなら」チラ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2012/09/02(日) 23:11:57.28 ID:tYI4FrMAO
この案内人できる…!
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:25:37.54 ID:y572Ovw+0
――アトラクションステージ内
黒子「銃なんて初めて持ちましたの」
上条「本物はこんなに軽くねえけどな」
黒子「あら、まるで手にしたことがあるような口ぶりですわね」
上条「そ、それよか説明が始まるみたいだからちゃんと聞こうぜ」
司会『それでは、詳しいルールの説明をさせていただきますが、その前に』
司会『まずはただいま配布しておりますリストバンドを、どちらの腕でも構いませんので装着してください』
スタッフ「お二人とも、こちらをひとつずつどうぞ」
上条「あ、ども」
上条「パッと見モダンな血圧計、って感じだな」
黒子「わたくしにはちょっと緩い――――あぁ、このボタンでジャストサイズにフィットするんですのね」ウィーン
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:30:14.24 ID:y572Ovw+0
司会『装着しましたリストバンドのモニターには生命力を表す数字が出ているはずです』
司会『200という値がちゃんと表示されているか確認させていただきますので」
司会『当スタッフが近くに来ましたら数字をよく見えるように手をかざしてください』
上条「黒子は数字の色がピンクか」
黒子「あなたのはブルーですわね」
司会『ちなみに、そのリストバンドにはAIM拡散力場の数値変動を察知する機能もあります』
司会『この機能は能力による不正防止のためのものでして』
司会『もし着用している方が超能力を行使した場合、即座に機械が警報音を鳴らします」
司会『そうした場合には例外なく失格とさせていただきますので、あらかじめご了承ください』
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:41:33.25 ID:y572Ovw+0
司会『さて、参加者のリストバンドに表示されている生命力を減らすには』
司会『既に配布されておりますエフェクトガンで相手を撃つ必要があります』
司会『生命力の数字のすぐ真下に小さなマスが六つあるかと思いますが』
司会『これが銃の残存弾数を表しています』
司会『遊底をスライドさせるとすぐにでもリロード、弾込めが開始されます』
司会『玉一発分を補充するには約三秒かかります』
司会『もちろんリロード中に銃を撃つことはできませんので注意してください』
司会『銃で撃たれますと撃たれた箇所がこのように――数秒間赤く明滅します。同時に、リストバンドのバイブレーションが作動します』
司会『なお、参加者の頭や胸などの急所を狙って当てることで、より多くのダメージを与えることができます』
司会『逆に、手足の端などに当ててもダメージはごく軽微なものとなります』
司会『ですので反射神経、運動神経も生き残るための重要な要素と言えるでしょう』
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2012/09/02(日) 23:43:45.34 ID:tYI4FrMAO
やだ、普通に楽しそう
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:44:09.28 ID:y572Ovw+0
司会『また、男性のリストバンドは男性の持つ銃に、女性のリストバンドは女性の持つ銃に対応しています』
司会『つまり、男性の銃で女性を狙ってもゲージは減らせず、その逆も然りということになりますね』
司会『こうすることによって男女の体力差を考慮しているのと同時に』
司会『男性が女性を、女性が男性を、互いが互いを守れる状況を作り上げているわけです』
司会『愛する人を敵の銃弾から身を挺して守れるかどうかが、勝負の分かれ目になりますっ』ドドーン
黒子「あ、愛するって、いくらなんでも煽りすぎですの……」ボソボソ
上条「まぁまぁ、所詮お遊びなんだしさ、気楽にやろうぜ」
黒子「そうはいきませんの。勝負で手を抜くなどわたくしのキャラではないですの」
黒子(だいたい、ジャッジメントであるわたくしが誰かに守られる必要など)
黒子(……って、もう前例を作ってしまいましたわね)コホン
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:48:57.59 ID:y572Ovw+0
司会『さて、ここからが最も重要なポイントです』
上条「あれ、まだあるのか。そろそろ覚えきれなくなってきたぞ」
司会『申し訳ありません。あと少しで終わります』
上条「……こんなに離れてるのに、よく音拾えたなぁ」
黒子「おそらく会場内の各所に集音マイクを設置してるんですのね。不正防止の意図もあるのでしょう」
司会『実は、組ごとにお配りしたリストバンドは対になってまして、それぞれ連動しています』
司会『一方のリストバンドの生命力が0にされてしまいますと』
司会『もう一方の数字がどれだけ多く残っていても失格となってしまいます』
黒子「……だそうですよ? せいぜい足を引っ張らないでくださいな」
上条「が、頑張らせていただきます」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:55:36.39 ID:y572Ovw+0
司会『そして、対となるリストバンドの距離が半径60センチメートル以内に隣接することで』
司会『リストバンド同士が反応し、ラブラブモードになります』
……ざわ……ざわ
黒子(ラ、ラブラブ……って言われましても)カァ
司会『その状態を保って戦いますと与えられるダメージはなんと2倍、受けるダメージは半分になりますっ!』ダダン
黒子(ろ、60センチって、相当ひっつかないと無理ってことじゃないですのっ///)
上条「……カップル限定って、つまりそういうことだったんだな」ポリポリ
司会『ルールを口実にし、お互いの距離を二重の意味で縮めちゃってくださいねっ!』
黒子「な、なんと悪趣味な」ヒク
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/03(月) 00:17:53.31 ID:H+oQ0r/m0
司会『では、二分間の作戦タイムを差し上げます。どうぞ二人で相談してください』
上条「発表された参加者数が64人ってことは、32組もいるのか」
黒子「軽薄さは否めませんけど、なかなかルールにはこだわっているようですわね」
上条「単独行動が推奨されてないってのは結構痛いな」
黒子「ま、弱音を零していても仕方ないですの」
黒子(お互いがあまり離れていれば御しやすいカモと見なされ、周りから集中砲火を食らう羽目になる)
黒子(片方を囮にしてもう片方を生き残らせるという戦略は、リストバンドの連動を考慮すると現実的でない)
黒子(かといって、あんまりべたべたくっつきながら戦うのも、何より公衆の面前では、は、恥ずかしすぎますの)ボシュ
黒子(ですけど、絶対に負けたくもないですし)ウウウ
黒子(……か、上条さんは、どう思っているのかしら)チラ
黒子(も、もし向こうから求めてくるのであれば、協力して差し上げても……)
黒子(って、も、求めてというのは決して深い意味合いはなく……)ブンブン
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/03(月) 00:29:58.43 ID:H+oQ0r/m0
上条「なんにせよ、ガチのカップルを相手にするのは得策じゃないみたいだな」
黒子(……ま、現実はこんなもんですわよね)ホッ
黒子「序盤は敵の数が多いですし、どちらかといえば流れ弾が厄介ですの」
黒子「開始直後の被害をどれだけ減らせるかに焦点を絞りましょう」
黒子(咄嗟にテレポートしてしまわないようよっぽど注意しないと)
黒子(失格負けなんて無様な終わり方だけは御免ですの)
上条「だとすると、どれだけ多対一の状況を回避できるかだな」
上条「最短距離でフィールドの地形や遮蔽物に身を隠し、後はそれを利用しつつ逃げ回…………あぁ」
黒子「……どうかいたしまして?」
上条「いやさ、折角のイベントなのに、あんまりいつもとやること変わらねえんだなって」
黒子「……頼もしい、と言ってよろしいところなのでしょうか」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 22:07:23.53 ID:ksm+2cwm0
司会『戦闘開始1分前です。開始後は5分毎に現在の状況をお知らせ――』
上条「へぇ、驚いたな。2階の観客席、ほとんど埋まってるぜ」
黒子「物好きな方もいらっしゃるんですのね」
黒子(んま゛、客寄せパンダのわたくしたちが言えたことでもないんですけれども゛)
黒子(にしても? あんな小さな子供までいますの? 情操教育によろしくありませんわね)
黒子「さて、わたくしたちはどう動きますの? 打ち合わせ通りにヨーイドンで最寄りの建物を目指すんですの?」
上条「さっきまではそのつもりだったんだけど、もしかすっと周りも似たようなこと考えてるかもな」チラ
黒子「……ふむ。言われてみれば、大方の人が建物の方を気にしているご様子」
黒子「悩ましいところですの。あまり人が密集しそうなところは避けたいですし」
黒子「かといって、広場に突っ立っていても蜂の巣にされるだけでしょうし」
上条「周りの状況がどう転がるかわからねえからな。結局出たとこ勝負になりそうだ」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 22:16:39.64 ID:ksm+2cwm0
司会『3、2、1、0!』ビー
上条「走るぞ、黒子っ」ダンッ
黒子「もう走ってますの! ――くっ!」ギュン
――ドンッドッドドドドッ
上条「うぉっ、あっぶねぇっ!」
黒子「上条さんっ、もう少し頭を低くしないと当たりますわよっ!」ドンッ
上条「わ、わかった!」サッ
黒子(一瞬にして乱戦に突入ですの。これはさすがに、ある程度の被弾は覚悟するべきですわね)ヒュンヒュン
上条「黒子っ、左手!」バッ
黒子「り、了解ですのっ!」ニギッ
――キュイン
黒子(あら、鎖状のエフェクトだったんですの? てっきりハートの形で覆われたりするのかと)
黒子(って、別にそっちがよかったってわけじゃないですけれど)
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 22:26:26.22 ID:ksm+2cwm0
黒子「どうやら、多少はバラけてきたようですわね」ドン
上条「やっぱり何発か食らっちまったな。黒子、おまえの生命力は?」カシャッ
黒子「186ですの。上条さんは?」サッ
上条「175だけど――な、なんだよそのしたり顔」
黒子「いえいえ、無理もないですのー。やはり実戦を重ねないと危機回避能力はなかなか身に付きませんものねぇ」フフーン
上条「べ、別にそれだけが原因じゃねえだろ? 俺の方が的はでかいんだしよ」
黒子「言っておきますけれど、わたくしの身長は同年代の平均よりも上――ひゃっ!」バッ
上条「いけね、喋ってる場合じゃなかったな。後続が来る前にとっととここの階段を上っちまおう」バンバン
黒子「そ、そうですわね」カシャッ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 22:35:45.21 ID:ksm+2cwm0
黒子「ふぅ、なんとか高台まで辿り着けましたわね」カシャッ
上条「あれだけの射撃に晒されてこの程度の被害で済んだのはラッキーだったな」フゥ
黒子「あら、あなたの口から不幸以外の言葉が飛び出すこともあるんですの?」
上条「大きなお世話だ」ムス
黒子「ほんの冗談ですのに」クスッ
上条「ん゛ん゛っ。さてと、どうする? ここで建物を盾にしつつ終了まで粘るか?」
黒子「その判断をするのは、二十秒後にいたしません?」
上条「……なんで二十秒?」
黒子「正確にはあと十四秒で、五分ちょうどですの」チラッ
上条「途中経過か。よし、そうするか」コクン
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 23:01:09.06 ID:ksm+2cwm0
司会『――以上、22組です。終了まで全力を尽くしてくださいね』
黒子「…………」
上条「…………」
黒子「どういうことですの?」チラ
上条「俺が聞きてえよ」ハァ
上条「わずか五分で三分の一近いペアが脱落したってのは……いくらなんでも」
黒子「……わたくしたちが今いるのはベイサイドエリア。そしてあちら側は」
上条「アスレチックエリアだな。見ていた限りじゃ人数もほぼ半々くらいに別れてたと思う」
上条「さっきから銃撃の音も止んでないし、こっちのエリアにはそれなりに人数がいそうな感じだ」
黒子「つまり、アスレチックエリアの方に向かった参加者は、ほぼ全滅したということですわね」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 23:24:15.20 ID:ksm+2cwm0
上条「この状況下で、黒子はどう動くべきだと思う?」
黒子「現状維持ですの。状況がわからないまま動くよりは出来るだけ安全な場所で時間を稼いだ方がいいですの」
上条「最上段のここなら上を取られる心配もないしな」
黒子「ですわね。こちらが階段前に陣取っている以上、下階の方々が斜線から逃れるのは難しいですし」
黒子「階段を上っている間に挟み撃ちされたら目も当てられませんの。おいそれとは上ってこないでしょう」
上条「ただまぁ、全弾撃っちまうと18秒もの間無防備になるんだよな」
黒子「そこはわたくしたちの心構えと連携次第でどうにでもなりますの」
黒子「撃たれた瞬間にバイブレーションが反応する以上」
黒子「二発目以降を同じ箇所に当てるのはかなり難しいということですの」
上条「予期せぬとこから攻撃を受ければ自然と仰け反ったり身を翻したりしちまうもんな」
黒子「そう、不必要な弾を撃たないだけで、相当効率は上がりますの」
黒子「先ほど連射の間隔を図ってみましたところ、初撃と二撃目の時間差はだいたい0.5秒」
黒子「狙撃後には後追いの威嚇射撃を交えた方が効果的ですし、最低でも2発分残してのリロードが理想的かと」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 23:48:17.95 ID:ksm+2cwm0
黒子「もらいましたのっ!」サッ
――ドンッドンッ
システム音声『18番、生命力0。ゲームオーバーです』
上条「ナイス、黒子!」
女「ううっ、ごめんね、やられちゃったぁ」グスグス
男「はは、気にするなよ。おまえは精いっぱいやったさ」ナデナデ
黒子「…………」チラ
上条「ん、どうしたんだ?」キョトン
黒子「……別に、どうもしませんの」カシャン
司会『10分経過。現在の状況をお知らせします。ただ今の生命力一位は194ポイント。次点で188ポイントとなっております』
黒子「……2トップが先ほどの途中経過と変わらないですわね」
上条「黒子はまだ180台をキープできてるけど、こっちはもう150台後半だ。いい加減動かないと、まずいかな」
司会『生き残っているペアは17組です。終了まで――」
黒子「わたくしたちが本当に一位を目指すのであれば、どのみち避けては通れない道ですわね」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 20:49:55.85 ID:jF2Ussxx0
上条「あった、金属製の支柱だ」
黒子「太さはそれなりのようですけど、強度の方は」
上条「引っ張ってもびくともしない。使っても問題なさそうだ」グッグッ
黒子「よかった。なら登り棒の要領で地上に戻れますわね」
上条「来た道引き返すなんて悠長なこと言ってられないからな」
黒子「やれやれですの、テレポートさえ使えたら一瞬で降りられますのに」
上条「まぁまぁ、あんまり能力に頼りすぎてると体の反応だって鈍るんじゃないか?」
黒子「む……さらりと手厳しいことをおっしゃいますわね」
上条「ま、運動不足のようには見えないけどな。おまえって御坂と比べてもスリムだし」
黒子(……えーえー、どーせわたくしの体は貧相ですわよ)
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 20:55:16.98 ID:jF2Ussxx0
上条「んじゃ行くか。黒子は俺が下っている間近づいてくるやつがいないか見張って」
黒子「いいえ、ここはレディファーストで」バッ
上条「おまえから? どうして」
黒子「はぁ、少しは察してくださいな。こちらはこの通りスカートを穿いているんですのよ?」ヒョイ
黒子「それともなんですの? 上条さんはひらひらの中身が気になりますの?」パタパタ
上条「ばっ、んなわけないだろっ!」カッ
黒子「あらあら、顔が赤いですわよ? もしかして図星でしたの~?」
上条「ちげえよっ! もういいから、先に降りるんなら早く行ってくれ」
黒子「はいはい、そんな照れなくてもよろしい――」ギュ
――ヒュオオオ
黒子「え……」フワッ
上条「……へ」ピシッ
黒子「~~~~っ!?///」バッ
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 21:03:09.20 ID:jF2Ussxx0
上条「…………え、えと」ポリポリ
黒子「…………」ギュウ
上条「い、いやー、最近の技術革新はマジすごいよなあ。吹き上がりの風まで再現してるなんて」
黒子「…………くっ」ギロ
上条「で、ででで、でもさすがに、ちょっと懲りすぎてる気も、ははは……は」
黒子「……見ましたの?」ボソ
上条「」ブンブンブンブン
黒子「よもや嘘は、仰っていませんわね?」
上条「いやその、両の太腿に巻かれてたレザーバンド? みたいなのは一瞬見えちまったけど」
上条「それより上は全然、これっぽっちも。だからぎりぎりセーフかな、みたいな」アセアセ
黒子「…………」ジト
上条「そ、それより、早く降りないとまた同じようなことになっちまうとも限らないんじゃあ」
黒子「わ、わかってますのっ!」ガシッ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 21:07:56.25 ID:jF2Ussxx0
上条「よっ、と。お待たせ」スタン
黒子「…………」プゥ
上条「まーだむくれてるのかよ。さっきのはどう考えたって不可抗力だろ?」
黒子「別に、むくれてなどいませんの」
黒子(太腿くらいならオッケー、とでも思ってるんでしょうかね。この殿方は)
上条「てか、おまえ普段は学生服で大暴れしてるだろ? あれって周りの人間には見えちまうことも」
黒子「だからなんですの? 自分は悪くないアピールですの? それとも、お姉様みたくダサイ短パンを穿けとでも?」
上条「い、いや、そうは言わねえけど……つうか何気にひどいな」
――ドンッドンッ
黒子「……上階の方に交戦ポイントが移動したようですわね」チラ
上条「他のプレイヤーもいよいよ賭けに出たってことか。タイミング的にはよかったっぽいな」
黒子「どちらにしても、これで後戻りはできなくなりましたの」
黒子「……残り8分少々、急いで移動しますわよ」ツカツカ
上条「ちょ、黒子。待ってくれって」タッタッ
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 21:31:41.03 ID:jF2Ussxx0
――オオオォォォ
上条「へぇ、こっちのエリアだと観客の歓声が聞こえるんだな」
黒子「なかなか盛り上がっているようですわね」
上条「ああ、それにしても――」キョロキョロ
上条「アスレチックっていうだけあって、懐かしい遊具が揃い踏みだな」
黒子「確かに、丸太の壁にハンモック、トンネルに滑り台まで」
上条「おまえなんかお世話になった口じゃないか? 体動かすの好きそうだし」
黒子「否定はしませんの。ともあれ、障害物が多い分戦いにくそうですわね」チャッ
上条「そうだな、ここからはより慎重に進まないと――ん」
――シャアアアア
上条「なんの音だ? どんどん近づいてくるぞ」チャッ
黒子「……はて、この摩擦音どこかで聞き覚えが」
黒子(……壁に細長い影? ……っ、ターザンロープッ!)バッ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 21:51:37.15 ID:jF2Ussxx0
黒子「上条さんっ!」
上条「うぉっ、いきなり大声出すな――」
男「っし、もらったぁ!」バッ
上条「なっ、上からっ!? ――うぉっ!」ドン
――ヒュン、ヒュン
上条「いでっ!」ドスンッ
黒子「あうっ!」ドサッ
黒子(ふう、何とか間に合いましたわね。……やむなく押し倒してしまいましたけど)
上条「ぃてて……わ、わりぃ黒子! 助かった!」
黒子「なんてことないですの。さっ、反撃に転じますわよ!」スクッ
上条「あ、ああっ!」チャッ
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:04:54.52 ID:jF2Ussxx0
男「くそっ、しくじったかっ!」
女「男! 早くこっちに合流して」バッ
上条「逃がすかよっ!」チャッ
男「――ちっ!」パッ
――ダンッダンッ
男「――やべっ!」ヴヴヴ
上条「うっし、二発とも当たった!」
黒子「もう少し早くにロープを手放すべきでしたわね」
女「このっ、あんたさえ邪魔しなければっ!」チャッ
黒子「ふふっ」グイ
上条「おわっ、っと」ヨロッ
――キン、キン
黒子「生憎でしたわね、こちらには盾がありますの」ピト
上条「よ、予告なしに引っ張るなよ」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:13:24.05 ID:jF2Ussxx0
女「なんなのよあの子! 全然攻撃が当たらないじゃない!」ドンドン
黒子(これで4発……そろそろですわね)
黒子「さぁ、いきますわよっ」ダッ
女「飛び出し――っ、調子に乗んなっ」ダンッダンッ
黒子(できるだけ体勢を低く、地を這うように)タッタッ
――ヒュン、ヒュン
女「嘘でしょっ、何で当たらないのよ!? ――えっ」ガチンッ
黒子「ご自分の弾数くらいちゃんと把握なさいな。それと」チャッ
――ドンッ、ドンッ
女「きゃああっ!?」ヴヴヴ
黒子「素人さんが考えているほど、動く的に当てるのは簡単じゃありませんのよ?」ファサ
上条(……で、出番がねえ)ポカーン
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:20:28.19 ID:jF2Ussxx0
男「だ、駄目だ、こいつら強すぎる!」クルッ
女「ええっ、ちょっと男! 置いてかないでよっ!」タッタ
黒子「もっとも愚かな選択ですわね。パートナーを見捨てるなんて」カチャ
上条「――黒子っ、後ろだっ!」
黒子「――っ」バッ
――ビシッ
黒子「……っ!」ヴヴヴ
上条「黒子っ!?」
黒子「へ、平気ですのっ!」バッ
黒子(生命力は……168、直撃は免れたようですわね)カシャン
黒子(それよりも、襲われる直前までまったく気配を感じなかったですの。これではまるで本職の)チラ
???「さっすが、いい反応してんじゃん。一年生ながらダントツの検挙率を誇るだけあるねぇ」コツコツ
???「でもまだまだ。もし本物の銃の弾速だったら、今ので終わってるじゃん?」コツ
黒子「こ、この特徴のある喋り方は」ゾクッ
黄泉川「いや、それ、おまえにだけは言われたくないじゃん?」スッ
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:30:50.51 ID:jF2Ussxx0
黒子「やっぱり、黄泉川先生っ!」
上条「げっ、黄泉川……って、黒子も面識あるのか?」
黒子「もちろん、よぅく存じてますの」
黒子「黄泉川愛穂。警備員(アンチスキル)に所属している対能力者戦闘のエキスパートですの」
上条「警備員(アンチスキル)か。そういや、んな話をチラっと小萌先生から聞いた気もするな」
上条「それで、おまえがそんなに警戒してるってことは、強いのか」チラ
黒子「たった今エキスパートと申しましたでしょう。過去にはレベル3の能力者を丸腰で捕獲したこともあるんですのよ?」
上条「丸腰だ? おいおい、ほんとに俺たちと同じ人間なんですか?」
黒子「さあ、ご本人に直接尋ねられてはいかがですの?」
黒子(驚異的な身体能力に加え、銃器の扱いにも長けている。このエリアの参加者を葬ったのも恐らく……)
黒子(能力使用を禁じられている上に敵の土俵で戦わねばならないというのは)
黒子(……正直、厳しすぎますわね)
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:52:10.15 ID:jF2Ussxx0
黄泉川「へぇ、味方のデータまでよく調べてるなぁ。感心感心」
黄泉川「だけど、常盤台のジャッジメントが私服で男とデートってのは色々とまずいじゃん?」ニヤ
黒子「か、勘違いなさらないでくださいっ! これはデートなどではありませんのっ!///」
黄泉川「おやおや、だったらいったいなんだってんだい?」
黒子「そ、それは、その」モジモジ
黒子「ただ一緒に遊んだり、お食事したり、お買い物しているだけですの」
黄泉川「……世間一般では、その一連の行程をひっくるめてデートっていうじゃん?」
上条「へぇ、常盤台って私服での外出すら認められていないんだな。さすが世界的なお嬢様校」
黒子「そんなカビの生えた校則など真面目に守ってる人は数えるほどしか……って、そんなことはどうでもいいですの!」
黒子(まともにやり合ったところで勝ち目は……よくて相打ちでは戦う意味がありませんし)グヌヌ
上条「黒子、今ふと思ったんだけどさ」
黒子「……なんですの?」
上条「黄泉川先生も、誰かとペア組んでるんじゃないか?」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:02:35.62 ID:jF2Ussxx0
黒子「ペア、そういえばそうですわね」キョロ
黒子(彼女のパートナー次第では、まだ勝ち目が)
黒子(いえ、ですけど、その男性はどちらにいるんですの? 別行動中?)チラ
黄泉川「仕掛けてこないなら、こっちから行くじゃん?」ダッ
黒子(くっ、さすがに考える時間は与えてくれませんわね)ドン
黄泉川「おっと」サッ
――キンキンッ
黒子「盾っ!? どこからそんなものを調達して――」
――ドンッ
上条「い゛っ、なんで俺っ!?」ヴヴヴ
黒子「か、上条さん!?」
黒子(……額に残光が! ……ですけど、男性には男性の銃しか効かないはずじゃ)
???「ンな隙だらけじゃァ、狙う張り合いもねえなァ」ユラユラ
上条「……お、おまえは」
一方「よォ、久しぶりだなァ、三下ァ」ニタァ
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:16:30.30 ID:jF2Ussxx0
上条「……一方通行(アクセラレータ)」
黒子「一方通行(アクセラレータ)って学園一位のっ!? こんな雪国もやしみたいな方でしたの!?」
一方「ハァ? 誰がもやしだァ? ガキだからってェ舐めた口利いてっとすり潰すゾ?」
黒子(……すごい圧力ですわね。……ですけど)
一方「しっかし、くだンねェ催しに参加してみりゃまさかまさか、テメェがいるたあなァ?」ブラーン
上条「いや、その格好で凄まれても反応に困るぞ」ビッビ
黒子「よもや第一位が盾代わりに使われてるなんて……お気の毒ですの」
一方「あァ? 何ならいつかの借りを利息付きで返してやっても――うォッ」ブンッ
――ヒュン
黄泉川「っと、危ない危ない」ガシ
上条「くそっ、避けられたっ!」
黒子「そ、それが適当な表現かは疑問が残るところですけれども」
一方「…………」イライラ
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2012/09/12(水) 23:18:48.68 ID:lP/RbYtAO
もやし宙ぶらりんワロタ
しかし黄泉川先生の握力とかやべえな
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:24:24.02 ID:jF2Ussxx0
一方「て……ンめェ、黄泉川ァ」プラーン
黄泉川「まぁまぁ、せっかく遊びに来てるのに殺気立っても仕方ないじゃん?」グイ
黄泉川「あんたたちも、くだらない柵や私怨は脇においといて、今はゲームに興じようじゃん?」
黒子「それは、校則違反については、お目こぼししてくれるってことですのね?」
一方「俺が一番頭にキてんのはテメェだ黄泉川! 人の襟首振り回して遊んでんじゃあああァっ!?」ブウン
――キン、キン
黒子「惜しいぃ! もう少しでしたのに!」ギリギリ
黄泉川「危ない危ない、一瞬ひやっとしたじゃん」
上条「お、女の腕力じゃねえ。いくらあいつが痩せてるっつったって、片腕で人一人振り回すとか」
黄泉川「慣れてるからね。暴徒鎮圧用シールドに比べりゃ、そりゃ少しは重たいけど」
上条「……黒子、ああいう盾って何キロくらいあるか知ってるか?」
黒子「記憶に間違いがなければ、4キロ前後だったかと」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:47:11.96 ID:jF2Ussxx0
――ドンッドンッ
上条「はぁ、まいったな。まったく隙がねえ」ザッ
黒子「悔しいですけど、打開策が見当たりませんわね」カチャ
黒子(……上条さんの残りの数字は)チラ
上条「47、か。最初の一発が効いたな、しっかりラブラブモードが乗ってやがった」
黒子「盲点でしたの。リストバンドを付けた腕にもやしっ子さんを装備すれば、常時あの状態で戦えますのね」
一方『ヤロッ、今装備って言いやがったァッ!』
黒子「……地獄耳ですの」
黄泉川『師弟一心同体。名付けてガンシールド作戦じゃん』
一方通行『……ハァァァ?』
上条「……あっちはあっちで大変みたいだ」
司会『残り五分です。――生き残っている組は九組。現在のトップは189ポイント、次点で174ポイントです』
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:54:36.23 ID:jF2Ussxx0
黒子「黄泉川先生。ひとつだけお尋ねしてもよろしいですの?」
黄泉川『生命力のことかい?』
黒子「……ええ」
黄泉川『この状況からわかりそうなもんじゃん? 前回の途中経過を聞いていたからこそ、仕掛けに来たんだろ?』
黒子「やはり、お二人が2トップということですわね」
黄泉川「それを知ったところでどうする? 彼氏の方はもう脱落すれすれ、まさか単独でどうにかなるとは」
黒子「もちろん、それほど自惚れてはおりませんの。あと、まだ彼氏ではありませんの」コホン
黄泉川『ふぅん。まだ、ねぇ』
黒子(わたくしの生命力のみであれば、おそらく上位に食い込めているでしょうけれど)
黒子(わずかな可能性に縋って戦うか……それとも)
上条「黒子、ここは引こう」
黒子「え……、か、上条さん?」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:11:36.98 ID:KpMQpQpO0
上条「予想通り、あの二人も無理に追ってはこなかったな」テクテク
黒子(残り四分弱。……これで順位はほぼ本決まりですわね)
黒子「本当に、よろしかったんですの?」
上条「ああ、共倒れになるよりはずっといいだろ?」
上条「黒子の生命力もあいつらのとそんなにかけ離れちゃいないし、それなりの景品はもらえるんじゃないか?」
黒子「ですけど、上条さんは……」
上条「こんなのただの寄り道だろ。当初の目的は黒子との買物兼デートだしな」
黒子(デ……)ドキ
上条「なんてな、俺だけそう思ってるのかもしれないけど」ポリポリ
黒子「い、いえ、さっきはああ言いましたけれど、わたくしだって……その」ゴニョゴニョ
――ヴヴヴ――ヴヴヴ
黒子(……ん、この音は)
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:21:13.91 ID:KpMQpQpO0
上条「あれ、俺の携帯か? ――いや、違うな」シーン
黒子「と、いうことは」ゴソゴソ
携帯『着信中』ヴヴ
黒子「失礼、わたくしでした。出がけにマナーにしておいたのを忘れてましたの」パチ
黒子(って、固法さんですの? 非番の日に電話を寄越すなんて珍しいですわね)ピッ
黒子「もしもし、こちら白井ですの」
固法『あっ、白井さん? よかった、やっと繋がった!』
黒子「……なにかあったんですの?」
固法『スキルアウトが第三、第十五、十六学区で大規模な暴動を! 負傷者の報告も多数入って来ているわ!』
黒子「な、なんですって!?」
固法『今日は休日だし非番の人も多いでしょ。アンチスキルもジャッジメントも人手不足で鎮圧に手が回らないの』
固法『すでに支部員にも応援の要請が回り始めてるわ。初春さんもあと数分で到着するって』
黒子「初春も……」
固法『白井さん。あなた、今どこにいるの? もし来てもらえるようならすごく助かるんだけど』
黒子(……た、助かるって言われましても)チラ
上条「……ん?」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:27:40.35 ID:KpMQpQpO0
黒子「こ、固法さん。わたくしは、その」
固法『どうしたの? もしかして体調が優れないの? 生理とか?』
黒子「……いえ、そういうわけでは」
黒子(なにを、考えているんですの。これはれっきとした事件ですのに)
黒子(ジャッジメントなら迷わず駆けつけなければいけませんのに……どうして)
上条「黒子? なにかあったのか?」
固法『白井さん? もしもし? 聞こえてる?』
黒子「……ご、ごめんなさい。折り返しご連絡いたしますの」
固法『え、ちょっと? 白井さ――』ピッ
黒子「…………」
黒子(……なんで、……なんで今日に限って)ギリ
司会『8番、棄権により脱落です』
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:32:44.34 ID:KpMQpQpO0
上条「おい、今の電話、誰からだ?」
黒子「……風紀委員の先輩ですの。商業地区で暴動が発生、緊急出動するようにと」
上条「暴動って、一大事じゃねえか! 一刻も早く行かないとまずいんじゃないのか?」
黒子「……そう、ですわね」
上条「しゃあねえ、係員に事情を話して棄権しよう」
黒子「ですけど! それでは約束が果たせませんの!」
上条「……約束?」
黒子「上条さんの買い物がまだ終わってませんの」
上条「買い物っつったって、そういう事情があるんじゃ仕方ねえだろ?」
黒子「そ、それが叶わなくとも、せめてこのイベントが終わるまでは」
上条「何言ってんだよ、おまえらしくもねえ。一言詫び入れりゃ済むことだろ」
黒子「軽々しく仰らないでくださいな! こんな中途半端なところで棄権だなんて」
黒子(……初デートがこんな終わり方なんて……あんまりですの)グッ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:56:48.82 ID:KpMQpQpO0
上条「確かに時間だけ見りゃあと二、三分だけど」チラ
上条「何かのテレビ番組でやってたけど、事件勃発後の初動ってすごく重要なんだろ?」
黒子「う……」
上条「その数分の間に知り合いが大怪我でもする羽目になったら、おまえ絶対後悔するだろが」
黒子「そ、それは――――上条さん?」
上条「すみません。31番、上条白井ペア、棄権します」スッ
黒子「……あ」
司会『31番、棄権により脱落です』
黒子(……数値が……消えた)
上条「そんな顔するなって。さ、リストバンドと銃は預かるから、早く行ってこい」
黒子「……そんなに、わたくしを追い払いたいんですの?」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:29:43.86 ID:KpMQpQpO0
上条「……おまえな、しまいにゃ本気で怒るぞ?」
黒子「……冗談、言ってみただけですの」フゥ
黒子「ほんの少し恨み言を呟きたくなっただけですから、気にしないでくださいな」ニコ
上条「……黒子」
黒子「じゃあ、これとこれ、お願いしますわね」スッ
上条「あぁ。――あのさ」
黒子「なんですの?」
上条「この際言っとくけどさ、今日はおまえと一緒に過ごせてとても楽しかった」
上条「俺もこんなところで中断しちまうのは、すごく残念だよ」
黒子「……上条さん」
上条「だから、後日改めて仕切り直ししないか?」
黒子「……いーえ、その必要はないですの」
上条「え……」
黒子「すぐに終わらせて戻ってきますから。後ほどまた合流いたしましょう」
上条「いや、だけど、時間がほとんど残らないんじゃ」
黒子「関係ありませんの。これはわたくしなりのケジメですの」
上条「……わかった、おまえがそれで納得できるんなら」コクン
黒子「ふふ、決まりですわね」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:34:54.80 ID:KpMQpQpO0
黄泉川「話はまとまったかい?」スッ
黒子「……っ!」バッ
上条「黄泉川先生! 一方通行も」
一方「……チ」
黄泉川「構えなくていいよ。うちらもついさっき、途中棄権の申告したからさ」
黒子「……え、ということは」
上条「さっき司会が言ってた棄権って、二人のことだったんですか」
黄泉川「どうやらほとんど同じタイミングで連絡が来たみたいじゃん」
黄泉川「一応、わたしら二人は9位確定みたいじゃん」
上条「んじゃ、俺たちは8位ってことか。順位が入れ替わっちまったな」ポリポリ
黒子「負けていた手前、少々後ろめたいですわね」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:41:05.49 ID:KpMQpQpO0
黄泉川「それで白井、物は相談なんだけどさ」
黒子「わかってますの、現場まで運べばよろしいんですのね?」
黄泉川「さすが、話が早くて助かるじゃん」ニヤ
一方「う゛ォい待て。俺も連れていけ」
黒子「え? でもあなた、名目上は一般人でしょう?」
一方「ンだァ? 超電磁砲(レールガン)には暴れることを認めてンのに、他がダメってのは差別だろ」
黒子(お姉様に関しては、許可した覚えはまったくないのですけれども)ハァ
黒子「どちらにしても無理ですの。わたくしが一度に運搬できる重さはせいぜい130キロまで」
一方「てめえと黄泉川と俺、か。ぎりぎりいけンじゃねえかァ?」
黒子(どう考えても無理ですの)
黄泉川「こらこら、あの子を一人置き去りにするわけにはいかないジャンよ」
上条「あの子? ……あぁ、打ち止めか。連れてきてたんだな」
黄泉川「イベントで上位まで残るともれなく限定ゲコタストラップがもらえるって聞いてね」
黄泉川「あの子の無言の催促にこの子が応じてやったと――」
一方「テメエ、余計なことべらべら喋ってンじゃねェ!」
上条「相変わらず面倒見いいんだな」
一方「……ウ、ウッセェよ」プイ
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:45:47.24 ID:KpMQpQpO0
黒子「では、しっかり掴まっていてくださいな」
黄泉川「あいよ。じゃあアンタは、ちゃんとあの子を家まで送り届けるんだよ」
一方「…………」ハァ
黄泉川「一方通行(アクセラレータ)」
一方「……わァってるよ」
黒子「じゃあ上条さん。とっとと片付けて戻ってきますの」
上条「ああ、――黒子」
黒子「はいな?」
上条「怪我だけはすんなよ、絶対に」
黒子(…………ふふ)
黒子「当然ですのっ。わたくしを誰だと思ってますの?」ビッ
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:49:02.56 ID:KpMQpQpO0
上条「行っちまったな」
一方「あァ……って、気安く話しかけンな」クル
上条「あ、おい待てよ」
一方「…………ア゛ァ?」ズズ
上条「松葉杖なしじゃ階段登るのきついんじゃねえか? よかったら上まで肩貸すぜ」
一方「ハッ、お断りだ。三下に同情されるほど落ちぶれちゃいねぇンだよ」ズズ
上条「そうやって突っ張っても疲れるだけだろ。ちったぁ世渡り上手になれって」
一方「……鏡見て言ってろ」スゥッ
上条「……たく、あいつといい御坂といい、誰かに頼るのがとことん下手だよなぁ」
上条(そういや、8位の景品って何が貰えるんだろうな)
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:55:41.62 ID:KpMQpQpO0
――シュイン
黄泉川「おぉっ、こりゃあ爽快じゃん!」パッ
黒子「瞬間移動は初めてですの?」シュイン
黄泉川「負傷したときに一度だけ。ま、出血で意識がおぼつかなかったからろくに覚えちゃいないんだけど」パッ
黒子「アンチスキルも大変ですわねぇ」ピッピッピッ
黒子「初春、聞こえてますわね?」
初春『はい、白井さん。今どちらですか? 合流できそうなんですか?』
黒子「第六学区の鉄橋を横断中ですの。こちらの位置情報を同期してくださいな。固法さんにも遅れてすみませんと一言」
初春『了解、伝えておきますね』
黒子「では、作業中に現在の状況を掻い摘んでお願いしますの」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:57:36.51 ID:KpMQpQpO0
初春「はい、現在第十六学区内の三個所でATM強盗及び商店の破壊が行われている模様です」カタカタ
黒子『割と近いですわね、まずはそちらを叩けばよろしいかしら?』
初春「お願いします。銃器類を所持している犯人もいるとのことなので注意してください。それと」パチ
――ヴン
黒子『なんですの?』
初春「これは別の学区内の話ですけれど、敵側に能力者がいたとの報告が数件上がって来ています」
黒子『能力者ですって?』
初春「ええ、手をかざして離れたところにある物体を動かしたとか」
黒子『……ふむ。念動力系といったところでしょうか』
初春「どういった能力なのかはまだ何とも言えませんが、他にも能力者がいないとも限りません」
黒子『わかりました。頭に入れておきますの』
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 02:01:43.39 ID:KpMQpQpO0
黄泉川「了解。そっちも気をつけて」パチン
黒子「アンチスキルの方はどうですの?」
黄泉川「非番の連中はほぼ出揃ったみたいじゃん。徐々に逮捕者も増えてきてる」
黄泉川「それから、能力者についてもうちょい詳しい話が聞けた。放置自転車を浮かべてビルに突っ込ませたらしい」
黒子「……自転車というからには、それなりの重量がありますわね」
黄泉川「おそらく、レベル3ないし4ってところじゃん」
黒子「しかし、それほどの能力者がどうしてスキルアウトなどと手を組んでるんですの?」
黄泉川「そこは、誰かをとっ捕まえて吐かせればいいことじゃん」
黒子「そう簡単にいけばよろしいんですけれど」
初春『白井さん、聞こえますか? あと一五秒ほどで犯人の乗った白いワンボックスカーがそこの交差点を通過します』
――ブウウウウ
黒子「――こちらでも視認。いったん切りますわね」パチ
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:00:11.89 ID:OG9dtuKr0
――車内
スキルアウトA「へっへ、思いのほかうまくいったな」
スキルアウトB「これだけの規模となると、こっちの狙いを絞るのも難しいだろうからな」
スキルアウトC「無駄口叩いてないで合流ポイントへ急げ。視覚阻害の能力者が待っているはずだ」
スキルアウトA「認識させなければ監視衛星も意味がない。安全に持ち出せるってわけか」
スキルアウトC「そういうことだ。この仕事が終わったら南の島でバカンスさ」
スキルアウトA「へへ、悪くねえな」
――ブツン
スキルアウトA「ん? ……あれ」
スキルアウトB「どうした? ……ん、なんか変な音がすんぞ?」カラカラ
スキルアウトA「な、なんだこれ、どうなってやがる!」
スキルアウトC「おい、何やってる。速度が落ちてきているぞ、ちゃんとアクセルを」
スキルアウトA「ふ、踏んでるよ! ベタ踏みしてんのに、一向に反応しねえんだよ!」
スキルアウトB「……ちっ、こんなときにエンジントラブルかよ、ついてねえ」
スキルアウトC「……待て、前方に誰かいるぞ!」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:03:50.48 ID:OG9dtuKr0
――プスンプスン
黄泉川「車を止めるっていうからてっきりパンクでもさせるのかと思ったら」
黄泉川「こいつは一本取られたじゃんよ」ニヤ
黒子「犯罪者の身柄を気遣う必要があるかどうかには疑問の余地が残りますけれど」
黒子「なるべく公共の施設を破壊しないようにとのお達しがありますから」
黄泉川「より安全に停車できるよう、タイミングチェーンを断ち切ったってわけか」
黒子「ええ、エアバックの強制作動という手も考えましたけれど」
黒子「操縦ミスでその辺の店にでも突っ込まれたら後始末に困りますし」
黄泉川(確かに、クランクシャフトとカムシャフトを繋ぐチェーンを切っちまえば)
黄泉川(エンジンの起動に必須である吸気と排気ができなくなる)
黄泉川(よって、車はハンドル操作を損なわれることなく、慣性に従って緩やかに止まる)
黄泉川(知識もさることながら、実行してのける胆力と能力の精度が半端じゃないね)
黒子「車外に出た瞬間を狙いますの。フォローの方、よろしくお願いします」
黄泉川「あぁ、任せな」カチャン
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:07:48.82 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトA「……くそ、出るぞ!」バン
スキルアウトB「で、出るつったってくそ重いぞ、この鞄!」
黒子「逃がしませんわよ」ヒュン
スキルアウトA「へ? ――ぐぁ!」ドゴッ
スキルアウトC「ばっ……なにいきなりやられてやがる!」バッ
黒子「ほっ……と」スタン
スキルアウトB「……な、なんなんだてめえ! どこから湧いて出やがった!」
黒子「乙女に向かって湧いて出たとは無礼千万」
黒子「ジャッジメントですの。そちらの車体ナンバーは手配済みです。風紀委員の緊急時約定に基づき」
黒子「あなた方を強盗傷害の容疑により拘束しますっ」キッ
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:12:52.83 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトB「お、おい、ど、どうすんだよ!?」
スキルアウトC「しゃらくせぇ! とっとと始末してズラかんぞ!」バッ
黒子(懐に手を! やらせは)
――パンッ
スキルアウトC「ぐあぁっ!?」メキィッ
――カッカッ
黒子(……、とと)
黄泉川「いい年した大人が、物騒なもんを女の子に向けるもんじゃないよ」スチャ
スキルアウトC「痛ぅぅ、く、くそがぁ……っ!」
黒子(硬質ゴム弾。先ほどの音、手骨にひびくらいは入りましたかしら)
黒子(それにしても、抜く瞬間に狙いを定めたんですの? やはりこの方、相当のやり手ですわね)
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:19:09.19 ID:OG9dtuKr0
黄泉川「これ以上の抵抗は無意味だよ。大人しくお縄に」
スキルアウトC「くっ、まだ終わっちゃいねぇっ」バッ
黄泉川「ったく、聞き分けが悪いじゃんよ」バンッ
――バシィッ
スキルアウト(なっ、落ちてる銃に当てやがったっ――はっ)
――ガスッ
スキルアウトC「い゛ぎっ!? かっ……はっ」
黄泉川「武器を抜かせもしなかった相手が、拾わせてくれると本気で思ったのかい?」ギリギリ
スキルアウトC「ぐ、ぐるじ、……ぎぶっ、ぎぶ……ぁ――」カクン
スキルアウトB「……あ……なん」
黄泉川「……さて、あんたに少々聞きたいことがあるんだけど」スチャ
スキルアウトB「ひっ、じゅ、銃を向けないでくれ!」
黄泉川「うん、撃たれたくなかったら今みたいにはきはき喋りな」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:29:53.08 ID:OG9dtuKr0
黒子「ええ、保育園前の歩道橋です。では、よろしくお願いします」カチャ
黒子「近くで展開している部隊が収容しにきてくれるそうですの。十分くらいかかるそうですけど」
黄泉川「そっか。んじゃあただ待ってるのもなんだし、先に尋問を始めちまおう」
スキルアウトB「な、なんでも喋るから、暴力は……俺は運び屋として雇われただけで」
黄泉川「あんた次第だね。さて問1、あんたたちはこの騒動の計画をどこで知った?」
スキルアウトB「が、学園のアングラサイトだ。仲間内で話題になってたから、チラッと覗いてみたんだよ」
黒子「アングラサイト? 先のレベルアッパー事件のときのような?」
スキルアウトB「そ、そんな感じだ」
黄泉川「問2、呼びかけの内容はどういったものだった?」
スキルアウトB「た、確か見出しは『学園に不満や恨みのある者たちに告ぐ』って煽り文句で」
スキルアウトB「多箇所同時襲撃の概要が記されてたんだ」
黒子「……所在もわからぬ人間の呼びかけで、これだけ大規模な暴動になったと?」
スキルアウトB「それが、襲撃日が近づくにつれて、アンチスキルやジャッジメントの対応予測なんかも」
黒子(……対応予測? なんで部外者にそんなことが……単なるでまかせ? それとも……)
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:38:49.15 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトB「その顔、言いたいことはわかるよ。俺たちだって最初は半信半疑だったさ」
スキルアウトB「けど、そのサイトには何人かの能力者も計画に加わるみたいなことが書いてあって」
スキルアウトB「出回ってるソーシャルツールを見る限りじゃ参加者もかなりいるみたいでさ」
スキルアウトB「これならいけるんじゃないかって、周りの連中も次第に乗り気になってったんだ」
黒子「赤の他人の意見を鵜呑みにしたんですの? もし単なるいたずらだったら」
スキルアウトB「単なるいたずらに、車や武器を提供するやつがいると思うか?」
黄泉川「じゃあ、この車やあんたたちの武器も?」
スキルアウトB「あぁ、全部が全部とはいわねえけど、大体は計画者側からの提供品だ」
黒子「……どうも、きな臭いですわね」
黄泉川「騒動が収束すれば、全容も掴めるかもしれないけど」
黄泉川「じゃあ問3、首謀者のことをできるだけ詳しく教えろ」
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:45:54.41 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトB「いや、まったく。――ま、待て! ほ、本当だって!」
黒子「これは忠告じゃなくて命令ですのよ。さっさと答えないと、少々荒っぽく」キラン
スキルアウトB「し、知ってたら答えるって! 俺だって、嫌々参加させられたんだよ」
黒子「で、大事そうに抱えているその鞄の中身はなんですの?」
スキルアウトB「……そ、それは」
黒子「金銭の管理者はもちろん、その部下。あるいは輸送屋にガードマン。もしくはその家族たち」
黒子「あなたがそうやって金を持ち逃げすることで、何十人もの人の人生が狂いますの。自覚してますの?」
スキルアウト「…………」
黄泉川「……ふぅ。知っていることだけでいい、とっとと話しな」
スキルアウトB「……襲撃グループの代表者が集まったときが一度だけあって」
スキルアウトB「味方についた能力者が代表してデモンストレーションしてみせたとは聞いてる」
スキルアウトB「だから、もしかするとそいつが。それ以上のことは、なにも――」
――ドゴォォォン
黒子「……今のは、爆発音?」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:48:45.85 ID:OG9dtuKr0
黄泉川「……ここからそう遠くはなさそうだね。本部に応援を寄越してもらうか」ピッピ
黒子(…………)
黒子「黄泉川先生」
黄泉川「ん、なんだい?」チラ
黒子「申し訳ないのですが、この方々を見張っていただいてもよろしいですの?」
黄泉川「……ちょっと待った。まさかあんた、一人で偵察にいくつもりかい?」
黒子「はい、仮に今までのが陽動だとすれば、ここで一歩出遅れると取り逃がしてしまう可能性が」
黒子「わたくしが見ましたところ、先生がお持ちの武器は改造拳銃のみ」
黒子「装備が整っていればともかく、敵に強力な能力者が加わっていることを考えますと」
黄泉川「心もとないってかい? わたしの武勇伝は知っているんだろ?」
黒子「もちろん、リスクマネジメントに関してはアンチスキルの方に一日の長があると思ってますの」
黒子「ですが、彼らをこのままにしておくこともできませんし」
黄泉川「む……」
黒子「敵の戦力が不明である以上、二人のどちらかが仕掛けるなら一撃離脱が容易なわたくしの方かと」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:57:55.79 ID:OG9dtuKr0
黄泉川「……んんー」
黄泉川「わかった、気が進まないけど、この状況ではおまえの意見に分があるじゃん」
黒子「ありがとうございます」
黄泉川「ただし、わたしも一教師として、生徒を危険な目に合わせるわけにはいかない」
黄泉川「これは手に負えないと感じたらすぐに戻ってくるんだ。いいね?」
黒子「かしこまりました、黄泉川先生もお気をつけて」
黒子「…………」チラ
スキルアウトB「……な、なんだよ」
黒子「……あなたのその消沈した顔が、反省したフリではないことを祈ってますの」シュン
スキルアウトB「あ……」
黄泉川「……いったか」
スキルアウトB「……あんな女の子に説教されるなんて、……俺、マジ、格好悪いな」
黄泉川「格好悪いって思うだけの自尊心が残ってるなら、必死にやり直すことだね」ポン
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:05:22.18 ID:OG9dtuKr0
黒子(この辺りのはずですけれど……っ)ヒュン
黒子(割れた窓ガラスから黒煙……、どうやらここで間違いなさそうですわね)パッ
黒子(一階は、食料品売り場のようですわね……と)パキ
黒子(……割れたガラスを踏むと、音が響きますわね)ヒュン
黒子(さて、ここからは慎重に)
――ガシャーン
黒子(……奥から物音が……戦闘中?)
スキルアウトD「へっへへ、ちょろいもんだぜ」
黒子(……話し声)バッ
黒子(ふぅ、こちらに気づいたわけでは、ないようですわね)
黒子(敵が何名いるのか把握しきれていないうちは)
黒子(こちらが入り込んでいることを悟られないように……あら?)
ガードマンA「う……ぐぅ……」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:15:04.63 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトE「デパートのガードマンなんてものの数じゃねえっつうの」ガッ
ガードマンA「ぐわっ! ……う……」
黒子(…………!)
スキルアウトD「生意気にも一撃くれやがってよ。おら、目ぇ覚ませやっ」ドスッ
ガードマンA「ぐっ……ごほっ、ごほっ」
黒子(……き、気絶してる相手に、なんてこと)
スキルアウトE「おい、遊んでる暇はねえぞ。ちゃんと仕事しねえと旦那がキレるぜ」
黒子(……旦那)
スキルアウトD「わかったわかった。んじゃあ、お返しに腕を一本だけもらっとこうか」グイ
ガードマン「う……や、止め……ろ……」
スキルアウトD「ほれほれ、ちゃんと力いれないと折れちまうぞ」ミシミシ
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:20:05.06 ID:OG9dtuKr0
ガードマンA「ぐあ、ああぁぁ……!」ミシミシ
スキルアウトE「おまえってほんと執念深い――D! 左だ!」
スキルアウトD「何……っ!」バッ
スキルアウトE「バカっ! そっちじゃなくて向かって左――」
黒子「――ふっ!」パシ
――ヒュン
スキルアウトD「へっ――ぐあっ!」ズダン
黒子「少しばかり、おいたが過ぎますわよ」スチャ
――ズガッ、ズガガガガッ
スキルアウトD「つつつ……って、な、なんだあこりゃあ!? う、動けねえ!」ピン
黒子「暴れても無駄ですわよ。そのダーツ、床に食い込んでますから」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:30:40.80 ID:OG9dtuKr0
黒子(余計なリスクを背負いたくはなかったですけど)
黒子(目の前で行われている暴力行為は、風紀委員として見過ごすわけには参りませんの)
ガードマンA「お、お嬢ちゃんは……」
黒子「走る力は残ってますの?」
ガードマンA「あ、ああ。なんとか」
スキルアウトE「な、なんなんだてめえ!」
黒子「ジャッジメントですの。住民に対する強盗傷害、及び器物破損の現行犯で拘束します」
スキルアウトE「……なに! いくらなんでも到着が早すぎるぞ!」
???「焦る必要はねえよ」
スキルアウトD「……あ!」
黒子「何者ですの!? こそこそ隠れてないで出ていらっしゃいな!」バッ
???「ふん、威勢のいいお嬢ちゃんだ」ヌゥ
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:35:51.54 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトD「は、ハウンドの旦那!」
黒子(……ハウンド、猟犬? ……通称ですの?)
ハウンド「ずいぶんと器用な真似をするじゃないか、ダーツで人間を床に縫い留めるなんて」
ハウンド「んなことができるのは、上位のテレポーターくらいのもんだろうな」
黒子(…………っ)
スキルアウトE「テレポーター、つまり単独先行ってことすか」
ハウンド「おおかた、さっきの轟音に気づいて様子見に来たってところだろう」
ハウンド「味方がいるとしてせいぜい一人か二人。大能力者であっても、自重以上の物を運搬するのは難しいはずだ」
ハウンド「と、今の説明で何か訂正する箇所があるかな?」
黒子(……この男)ジリ
黒子「……外に出たら、全力で南に走って」ボソ
ガードマンA「……え」トン
――ヒュン
スキルアウトE「……っ、男が消えた!?」
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:51:28.00 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「……いい判断だ、足手まといがいちゃあ勝負ありだからな」
ハウンド「だが、自分も一緒に逃げなくてよかったのかな?」
黒子「逃げるか否かは別にして、確認したいことがありますから」
ハウンド「ほぅ、確認ねぇ」
黒子「あなたは、いったい何者ですの? なんの目的でこのような騒動を起こしたんですの?」
ハウンド「……何者ってほどのモンでもねえな。それから、そうだな。この騒ぎは」
ハウンド「言うなれば、ただの娯楽(ゲーム)だ」
黒子「……ゲーム……ですって」ワナワナ
ハウンド「そうさ、学園の警備機構が不測の事態にどの程度対応できるか」
ハウンド「それに興味があったんでな。余った資金を費やして試してみた」
ハウンド「お陰様で結果は上々だ、貴重なデータがたくさん取れたよ」
黒子「……なるほど、あなた、わたくしの一番きらいなタイプですわね」スチャ
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:57:01.65 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「やる気まんまんって面だな。いいぜ、それじゃあ」
ハウンド「お手並み拝見といこうかっ」バッ
――ガラガラガラ
黒子(……なにかが来る? ……、レジカート!)
――シャアアアアアッ
黒子「くっ、速いっ……!」バッ
――ドゴッ――ガッターン
ハウンド「ほぅ、なかなかすばしっこいじゃねえか」
――ガラガラガラガラ
黒子(横っ、後ろからもっ!? ……っ)ヒュン
――スタッ――ガコーン
ハウンド「商品棚の上に逃れたか。なるほど、テレポーターってなぁ厄介だな」
黒子「……あまり調子に乗っていると、痛い目を見ますわよ」スチャ
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 22:08:04.38 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「ダーツか、そりゃあ怖いな」バッ
――スルッ
黒子「……なっ!?」
黒子(ダ、ダーツが指からすっぽ抜けた!?)
黒子(……いえ、違う。今の感触は、まるで見えない手に引き抜かれたような)
ハウンド「よそ見してる暇はねぇぜ?」クン
黒子「……はっ」
――ギュンッ
黒子「……まずい!」ヒュン
――ドガガガガッ
黒子(今わたくしに降ってきたダーツ、自然落下の速度とは明らかに違いましたの)パッ
黒子(あの男の手の動きから見ても、ほぼ間違いない)スタン
ハウンド「また外したか、ちょこまかとうぜえなぁ」イラ
黒子(離れた場所にある物を自在に操る……十中八九、念動力系の能力者ですの)
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 22:16:20.41 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「ち、このままじゃ埒があかねえな」
ハウンド「おい、ぼけっとしてねえでおまえらも手伝え」チラ
スキルアウトE「へ、へい」
スキルアウトD「お、俺も、そうしたい、んですけど」ジタバタ
ハウンド「……あー、そうだったな」ズゥゥ
――ググググ――キンッ
黒子(……!)
スキルアウトD「す、すんません。助かりました」ムク
黒子(……地面に埋め込まれていた縛めまで、こうもあっさりと)
ハウンド「礼を言ってる暇あったら、とっととそいつをふんじばれ」
スキルアウトD「へ、へい」
黒子(く、この分では、拘束してもまったく意味がないですわね)
黒子(少々危険ですけれど、体内に直接打ち込むしか、なさそうですの)
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 22:32:14.08 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「よぉし、いけっ」
スキルアウトD「う、うおおおおっっ!」ダッ
黒子(……! 向かってくる男が死角になってる。これなら一本くらい――)
――ツルッ
黒子「……くっ、またですのっ!?」
スキルアウトD「おらぁっ!」
黒子「……っ」バッ
スキルアウトD「なっ――いでっ」ズガッ
ハウンド「つっかえねー、ちゃんと相手の動きくらい見ろよ」
黒子「……このっ」キュッ
スキルアウトE「うりゃぁっ!」ブン
黒子(後ろっ!? ……避けきれない!)ヒュン
――スカッ
黒子「……はぁ……はぁ」パ
ハウンド「おー、今のはまぁまぁ惜しかったっぽいな」
黒子(……や、やっぱりおかしい。人を壁にしても、ダーツだけを操作できるなんて)
ハウンド「へっへっ。ようやく疲れが見え始めたじゃねえか」ニタァ
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:00:29.62 ID:OG9dtuKr0
黒子(……完全に、最強手を封じられましたわね)
黒子(ですけど、もし敵が離れた場所にある物を操る能力者だとしたら)
黒子(視界を遮られた状況で、わたしの手にしたダーツだけを操れるはずはありませんの)
黒子(……この状況で相手の能力を誤解していたら、絶対命取りになる)ポタ
黒子「……ビルに自転車を突っ込ませたという能力者は、あなただったんですのね」
ハウンド「ほぅ? さすがは学園の警備機構。情報共有の早さもピカいちだな」
ハウンド「ん、待てよ? ってことは、結構前から監視カメラで動きを悟られてたのか」
ハウンド「これ以上時間を稼がれると、ちっとまずいな」
――ズゥゥゥゥゥン
黒子(……? なんですの? 一瞬、肌がピリピリと……)
黒子(……いえ、今の違和感も敵の能力の可能性がありますわね。気を引き締めないと)
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:15:54.11 ID:OG9dtuKr0
黒子(今のところ確定しているのは、人間は動かせないという点ですわね)
黒子(ダーツ以外に何かを持ったとしても、敵の能力如何では奪われてしまう可能性が高い)
黒子(飛び道具が使えないとなると、残るは接近戦のみ)
黒子(とはいえ、相手は三人。正面から向かうにはあまりにも無謀ですの)
ハウンド「そろそろ終わりにすんぞ。おまえらは全力であの小娘を追い回せ、隙ができたところを仕留める」
スキルアウトD「了解っす」
スキルアウトE「今度こそ、やってやるぜ」ブンッブン
黒子(……真っ先に仕留めるべきは、あの能力者)
黒子(やせ形とはいえ締まった体をしていますし、なるべくお近づきになりたくはないですけど)
黒子(あの三人の距離を引き離した瞬間を狙い……)
黒子(死角に転移後、直接相手に触れて壁に埋め込む)
黒子(もしそれが失敗したら、さすがに引き時ですわね)
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:23:51.16 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトD「よし、行くぞ!」
スキルアウトE「おぅ、今度こそぶっちめてやる!」
ハウンド「さて、何か適当に動かす物はと……」キョロ
黒子(少しずつ、後ろに下がるんですの)タッタッ
スキルアウトD「そう簡単に逃がすかよ」
スキルアウトE「おまえはそっちからいけ、俺は棚の後ろに回る!」
スキルアウトD「わかった!」
黒子「くっ、いい加減しつこいですわよ!」タッタッタ
黒子(……よし、大分距離が稼げた。後ろに走りながら。3、2――)
スキルアウトE「おっしゃ、挟み撃ちだ!」バッ
黒子(1――今!)ヒュン
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:31:31.83 ID:OG9dtuKr0
黒子(ビンゴ! 敵の三メートル後方!)パッ
黒子(これで終わらせ――え)ダッ
ハウンド「ひひ、やっと近くにきたなぁ」クルッ
黒子(なっ、なんでもう後ろを向いて――まずいっ!)タンッ
――ダンッ
ハウンド「はっ、バックステップなんかで俺から逃げられっかよ」
黒子(くっ、一歩で間合いを潰され……!)
ハウンド「わざわざ殴られにぃ」ググ
黒子(お願いっ、間に合――)
ハウンド「ご苦労さぁんっ!」シュッ
――ドボォッ!
黒子「ぐぶッッッ!!!」ビクン
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:53:38.35 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「そぉっ、らぁっっ!!」グンッ
黒子(う゛あ゛っっ!!)
――ズダンッ――ダン――ズザザァ
黒子「ぐっ、ぶっ……う゛っ」ビクン
黒子(ぎゃ、逆、流……喉元、まで……耐え……う゛……無……理)ジワ
黒子「う゛っ、げぼぉッッ!!!」ビクン
――バシャアッ
ハウンド「くく、こりゃあまた盛大にぶちまけたなぁ。いいのか? ここ、他人のお店だぜ?」
ハウンド「うまく不意をつけたと思っただろ? 真逆の結果になっちまって残念だったなぁ?」
黒子「げぼっ! あ゛、あ゛っ……お゛っ、う゛え゛え゛ぇっ!」ビチャビチャ
ハウンド「あぁ、悪ィ悪ィ。吐き気と痛みで答える余裕もなさそうだなぁ」ザッザッ
黒子(……ど、どうして……です……の)クラ
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 20:52:55.69 ID:ZLb7EMui0
黒子「ぐ……うっ……う゛……ぐっ」ググ
ハウンド「お、まだ立つか。結構頑張るねぇ」ニヤニヤ
黒子「こ……の……っ、うぷっ……」グラ
黒子(……どうして、転移する場所が、一瞬に、して)ググ
ハウンド「はは、あまり無理すんなって。大分しんどそうな顔してんぜ?」ザッザッ
黒子(……はぁ、近づいて、来る。……はぁ……お願い……動いて)
ハウンド「待ってな、今楽にしてやるから、よっ!」シュッ
黒子「――グッ!」グンッ
――クルン
ハウンド「おおぉっ!?」
黒子「……っ! ……はぁっ」ヨロ
黒子(……あ、危なかった。反応がわずかでも遅れてたら、終わってましたの)ゾク
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 21:12:29.41 ID:ZLb7EMui0
ハウンド「いやぁ、すげぇすげぇ。俺の拳食らっといてあんな芸当ができるとはな」パチパチパチ
スキルアウトD「容赦ないっすねぇ。うずくまってる女の顔面目がけて蹴り放つなんて」
ハウンド「おまえは、実験動物(モルモット)の雌雄をいちいち気にするのか?」
スキルアウトD「い、いえ」
ハウンド「はは、だよなぁ?」ポンポン
黒子「……はぁ…………はぁ」
ハウンド「体重が軽かったのと後ろに跳んでたのが幸いしたってところか」
ハウンド「だがまぁ、さすがにもう一発もらったらゲームオーバーだな?」ククク
黒子(……ただの念動力であれば、転移を瞬時に察する力などないはず)
ハウンド「ずいぶんと口数が少なくなっちまったな、さっきまでの威勢はどうしたよ?」
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 21:42:57.90 ID:ZLb7EMui0
黒子(ですけど、この男が物体を動かしているのは紛れもない事実ですの)
ハウンド「顔色が悪いぜ? 負けた後のことを想像しちまったかぁ?」
黒子(……となれば、別系統の能力を応用しているとしか)
黒子(ビルに自転車を飛ばし、わたくしには商品カートを放ち)
黒子(取り出したダーツをことごとく奪い、利用する。……操る物の共通項は)
黒子(――ある。だとすれば、先ほどの妙な感触に関連付けることも)
黒子「――そう。そういうこと、でしたの」
黒子「あなた、電磁力を扱えますのね」ギリ
ハウンド「くく、やっと気づいたか」
ハウンド「俺の能力はちょっとクセがあってな、電荷制御ってんだ」
ハウンド「身の回りにある空間や磁性体に存在する電子を高速スピンさせ、強力な磁場を形成するのさ」
黒子(自転車、商品カート、そして、ダーツも。これらには等しく磁性体である鉄やニッケルが使われている)
黒子(てっきり殺傷力に勝る金属具を選んでいるものと思っていたのが、失点でしたわね)
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 22:34:29.32 ID:ZLb7EMui0
ハウンド「そこまで理解したってことは、さっきのカラクリにも気づかれたかな」
黒子「電磁波の反射の有無で、身の回りにある物体の大まかな位置や形を感じ取れる、といったところですわよね?」
ハウンド「ふん、頭の回転は悪くねえみてえだな」
ハウンド「その通り。俺と対象との間に障害物がない限りは電磁波の乱れを把握し、即時対応できるのさ」
ハウンド「無論、てめえがどこに瞬間移動したかも例外じゃねえ」
黒子「先ほどからの手の動き、あれも念動力に見せかけるダミーですのね?」
ハウンド「初見だとこれに引っかかるやつが多いんだよ。気づいた時には大抵手遅れだがな」
黒子(ホント、お喋りな男ですの。ですけど、おかげで呼吸を整えるだけの時間は稼げましたわね)グ
黒子(偏りがあるとはいえ、お姉様と類似する能力者。すぐに看破できたはずですのに)
黒子(こちらから近寄るにはリスクが大きすぎる。ですけど、鉄矢での拘束は不可能)
黒子(残るは体内への転移ですけど、風紀委員のわたくしが重度の怪我を負わせるわけには)
黒子(黄泉川先生との約束もある。やられっぱなしは口惜しいですけども、いったん引くべきですわね)
黒子(まずは外へ――)
――シーン
黒子「…………え」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 22:56:39.73 ID:ZLb7EMui0
黒子(な、なんで転移しないんですの!? 痛みも大分引いてますのに)
ハウンド「ひひ、余所見してる余裕があるのかぁ?」ダッ
黒子「……っ」タッタッ
ハウンド「追いかけっこをご所望か? こっちが何人いると思ってんだ?」
黒子(……やはり、入口を塞ぐように回り込んでる。……これではまるで)
黒子(いえ、間違いない。この男、こちらが移動できないことを知っていて)
スキルアウトE「へっへ、今度は逃がさねえよ」ダッ
黒子(……! 裏口も塞がれてますの!?)
黒子(……そうだ、地下駐車場からなら地上に)ダッ
スキルアウトD「待てやこらぁ!」ダッ
黒子(……く、息が……上がって)ハァハァ
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 23:02:17.41 ID:ZLb7EMui0
黒子「はっ、はっ、はっ……はぁっ、はぁっ」ヨロ
黒子(……あった、非常階段……っ)ハッハッ
スキルアウトF「旦那ー、地下の確認終わりましたぜ。――って」
黒子「……ま、まだいましたの?」ジリ
スキルアウトF「……なんだあ、このガキ」
ハウンド「ジャッジメントの回しモンだ。ちょうどいい、おまえも狩りに参加しろ」
スキルアウトF「……狩り? 捕まえればいいんすか?」
黒子(しょ、冗談じゃないですの! ただでさえ劣勢に立たされていますのに!)タンタンタン
ハウンド「おいおい、そっちは上り階段だぜ? はは、言われなくてもわかってるか」
ハウンド「頭の回転が早いってのも残酷だよなぁ。てめえはどうやったってここから出られねぇ」
ハウンド「俺たちの手でボロ雑巾みてぇにされるまではなァッ!!」
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 23:05:03.94 ID:ZLb7EMui0
ハウンド「F、おまえは他の連中と一緒に一階を完全封鎖しろ。非常階段も、業務用エレベーターも含めてだ」
スキルアウトF「あ、はい。了解っす」
ハウンド「DとEは俺と兎狩りだ。2階にも2、3人仲間がいるし、それで十分だろ」
スキルアウトD「ですけど、いくらガキっつっても相手はレベル4すよ? 旦那ならいざ知らず」
ハウンド「心配すんな、やつは今能力をまともに使えねえ。せいぜいレベル2ってとこだ」ツカツカ
スキルアウトE「へ、どういうことっすか?」
ハウンド「企業秘密だ。ともかく、今のやつの戦闘力は一般人と大差ねえんだよ」
スキルアウトD「まぁ、それがホントなら楽勝っすね」
スキルアウトE「世の中の厳しさってやつをたっぷり味合わせてやらなきゃな」ボキボキ
ハウンド「さぁて、店内放送のスイッチは……これだな」
――カチ
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 23:26:11.51 ID:ZLb7EMui0
ハウンドドッグ『テレポーターのお嬢ちゃん、聞いてるかぁ?』
黒子(…………この声っ)
ハウンド『俺は親切だからよ。おまえの処遇について教えといてやる』
ハウンド『まずは手足を拘束し、おまえの着ている服を残らず剥ぎ取る』
黒子「な、何をお馬鹿なことを」ブル
ハウンド『お次はお待ちかね、楽しい撮影会だ。ここにいる全員でひぃひぃよがらせてやるよ』
ハウンド『一生思い出に残る動画が撮れるぜ。親が見たら嬉し泣きしちまうくらいのなぁ』
ハウンド『次に俺の声を聴く時を楽しみに待ってな。――さぁ、ゲームスタートだ!』
――プツン
黒子「……あ、悪趣味にも、ほどがありますの」カチカチ
黒子(もう、なりふり構っていられませんわね。携帯で助けを呼ぶしか……)ゴソゴソ
黒子(……え、嘘。……ない……ない!)バッ
黒子(……まさか殴られた拍子に、落とした?)サァー
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 23:43:08.69 ID:ZLb7EMui0
黒子(くっ、ともかくどこかで備え付けの電話を……サービスカウンターなら絶対にあるはず)キョロキョロ
――パチン
黒子「――! 店内照明が一斉に……」
黒子(ブレーカーを切ったんですのね。だとすると通話も)
黒子「っ!」バッ
スキルアウトG「おっと、気づいちまったか。忍び足ってな難しいな」バッ
黒子(もうっ、まだ増えますの!?)
スキルアウトG「痛い目に遭いたくなかったら、大人しく――あ?」グイッ
黒子「小娘だからって」パシッ
スキルアウトG「うぉっ――ぐあッ!」ズダン
黒子「甘く見ると怪我しますわよ」
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 08:57:32.52 ID:KVbZdlp10
――バチバチ
黒子(……電気!?)バッ
スキルアウトH「あ、俺バカみて。闇に乗じる意味がねえじゃん」カチ
スキルアウトG「このガキ、舐めた真似しやがって」スッ
黒子(……スタンガン。一度でも電流を浴びせられたら、アウトですわね)ジリ
黒子(つくづく、能力のありがたみを感じる日ですの)ダッ
スキルアウトH「待ちやがれ!」
――ヂヂ
黒子(……よかった、非常灯が作動したようですわね)タッタッタ
黒子(もう下手に接触することもできない。なんとか脱出する方法を考えないと)
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 09:31:38.67 ID:KVbZdlp10
スキルアウトG「くそっ、どこ行きやがった! 出てこい!」
黒子(何とか、やり過ごせましたわね)スッ
黒子(奥のエレベーターの階数表示は、一階のまま)チラ
黒子(ボタンを押してから到着を待つ時間くらいは稼げ……いえ)
黒子(連絡手段を断つ脳みそがあるんですから、一階は封鎖されていると考えるべき)
黒子(おそらくは非常口も……となると、災害用の救助袋で脱出するしか)
ハウンド「そこかぁ?」ヒュッ
黒子「……っ!? ――きゃっ!!」ビッ
――パラッ
ハウンド「っと、残念。掠っただけか」
黒子(ヘアリボンが。これ、お気にいりでしたのに)ギリ
黒子(って、そんな場合ではありませんわね。階段もエスカレーターもあちら側にあるんですのに)
黒子(……バックヤードなら従業員用の階段があるはず。下は無理だとしても上なら)ダッ
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 09:53:04.48 ID:KVbZdlp10
――階段
ハウンド「その逃げっぷりからすると、まだ望みは捨ててなさそうだなぁ」コツコツ
黒子「はっ、はっ、はぁっ」タッタッタッ
黒子(……し、しつこいですわね)ポタポタ
ハウンド「以前、上司が対能力者用の演算阻害器を開発したんだが、如何せん大きさが大きさでな」
黒子(大きい演算阻害器……もしかして、キャパシティダウン?)ピク
黒子(でも、確かあれはスキルアウトが所持していて)
黒子(……まさか、実戦用のデータを取るために払い下げたんですの?)
ハウンド「これじゃあ使い勝手が悪すぎるってんで、秘密裏に小型化の開発が続けられていたんだよ」ゴソッ
ハウンド「その試作品がこのウォークマンみたいな器械。レベルダウナーってんだ」
ハウンド「サイズダウンしたせいで威力こそ落ちたが、こうして隠し持っておけるってメリットはでけえよなぁ」
ハウンド「こいつを使用すればもちろん俺の演算能力も下がっちまうわけだが」
ハウンド「能力頼みのやつをボコるには最高のアイテムだ。お嬢ちゃんみたいにな」ニタァ
黒子「はぁ……はぁ……」フラ
黒子(……下がる。……ということは、まったく使えないわけでも)
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 10:17:03.77 ID:KVbZdlp10
黒子「はっ……はぁ、はぁ」
黒子「……この上が最上階、ですのね」
黒子(ふ、ふくらはぎが、攣りそうですの)ガクガク
黒子(敵の足音は、まだ遥か下。焦らずじっくりと、追い詰める気か)
黒子(――時間は無駄にできない。まずは今の能力限界を見極めないと)
――ヒュン
黒子(成功。やはり、レベル2程度なら問題なく使える)
黒子(とはいえ、低レベルで複雑な演算は無理ですわね。距離も、せいぜい6、7メートル)
――ヒュン――――カツーン
黒子(……壁の中には、転移不可能)
黒子(体内への直接転移ができれば勝負になりましたのに、正直、八方塞がりですわね)グッタリ
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 10:43:36.43 ID:KVbZdlp10
黒子(耳鳴りが、ひどいですわね。疲労によるものか、男の持つ器械のせいなのか)イーン
黒子(……と、いけない。酸欠で、頭がぼーっとして)クラ
黒子(しっかり気を持たなくては。気を失いでもしたら一巻の終わりですのに)ブンブン
黒子(あの男が磁力を扱える以上、わたくしの鉄矢も含めて金属具は通用しない)
黒子(今の能力レベルで無理なく使えそうなのは重量が軽い物に限られる)
黒子(最上階はレストラン。でしたら、ガラスや陶器の食器類くらいは)
黒子(小麦粉で粉じん爆発という禁じ手もないことはないですけど)
黒子(前のように解体中のビルというわけではありませんし)
黒子(緊急避難とはいえ、会社所有の不動産を意図的に損壊させようものなら確実に査問委員会行きですわね)
黒子(どこかに隠れて味方が来るまでやり過ごせば)
黒子(……駄目。磁波の反射で物体を捉えるということは、隠れている場所もじきにバレる)
黒子(能力を封じられ、退路も連絡手段もすべて断たれた状態で、大勢の男を相手に)
黒子「……ふ、ふふふ、とことん絶望的ですのね。……このままじゃわたくし、本当に」ギュウ
――コツ
黒子(……ヒッ)ゾク
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 10:54:20.59 ID:KVbZdlp10
――コツ、コツ
黒子「……もうはっきり聞こえる。時間が、ない」ガクガク
黒子(ど、どうして……足の震えが、止まらないんですの)
黒子(こんなんじゃ逃げることすら。……信じたくない、能力を封じられたわたくしは)
黒子(わたくしは、こんなにも弱かったんですの?)
黒子(ジャッジメントですのに、犯罪者を律する立場にいますのに)
黒子(……ダメ……怖い。……どうしようもなく、怖いんですの。……お姉様)ブルブル
黒子(……上条、さん。ごめんなさい、黒子は、黒子はもう)ジワ
上条『怪我だけはすんなよ、絶対に』
黒子「――――」
黒子「……ですの」
黒子「そんな結末、絶対に嫌ですの」グッ
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:04:59.35 ID:KVbZdlp10
黒子(何を、わたくしは弱気になってるんですの)パン
黒子(あんなやつらの好き勝手にさせるなんて死んでも御免ですの!)
黒子(今までの苦難だって乗り越えてきたんですもの。やってやれないはずがないですの)
黒子「……すぅ……はぁ……すぅ」
黒子「んっ」グッ
黒子「まだ体は動く。ならば、まだ戦える」ダッ
黒子(自信がないなら取り戻すまで、不安があるなら吹き飛ばすまで!)
黒子(他に手立てがなくば、躊躇わずフロア毎でも吹き飛ばしてしまえばいい)
黒子(たとえジャッジメントを辞めることになったとしても)
黒子(お姉様や上条さんに無様な姿を晒すよりは、百万倍マシなのですから)
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:19:25.49 ID:KVbZdlp10
黒子(……開き直った途端、頭が妙に冴えてきましたの)
黒子(小麦粉による粉塵爆発は、あくまで最終手段にするべきですわね)ガサ
黒子(昨今のTV番組や小説などで濫用されていますし、相手が知ってる可能性も大いにある)
黒子(……その前に、ひとつでも試せることがないか)
黒子(そう、例えば、上条さんがこの状況に陥ったとしたらどう動くのか)
黒子(相手は複数。上条さんの右腕は必然的に後の先。決定的な攻撃手段には成りえない)
黒子(決め手がない以上は周りの物を最大限活用しようとするはず)
黒子(ナイフやフォークは金属だから敵には通用しない。客椅子、テーブル、陶器、ガラス)
黒子(体力のある上条さんなら大立ち回りも可能でしょうけど、わたくしは上条さんではない)
黒子(別の切り口で考えるべきですの。非力であっても問題ない方策を)
黒子(ガス、コンセント。貯蔵庫には食べ物も…………、はっ)
黒子(そうですの! レストランなら絶対にあれが!)キョロキョロ
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:27:05.79 ID:KVbZdlp10
――ガサゴソガサゴソ
黒子(……よし、これだけあれば)
ハウンド「見ぃーつけた」
黒子「……はっ」クル
ハウンド「最上階は展望レストラン、か。終わりとしてはなかなかだな」
黒子(くっ、ひとまず非常口に……)ダンッ
ハウンド「おいおい、テーブルを足蹴にするたぁ行儀が悪いなぁ。下着が見えちまうぜ」ヘラヘラ
黒子(……くっ///)バッ
――ギィ
黒子(……、)ピタ
スキルアウトE「残念だったな。逃げ道は全部塞いだぜ」ノソ
黒子(……ここでは位置が悪いですのっ)クルッ
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:33:50.31 ID:KVbZdlp10
ハウンド「おいおい、逃げ場なんかどこにもないって言ってるだろ?」
黒子「はっ、はっ」タッタッ
スキルアウトD「四対一だ。もちろん下にも仲間がわんさかいる」
黒子「はぁ、はぁ、はぁ」タッタッ
スキルアウトF「抵抗すりゃするだけ、痛い目に遭うぜ」ザッ
スキルアウトE「へっへへ、ジャッジメントが主演のAVか。いい金になりそうだな」ザッ
黒子「……まったく、反吐が出る連中、ですわね」ゼェゼェ
ハウンド「行き止まりだ。もうどこにも逃げ場はねえぞ?」ニタ
ハウンド「いい加減追いかけっこも飽きてきたからな。お待ちかね、お仕置きタイムといこうじゃないか」
ハウンド「学園都市にも掲示板がわんさかあるからな」
ハウンド「そこに動画のアドレスをいっぱい張り付けてやるよ」
ハウンド「おまえの家族や、友達や、彼氏なんかがちゃんと見れるようになぁ。憎い心遣いだろぉ?」
ハウンド「ヒーロー気取りのジャッジメントが、一躍電子ポルノスターってわけだ!」
黒子「……はぁ……はぁ」
ハウンド「どうした? もっと獲物らしく怯えろよ? 散々追い立てられて思考がマヒしちまったか?」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:37:51.98 ID:KVbZdlp10
黒子(道幅が広いとはいえ、四人並べば完全な袋小路……ですけど)
黒子(ここなら、不意打ちの心配もない。そして、全員が視界に収まる)
スキルアウトF「近くで見っと上玉っすね。もうちょい発育がよけりゃ文句なしなんすけど」
黒子「」カチン
ハウンド「ネット上にはそういう趣味のやつだって多いだろ。口のきき方さえ教育してやりゃ問題ねえ」
スキルアウトE「そうそう、ジャッジメントに恨みを持ってるやつだって大勢いるしな」
黒子「……これが、最終通告ですの」
ハウンド「あ?」
黒子「大人しく武器を捨て、投降しなさい。さもないと、身の安全の保障は、出来かねますわよ」
スキルアウトD「……ぷっ」
スキルアウトE「くっくっく……だぁっはっはっはっは!」
ハウンド「この期に及んでそんな台詞が出てくるたぁな。ある意味ソンケーすんわ」
ハウンド「あるいは、恐怖で頭がイカれちまったか? レベルダウナーのこと忘れたわけじゃねえよな?」パシ
黒子「もちろん、覚えていますの。それを使ったままでは、あなたがろくに能力を使えないことも含めて」
ハウンド「……あ?」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:41:32.38 ID:KVbZdlp10
黒子「一人では返り討ちにされる不安があったからこそ、ここにお仲間を連れてきたのでしょう」
ハウンド「」ピク
黒子「んまぁ、もっとも? 人数を揃えないと女の子一人襲えないチキン野郎なんて、こちらから願い下げですけど」
ハウンド「……どうやら、自分の立場ってもんをよくよくわからせる必要があるみてぇだな」ピキ
黒子「そのお言葉――」
黒子「そっくりそのままお返ししますわよ」ザッ
スキルアウトF「まだ抵抗する気か? レベル2程度の能力で何ができるってんだ」
スキルアウトD「まぁまぁ、余興としては悪くねえさ。少し跳ねっ返りくらいの方が人気も出るだろ」
ハウンド「もたもたしてると助けがきちまうとも限らねえ。さっさと撮影会に入るぞ」
黒子「……交渉決裂、ですわね」
ハウンド「顔は殴るなよ。商品価値が下がっちまうからな」
スキルアウトD「わかってますって」ニタニタ
スキルアウトE「へへ、その生意気な面がどんな泣き顔に歪むのかねぇ」ジュルリ
黒子「……残念ですけど、あなたたちを喜ばせるつもりは毛筋ほどもありませんの」パシッ
ハウンド(……なんだ? 何を握ってやがる?)
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:48:18.36 ID:KVbZdlp10
黒子「金属は内部で電子が自由に動き回れるからこそ良質な磁性体となりうる」
黒子「逆に言えば、合金やそれ以外の物に関して、あなたの力は及びませんの」
ハウンド「それがどうした? 他の物を武器にして戦おうってか?」
黒子「武器、ね。まぁ、それも考えましたけれど、何分レベルダウンしている身ですし」
黒子「どう足掻こうと、そちらの優位を覆すには至らないでしょうね」
スキルアウトD「ならどうする? まさか、ガチンコで俺たちとやり合おうってか?」
スキルアウトE「ははは、いいぜ? たっぷりと教えてやるよ。寝技をな」
黒子「……ところで、……これがなんだかおわかりかしら?」スッ
スキルアウトF「んだぁ、そりゃ? スチール缶か?」
黒子「わたくしの瞬間移動は、手に触れたものの位置情報を演算によって特定」パカッ
黒子「同じく演算によって詳らかにした任意の場所に送り込むもの」サラサラ
黒子「たとえば、こんな風に」ギュッ
――ヒュン
ハウンド「――――ぎっ!?!?」ガクン
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:51:46.21 ID:KVbZdlp10
ハウンド「が……はっ……あがぁっ!」ドッ
スキルアウトE「ちょ、いきなりどうしたんすか!?」
黒子「あら、思った以上に効果覿面ですわね」
ハウンド「かひゅー……ひゅーっ……」ガクガク
スキルアウトD「か、過呼吸? このクソガキ、いったいなにしやがっ」
――ヒュン
スキルアウトD「い゛っ――ぐがああああああっっっ!!」ビクン
スキルアウトF「なっ、Dっ!?」
スキルアウトD「目が! ……目がぁぁぁあああ!」ジタバタ
スキルアウトE「な、なにがどうなってっ! てめえ、いったいなにを!」
スキルアウトE(……っ、あの缶のせい、なのか?)
黒子「粉末わさびですの。あなた方のような輩には一生縁がないでしょうけど」
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:01:53.92 ID:KVbZdlp10
スキルアウトE「わ、わさびだぁ?」
黒子「鈍いですわねぇ。あなた方にも経験がおありでしょう? 目鼻に抜けるツンとした辛さを」
スキルアウトE「……っ!」
黒子「ご覧の通り粉末状ですから非常に軽い。レベルが低くても転移に支障はない」
黒子「最大の難関は体内に直接入れられるか、ということだったのですが」
黒子「眼窩、口腔、鼻腔、喉と、少ないながら空間は存在する。しかも、自らの意志で狭めるのは不可能」
スキルアウトF「……こ、このクソガキが」
黒子「そもそも、なぜわさびが辛いのかご存知かしら?」
黒子「周りに生息している植物の成長を阻害し、自身の成長に必要な養分を確保するためですの」
黒子「つまり、自然界ではれっきとした毒ですのよ」ニィ
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:09:35.20 ID:KVbZdlp10
黒子「……ふむ」
スキルアウトD「……あ……あっ」ガクガク
スキルアウトE「……い……が」ピクピク
スキルアウトF「…………う」グッタリ
黒子「先ほどは殴られた動揺もあってか、まったく勝てる気がしませんでしたけれど」
黒子「たとえレベル2であろうと、戦い方次第では何とでもなるものですわねぇ」
ハウンド「くっ……この、クソガキが……」ヨロ
黒子「うるさいですの」ピト
ハウンド「~~~~~ッッ!!」ビクン
黒子「やっぱり、別にわさびでなくともよさそうですわね」
黒子「おろし生姜でも、山椒でも、胡椒、だと少し弱いかしら。七味唐辛子なら」
ハウンド「あっ、あっ、あぁっ!」ガクガク
黒子「いくら体力に自信を持っていようと、いかに強靭な筋肉に覆われていようと」
黒子「人体でももっとも敏感な部分、感覚器の粘膜に刺激物を入れられては」
黒子「さすがにひとたまりもないようですわね」フン
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:12:49.28 ID:KVbZdlp10
ハウンド「……てめぇ……ぶっ殺してや――がぁっ!?」ガクン
黒子「どうぞ、気が済むまで刃向かってくださいな? まだまだ在庫はありますわよ」
黒子「ほら、ほらっ、ほらぁ!」チョンチョン
――シュン、シュン、シュン
ハウンド「か……はっ……いぎっ! あ゛っあ゛っ、あ゛っ!!」グラグラ
黒子「うふふふ、へんてこなダンスですわ、ねっ!」ゲシ
ハウンド「ぐはっ!」ドッ
ハウンド「こ、こんの、あがっ、よくも、俺の顔を、足蹴にしやがっ――あぎぃっ!」
黒子「ふふふ、見下していた相手に手玉に取られる気分はいかがですの?」
ハウンド「ち、畜生! は、はだがっ……いぎがぁっ!」ヨロヨロ
――ガッ――ドシャ
ハウンド「ぐあっ――ぐっ……はっ」
黒子「そんなに涙を溜めていてはろくに前が見えないでしょう。やみくもに歩き回ると怪我しますわよ?」クス
黒子「――さて、忘れないうちにその厄介な機械を、没収しておきましょうか」スッ
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:31:40.90 ID:KVbZdlp10
――パチン
黒子「ふぅ、これでやっと、能力も元通りですわね」コキコキ
ハウンド「……が……あ゛っ」ピクピク
黒子「もっともそちらは、とても演算できる状態ではなさそうですけれど」
ハウンド「ちょ、調子こくな、よ。下には、まだ、わんさか仲、間が」
――ブツ
???『旦那っ、助けっ――ぎゃああああああーーーーーッッッ!!!』
黒子「」ビクッ
???『黒子、あんた今どこいんの!? 無事なんでしょうね!』
ハウンド「……な、女の声!?」
黒子「この声……! お姉様ッ!?」
美琴『事情は初春さんと下の連中から聞いた。すぐに見つけ出すから、それまで持ちこたえなさい!』プツン
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:43:28.66 ID:KVbZdlp10
ハウンド「……い、いったいなにが、どうなって」
黒子「……わたくしがガードマンの方を逃がしたこと、お忘れですの?」
ハウンド「……、」
黒子「おそらくあの方が、本部に緊急連絡を入れてくだすったんですのね」
黒子「そして、同じタイミングで連絡がつかなくなっていたことで」
黒子「初春、わたくしのパートナーがいち早く窮地を察してくれた」
黒子「余裕のないジャッジメントとは違うルートで、最強の援軍を寄越してくれた」
黒子「常盤台が誇るレベル5、超電磁砲(レールガン)を」
ハウンド「……ば、バカな」
黒子「皮肉なことに、あなたのゲスな感性に救われたわけですわね」
黒子「もう、万にひとつも勝ち目はありませんわよ」
黒子(嗚呼、お姉様。わたくしを救うために駆けつけてくれるなんて、黒子は、黒子は)ウットリ
黒子(って、酔ってる場合じゃありませんわね。早く合流しないと、建物被害がひどいことに)タラ
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:53:11.07 ID:KVbZdlp10
黒子「」チラ
ハウンド「…………ひっ」
黒子「……ダメですの。やっぱり、あなただけは、このまま見逃す気になれませんわね」
ハウンド「……な゛、何をする気だ」ズザ
黒子「さっきは、ずいぶんと息巻いておりましたわね?」
黒子「裸にひん剥くだの、恥ずかしい動画を撮ってやるだの、それをネットにバラ撒いてやるだの」
黒子「んまぁ? あそこまでの脅し文句を並べ立てたのですから」コツ
黒子「穏やかな解決方法が望めないことくらい、わかっていらっしゃいますわよね」コツ
ハウンド「……あ゛……く、来るな! 俺に触るな!」ズル
黒子「そうおっしゃらずに、気分転換に空の旅にでもいってらっしゃいな。――ただし」ポン
ハウンド「や、やめっ」
――ヒュン
黒子「片道切符(おひとり)でね」
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 13:04:45.87 ID:KVbZdlp10
――ピーポーピーポー
ハウンド「…………」ジョロロロロ
黄泉川「野次馬の目の前で盛大に失禁か。これじゃあ二度と学園都市で大手を振って歩けないじゃん」
黒子「わざわざ植え込みのあるところを選んでやっただけ、ありがたいと思って欲しいですの」パンパン
黒子(まったく、あんな小者に怯えてたかと思うと腸が煮えくり返りますの)
美琴「はぁ、初春さんが受話器の向こうで焦ってるからやばいやばいと思ってきてみれば」
美琴「ちゃっかりリーダー片づけちゃってるんだから、心配して損しちゃったわよ」
黒子「ああん、そんなことはないですの。お姉様が来てくれて、黒子は、黒子はぁ」クネクネ
美琴「ちょっ、こらっ、暑苦しいから引っ付くなっての――」
黒子「あうっ」ドスン
美琴「ご、ごめん! ……てか、あんた、しがみつく力も残ってないの?」
黒子「い、いえ、めっそうもない」ヨロ
美琴「……ったく、無茶しすぎなのよ、あんたは。ほら、手貸しなさい」スッ
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 13:27:03.63 ID:KVbZdlp10
黄泉川「で、それがあんたの回収したっていう?」チラ
黒子「ええ、演算妨害装置ですの。あの男はレベルダウナーって呼んでいましたけれど」ス
黄泉川「まさか、こんな隠し玉があったなんてね。そんな相手によく勝てたじゃんよ」マジマジ
黒子「正直に申告しますと、相手が油断していなかったらまずこちらがやられていましたの」
美琴「あんたの能力は強力だけど、大勢を相手にするのには向かない。引き際の判断ミスよ」ムス
黄泉川「確かに、負傷者を一人でも確保した時点で一度こっちと合流するべきだったじゃん」ムス
黒子「う……」
美琴「いい? 今回は運が良かっただけ。あんた自身の安全が担保できないなら、ジャッジメントなんてやめなさい」
黒子「も、申し開きのしようがありませんの」シュン
美琴「ま、お説教はこれくらいにして――これが量産化でもされたら能力者にとって恐るべき脅威ですね」
黄泉川「むしろ、アンチスキルにこそ欲しい装備じゃん」
美琴「いずれ実戦配備されるんじゃないですか? 解析チームに引き渡せば構造も自ずとわかってくるでしょうし」
黄泉川「まぁ、そうなることを祈るじゃんよ」
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 13:36:32.87 ID:KVbZdlp10
美琴「んじゃ、寮長に頼まれた買い物があるから」
黒子「はい、お姉様。本当にありがとうございます」ペコ
美琴「気にしないで。それより、早く初春さんに連絡してあげなさいよ」タッタッ
黒子「はい。――――さて、わたくしも」
黄泉川「怪我の治療はしていかないのか?」
黒子「別に怪我というほどのものでは。お腹に一発もらっただけですし」
黄泉川「だったらなおさらじゃん。女の子にとっちゃ軽視できないじゃんよ」
黒子「で、ですけど、時間が押してますし」
黄泉川「事情はわかってるけどさ。あの少年がここにいたらなんて言うかな?」
黒子「う゛……」
黄泉川「だろ? 検査だけでも受けときなって。こっそり順番早めるよう頼んでやっから」
黒子「……はぁ、そこまで仰るのでしたら」トボトボ
黄泉川(常盤台の白井黒子、か。能力もさることながら状況への適応と機転)
黄泉川(ふふ、本当、先が楽しみじゃんよ)ニヤ
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 15:37:53.74 ID:KVbZdlp10
――ヒュン
黒子「ううっ、すっかり遅くなってしまいましたの」パ
黒子(疲労のせいか、跳べる距離もいつもの半分がいいところですわね)
黒子(折角見つけてくださった携帯も壊れているわ、初春には説教されるわ、散々ですの)
黒子(っと、トラック発見。ちょっと屋根をお借りしましょう)ヒュン
――スタッ
黒子「……もう、日も暮れかけてますわね」
黒子(……上条さん。こんなに待たされて、怒っているでしょうね)
黒子(すぐ戻ってくるなんて言わなければ……自分の軽率さが恨めしい)
黒子(……それも、これも全部)ギリギリ
黒子(馬鹿騒ぎを起こしたあの連中のせいですの!)ムキー
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 15:41:53.45 ID:KVbZdlp10
――パッ
黒子「……はっ、はっ、はぁっ」ヨロ
黒子(や、やっと、着いた)ング
黒子「……か、上条さんは。……大分薄暗いですわね」キョロキョロ
観覧車『18:27』
黒子(えっ、十八時半!?)
黒子(み、見込みが甘すぎましたの。まさか、ここまで)
黒子(……さすがに、帰られたかしら)
女「やだぁ、なにあの子ー。あんなに汗だくでみっともなーい」
男「ぎゃはは、おまえあんまりひでーこと言うなよ」
黒子(……ぐ。こっちの気も知らないで、勝手なことをっ)キッ
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 15:51:28.27 ID:KVbZdlp10
男「んだぁっ? なに一丁前にガンつけてんだ?」グッ
黒子「……付き合ってられませんの」ボソ
黒子「おい、聞いてんのか? こっち向けよ、てめえ!」ガシ
黒子「……っ」ユラ
――ドシャ
黒子「……、やりましたわね」
男「はあぁ? てめえが勝手に転んだんだろうが」
女「ちょっとちょっと、ダーリン。ガキ相手にマジになんないでよ」
男「マジになんてなってねえよ。身の程知らずにちっと教育してやるだけだ」
女「そりゃあ、わたしだってムカつくけどさ」チラッ
警備員「……ん?」チラッ
女「……監視カメラや警備の目もあるしさ。こんなとこで騒ぎ起こしたらヤバイって」ボソ
男「……ちっ、それもそうだな」ボソ
男「はっ、命拾いしたな」クルッ
女「せいぜい、わたしの慈悲深さに感謝することね」スタスタ
黒子「…………」ムク
黒子(…………反論する気力も、わかないですの)フラ
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:04:51.46 ID:KVbZdlp10
放送『お客様の呼び出しを申し上げます。第七学区からお越しの、上条、当麻様。お連れ様が――」
子供「パパー、すっごく楽しかったね」
パパ「はは、そうか。またいつかこような」
黒子(…………やはり、帰られたみたいですわね)ボー
係員「すみません。放送はかけたんですけど、19時で閉園なので」
黒子「はい、お手間を取らせて申し訳ありませんでした」ペコ
係員「あ、いえいえ。――あれ、まだ時間は少し残って」
黒子「大丈夫です、そろそろ帰りますので」ニコ
黒子(……嫌われましたかしら)
黒子(いえ、やめましょう。疲れた頭で考えても、ネガティブの連鎖に陥るだけですの)
黒子(寮に戻ったら、すぐに謝罪の電話を)フラ
黒子(――とと、足が、もつれ)カクン
――ガシ
黒子「あ……し、失礼しましたのっ。支えてくださって――」トン
上条「よっ、お疲れさん」ニッ
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:14:31.72 ID:KVbZdlp10
黒子「……上条、さん?」ポケー
上条「おう、上条さんですよ? なんですか? 黒子さんの目には他の誰かに見えますか?」
黒子「こ、こんな時間まで待っていてくださったんですの?」
上条「向かいの本屋で時間潰してたんだ。放送入れてくれて助かったぜ」
上条「何度か携帯にかけたんだけど通じなかったから、マジで心配したんだぞ?」
黒子「す、すみません。交戦中に携帯が壊れてしまいまして」アセアセ
上条「いや、何事もなければいいんだ。体の方は平気か?」
黒子「少し疲れましたけど、見ての通りですの。掠り傷ひとつ――」
上条「ここ、膝、擦りむけてるぞ?」
黒子「あ、いえ、これはっ、ついさっき転んでしまいまして」アタフタ
上条「はは、そっか。……無事でよかった」ニコッ
黒子「」ドキ
黒子(も、もう、この人は。なんて嬉しそうな顔をしますのよ///)プイ
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:23:04.46 ID:KVbZdlp10
上条「そのなりからすっと大仕事だったみたいだな――ほい」ポイ
黒子「とっ」パシ
黒子(……缶ジュース)
上条「立ちっぱってのもあれだしベンチに座って飲もうぜ。閉園までまだ少し時間あるしな」
黒子(……時間、……っ)
黒子「なにか他に言うことは、ありませんの?」
上条「……ん? 他にって?」キョトン
黒子「で、ですから、その、わたくしを責めなくてよろしいんですの?」
上条「責める? おまえを? ……俺がか? どうして」
黒子「そ、そりゃそうですわよ。すぐ戻るだなんて適当なことを言った挙句、こんなに待たせてしまって」
上条「…………」ジー
黒子「ですから、その、本当に」
上条「先に言っとくけど、謝る必要はないからな」
黒子「……え」
上条「だってそうだろ? 黒子自身が何か悪いことをしたってわけじゃねえんだし」
上条「学園の平和を守るために頑張ったおまえを、いったい誰が責められるんだ?」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:30:42.82 ID:KVbZdlp10
黒子「いえ、で、ですけどっ。あなたをお待たせしてしまったことに変わりは」
上条「だーかーらっ、俺はまったく気にしてねえっての」
黒子「わ、わたくしが気にしますのっ」
上条「ったく、おまえの強情さも筋金入りだな」ポリ
黒子「よ、余計なお世話ですのっ」
上条「つまりだな。あんだけ身嗜みに小うるさいおまえが、着衣の乱れも髪の乱れも無視してだな」
黒子「えっ……あっ」ババッ
黒子(こ、これはわたくしとしたことが)サッサッ
上条「そんなに汗だくになって、息絶え絶えになってまでこの場に駆け付けてくれたんだぜ?」
黒子「それは、まぁ、そうなんですけれど」
上条「今のおまえの姿は、俺との約束を懸命に果たそうとしてくれた何よりの証だろ」
黒子「……そ、そうとも、言えますかしらね」ボソボソ
上条「それを目の当たりにして、俺はこれ以上なにも望むことはねえって思った。それじゃダメなのか?」
黒子「……ダ、ダメってことは、……ないのですけど」モジモジ
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:36:47.52 ID:KVbZdlp10
上条「っつうことでさ、ここは先輩の顔を立ててくれよな」
上条「ここまで言って謝られたんじゃあ、格好つかねえだろ?」
黒子(……、)ジワ
黒子(……っ)ゴシゴシ
黒子「……え」
上条「うん?」
黒子「ええかっこしいにも、ほどがありますわね」
上条「……バーカ、お互い様だろ」スッ
黒子「…………」ギュ
黒子(……危うく、泣きついてしまうところでしたの)フー
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:40:48.59 ID:KVbZdlp10
上条「あれ、リボン、解いちまうのか?」
黒子「ええ。片方だけつけていても見栄えが悪いですし」シュルン
――フワッ
上条「……へぇ」
黒子「……? なんですの、人の顔をジロジロ見て」
上条「いやぁ、おろした髪も新鮮ってか、似合うなって思ってさ」
黒子「……いっ、いつもその調子で女性を口説いてるんですの?」ツン
上条「率直な感想だよ」プシュッ
黒子「本当かしら。……む、むむ」カリ
上条「ん、どうかしたのか? ――あぁ」
黒子(く、ぬ、指に力が――あ)ヒョイ
上条「よっと――ほら、開いたぞ」スッ
黒子「べ、別に一人でも開けれましたのに」ムンズ
上条「疲れてるときくらい頼ってくれたっていいだろ?」グビッ
黒子(……それができたら、苦労しませんの)
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:42:03.09 ID:KVbZdlp10
放送『本日はご来場いただき、まことにありがとうございます。当園は間もなく――』
上条「閉園まであと15分ってところか」
黒子「……そうですわね」
上条「あ、そうそう、忘れるところだった」
黒子「……?」
上条「ほら、さっきのイベントの景品さ。ペアグラスだったんだ」カサカサ
黒子「あら、可愛らしい。小洒落たデザインですわね」
上条「あそこまで残れたのはおまえのおかげだから、持って帰ってくれよ」
黒子「え、でも……」
上条「一つずつってのも考えたけど、それじゃあ寂しいしさ」
黒子「……そうですわね。今日という日の記念には、なるかも」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:50:44.25 ID:KVbZdlp10
上条「なぁ、黒子」
黒子「…………」ウトウト
上条「黒子? 寝ちまったのか?」
黒子「……あ、いえ、なんですの?」
上条「俺はここまでバスで来たけど、おまえはどうすんだ? 能力で帰るのか?」
黒子「いえ、わたくしもバスで帰りますの。これ以上能力を使ったら、当分動けなくなりそうですし」
黒子(なんて、今の状態では、寮に辿り着けるかも怪しいですわね)
上条「…………間に合うか」ボソ
黒子「……はい?」
上条「……黒子、悪ぃけど少しの間だけ」
黒子「」ドキン
黒子(ま、まさか、目を瞑ってくれ、とか? ――そ、そんな、ここ心の準備が///)
上条「トイレ行ってきてもいいか?」
黒子「」ズル
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:53:38.19 ID:KVbZdlp10
黒子「……お、お手洗いですの?」
上条「ホントすまん。閉園までにはちゃんと戻るから、ここで待っててくれ」ダッ
黒子「あ、ちょっと!」
黒子「……もう、デリカシーの欠片もないんですから」
――カァ、カァ
黒子(……怒涛の一日、でしたわねぇ)
黒子(でも、まぁ、終わりよければ、という言葉も、ありますわよね)ウトウト
黒子(……次回は、もう少し落ち着いて……過ごしたい……ですの……)ズル
黒子(…………――――――)
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:59:28.05 ID:KVbZdlp10
黒子「……ん……くぅ」
上条「おい、……おい黒子。次で降りるぞ」ユサユサ
黒子「……むにゃ、あとちょっとだけ、ですの~」ギュウ
上条「ですの~、じゃなくてさ。ちょ、そんなにしがみついたら」
上条(うぅ、こうしていたいのは、やまやまだけど)ギュウ
上条(こんな状態で目覚めようものなら殺されるのが目に見えてっし――仕方ねえ)グイ
黒子「……ん、……んんっ」スポンッ
上条「ふぅ、脱出成功」
上条「黒子、頼むから起きてくれよ。門限あるんだろ、おまえんとこ」
放送『――次は常盤台中学、常盤台中学』
黒子「……常盤、台」パチ
上条「やっと起きたか」ホッ
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:06:49.67 ID:KVbZdlp10
黒子「……んん、なんで上条さんがわたくしの部屋に」ゴシゴシ
上条「いたら大問題だってぇの。まだ寝ぼけてるんですか?」
黒子「……なんで窓の外が、動いてますの~?」ホケー
上条「だから違うって、動いてんのは俺たちの方」
黒子「……あら、そうでしたのねぇ」トロン
上条「おま、ぜってぇ理解してねえだろ。ほらほら、しゃんとしろって」ポンポン
黒子(……ふぁふぅ、もう20時を回っていたんですのね)
黒子(って、ここは、バスの中? いつの間に……)キョロ
上条「今度こそ起きたか?」
黒子「……あれ、わたくしたち、遊園地にいたはずでは」
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:15:37.66 ID:KVbZdlp10
上条「手洗いから戻ってきたら、おまえ完全に寝ちまってたんだよ」
黒子「あら、そうでしたの。……寝て」
黒子「い、今、何と仰いましたのっ?」ガバッ
上条「だから、ちょっとやそっとじゃ起きそうになかったから――――なに顔抑えてんだ?」
黒子「な、なんてことですの。淑女たるわたくしが、あろうことか無防備な寝顔を他人様に晒すなどっ!」
黒子(はっ! ということは、当然上条さんにも見られ……っ、く、口元によだれがっ!)グイ
黒子「だっ、だいたいどうやってバスに」
上条「はぁ? そんなのおんぶしてに決まって――いだっ、ちょおっ、いきなりなにすんだよっ!」
黒子「きょ、きょきょ、許可もなくよくもそのようなっ!///」ポカポカ
上条「そ、そんなに怒ることじゃっ、あだぁっ! やめろって!」
黒子「そ、それをわかっていないから怒ってるんですのッ!」ポカポカ
黒子(あ、汗まみれのままおんぶされるなんてえええぇッッ!!///)ウガー
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:19:48.31 ID:KVbZdlp10
上条「しょーがないだろっ! おまえはくーくー気持ちよさげに寝てるし閉園まで間もなかったしっ!」
黒子「でっ、でしたらなんでその場で起こしてくれなかったんですのっ!」
???「あのー、もしもし?」
上条「だからぁっ、疲れてるところを無理に起こすのも悪いと思ったって言ってるだろっ!」
黒子「だとしてもっ、自分の判断だけで先走った言い訳にはなりませんのっ!」
???「ちょっと、お客さーん」
黒子「外野が口を挟まないでくださいましっ! これはわたくしたち二人の問題――」
運転手「他の乗客のご迷惑ですんで、もうすこし声のトーン、落としてもらえませんかねぇ」
上条「……え……あ」チラ
――クスクスクスクス
黒子「…………ぅぁ///」プシュー
上条「か、勘弁してくれ///」
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:23:40.07 ID:KVbZdlp10
――ブォォォォ
上条「…………」チラ
黒子「…………」チラ
上条&黒子「……はあぁ」
黒子「運転手さん、苦笑いしてましたわね」
上条「途中で放り出されなかっただけマシだ。しばらくこの路線のバスは使えねえな」
黒子「あ、あなたはまだマシじゃありませんの。わたくしなどこちらのバスは日常的に利用するんですのよ?」
黒子(よもや、公共の乗り物であのような醜態を……)ドヨーン
黒子(ジャッジメントのどなたかに知れたら、始末書モノですわね)ヒク
黒子(休日だったのが不幸中の幸いでしたの。もし常盤台の制服を着ていたらと思うと)ゾゾゾ
上条「先生しっつもーんでーす。自業自得って言葉の意味を教えてくださーい」
黒子「んなっ、もとはといえばあなたがっ――な、なんですの、その鬱陶しい人差し指は」
上条「いやぁ別に? ただ上条さんはぁ、もたもたしてっとどっかの誰かさんがー」
上条「あそこの怖ーい寮長さんに大目玉食らっちゃうんじゃないかなー、と気が気じゃないわけですよ」クイックイッ
黒子(ぐ……ぐぬぬ)プルプル
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:30:53.62 ID:KVbZdlp10
上条「ほーらー、どうしました? あと十分もないんじゃないですか?」
黒子「……っ、この決着は後日改めてつけさせていただきますのっ!」クルッ
上条「決着ぅ? 八つ当たりの間違いだろ」ヘラ
黒子「~~~~っ」ムッカー
黒子「……その減らず口、いずれ完膚なきまでに叩き潰して差し上げますわ」ギロ
上条「おおこわ。んじゃま、胃袋に下剤とか送り込まれないうちに退散させてもらいますか」クルッ
黒子「だ、誰がそんな鬼畜な真似をっ――って」クワッ
上条『今日はゆっくりと休めよ。んじゃな』フリフリ
黒子「も、もうあんなところまで……ほんと逃げ足の速い」フリ
黒子(って、なに手を振ってますのよ!)ダンッ
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:36:00.14 ID:KVbZdlp10
――常盤台女子寮
ドア「バタン」
美琴「あっ、黒子。遅くまでご苦労様……って」
美琴「ど、どしたのその阿修羅顔。なんか気に食わないことでもあった?」
黒子「いーえ、なんでも、ないですの」ヒクッヒクッ
黒子(まったくもぅ、さっきまでの心地よい疲労感が全部台無しじゃありませんの!)ムカムカ
黒子(……少し寝たからか、頭はすっきりしましたけど)キィ
黒子(さすがに体の気怠さまでは、抜けきっていませんわね)ズウン
黒子(今日はささっと、シャワーだけで済ませてしまいましょう)カチャカチャ
――パサ
美琴「うん?」チラ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:39:58.20 ID:KVbZdlp10
黒子(それにしても、下剤。なるほど、外道な発想に関してはわたくしの及ぶところではないですの)
黒子(刃物みたく直接的に外傷を与えるわけでもなし、武装犯に対しては意外に効果的かも)
黒子(仲間がより安全に立ち回れる起点にもなりますし)
黒子(一度提案してみるのも一興――いえ、後始末の問題がありますわね)タラ
美琴「ねぇ、黒子ってば、聞いてる?」
黒子「あ、すみませんお姉様。少し考え事を」
美琴「別に謝んなくてもいいわよ。それよか、あんたの足元になんか落ちたわよ」
黒子「足元?」
黒子(……包装紙、ですわね)ヒョイ
黒子(あれ? ですけど、こんなものを買った覚えは……)ウーン
黒子(ペアグラス、は、机の上にありますわね)
黒子(……いったいなにが入って)カサッ
黒子「……っ、こ、これっ!?」
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:42:42.67 ID:KVbZdlp10
美琴「ど、どうしたの? いきなり大声上げて」
黒子「い、いえっ、なんでもないですのっ」バッ
黒子(ど、どういうことですの? なんでこんなものが)チラ
黒子(ジャケットのポケットに入って……いえ、入れられていた?)
黒子(で、ですけど、そんなことが出来たのは)
黒子(――やっぱりおかしいですの。入れるチャンスがいくらあったにせよ、閉店間際で買いに行く暇など)
上条『トイレ行ってきてもいいか?』
黒子(――――)
黒子「……ふ、ふふ」
黒子「……本当に、あの方は」
黒子(どれだけわたくしをやきもきさせたら、気が済むんですの?)ギュウ
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:24:47.84 ID:KVbZdlp10
――喫茶店
佐天「あれ、今気づいた。白井さん。リボン変えたんですね」
黒子「ええ、つい先日片割れをなくしてしまいまして」
初春「以前の物とは趣が異なりますけど、それもいいですね。白井さんの髪色とぴったりです」
黒子「うふふふ、そうでしょう? わたくしも気にいっていますの」パァ
佐天(……へぇ、白井さんって、こういう顔するんだ)
美琴「そういえばさ。あんたのそのリボン、なんてお店で買ったの?」
黒子「ああ、いえ。お店の名前までは。そこまで詳しく聞くのも」
美琴「……ちょっと待った」
黒子「……はい?」
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:29:48.46 ID:KVbZdlp10
美琴「買ったお店がわからないって、つまりどういうことかしら? 佐天さん?」
佐天「それはつまり、自分で購入したものではないわけで」
佐天「……もしかして、誰かからのプレゼント、ですか?」
黒子「い、いえっ! それは、そのっ。あ、あー、今思い出しましたの! ちょっと前にセブンスミストで」
美琴「黒子ぉ、往生際が悪いわよ~?」ニヤニヤ
黒子「な、なな、なんのことですの?」ダラダラ
美琴「あんたはさっきこうも言った。〝そこまで詳しく聞くのも〝――その続きは?」
初春「あ、なるほどー。贈り物を買ったお店まで根掘り葉掘り聞くのは失礼ですもんね」
黒子(ま、まずいですの)ダラダラ
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:34:00.59 ID:KVbZdlp10
佐天「単刀直入に聞きます。贈り主は男性ですね?」キラーン
黒子「」ドキーン
美琴「咄嗟に切り返せないところを見ると、図星みたいね」
黒子「い、いえっ、決してそのようなことは」
美琴「いやいやまっさか、男嫌いのあんたがねぇ」ニマァ
黒子「いいから、話を聞いてくださいましっ!」
初春「白井さんが遠くに行ってしまったようで、初春は少し寂しいのです」
黒子「断じて違いますのっ! 勘違いですのっ!」ブンブン
美琴「ま、ま、照れることないじゃない? わたしなんかを追いかけ回すよりよっぽど健全よ」ヒラヒラ
黒子「そ、そのようなご無体なことっ! わたくしのお姉様への愛は未来永劫変わりませんのにっ!」
――ドヨッ
美琴「だ、だからあんたはっ! 勘違いされるようなことを大声でぬかすなってのっ!///」
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:42:26.05 ID:KVbZdlp10
初春「でも、どういった方なんですか? ジャッジメントの関係者とか?」
黒子「知りません! だ、だいたい、まだ付き合ってるわけじゃありませんし」
佐天「まだってことは、白井さん的に脈はあるんですねー」ニヨニヨ
黒子「い、いえっ、決してそういうわけでは」
黒子(さ、三人して誘導尋問なんて卑怯ですの~)
美琴「で、どうなのよ、相手との関係は。うまくいってるわけ?」ズイ
初春「な、馴れ初めとかあるんですか? 初春は興味あります!」ズイ
黒子「ですからっ! そういったことはまったく考えて――」
佐天「隙ありっ」ヒョイ
黒子「って、あぁっ!? ちょ、ちょっと佐天さんっ!」ガタ
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:48:19.96 ID:KVbZdlp10
佐天「こういうのはぁ、メールの履歴を見れば一目瞭然ですよね」カチカチ
黒子「わたくしの携帯! か、返しなさいっ!」シュピッ
佐天「おっと危ない」ヒラリッ
黒子「ああもうっ、返しなさいって言ってますのにっ!」グイ
佐天「そんなこと言わずに、ちょっくら拝見するだけですからぁ」タッタッタッ
黒子「くっ、かくなる上はっ」キッ
佐天「よく見たらこれ新機種じゃないですかー。もしかしてこれもプレゼン――」カチカチ
――パッ
佐天「――って、うわぁっ!?」ビク
黒子「まったく、油断も隙もあったものじゃありませんわね」パシッ
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:50:45.19 ID:KVbZdlp10
佐天「あーっ、ずるっ! 店内での能力行使は禁止されてるじゃないですか!」
黒子「不意打ちを仕掛けたかたに文句を言われる筋合いはございませんの」
黒子(ふっ、始末書一枚でこの秘密が守れるなら安いものですの)ニヤ
美琴「しっかしあの黒子をここまで慌てさせるなんて。いったいどこのヒーローさんかしらね?」クスッ
黒子「な、なんと意地悪な仰りようっ! からかうのもいい加減に」
初春「わたしは逆に安心しました。白井さんにも乙女な一面があったんですね」ニコ
黒子「う、初春までそのようなことっ」
美琴「ま、陰ながら応援してるわよ」パチ
佐天「仲が進展したら、わたしたちにも紹介してくださいね」ビッ
初春「いいなぁ、男性からの心尽くしのプレゼント。憧れます~」
黒子「ご、ごーかーいーでーすーのッッ!!」
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 23:08:25.33 ID:KVbZdlp10
――from 黒子 21:36
『新しいリボン、確かに受け取りました』
『ですけど、ずいぶんと回りくどい渡し方をしてくださったものですわね』
『まぁ、物自体は割にまともなようですし』
『代わりをわざわざ買うのもなんですから、とりあえず使わせていただきますの』
『勘違いなさらないように言っておきますけど、おんぶの一件は許したわけじゃないんですのよ』
『次回は埋め合わせとしてこちらの買い物にも付き合っていただく所存ですので、そのつもりで』
『P.S』
『わたくしを待っていてくださって、本当にありがとうございます』
『あの時のあなたには、その、不覚にも、ぐっときてしまいました』
『今度あなたに会う時には、もう少し素直になれるよう、頑張ってみますの』
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 23:16:36.71 ID:KVbZdlp10
――from 黒子 21:40
『さっきのメールはなしですのっ! 一時の気の迷いですからすぐに削除してくださいなっ!』
『万が一そう思わされてしまったとしても、本当に本当に、ちょぴっとなんですからねっ!』
――このメッセージを保存しますか?
はい/いいえ
――メッセージを○○しました。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 23:27:01.53 ID:KVbZdlp10
以上で完了です、不定期にも関わらず多くの支援とコメを賜り、感謝してます
アニメ小説ともに黒子は結構な頻度で痛い目に遭わされてる可哀想な子ですけど
それにめげない黒子も『らしさ』のひとつなのかな、と暴力シーンを書いた言い訳にしてみます
後日談(another)は書いたとしても、プラトニック(死語)なイチャイチャに終始するでしょう
キスだけで硬直する黒子っていうのも考えようによってはありなのか、筆が進みそうだったらやってみますんノ
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/09/30(日) 23:29:17.76 ID:UPOdsDPI0
乙ー!
そして是非是非後日談のイチャラブを書いてください
お願いします
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/09/30(日) 23:30:22.73 ID:qjgoReRC0
いい感じに締めた。でも後日談ほしい!
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:03:29.14 ID:N1FzZWVG0
――図書館
――ザアアアアア
佐天「雨、止みそうにないですねー」
美琴「佐天さん、上から二番目の証明問題、当てはめる公式間違ってない?」
佐天「えっ、あぁ、ほんとだ。さっすが御坂さん」ゴシゴシ
初春「うーん……」
美琴「ん、どうしたの初春さん? 難しい顔して、解けない問題でもあった?」
初春「ああいえ、ちょっと気になることがありまして」
佐天「なになに? 恋の悩み?」
初春「違います! ただ、最近白井さんが妙に可愛いので――――何で二人して後ずさるんですかー?」
美琴「い、いや、その、ねぇ?」チラ
佐天「し、白井さんの性癖がいよいよ周りにまで猛威を振るい始めたんじゃないかって」コクコク
初春「ウ、ウイルスみたく言わないでください! あくまで客観的に見ての話ですって」
佐天「そっかそっか。でも、気にしてるからにはなんかしら根拠があるんだよね?」
初春「そう、ですね。わかりやすい一例をあげますと――」
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:10:35.52 ID:N1FzZWVG0
初春「たとえば一昨日ですけど、低気圧の影響ですごい風だったじゃないですか」
美琴「あぁ、そういえば」
初春「あの日、白井さんと並んで支部に向かっていたんですが」
初春「細い路地を出た途端突風に襲われて、スカートが思いきり捲れてしまったんです」
佐天「あー、あるある。でも、初春はわたしのおかげで慣れてるから問題ないっしょ?」
初春「そ、そんなわけないでしょう! 何が誰のおかげですか!」
佐天「あはは、冗談冗談。本気にしない」
美琴「でもさ、それと黒子といったい何の関係があるの?」
初春「ああ、つまりですね。その時の白井さんの様子が、なんというか」
美琴「いつもと違ったってことかしら?」
初春「はい、以前は鬱陶しそうに眉をひそめながらスカートを抑えるくらいだったんですけれど」
初春「頬を染めながら慌てて両足をすり寄せて、みたいな感じで」
佐天「……それって、単に人並みの羞恥心に目覚めたってだけのことなんじゃ」
美琴「あんなエグイ水着着ても平然としてたくらいだしねぇ。まぁ、らしくないとは思うけど」
初春「でもでも、こんなのは序の口なんです」
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:15:29.85 ID:N1FzZWVG0
――回想
初春「うわぁ、すごい量の銀杏ですね」
黒子「そろそろ秋も終わりですわね。にしても、この鼻につく臭いはどうにかならないものかしら」
初春「乾煎りして茶碗蒸しに入れると美味しいですよ? お父さんがよく食べて――」
男A「あのぅ、白井黒子さん、ですよね?」
黒子「はい? ええと、どちら様ですの?」
男A「ああ、申し遅れました。長点上機学園一年のAっていいます。校名くらいはご存知ですよね」
黒子「え、ええ。名門高校の一角と認識しておりますけども」
男A「そうです! 何を隠そう僕も白井さんと同じレベル4でして」
黒子「はぁ。……あの、ご用件はなんですの?」
男A「ああ、す、すみません。その、つまり、ですね」
男A「もしよろしければ、僕と付き合っていただけませんか?」
黒子「付き合うって、どちらまでですの?」
男A「いえ、そういう意味ではなくて。あなたに、僕の彼女になっていただけたらと」
初春(こ、これって、交際のお申込みじゃないですか!)
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:18:35.25 ID:N1FzZWVG0
男A「以前から腕章をつけて活躍している姿をお見かけしたことがありまして」
男A「それからというもの、すっかりあなたのファンになってしまったんです」
黒子「それはまぁ、光栄に思うべきなのでしょうけども」
男A「僕もこれで結構モテるんですよ? 何度かラブレターを頂いたこともありますし」
男A「でも、できれば自分により相応しい女性に、傍にいて欲しいと思いまして」
初春(うわっ、結構本気っぽい。白井さん、どうするんだろう)
男A「こう言ってはなんですが、同じ高み(レベル5)を目指す者同士、釣り合いは取れてるんじゃないかと」
黒子「」ピク
男A「何分急な話ですし、すぐ返事をいただこうとは思っていませんので、じっくり考えていただいて」
黒子「いーえ、その必要はありませんの」
男A「え、それじゃあ」パァ
黒子「申し訳ありませんが、お引き取りください」ニコ
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:24:18.92 ID:N1FzZWVG0
男A「な、え……」パクパク
黒子「それでは、失礼いたします。さ、固法さんをお待たせしないうちに」グイ
初春「あ、は、はい……」チラ
男A「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」バッ
黒子「……まだなにか?」
男A「……納得できません!」
黒子「納得もなにも、ご縁がなかったと諦めていただくしか」
男A「で、ですからっ、付き合えないって言うならせめて理由(わけ)を教えてください!」
黒子「理由、ねぇ」
男A「……も、もしかして、もう好きな男性がいらっしゃるんですか?」
黒子「……っ」
初春(あ、そ、そうだった。白井さんにはすでに彼氏疑惑が)チラ
黒子「ま、まぁ、確かにわたくしも年頃ですし、気になっている方のひとりくらいはいますけれども」
黒子「そうしたこととは関係なく、よい返事は致しかねますわね」
男A「ど、どうしてっ!」
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:26:00.56 ID:N1FzZWVG0
黒子「記憶違いでなければ、わたくしたちが面と向かって話すのは、これが初めてですわよね」
男A「そ、それがなんだっていうんですか」
黒子「ろくすっぽ会話もしていないのに、相手が自分に相応しいだなんてどうして見極められるんですの?」
男A「そ、それは……だ、だからこそ、付き合って親睦を深めるんじゃ」
黒子「残念ですけど、あなたの物言いからするとそれ以前の問題ですわね」
黒子「釣り合いなどとしょうもないことを気にする殿方とは、うまくやっていける自信がございません」
男A「な……なっ!」
黒子「もし何かの拍子でわたくしの能力レベルがガタ落ちしたら、その瞬間に二人の関係は終わる」
黒子「詰まるところ、あなたが仰っているのはそういうことですわよね?」
男A「そ、それのどこがいけないっていうんですか」
黒子「……その顔。どうやら本気でそう考えていらっしゃるようですわね」
黒子「自分がどれだけ自惚れているのか、一度省みた方がよろしいんではなくて?」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:39:18.38 ID:N1FzZWVG0
男A「と、常盤台では礼儀作法を教わっていないのかな? それが目上に対しての口の利き方ですか」プルプル
黒子「そういうご自分は礼節を弁えてるとでも思っていらっしゃるのかしら」
黒子「わたくしは一人の人間です。まかり間違ってもあなたのステータスを上げるオプションパーツではございません」
黒子「憚りながら申しますが、あなた、礼節と体裁とをはき違えているんじゃありませんの?」
男A「……て、てめぇ! ちょっと可愛いからって調子に乗りやがって!」ギリ
黒子「あらあら、そのように声を荒らげるということは図星だったんですの?」
男A「……ぐっ」
黒子「残念ですが、少々欠点を指摘されたくらいで逆上するような方に向ける敬意はございません」
黒子「お話はこれで終わりですわね。さ、初春、行きますわよ」ツカツカ
初春「あ、し、白井さん! 待ってください!」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:49:40.43 ID:N1FzZWVG0
初春「とまぁ、そんな顛末だったんですが」
美琴「んー、黒子の気持ちもわからないではないわね」
佐天「ですね。レベルだの名門校だのって肩書きから切り出すのは、さすがに」
美琴「そうそう、なーんか鼻持ちならないのよね。男ってのはさ、やっぱこう、頼りがいがないと――」
初春「ああいえ、ここでわたしが主張したかったのは、白井さんが告白されたという事実なんです」
佐天「ん、どういうこと?」
初春「実は、ここ一か月ほどでそうしたことが立て続けに起きてるんですよ」
美琴「えええ? それ、本当なの?」
初春「はい。お相手はやはり先輩だったり同級生だったりするんですが」
初春「こっ酷く振らないまでも、全然脈がなさそうなんです。中には格好いい人もいたんですけど」
佐天「うわぁ、本格的にモテ期到来?」ゴク
美琴「まぁ、あり得ない話でもないのか。あの子も黙って慎ましくしている分には可愛いし」
初春「あはは、御坂さんが言うと含蓄がありますね」
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:56:53.19 ID:N1FzZWVG0
美琴「ともあれ、初春さんが気にしてのは、何が黒子を変えたのかってことね」
初春「そうですそうです」
佐天「それはやっぱり、意中の人の存在じゃないんですか?」
初春「でも、人を好きになるだけでそんなに変わるものなんですか?」
美琴「え、う、うーん、どうなんだろ///」
佐天(やっぱり御坂さんも好きな人いるんだ。本当、わかりやすいなぁ)ニマニマ
美琴「そういえば、黒子とお相手との仲って、どこまで進んでいるんだろ」
佐天「……もう、女の喜びを教え込まれちゃってたりなんかして///」
美琴「じょっ、冗談! 確かにあの子ませてるところあるけど、まだ中一よ!?」
初春「あの、女の喜びって、なんなんですか? ちょっと背徳的な響きですね」
美琴「そ、そこは聞き流してくれると助かるわ///」
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:00:10.79 ID:N1FzZWVG0
美琴「恋する女は綺麗って昔から言うけど、やっぱりそういう気持ちの変化って外に滲み出てくるものなのかしら」
佐天「実際、不特定多数の男性が白井さんに魅力を感じ始めているのは間違いないわけで――」
黒子「あら、なんだか三人とも盛り上がっていますわね」
初春「」
佐天「こ、ここ、こんにちわ、白井さん」
美琴「はっ、早かったわね。寮監の手伝いは終わったの?」
黒子「ええ、友達との勉強会があることを仄めかしたら、少しお目こぼししていただけたんですの」
黒子「それより、いったい何の話をしていたんですの?」チョコン
初春「え、ええと、それはですね」
佐天「白井さんが、最近よく男の人に声をかけられるって初春から聞いて」
黒子「むっ」ジロ
初春「さ、佐天さん!」ガタ
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:06:11.06 ID:N1FzZWVG0
黒子「……少し口が軽いんじゃなくて? 初春」ジトー
初春「す、すみません」
美琴「ま、まぁまぁ。たまたまそういう話の流れになっただけだから、許したげて、ね?」
黒子「ま、まぁ、お姉様がそこまで仰るのでしたら」パサッ
初春(さ、佐天さん! ひどいじゃないですか)パクパク
佐天(こういうときは変に口裏を合わせるとボロが出るって)パクパク
美琴「ところでさ、ジャッジメントの方は最近どうなのよ?」
黒子「平常運行ですの。忙しくなったのはアンチスキルの方ですわね」カリカリ
佐天「アンチスキル? なにか問題でもあったんですか?」
黒子「初春、説明」チラ
初春「は、はい。二人とも、テレスティーナ木原を覚えていらっしゃいますか?」
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:17:05.38 ID:N1FzZWVG0
美琴「そりゃまぁ、忘れたくてもそうそう忘れられないわね。あのイカれ女」
佐天「はっはー、もう二度とあの顔芸は見たくないですけどね」
初春「実は先だっての暴動の件で、その木原の一族が運営している施設から資金供与があったみたいで」
初春「そこで、いくつかの研究所に警備員が立ち入り調査を行っているそうなんですよ」
美琴「ふぅん。未だにそんなことがまかり通っているってことは、あの狂乱女も枝葉の一つに過ぎなかったってわけか」
黒子「そのようです。ポルターガイストの件も含めまして、学園の求めているものを見直すよい契機になりましたの」
初春「学園の求めるもの、ですか?」
佐天「お偉方が掲げている目標って、確か人類の夢、レベル6への到達、という話でしたよね」
黒子「考えようによっては、その目標のためにわたくしたちひとりひとりが能力開発という実験に加担している」
黒子「ともすれば、誰もがいつでも、被害者にも加害者にもなりえるということですわね」
美琴「…………加害者、か」ポツリ
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:27:31.94 ID:N1FzZWVG0
――学生寮
――ヴィーン
黒子(さっきのお姉様、どうもご様子が変でしたわね。めっきり口数が減っていましたし)
黒子(やはり、学園と何か深刻なトラブルがあったのかしら)
黒子(さて、どうしますやら。真正面から問いただしてもいつものようにとぼけられるだけでしょうし)
黒子(いっそのこと、初春と協力して調べれば……こそこそ嗅ぎ回るのは気が進みませんけれど)
寮監「白井、ちょっといいか」
黒子「うひっ」ビクッ
寮監「少し話がある――おい、いきなり逃げ腰なのは何故だ」
黒子「りょ、寮監様? あの、本日はまだ寮則を破った覚えはありませんけれども」ブルブル
寮監「やましいことがないなら堂々としていろ、まったく」
黒子(そう言われましても、これはもはや条件反射ですの)
黒子「あの、それで話というのは……」
寮監「別に構えんでいいと言っている。明後日の予定を聞きたかっただけだ」
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:30:31.40 ID:N1FzZWVG0
黒子「明後日ですの? いえ、特にこれといった用事は」
寮監「そうか。では、ひとつ代理を頼まれてくれないか?」
黒子「代理? どういったご用件ですの?」
寮監「実は明後日あすなろ園に行くことになっていたんだが、ついさっき父が倒れたと連絡を受けてな」
黒子「い、一大事じゃありませんの! その、容体の方は――」
寮監「症状自体は大したことない。軽度の気胸だそうだ」
黒子「それは、何よりですの」
寮監「ただまぁ、一週間ほど入院が必要らしくてな。ここの所忙しくて帰郷も出来なかったから世話を焼きたいんだが」
寮監「こちらの都合で子供たちとの約束を反故にするのも、なんだか申し訳なくてな」
黒子「そういうご事情でしたら喜んで。わたくしでよろしければお引き受けいたしますの」
寮監「そうか、助かるよ。おまえなら子供たちとも顔見知りだし特に問題はないだろう」スッ
黒子「……あら、これは? 何かのチケットですの?」
寮監「友人が切り盛りしているレストランのディナー券だ。二枚あるから、友達を誘って行ってくるといい」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:35:43.47 ID:N1FzZWVG0
――prrrrr
黒子(あら、もしかして)ゴソゴソ
黒子(やっぱり、上条さんですのっ)
黒子(……引き受けて、いただけるかしら)ピッ
黒子「はい、もしもし」
上条『ああ、黒子か? さっき電話もらったみたいだけど』
黒子「ええ。明後日なんですけれど、何かご予定はおありですの?」
上条『明後日は、いや、空いてるけど』
黒子「それでしたら、ちょっとわたくしに付き合っていただけません?」
上条『うん? どこか行きたいところでもあるのか?』
黒子「行きたいと申しますか、ボランティアなんですけれども」
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:40:08.75 ID:N1FzZWVG0
上条『ボランティア? おまえ、風紀委員に加えてそんなことまでやってたのか。優等生の鑑だな』
黒子「と、とんでもない。たまにちょこちょこっとお手伝いをさせていただいているくらいで」
上条『謙遜することないだろ。んで、具体的にはどこで何をやるんだ?』
黒子「行き先は第13学区。あすなろ園という孤児院ですの」
上条『コジイン? ――あ、孤児院か』
黒子「ええ。そちらでは主に置き去り(チャイルドエラー)の子を引き取っていまして」
上条『それってあれだよな、入学金だけ納めて親がばっくれちまったってやつ』
黒子「そうですの。もちろん院にも園長先生や非常勤の先生が来てくださるんですけれど」
黒子「人数が少なければできることも限られますし、負担も大きいでしょうから」
上条『要は、子供たちの遊び相手になってやりゃあいいんだな?』
黒子「はい、基本的にそう思っていただいて差し支えないですの」
黒子「大勢の子供たちを相手にするのは物理的にも体力的もきついですし」
黒子「もし、上条さんがご一緒してくださるなら、大助かりなんですけれども」
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:00:55.75 ID:N1FzZWVG0
上条『ま、他ならぬ黒子さんに頼られたとあっちゃあ、一肌脱がないわけにはいかねえな』
黒子「よ、よろしいんですの!?」パァ
上条『もちろん。つっても、何分初めての経験だから、どんだけ役に立てるかは怪しいけどな』
黒子「ふふ、そんなにご心配なさらなくとも、上条さんなら絶対大丈夫ですわ」
上条『はは、黒子に太鼓判を押されるなんて、何か妙な感じだな』
黒子「それ、どういう意味ですの?」
上条『いやさ、つい数か月前までは、どっちかっていうと敵視されてると思ってたしさ』
黒子「か、過去は過去、今は今ですの!」
上条『あ、ああ、そうだよな、ごめん。んじゃあ念のため聞いとくけど、今は嫌ってないんだな?』
黒子「当たり前ですの。嫌っている方に対してマメに連絡を取るわけないでしょう?」
上条『それもそうだな。良かった、おまえにだけは嫌われたくないと思ってたから』
黒子(おまえにだけは、って――)
上条『ん、どうかしたのか?』
黒子「え? あ、いえ、そ、あ、ま、また改めてご連絡しますの!///」
上条『へ? ちょっ、黒――』ピッ
黒子「……え、ええと、あと何を伝えたらよろしかったんでしたっけ」コツン
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:03:57.67 ID:N1FzZWVG0
上条「よし、時間通りだな。黒子はどの辺りに」キョロキョロ
黒子「おはようございます」パッ
上条「うおっ! お、おはよう」
黒子「またそんなに驚かれて。いい加減テレポートにも慣れてくださらないと」ジト
上条「いや、でも、慣れたら慣れたで反応が鈍りそうだしな」ポリポリ
黒子「ま、それくらいは大目に見ますけども。……ふむ、ちゃんと動きやすい服装で来てくれたようですわね」
上条「おぅ、準備万端ですよ。おまえも言っていたように、ガキ相手だと体力勝負だしな」
黒子「期待していますわ。では、あすなろ園までご案内しますの」
上条「ああ、その前に」スッ
黒子「……?」
上条「荷物持つよ。重い方寄越してくれ」
黒子「あ、は、はい。ありがとうございます」スッ
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:06:44.04 ID:N1FzZWVG0
上条「このでかい風呂敷包みってなにが入ってるんだ?」
黒子「お弁当の重箱ですの。寮住まいの方々が進んで手伝ってくださって」
上条「へぇ、みんな優しいんだな」
黒子「学生はみんな親元から離れて暮らしていますし、やはり思うところがあるのでしょうね」
上条「黒子は、両親と会えなくて寂しくなったりはしないのか?」
黒子「来た当初は少し寂しいというか、心細かったですわね」
黒子「でも、今はお姉様がいますし、仲のいい友達もできましたし、それに――」チラ
上条「……ん?」
黒子「その、か、上条さんもいますし」
上条「お、おう、そうだな///」カァ
黒子「で、ですの///」プシュー
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:21:09.83 ID:N1FzZWVG0
園長「休日だというのにわざわざお越しいただいて、感謝の言葉もありません」
黒子「お気遣いは無用ですの。わたくしたちも童心に返って遊ばせていただきますわ」
黒子「ですわよね、上条さん?」
上条「ええっと、どれだけお力になれるかは正直心許ないんですが」カリカリ
大吾「いえいえ、男子ってあまりこういうボランティアやりたがらないからとても助かります」
上条「そ、そうすか。だったらいいんですけど」
大吾「では早速ですが、僕について来てください。子供たちに紹介します」
上条「わかりました。あの、今日一日、よろしくお願いします」ペコ
大吾「こちらこそ」ニコ
園長「よろしくね、上条さん」ニコ
黒子(まさか初春たちの担任と鉢合わせするなんて、ついているのかいないのか)
黒子(一応、後で口止めした方が無難ですわね)
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:23:54.06 ID:N1FzZWVG0
大吾「みんな、今日は新しいお兄さんが来てくれたよ」
上条「上条当麻だ。長いからとうまって呼んでくれ、よろしくな」
子供たち『よろしくお願いしまーす!』
上条「はは、元気いっぱいだな。んじゃあ最初は、何して遊ぶ?」
男の子A「僕鬼ごっこがいい!」
女の子A「えー、たまにはおままごとにしようよー」
男の子A「おままごとじゃ大勢で遊べないじゃんかー」
女の子A「あんただって、自分が足早いからっていつも――」
上条「ま、まぁまぁ、順番にひとつずつやろうか。時間はたっぷりあるからさ」
男の子A&女の子A「はぁーい」
上条「んじゃあ、まずは俺が鬼をやるな。10数える間に逃げるんだぞ。1――2――」
子供たち『うわぁ! 逃げろー!』
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:40:34.50 ID:N1FzZWVG0
――調理室
園長「ここまで歓声が聞こえるわ。あの子たちもおおはしゃぎね」トントントン
園長「彼氏さんを連れてきてくれて助かったわ。白井さん」ニコ
黒子「い、いえっ! 上条さんとは別に交際しているわけじゃ」
園長「照れることないでしょう。いいんじゃない? 意志が強そうだし、懐も深そうで」
黒子「も、もぅ、あまりからかわないでくださいまし。そもそも、あの方とは歳の差が」
園長「歳の差っていうなら、わたしも大吾先生と一緒になるとは思っていなかったわ」
黒子(……まぁ、それはこちらも同じですけれど)ヒク
黒子「でも、わたくしはまだ中学に上がったばかりで」
園長「まぁ、確かに大人の恋愛をするにはまだ少し早いかも知れないけれど」
園長「上条さんは高校一年でしょう? あと三年経てば、白井さんも今の彼と同い年じゃない」
黒子「そ、それは……まぁ」
園長「あなただって彼のこと、心から信頼しているんでしょう?」
黒子「…………ぅ///」
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 13:40:47.80 ID:qE71Ur120
園長「その沈黙は肯定よね。大丈夫、あなたたちならきっとうまくいくわ」
黒子「し、信頼と好意は別物ですの」
園長「あら? じゃあ、彼のこと好きじゃないの?」
黒子「そ、それは、……その」ゴニョゴニョ
園長「そうね、心にもないことを口にするのは躊躇われるわよね。逆説的に考えれば自ずと答えも」
黒子「え、園長先生っ!///」
園長「うふふふ、ごめんなさいね。お二人があんまり初々しいものだから」
黒子「んもぅ、勘弁してくださいな」
園長「でも、お互いに意識し合っているみたいだし、結ばれるのは秒読みの段階じゃないかしら」
黒子「ど、どうしてそんなことがわかるんですの?」
園長「視線。好きな人が視界に入ると、どうしても目で追ってしまうものだから」
黒子「……あの、上条さんも、わたくしを?」
園長「ええ、その点はお二人とも抜かりないわ。安心した?」
黒子「…………ぅ///」
園長「あらあら」コロコロ
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 13:49:13.82 ID:qE71Ur120
――バタン
女の子A「とうまお兄ちゃん、早く早くぅ!」グイグイ
上条「おいおい、そんなに引っ張るなって。袖が延びちまうだろ」
男の子B「おいこら、とうま! ままごとが終わったら俺とジャッジメントごっこだからな!」
上条「わぁったわぁった。んでもその前に、外から戻ったらまず手洗いうがいをしなきゃな」
子供たち『はぁーい♪』ゾロゾロ
園長「あらあら、すっかり懐かれてしまったみたいね」
大吾「いやぁ、驚きました。彼、本当に今回がボランティア初めてなんですか?」
黒子「いえ、あの方は……、普段の行いをボランティアだと自覚していないだけですの」
黒子「そこに困った人がいれば手を差し伸べずにはいられない。そんな人ですから」クス
園長「そう、正義感が人一倍強いのね。それも、白井さんが惹かれた理由のひとつかしら」
黒子(ちょ、大吾先生も聞いていますのに!///)
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 13:50:59.44 ID:qE71Ur120
大吾「あれ、もしかしてお二人って」
園長「友達以上恋人未満、ってところかしら」
黒子「か、勝手なことを吹き込まれては困ります! 妙な噂が流れれば上条さんのご迷惑に」
上条「うん? 俺がどうしたって?」
黒子「」ドキーン
黒子「あ、かか、上条さん///」
上条「あれ、おまえ少し顔赤いぞ? 熱でもあるんじゃないか?」スッ
黒子「え、あの、近っ……ひゃっ!」ピト
上条「どれどれ? ――――うーん、若干熱い気もするけど」
黒子(あ、あぅあぅ///)カチンコチン
園長「……あらあら、これじゃあ白井さんも大変ね」クス
大吾「いやいや、意外と丸く収まるんじゃないですか」クス
上条「……? 何の話っすか?」
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 13:59:56.31 ID:qE71Ur120
男の子B「じゃあ、とうまお兄ちゃんがパパ役で」
女の子B「くろこお姉ちゃんがママ役だよ」
上条「ほ、本当にそれでやるのか?」チラ
黒子「ま、まぁ、しょうがないですわね。お遊戯と割り切って」
女の子B「お遊戯じゃないよ! 二人とも真剣にやんなきゃだめなんだよ!」
上条「あ、ああ、悪かった。ごめんごめん」
黒子(真剣にって言われましても)チラ
上条「でさ、いつもはどういう段取りでやってるんだ?」
黒子(ど、どうしても意識してしまいますの。園長先生が変なこと仰るから)
女の子C「黒子お姉ちゃん、ちゃんと聞いてる?」
黒子「あ、も、もちろんですの!」アタフタ
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:05:32.95 ID:qE71Ur120
男の子C「じゃあ、とうまパパがお仕事を終えて帰ってくるところからね」
女の子C「そんでねそんでね、ママとあたしたちが、パパをお疲れ様ってお迎えするの」ニパァ
黒子「わ、わかりました。では上条さん、スタンバってくださ――」
女の子A「ちょっとー、駄目だよママ」
黒子「は、はい?」
女の子A「名字で呼び合う夫婦なんてどこの世の中にいるの?」
黒子「そ、そう言われましても、なんとお呼びすればよろしいやら」
女の子B「それはやっぱりー、とうまさん、とか、あなた、とか」
上条「……あ、あなたって///」ポリ
黒子(ど、どんな羞恥プレイですの///)ググ
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:13:34.16 ID:qE71Ur120
――TAKE1
上条「た、ただいまー」
黒子「お、おかえりなさい。あ、あなた」
上条「お、おう///」カァ
黒子(て、照れないでくださいまし! こっちだって恥ずかしいんですの!///)
上条(わ、わかってっけどさ///)
子供たち『パパー、おかえりなさーい!』
上条「ただいま。今日もママの言うこと聞いて、ちゃんといい子にしてたか?」
女の子A「うん、窓のお掃除一緒にやったんだよ!」
黒子「今日もお勤めご苦労様でした。お鞄お持ちしますの」スッ
上条「ああ、さんきゅ」スッ
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:22:56.74 ID:qE71Ur120
上条「ええと、もう風呂は沸いてるのかな?」
黒子「はい、少し熱めにしておきましたの」
男の子B「僕、頑張ってお風呂掃除したんだよ!」
女の子B「あたしもー!」
上条「そうか。みんなお手伝いできて偉いなー」
女の子A「ねぇパパ、早くお風呂入ろう!」
上条「よし、みんな一緒に入るか!」
子供たち『わーい!』
女の子C「あ、そうだ。ママも一緒に入るよね?」
黒子「無理ですの! 早すぎますの!///」
園長&大吾「」プハッ
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:27:14.14 ID:qE71Ur120
――ダメだし中
女の子C『夫婦ならお風呂だって普通に入るでしょー?』プンスカ
黒子『ごめんなさいごめんなさい! つい条件反射で!』
――TAKE2
上条「ただいまー」
黒子「おかえりなさい。ご飯の支度、整っていますわよ」
上条「そっか。今日のおかずはなんだ?」
黒子「秋刀魚の蒲焼と、銀杏と鶏肉の茶碗蒸し、それから空豆とトマトの冷製スープですの」
上条「おお、旬の食材がてんこ盛りだな」
女の子A「パパー、ママー。わたしお腹空いたー」
黒子「はいはい、じゃあ早いとこ食事にしましょう」
男の子B「僕、お皿とお箸並べるの手伝うよ!」
黒子「あら本当? Bは本当に良い子ですわね」ナデナデ
男の子B「えへへへー」
女の子A「あれー、パパ。襟元に口紅がついてるよ?」
黒子「――――なんですって?」ギラッ
上条「ちょっ、流れおかしくね!?」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:30:48.27 ID:qE71Ur120
女の子A『さっきのは不倫ルートだったの! 黒子も乗ってくれたんだからアドリブしなきゃ』クドクド
上条(か、仮にも孤児たちの前でそういう生々しい展開はどうかと思うのでありますが!?)
――TAKE3
上条「ただいまー」
黒子「おかえりなさい」
上条「これ、俺からおまえにプレゼントだ」スッ
黒子「あら、なにかしら? まぁ、素敵なリボンですわね!」
上条「あ、ああ。気に入ってくれたなら何よりだ」
黒子「ありがとですの。か、……と、とうまさん」
黒子(セ、セーフですの)
女の子B「ねぇパパぁ。わたしたちにはお土産ないの?」
上条「え、ええと? そうそう、たこ焼きがあるぞー」
男の子C「ええー、やっすー」
女の子B「そこはせめてケーキって言って欲しかったなー」
上条「も、持ち合わせが少なかったから、またの機会にな」
黒子(まったくこの子たち、たくましく育ちそうですわね)クス
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:32:29.64 ID:qE71Ur120
黒子「ジャッジメントですの!」ビッ
男の子C「です!」ビッ
女の子D「ですのー!」ビッ
上条「なんだぁ、おまえら。俺の邪魔をする気なら容赦しないぞ」チャラチャラ
上条(薄々わかってはいた……わかってはいたんだが)
上条(やっぱり俺がスキルアウト役か)トホホ
黒子「さぁみなさん、協力して悪いやつをやっつけますわよ!」ビッ
男の子B「よぉし、いっくぞー!」
子供たち『うわあああああ!』ドドド
上条「ちょっ、多勢に無勢すぎるんですが!?」
黒子「子供たちに規範を示すためにも、ここは大人しくやられていただかないと」キラーン
上条「黒子さん冷たい! くそぅっ、絶対に逃げきってやる!」ダッ
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:50:01.61 ID:qE71Ur120
上条「ふぅ、走った走った」トントン
男の子A「と、とうま兄ちゃんって、足べらぼうに速いんだね」ゼエゼエ
上条「いやぁ、おまえも子供にしちゃあ大したモンだったぜ?」
男の子A「いつか絶対に追い抜いてやっからな」ビッ
上条「おぅ、受けて立つぜ」クイ
黒子「お疲れ様。さ、こちらへ、汗を拭って差し上げますわ」
上条「あ、あぁ、悪ぃな」
黒子「それにしても、いつにもまして見事な逃げっぷりでしたわねぇ」フキフキ
上条「8人に追われちゃあ、こっちも必死になるさ」
黒子(あら……あれだけ走り回ったにしては発汗が少ないですの)
黒子(息もほとんど切れていない。やはり殿方なんですのねぇ)
上条「うん? どうかしたか?」
黒子「いーえ、なんでもありませんの。少し屈んでくださるかしら」
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:58:01.90 ID:qE71Ur120
――食堂
男の子C「うわーっ、すっごいご馳走!」
園長「お姉さんたちが作ってきてくれたお弁当ですよ。さぁ、みんな一緒にお礼を言いましょう」
子供たち『お兄さん、お姉さん、ありがとうございます!』
黒子「どういたしまして。あなたたちの言葉、寮のみんなにも伝えさせていただきますわ」ニコ
上条「お、俺は何もしてねえんだけどなぁ」
黒子「細かいことはいいっこなしですの」チッチ
上条「それもそうだ。にしても、これだけあると目移りしちまうな」
黒子「その、あとでわたくしの作ったおかずの感想、聞かせていただきたいんですけど」ボソ
上条「ああもちろん、おまえの作ったもんなら何だって食わせてもらうよ」
黒子(……えへへ、もぅ、嬉しいこと言ってくれますわ……ハっ)
黒子(こ、子供たちの面前ですの!)ピシ
大吾「それじゃあ、みんな手を合わせてー。せーのっ」パシ
全員『いただきまーす!』
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 15:13:57.20 ID:qE71Ur120
男の子B「ふぇ、ふろほとほうまっへ」モグモグ
園長「B君? 口に物を入れながら喋るのはお行儀がよくないわよ?」
男の子B「ほ、ほめんなふぁい。ごくっ、くろこととうまってさ、どういう関係なの?」
上条「え、ええと、どういう関係って言われてもなぁ」
黒子「仲のよいお友達ですの」
黒子(もうこの手の質問にも大分慣れてきましたの)
女の子B「恋人じゃないの?」
上条&黒子「ングッ」
男の子C「あはっ、二人ともおもしろーい」
黒子「げほっ、げほっ、と、年上をからかうものではありませんわよ」
上条「…………」ドンドンドンドン
大吾「上条君、はいお水」ニコ
上条「――ぷはっ、す、すんません」
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:26:33.19 ID:LcltX4Dr0
男の子B「もう無理、入らねー」ポンポン
女の子C「わ、わたしもお腹いっぱい」
大吾「あれだけあったのに、ほぼ完食だね」
上条「みんな好き嫌いせずに食べられるんだな。残ってるおかずに偏りがない」
男の子C「だって、どれもすごく美味しかったから!」
女の子D「うん! くろこお姉ちゃんって凄いんだね!」ソンケー
黒子「お口に合ったようでなによりですわ」ニコ
園長「それじゃ、みなさんでご馳走様をしましょう」
大吾「はーい、じゃあみんな一緒にいくよー。せーの」
『ご馳走様でしたッ!』
園長「はい、大変よくできました。じゃあ、食べ終わったお皿は台所へ持っていきましょうね」
男の子D「…………」ガタッ
黒子(……あら?)チラ
黒子(あの子のお皿、ほとんど汚れてないですの。食欲なかったのかしら?)
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:30:17.37 ID:LcltX4Dr0
大吾「本当にすみません、洗い物までやっていただいて」
黒子「いえいえ、これくらい何でもありませんの」ジャー
上条「黒子の家事スキルは半端じゃないっすからね」キュッキュッ
院長「ほんと、いいお嫁さんになれそうね」
黒子「は、はぁ///」
上条「ははは、本当のことなんだし照れることないだろ」
黒子「べ、別に照れてなど」カチャ
院長「じゃあ、私はちょっと洗濯機を回してくるから、ここはお願いね」
大吾「僕も子供たちを遊ばせてきます」
黒子「ええ、お願いしますの」
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:34:14.25 ID:LcltX4Dr0
上条「子供たち相当喜んでたな。いっそのこと俺も黒子に料理習おうかなぁ」キュッキュ
黒子「教えるのは一向に構いませんけども、わたくしはスパルタですわよ?」パチ
上条「厳しくっても、お前と一緒に作業するのは楽しそうだから」
黒子「ふふ、まぁ、一度そういった機会を作るのも面白そうですわね」
上条「あ、流し場に重なってるやつは全部終わってるから」
黒子「了解ですの」パッパッ
――カシャン――カシャン
上条「洗い物にホント便利だよな、それ。……ん?」
黒子「どうかしまして?」ピタ
上条「ああいや、そのまま続けてくれ」
黒子「……? はいですの」シュンシュン
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:39:45.85 ID:LcltX4Dr0
――カシャン――カシャン――カシャン
上条「やっぱ気のせいじゃなさそうだな。発動の間隔、気持ち短縮されてねえか?」
黒子「あらまあ、よくおわかりになりましたわね。ここ一か月ほどで0.2秒ほどタイムラグが縮まりましたの」
上条「能力開発相当頑張ってんだなぁ。この分だとレベル5も間近か」
黒子「いえ、さすがにそこまでは。このまま順調に伸び続けたとして、高等部に上がるくらいまではかかるかと」
上条「黒子が高校生、か」
黒子「ん、何を想像してますの?」
上条「い、いや、別に」
黒子「まさか、いやらしいことを考えていませんでしょうね?」ジト
上条「そ、そういうんじゃなくてさ、単純にその」
黒子「……はっきり仰ったらどうですの?」
上条「すごい美人になってるだろうなーって思ったわけです、はい」ポリ
黒子「…………///」プイ
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:50:22.29 ID:LcltX4Dr0
上条「なんでさっきから顔逸らしてんだよ。怒ったのか?」
黒子「お、怒ってなどいませんの」
上条「……? ならいいけどさ」
黒子(もう、この方は)
黒子(自分の言葉がどういう風に相手に伝わるか、少しは配慮して発言して欲しいですの)
黒子(高校生。やはりそれくらいの年頃が上条さんの理想なのでしょうか)
黒子(それまでお付き合いが続くかもわからないのに。……いえ、始まってもいませんけど)
上条「そういやさ、学園全部見渡してもレベル5の空間移動能力者はいないんだっけ」
黒子「……それなら、条件次第であるいは、という方もいないことはないですけど」
上条「え、まじで? お前より強力な空間移動能力者がいるのか?」
黒子「結標淡希。座標移動(ムーブポイント)と呼ばれる能力者ですの」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:54:25.93 ID:LcltX4Dr0
上条「座標移動。って、お前の瞬間移動とどう違うんだ?」
黒子「一番大きな違いは、離れた場所にある物をも転移させることができる点ですわね」
上条「それってつまり、手に触れなくても移動できるってことか? ほとんど万能じゃねえか」
黒子「人間性はともかくとして、空間移動能力の到達点の一つではあるでしょうね。わたくしも完敗しましたし」
上条「お前が、負けたってのか?」
黒子「能力の差異もそうですが、演算能力の差を痛感しましたの。何しろ相手はトン単位で物を飛ばしてきますから」
黒子「あの女と張り合うにはまだまだ力不足。それこそレベル5になるくらいでないと」
上条「超能力者か。もしなったら、今度は黒子が「お姉様ーっ!」て叫ばれる日が来るのかな」
黒子「あまり実感が湧きませんわね。頼りがいという点では、お姉様の足元にも及びませんもの」
上条「謙遜するなって。真面目だし面倒見もいいから下級生には慕われるぜ、きっと」
黒子「どうも、話半分に受け取っておきますわ」
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:57:36.41 ID:LcltX4Dr0
上条「やっぱりすげえな。あれだけの量を洗ったってのに十分しか経ってねえ」テクテク
黒子「上条さん、お料理の話ですけれどどうします?」シズシズ
上条「そうだな。俺んちでって言いたいところだけど、二人で料理するには少し狭いよな」
黒子「女子寮にお連れするわけにもいきませんし。いっそボランティアにかこつけてここを借ります?」
上条「ああ、悪くないかも。子供たちが食べてくれるなら色々試せるし――ん?」トテテテ
男の子A「隙ありぃっ!」バッ
――ブワ
黒子「――ほぇ?」キョトン
上条「イ゛イ゛ッ!?///」バッ
男の子B「おおー、白かぁ。意外、くろこって清楚系だったのな」
男の子A「変なの、足にバンド巻いてら。何に使うんだろ、これ」チョンチョン
黒子「な、ななななッッ///」フルフル
黒子「何をやってますのッ!///」バシッ
上条「俺ェーッ!?」
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:01:02.26 ID:LcltX4Dr0
園長「いくら子供でも、やっていいことと悪いことがあるのよ?」
大吾「そうだよ。もう誰もボランティア来てくれなくなっちゃうよ?」
男の子B「ご、ごめんなさい」シュン
男の子A「……反省してます」ショボン
園長「本当に、申し訳ありませんでした。ちゃんと言って聞かせますので」フカブカ
黒子「そ、そこまで大袈裟にされることではないかと」ブンブン
上条「そうっすよ。実質的な被害者は何も悪くないのに殴られた俺くらい――」
黒子「黙っててくださいな」ドス
上条「お、おぅふ」ゲホ
男の子B「く、くろこたち、もう来てくれないの?」グス
男の子A「あ、謝るから、もうしないから……嫌いにならないで」スン
黒子「こらこら、男の子が簡単に泣くものではありませんわよ」ナデナデ
黒子「大丈夫、嫌ってなどいませんから。さ、顔をお上げなさい」ニコ
上条「…………」フッ
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:07:27.11 ID:LcltX4Dr0
――お手洗い
黒子「このファンデーション、ノリがいまいちですわね」パタパタ
黒子「午後から日差しも強くなるみたいですし、リップはUVに変えておこうかしら」キュ
黒子(……さ、さすがにさっきのは、見られてしまいましたわね///)カァ
黒子(変な下着ではなかったはずですけど……新品ですし)
黒子(見られてしまうなら黒とか赤を穿いてきた方が、大人っぽいと思われたかしら)ハァ
黒子(でも、淫乱だと思われてしまうのも嫌ですし)
黒子(はぁ、わたくし本当、どうかしてますわね)コツン
黒子(他人からどう思われようと一向に構わない、そう思ってたはずなのに)パタン
黒子(あの方に関してだけは……どうにも臆病になりがちで)コツコツ
――ドンッ!
黒子「とっ! こーら、室内を走ったら危ない――」
男の子D「……ッ」クル
黒子「あら? あなた確か」
――タンタン
黒子「ちょ、ちょっと! 待ちなさい!」ダッ
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:11:49.51 ID:LcltX4Dr0
――バタン!
黒子(……寝室のプレート)トン
黒子(……やはり鍵をかけられてますわね)ガチャガチャ
黒子「ですけど、こちらには瞬間移動が」
上条「ちょいタンマ」ポン
黒子「っひゃ――か、上条さん」クル
黒子(びっくりした、気配が全く感じられなかったですの)
上条「今押し入っても、多分逆効果だ。少し落ち着くまで待った方がいい」
黒子「何かあったんですの?」
上条「些細な言葉のすれ違いってとこかな。どっちも悪気はなかったと思う」
黒子「……喧嘩、ですのね?」
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:20:30.16 ID:LcltX4Dr0
大吾「D君は、先月の中頃にあすなろ園にやって来たばかりでね」
大吾「元々ご両親の仲がうまくいっていなくて、話し合いの末にお父さん側が引き取ったみたいなんだけど」
大吾「学園の寮にD君を入れて、一年分の入学費だけ振り込んで、その後全く連絡がつかなくなったらしい」
黒子「……ひどいことをする親もいたものですわね」
上条「あの、お母さんの方に預けるわけにはいかないんすか?」
大吾「失踪が発覚した当初は、そういう話も出ていたみたいだけど」
大吾「養育費のことも含めて諸々ご家庭の事情があるから、不用意に立ち入ることも出来なくてね」
大吾「少しずつ施設に馴染んでいければと思っていたけど、今まで我慢していた物が噴き出てしまった結果だろう」
大吾「何度も顔を合わせていたのに、癇癪の兆候を見過ごしてしまうなんて、教師失格だな」ハァ
黒子「そんなことありませんわ。園長先生も大吾先生も十分やってくださってますの」
上条「俺も黒子と同意見っす。個別での対応にはどうしたって限界あるじゃないすか」
大吾「そう言ってもらえると少しは救われるけど、やっぱ口惜しいな」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:24:24.97 ID:LcltX4Dr0
黒子「そもそも、喧嘩の原因はなんだったんですの?」
上条「砂遊びの輪に交じってこようとしないDをAちゃんが誘ったんだ」
黒子「……それで喧嘩に? 無理強いしたんですの?」
上条「それだったら、俺たちも止められたんだよ」
大吾「Aちゃんは優しい子だけどちょっと気が強いところがあるから」
大吾「その誘い文句が、施設に来て日も浅いD君には、刺激が強かったんだろうね」
女の子A『一人で遊んでてもつまんないでしょ。か、可哀そうだからわたしが仲良くしてあげる、感謝しなさい』
上条「って感じでさ」
黒子「……ツンデレですの」
上条「言葉通りに受け取っちまったんだろうなぁ。子供に機微を察しろってのも酷な話だけど」ポリポリ
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:30:51.35 ID:LcltX4Dr0
上条「振り返ってみると、午前中、Dはほとんど絡んでこなかったな」
黒子「確かにあまり目立たなかったですわね。わたくしも、昼食をあまり食べていなかったのが気になってましたの」
上条「へえ、よく見てるんだな」
黒子「そういえば、園長先生はどうされたんですの? あの方ならそういったケアもお手の物では」
上条「それが、洗濯を終えた後すぐ車で出かけちまって。買い出しだっていうから、当分戻らないかもしれない」
黒子「あらまあ、タイミングが悪かったですわね」
上条「Dも、まだ捨てられたって事実が頭から離れないんだろうな。処理しようのない感情を持て余してるんだと思う」
黒子「あり得ますわね。ともかく、わたくしが中に入って一度説得してみますの」
上条「黒子。悪いんだけどその役回り、俺に譲ってくれないか?」
黒子「え、上条さんに?」
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:43:04.86 ID:LcltX4Dr0
黒子「それはつまり……わたくしには任せられないと?」
上条「違う違う。そういうんじゃなくて、相性の問題かな」
黒子「相性、ですの?」
上条「男が意固地になってる時に女の子に慰められるってのは、なおさら惨めに感じちまうんじゃないかな」
黒子「んー、いまいち仰っていることがわかりませんの」
上条(まぁ、同じ男じゃないとわかんねえかもな)
上条「……正直言えば私情もちっと交じってるんだけど」
上条「もし無理そうだったらすぐお前にバトンタッチするからさ。な、この通り」パン
黒子「……まあ、そこまでおっしゃるなら」
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 21:57:17.55 ID:XqMpXJyJ0
――カチ
男の子D「……っ!?」ガバッ
上条「よぉ、ちっと邪魔するぜ」ガラガラ
男の子D「な、なんで! ちゃんと鍵をかけておいたはず」
上条「外から開けた。黒子お姉さんに窓ガラスを一枚抜いてもらってな」
男の子D「ぬ、抜いたって、いったいどうやって」
上条「そりゃ、後で本人に直接聞くこったな」
男の子D「……な、何しに来たんだよ」ジリ
上条「そう構えるなって。少し話をしたかっただけだ」
男の子D「あ、あんたと話すことなんかこっちにはない!」
上条「なんだ、でけえ声出せるんじゃねえか。午前中はてんで大人しかったのに」ドサッ
男の子D「か、勝手に人のベッドに腰掛けるなよ!」
上条「Aちゃん、お前に突き飛ばされた後ずっと泣いてたんだぞ?」
男の子D「……ッ」
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:09:26.92 ID:XqMpXJyJ0
上条「…………」ジ
男の子D「そ、そんなことをわざわざ伝えに来たのかよ。んな暇があるならみんなの相手してやれよ」
上条「理由がどうあれ、あんま女の子に暴力を振るうのは感心しないな」
男の子D「あ、あんたに説教される筋合いなんてないだろ」
上条「あのなぁ、女を殴るなんてのは男として最低の」
アニェーゼ『はぁっ!? あんたがそれを言いやがるんですか』
上条「」ギク
男の子D「ど、どうしたんだよ。いきなり黙りこくって」
上条「い、いや……別に」
シェリー『私を盛大に殴り飛ばしましたよね、糞痛かったぞゲロ野郎』
上条「……」ダラダラ
オリアナ『あんな強く叩きつけて意識まで飛ばされちゃって、もうお姉さんお嫁にいけないわぁ」
ヴェント『スン(↓)マセーン(↑)! 年頃の娘が野郎にグーパン食らっちまってスン(↓)マセーン(↑)!』
上条「……それはともかく、なんでAを突き飛ばしたりしたんだ?」フッ
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:19:37.03 ID:XqMpXJyJ0
男の子D「……あいつは、俺を可哀そうだって言いやがった」
上条「やっぱり、それが許せなかったのか」
男の子D「……同情されればされるだけ惨めになるのに」
男の子D「親に厄介者扱いされて、こんなところに預けられて」
男の子D「……その上、同じ境遇のやつにまで、あんなこと」プルプル
上条「あのさ、Aは悪気があってあんなこと言ったわけじゃないと思うぞ?」
男の子D「だとしても、傷を舐め合ってることには変わりないじゃないか」
上条「へえ、まだ子供なのにそんな言い回しよく知ってるな」
男の子D「ちゃ、茶化すなよ!」
上条「ああ、悪い。でもさ、傷を舐め合うのってそんなに悪いことなのかな」
男の子D「……え」
上条「だって、それって一人じゃ絶対にできないんだぜ?」
男の子D「……、」
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:28:28.87 ID:XqMpXJyJ0
上条「たとえわずかでも誰かが自分の支えになってくれて、自分が誰かの支えになれるってのは」
上条「結構幸せなことなんじゃないか?」
男の子D「ひ、一人の方が気が楽なやつだっているだろ!」
上条「……Dは、話し相手がろくにいないとどうなるか知ってるか?」
男の子D「し、知るかよそんなの」
上条「まず、言語中枢と声帯、聴覚の神経の働きが鈍って、咄嗟に言葉を返せなくなる」
上条「のみにとどまらず、いずれは腹筋や喉の筋肉まで衰えてきて声が細く小さくなっていく」
男の子D「……ッ」ゾッ
男の子D「そ、そうやってガキ脅して面白いのかよ。だいたい、あんたみたいなやつに俺の気持ちなんて」
上条「――そんな様子を見るに見かねて、両親は俺を学園都市に入れようと決意したんだ」
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:41:30.29 ID:XqMpXJyJ0
男の子D「え……あんたの、話?」
上条「ああ、ここだけの話だ」
上条「俺がおまえと同じか少し下くらいの年齢のときは、周りの連中から滅茶苦茶嫌われてた」
男の子D「……そ」
男の子D「そんな見え見えの作り話、しなくていいよ」プィ
上条「作り話?」
男の子D「そうに決まってる。あんたはどう見てもそういうタイプじゃ」
上条「だったらよかったけど、本当なんだな、これが」フッ
上条「友達は誰ひとりとしていないし、周りの大人には疫病神呼ばわりされてる有様でさ」
男の子D「や、疫病神? 大人まで? どうしてそんな」
上条「……だよな、普通疑問に思うはずだよな。どうしてみんなは俺を嫌うんだろうって」
上条「で、そのうちに原因は何となく理解できた。……けれど」
上条「問題を解決する方法なんてのは、どうしたって見つからなかった」
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:42:53.84 ID:XqMpXJyJ0
上条「文字通り腫物のように扱われてるうちに、疲れちまったんだろうな」
上条「俺は、全てを諦めちまった。誰かに近づかなければ、余計に傷つかずに済むから」
男の子D(……俺と、一緒だ)
上条「幼稚園じゃあ飯はいつもひとりで食べてた」
上条「担任の先生ですら俺を恐れてろくに声をかけてきやしなかった」
上条「お遊戯の時間なんて苦痛以外の何物でもない」
上条「自分がひとりぼっちだってこと、嫌でも突きつけられるから」
上条「楽しんでいる声を聞くのが苦痛で、ひそひそ話されるのがもっと苦痛で」
上条「ただ部屋の隅の方で縮こまって、じっと息を殺して、ひたすら時間が過ぎるのを待って」
上条「窓の外に意識を飛ばす。そんな毎日を繰り返してた」
上条「気が休まったのは、昼寝の時間くらいなもんさ」
男の子D「……な、何で」
上条「うん?」
男の子D「今のあんたは何で、そんなに明るいんだよ」
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:52:46.83 ID:XqMpXJyJ0
上条「……そうだなぁ。正直あまり実感はねえんだけど」
上条「おそらく周りの連中のおかげだったんだろう、とは思ってる」
男の子D「……なにそれ、ずいぶん適当なんだね」
上条「はは、返す言葉がねえな」
上条「でも、学園都市に預けた両親については、当時は恨んでいたと思う」
上条「まだ甘えたい盛りに親と離れて暮らすのは、やっぱし寂しいもんだからな」
上条「だから、ここにいる子たちの気持ちも、ちっとはわかるつもりだ」
男の子D「…………」
上条「俺は――なんていうか、これまで人間の汚い面、醜い面もいっぱい見る機会があったからさ」
上条「いつかおまえの親が迎えにきてくれるかも、なんて無責任なことを言うつもりはさらさらねえ」
上条「けどさ、俺から見てもここの園長さんや大吾先生は信頼できそうな人だし」
上条「ここにいる子たちだって、みんないい子たちだと思うぜ。もちろん、Aちゃんも」
男の子D「…………」
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:19:16.64 ID:XqMpXJyJ0
上条「あすなろ園には、今は元気そうに見えても、昔はそうじゃなかった子だって一杯いるはずだ」
上条「いや、きっと今だって実の親のことを忘れられない子がほとんどだろうな」
上条「だから誰よりお前の気持ちがわかるし、だから放っておけない」
上条「たとえ不器用で、思いをきちんと伝えきれてなくたって」
上条「お前の力になってやりたい気持ちに偽りはないと思う」
上条「そんな好意を無碍にしちまうのは、誰よりお前自身が、一番堪えてるんじゃないか?」
上条「俺はいったい何をやってるんだろう。そんなふうに思ってる自分が、どこかにいやしないか?」
男の子D「……お、俺は」グ
上条「……まっ、いきなりあれこれ言われてたって簡単には踏ん切りつかないよな」
上条「だから、ここから先は俺の独り言だ」
男の子D「……?」
上条「いつかまた、新しい子があすなろ園にやって来たとき」
上条「きっとその子も苦しんでる。今のお前みたいに」
上条「……たとえばDなら、その子になんて声をかけるんだろうな?」
男の子D「――――ッ!」
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:29:37.58 ID:XqMpXJyJ0
園長「今日は本当にありがとうございました」ペコ
黒子「いえいえ、こちらこそお世話になりました」ペコ
大吾「子供たちもお二人とたくさん遊べて大満足だったんでしょうね。みんなぐっすり眠ってしまって」
大吾「本当なら、お別れの挨拶もしたかったと思うんだけど」
黒子「また近い内に伺いますわ。次回は子供たちも交えて料理教室を、と上条さんと相談してまして」
園長「あら、素敵ね。私たちも交ざっていいのかしら?」
上条「もちろん、大歓迎っす。打ち合わせについては後日にこちらからメールで送ります」
上条「……」チラ
園長「そんなに気にしないでも大丈夫ですよ、上条さん」
上条「え……」
園長「D君には、後で私からもお話してみますので」
上条「……す、すみません。もしかしたら俺、余計なことしちまっただけかも」ポリ
園長「そんなことはありませんよ。真摯な心は年齢にかかわらず、ちゃんと伝わるものですから」フフ
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:32:11.58 ID:XqMpXJyJ0
上条「……どっと疲れたな」
黒子「……そうですわねぇ」
上条「保育って、やっぱり一筋縄じゃいかねえんだなぁ。それに、体力的にも精神的にもタフじゃないと」
黒子「これをほぼ毎日だなんて、園長先生は本当、尊敬に値するお方ですわね」
上条「今までにもDみたいなケースがあったんだろうな。全然動じてなかったし」
黒子「孤児全員の教師にしてお母様ですもの。肝っ玉が据わってなければやっていけませんわ」
上条「はは、そりゃそうだ」
黒子「……あの」
上条「ん、どした?」
黒子「本当の話なんですの?」
上条「何の話だ?」
黒子「……あなたの、幼少期のこと」
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:35:45.10 ID:XqMpXJyJ0
上条「……聞いてたのか。道理で、あの後よそよそしかったわけだ」
黒子「ごめんなさい。あなたがどんなふうに説得するのか、気になってしまって」
上条「いや、別に構わねえよ」
黒子「それで、どうなんですの?」
上条「んー、まー、本当らしい」
黒子「まるで、他人事みたいな仰りようですわね」
上条「当たらずとも遠からずだな」
黒子「……どうして、今まで話してくださらなかったんですの?」
上条「いやそりゃ、お前にだって触れられたくない過去の一つや二つあるだろ? おねしょしたとか、誰かに怪我させちまったとか」
黒子「そんなこととは比較にならないでしょう」
上条「そ、そうかな」
黒子「気を遣われるのが嫌でしたの? それとも、わたくしがその程度のことで上条さんを遠ざけると?」
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:44:25.10 ID:XqMpXJyJ0
上条「いやさ、実際園児の俺は遠ざけられていたわけで、あまり話す気には」
黒子「……信用していただけなかったんですのね」
上条「おいおい、むくれるなって」
黒子「むくれていませんの。上条さんに頼られない自分に不甲斐なさを感じているだけですの」
上条「い、いやだから。そもそもが、さっきの話自体虚言みたいなもんなんだよ」
黒子「……虚言? 先ほどの話が方便だと仰るんですの?」
上条「少なくとも、今の俺にとってはな。ちょいと話がややこしいんだよ」
黒子「今のご時世、本当かどうかなんて調べればすぐにわかりますのよ?」
上条「……はぁ、放って置いたら本当に調べかねないな」
黒子「さすが、わたくしのことをよくご存知ですわね」
上条「……わかった、認めるよ。確かにそういう事実はあった」
黒子「ほらごらんなさい! 適当なこと言って誤魔化したところでわたくしは全部」
上条「ただ、俺はそのことを歯牙にもかけちゃいねえ。これも事実だ」
黒子「お見通し――――なんですって?」
上条「より正確に言うと、そうやって扱われていたことにどういった思いを抱いていたかを、思い出せない」
黒子「ご、ご冗談を! それほどのことがあって記憶に残らないなんてことあるはずが」
上条「だから――肝心なその記憶が、なくなっちまったんだよ」ポリポリ
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:53:43.03 ID:XqMpXJyJ0
黒子「……な」
上条「むしろ、隠しておきたかったのはそっちの方でさ」
黒子「何を、仰ってますの?」
上条「だから、さっきDに言ってやったことは全て伝聞なの。なんだよ、なんです三段活用」
黒子「で、伝聞って……」
上条「たとえば、幼少期の境遇を両親から聞いたり、当時の事件を自分で調べたりして」
黒子「事件?」
上条「以前、俺の不幸体質のことについて少し説明したろ?」
黒子「え、ええ……。確か生まれつきという話でしたわね」
上条「ああ。幼稚園に通い始めてから間もなく、見知らぬ男に背中を刺されたことがあったらしいんだ。今もその傷跡が残ってる」
黒子「……ッ」
上条「成長した今でこそある程度の不幸は跳ね返せるようになったけど、さすがに幼稚園児じゃ大人から逃げるのは無理だよな」
上条「そうやって怪我やトラブルが絶えなかった俺に巻き込まれるのを恐れて、みんながみんな離れてったってわけ」
上条「大人だって刃物で刺されちまったら普通に死ねるからな。無理ねえよ」
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:00:25.86 ID:t8h9KcE30
上条「とはいえ、そう考えるのは高校生で、記憶の消えている俺だからで」
上条「幼い上条当麻なら、むしろこう思ったんじゃないか、ってのを想像してDに伝えたわけ」
上条「だから、嘘とまでは言いきれない。俺の本心に違いはないから」
上条「でも、実体験の記憶が失われてる以上は虚言とも取れる。ややこしいけどそんな感じだ」
黒子「……に、にわかには信じがたいですが、仰ることは理解できましたの」
黒子「ですけど、記憶喪失? いったいいつ、何が原因で?」
上条「今年の梅雨くらいだったかな。ちっと厄介事に関わって、何とか事は収まったんだけど、記憶を司る脳細胞を破壊されちまった」
黒子「脳細胞って、それこそ質の悪い冗談じゃ」
上条「なーいーんーでーすーの」
黒子「で、ですけど、今もこうして普通に話せているじゃありませんの」
上条「黒子も脳医学関係は領域外か。俺が失ったのは主に思い出記憶ってやつみたいなんだ」
上条「知識や会話の仕方、体の動かし方なんかは特に問題ない。ただ――」
上条「自分が誰なのか、とか、学園にいた理由とかは、全く思い出せなかった。目が覚めたら外国にいたって感じだ」
上条(……本当は病院のベッドの上だけどな)
黒子「……そ、そのようなことが」フルフル
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:30:52.39 ID:t8h9KcE30
上条「困ったことにマジなんだよ、これが」
上条「何しろ、自分を生んでくれた両親の顔すら思い出せねえってんだから」ハハ
黒子「か、上条、さん」ブワ
上条「って、ちょお! なんでお前が泣きそうになってんだよ!」
黒子「だ、だって。そんなこと、思ってもみなくて」グシュ
上条「ま、待てまてまて! まじでそれは勘弁――」
――ムギュ
上条「え、お、く、くく、黒子さん!?」
黒子「……ごめん、なさい、興味本位でこんな、こんなこと」ポロポロ
上条「お、おいおい、大袈裟すぎるだろ! 泣くなんて勝気なお前らしくもねえ」
上条「そ、そうだ、少し前に両親と会う機会があったんだ」
黒子「……お父様と、お母様に?」スン
上条「ああ、実際に会ってみても戸惑うばかりで、まぁそれでも、思い出せないことに悲しくなったりはしなかったな」
上条「でさ、父さんも母さんもすげえいい人そうだったんだ。それに、親父が『俺の息子だっ』て認めてくれてさ」
上条「うん、まぁ、あんときは自分のルーツがちゃんとあるんだってわかって、正直ほっとしたかな」
黒子「……上条さん」
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/27(土) 00:36:44.66 ID:gyb5KWgl0
記憶の事を話すとはなかなかに意外
それだけ黒子の事を信頼してるってことか
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:37:17.50 ID:t8h9KcE30
上条「当事者以外にこのことを話したのは、今回が初めてだ。親にさえ伝えてない」
黒子「……ッ」
上条「なのにそんな辛気臭い顔されたら、もう誰にも話そうなんて思えなくなっちまうぞ?」
黒子「…………わ」
黒子「わかり、ましたの」ゴシゴシ
上条「ま、世の中何がどう転ぶかなんてわからないさ。もし仮に」
上条「上条当麻が記憶を失っていなければ、白井黒子とは出会えなかったのかもしれない。そうだろ?」
黒子「――――」
上条「もし、廃ビルでの一件でお前を助けられなかったら。そう思うと、今の状況は満更でもねえよ」
黒子「……ほ、本当、ですの?」オズ
上条「もちろん。ここんところ、お前のおかげで毎日が充実してるよ」
上条「昔の不幸を笑って話せるのも、今が幸せだからだと思うし」
上条「そんなわけでさ、黒子にはすごく感謝してるんだ。いや、感謝だけじゃなくて――」
――俺は白井黒子って女の子が、好きなんだと思う。
黒子「……ッ!?///」
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:49:59.81 ID:t8h9KcE30
上条「……って」
黒子(い、今のは、聞き違いでは……)
上条「……はぁ、やっと出てきやがりましたよ///」ポリ
上条「今まで何度言おうとしても、どうしても喉に引っかかっちまうんだよな」アーアーホンジツワセイテンナリ
上条「ったく、どんな魚の骨よりたちが悪いっての」チラ
黒子「……///」ポー
上条「あ、まぁ、迷惑だと思ったらいつでもフってくれ。俺の盛大な勘違いってことも」
黒子「……あ、あの、その///」パクパク
黒子(……ダ、ダメですの! 落ち着くんですの!)スーハースーハー
上条「く、黒子さん?」
黒子「はほっ、ほ、本当によろしいんですの? わ、わたくしで?」
上条「そ、それを訊くってことは……OKってことか?」
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:58:52.33 ID:t8h9KcE30
黒子「…………わ」
上条「……お?」
黒子「わ、わたくしはまだ中1ですし、胸の大きさも微々たるものですし!」
黒子「こういう性格ですからきついことも平気で口にしてしまいますし友人たちと喧嘩もしょっちゅうですし!」
黒子「ジャッジメントで以前のように急な呼び出しがかかったりとかしてものすごいご不便やご苦労をお掛けしてしまうやも――」
上条「やめやめ。つか、わざわざ短所ばかり並べなくても」ハハ
上条「俺の知ってる黒子は、自分に厳しくて、後輩とは思えないくらい頭の回転が早くて」
上条「曲がったことが許せなくて、大の男をあっという間にのしちまうくらい強くて」
上条「そのくせ分け隔てない優しさも持っていて、料理上手で」
上条「とってもお洒落で、少し意地っ張りなところもあるけど、そこがまた可愛らしくて」
上条「まぁ、なんつうか、何気ない仕草一つ取っても、俺の視線を丸ごとかっ攫っていくような女の子なわけですよ」
黒子「か、かかか、上条、さん///」
上条「だから、お前が俺の彼女になってくれたら、すげえ嬉しいなーとか言ってみたりして」
黒子「……ぁ///」ボシュッ
黒子(……ダ、ダメですの、抑えてないと顔が崩れてしまいますの///)バッ
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 01:08:38.63 ID:t8h9KcE30
上条「って、やべえな、急に恥ずかしくなってきた。か、体がむずむずしちまう///」クル
黒子「ちょっ、ちょっと! どちらへ!」
上条「も、もし俺と交際してくれるんなら、今度会った時下の名前で呼んでくれ。それがOKのサインってことで――――じゃな!///」タッタッタッ
黒子「――まッ!」
――ヒュン
上条「……へ? ――どっわっ!」ムギュ
――ドサッ
上条「てて、あ、危ねえだろ! いきなり進行方向に転移するなんて」
黒子「……ご、ごめんなさい。……当麻、さん」
上条「……ッ」
黒子「こ、こここれで、契約成立ですわね///」ピト
上条「ちょ、く、黒子、くっつきすぎっつうか///」ググ
黒子「今引き剥がすのは禁止ですの! 見れた顔じゃないですの!///」シッカリ
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 22:57:50.61 ID:I7BaMo0v0
上条「ほ、本当に、いいのか? よく考えないで」
黒子「……なんですの? 中途半端な気持ちで口にしたんですの?」
上条「そ、そんなわけねえだろ。これでも一か月近く悩んでたっつうの」
上条「だけど、俺はやっぱり不幸体質な男で、そこはどうしたって変えられないわけで――ッ」ピト
黒子「今さら見当違いのことを言うのは、この口ですの?」ツツ-
上条「……く、黒子」
黒子「あなたは知るべきですの。今の告白が、わたくしをどれほど浮かれさせているかを」
――トクントクン
黒子「心臓は嘘をつきませんわ。こうしてあなたに抱き締められているだけで、十二分に幸せなんですの」ピト
上条「……ッ」
黒子「……黒子は、黒子は」
黒子「当麻さんのことを、心からお慕いしておりますの」
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:01:46.77 ID:I7BaMo0v0
上条「……へ」
上条「へへ、そっか」
上条「……今日は人生最良の日ってやつだな」ギュ
上条「……当麻さん、か。いい響きだなぁ」
黒子「も、もう、あなたってばほんと大袈裟ですのっ」
上条「今日くらいはいいのっ。好きな娘と名前を呼び合えるなんて、最高じゃねえか」
黒子(……好きな娘///)キュン
黒子「……あ、あの」オズオズ
上条「うん?」
黒子「も、もう一度、お願いしてもよろしいですの?」
上条「もう一度って……」
黒子「その、告白を」ドキドキ
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:08:28.93 ID:I7BaMo0v0
上条「ええ? ああいうのは一回こっきりが普通なんじゃ」
黒子「だ、ダメですの?」モジモジ
上条(……か、可愛い///)
上条「ま、まぁ、黒子の頼みなら仕方ねえな」
上条「……す、好きだ、黒子」
エコー(――好きだ――好きだ――好きだ)
黒子「……ッ///」プルプルプルプル
上条「……こ、こらこら! 自分で頼んでおきながらなぁに照れてんですかっ!///」
黒子「……あ、あら、当麻さんの胸元に変な虫がついてますの」
上条「へ、胸元? ど、どこだ?」バッ
黒子「――――んっ」クン
――チュ
上条「」
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:32:54.59 ID:I7BaMo0v0
黒子「……ッ///」バッ
上条「……お、お前」
黒子「……い、一応ファーストキスなんですからね」
上条(ほ、ほとんど不意打ちだったじゃねえか)ドギマギ
黒子「……だ、黙ってないで、なにか気の利いた感想はないんですの?」
上条(か、感想って言われてもな)
上条「……キスした相手の顔をまともに見れない黒子さん可愛――いでででッ!」ギュウウ
黒子「んもうっ、少しは真面目に答えてくださいなッ!///」バッ
上条「わ、悪い。でも、あれだな」
黒子「な、なんですの?」
上条「背伸びしながらのキスって、うまく説明できないけどなんかいいよな///」
黒子「……聞いたこちらがバカでしたの」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:50:46.25 ID:I7BaMo0v0
――後日
黒子「とぅんたららん、とぅとぅとぅ~♪」クルクルクル
寮監「ご機嫌だな、白井」
黒子「あっ、寮監様。お戻りでしたのね」
寮監「ああ、頼みは引き受けてくれたようだな。あすなろ園から礼状が届いたぞ」
寮監「お陰様でD君もすっかり馴染みましたとのことだ。わたしにはなんのことかさっぱりわからんが」
黒子「ええ、心当たりはありますの」
黒子(後で当麻さんにメール送っておかなきゃ。きっと喜んでくれますわね)
寮監「ところで、何かわたしに言い忘れていることはないか?」
黒子「え? ええと、門限はきちんと守ったつもりですけれど」
寮監「……ほう?」
黒子「も、もちろん寮監様が帰省なされている時もですわよ?」
寮監「なるほど、なるほど」ウンウン
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:52:42.94 ID:I7BaMo0v0
黒子(……な、なんでかしら? 嫌な予感が止まらないですの)
寮監「……あのチケットを渡すとき、ちゃんと伝えたはずだな?」
寮監「あそこはわたしの知り合いがやっているレストランだと」
黒子「……え」ゾ
寮監「よりによってわたしが紹介したレストランで男とデートとは、いい度胸だ」
黒子「……あ……いえ、でも、それは」ダクダク
黒子「あ、そうですの! 用事を思い出しました――」ガシ
寮監「規則は、守るためにあるんだ。破るためのものではない」
寮監「よもや、言い訳はあるまいな」グググ
黒子「ま、待ってぇ――」
――ゴキッ!
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:34:54.57 ID:UyHAEZFc0
――レストラン
従業員『いらっしゃいませ』スッ
黒子『一週間前に電話で予約しました白井黒子と申しますの』
従業員『白井様……はい、承っております。どうぞこちらへ』
上条『……オイオイ、ずいぶんと本格的なレストランだな』
黒子『最近お会いできる時間が少ないですし、たまにはこういうのも悪くないでしょう』
従業員『お二人は未成年でございますね。お飲物は他のジュースに変更することもできますが』
黒子『いえ、コースのままでお願いしますの』
従業員『かしこまりました』
上条『つうか、中学生がシャンパンなんて飲んでいいのか?』
黒子『高校生だってダメですの。心配しなくともアルコールは1%未満と書いてありますわ』
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:36:25.35 ID:UyHAEZFc0
上条『ああそうだ。食事の前に見せたいものがあるんだけど』
黒子『あら、もしかして何かプレゼントですの?』パァ
上条『プレゼントっていうか、事後報告だな』スッ
黒子(……え)
黒子『……な、なんで当麻さんが、風紀委員の腕章を?』
黒子(わたくしのは……、カバンにありますわね)
上条『このたび第四十九支部で新人研修することになりました、上条当麻っす』ビッ
黒子『な、なんですって!?』
上条『まだ経験不足で何かとご迷惑をかけることもあると思いますが、ご指導のほどよろしくな、先輩』ニッ
上条『っとまぁ、まだ研修の段階だし、希望を出しても黒子の一七七支部に配属されるかはわかんねえけど』
黒子『さ、サプライズですの』
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:39:30.03 ID:UyHAEZFc0
上条『ほら、お前最近ずっと会える時間が少ないってこぼしてたし』
黒子『そ、それはっ……その……こ、ここまで望んでいたわけでは』モジモジ
上条『あれ、もしかしてありがた迷惑だったか?』
黒子『と、とんでもない! すごく、嬉しいですの///』
上条『んなら良かった。じゃあ――』
従業員『大変お待たせいたしました。差支えなければ料理の方、初めてもよろしいですか?』
黒子『は、はい』
従業員『それでは、前を失礼いたします』
――キュポンッ――――シュワワワワア
従業員『では、ごゆるりとお楽しみください』ペコ
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:46:48.96 ID:UyHAEZFc0
上条『さてと、何に乾杯しようか』
黒子『んん、そうですわね』
黒子『――二人の三年後に乾杯といったところでどうですの?』
上条『三年っていうと、お前は高等部、俺は社会人か大学生か。新たな転機にってわけだな』
黒子『そ、それもあるんですけれど』
黒子『お、大人の恋愛ができるまで、ちゃんとお付き合いできますようにって///』ポッ
上条『あ、な、なるほどな///』
黒子『も、もう始めますわよっ』
黒子『し、白井黒子と上条当麻の三年後に――』
上条&黒子『乾杯っ』tin
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:48:36.21 ID:UyHAEZFc0
――後日談
黄泉川『ふうん、あの坊やがそんなことをねぇ。それで白井がそれを信じたと』ニヤ
黒子『なんだか、含んだような言い方ですわね』チラ
黄泉川『スキルアウトの暴動直後にふらっと職員室に来てさ、風紀委員のことについて聞かれたジャン』
黒子『……え』
黄泉川『忘れたのか? 本来ジャッジメントの研修は修了するまでに数か月かかるじゃん』
黒子『……あっ』
黒子(そ、そうでしたわ。誰かの推薦があったからって、すぐに入れるわけじゃ)
黄泉川『きっと会うたびに怪我してるお前を見て、心配になったんジャン?』
黒子『で、ですけど、そんなこと一言も』
黄泉川『ま、そこでジャッジメントを辞めろって言わないあたりが大人っていうか、あの坊やらしいけどね』ニヤ
黄泉川『白井の意志は尊重したいから、せめて危ない時には傍で守ってあげられるようにって考えたんジャン?』
黒子『……もぅ、当麻さんったら』
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:54:25.63 ID:UyHAEZFc0
黄泉川『無能力者っていうから通せるかは微妙なとこだったけど、あの体術なら問題なさそうだ』
黒子『体術……』
黄泉川『ここんとこ、知り合いの道場に通い詰めていたらしいよ。確か、天草式とかなんとか』
黄泉川『今ならわたしとも結構いい勝負するジャン』
黒子『そ、そこまで強くなってたんですの?』
黄泉川『ありゃ今どきの男子にしちゃ、感心なくらいにストイックだね』
黄泉川『教育者の立場でこういうのもなんだけど、あんたたちみたいなのは見てると応援したくなるジャン』
黄泉川『ま、ああいう男の彼女ってのは、別の意味で大変そうだけどね』
黒子『……それは確かに、否定できませんわね』クス
黄泉川『ほぉ、それは両方とも、かい?』
黒子『――――ええ。両方とも、ですの』ニコ
――the end
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 09:02:07.45 ID:UyHAEZFc0
これにてanother完結です
上条さんが黒子と付き合ったら十中八九ジャッジメントに入っちゃうだろうなと思ったのがそもそもの始まり
まさかこんなに長く続くとは思わなんだ
VIPから引き続いて多くの乙、支援のほどありがとうございました
また機会がありましたらノ
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/29(月) 18:36:12.05 ID:GYXQBEMto
乙です最高でした
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/29(月) 19:05:46.44 ID:D7kCaosV0
遅くなったが乙
ニヨニヨしちまったぜ
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/29(月) 19:07:14.48 ID:Q9dGi1Deo
乙
やはり上黒はいいものだ
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当ブログについて
※欄630さんありがとうです。
オススメがあれば教えてください。
読み物:禁書目録
お絵かき掲示板
画像掲示板
――クレープ専門店
佐天「白井さんお待たせー」
初春「正午回ったら一気に混んできましたねー」
美琴「危うく炎天下での立ち食いになるところだったわ。席取りありがとね、黒子」
黒子「いえいえ。どれを食べようか悩んでいただけですので、お気遣いなく」チラ
黒子(お姉様は――苺スペシャルですのね)キラーン
黒子(初春は生チョコバナナ。そして佐天さんはおかず系、と)
黒子「さて、と。わたくしも買って参りますわね」
初春「はい、戻ってくるまで待ってますねー」
佐天(うーん、しっかり学んでるなー)
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 13:58:33.05 ID:y572Ovw+0
美琴「うーん、美味しーい!」
初春「やっぱここのクレープは格別ですー」ハム
黒子「……ふぅ、やっぱりわたくしもお姉様と同じものを頼めばよかったかしら」
美琴「ええ? あんたのだって美味しそうじゃない?」
黒子「気分の問題ですの」
美琴「んー、そうね。じゃあわたしの少し食べてみる?」
黒子(……ふひ)
黒子「で、ですけど、一方的にいただくのは申し訳ないですの」
佐天(……!?)バッ
美琴「だったら、わたしもあんたのを分けてもらうわ。ね、それでおあいこでしょ?」
黒子「そ、そこまで仰っていただけるのでしたら、お言葉に甘えさえていただきましょうかしら」クネクネ
佐天(……し、進化してる)ヒク
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:00:13.47 ID:y572Ovw+0
――ジャッジメント第177支部
固法「報告事項は以上になります。二人とも、質問はあるかしら?」
初春「来月度のローテーション、今月に比べて休養日が多いんですね」ペラリ
固法「ええ、スキルアウトの能力者狩りで負傷していた人たちが完全復帰したから」
固法「今までより連携も捗るでしょうし、各支部の負担も軽減されるはずよ」
黒子「それは何よりですの」
黒子(……この日程なら、少しくらいは差支えませんわね)
固法「あら、白井さん? 何かいいことでもあったの?」
黒子「え?」
固法「あ、気のせいだったかしら? いつもより機嫌がいいような気がしたんだけど」
黒子「そうですの? 特に何があったというわけでも、ないんですけれど」ハテ
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:02:01.36 ID:y572Ovw+0
――常盤台女子寮トイレ
黒子「一応、鍵はかけておきませんとね」
黒子「すー、はー、すー」
黒子(って、なんで緊張しなきゃいけないんですのっ。ただ話すだけですのにっ)カチカチカチ
――――trrrrrr
黒子(…………)ドキドキ
――ガチャ
上条『はい、もしもし』
黒子「……ぁ……も」パクパク
上条『あれ? もしもし? 黒子だよな?』
黒子「は、はいですのっ。か、上条さんですの?」
上条『はは、俺の携帯にかけたんなら俺が出るのは当たり前だろ』
黒子「そ、そうですわよね。おほほほほ……」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:03:43.67 ID:y572Ovw+0
上条『んで、どうした?』
黒子「あ、あのぉ。昨日のお誘いについてなんですけれども」
黒子「次月のスケジュールがだいたいわかりましたので、同行できそうな日をお伝えしておこうかと」
――ワイワイガヤガヤ
黒子(ん、少し周りが騒がしいですわね。外出中ですの?)
黒子「あ、あの、もしお手すきでなければまた改めて」
上条『いや、少し話すくらいなら。――っと待ってくれ。声が聞き取――んで場所変えるわ』
黒子「あ、はいですの」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:06:28.52 ID:y572Ovw+0
上条「悪い、待たせたか?」
黒子「いいえ、お気にならさず」
黒子「それで、繰り返しになりますがお買い物にいく日取りについてなんですけれど」
上条「あー、黒子。その話なんだけどさ」
黒子「……? どうかなさいましたの?」
上条「実は、出費が当初の想定を上回っちまってさ。しばらく切りつめないと無理そうなんだ」
黒子「あ……そ」
黒子「そうでしたのね」ニコ
上条『こっちから頼んでおいて本当にごめん。この埋め合わせはきっとするから』
黒子「期待しないで待っていますわ。では、ご都合がつき次第そちらからご連絡くださるかしら」
上条「あぁ、そうさせてもらうよ。じゃあ、またな」ピッ
黒子(……はぁ、まぁ、しょうがないですわね)パタン
黒子(……べ、別によろしいじゃありませんの。がっかりするほどのことでも)ショボン
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:15:54.75 ID:y572Ovw+0
――どよどよ
上条「……はぁ。悪いことしちまったなぁ」ガチャ
上条(気を悪くしていなそうだったのが、せめてもの救いか)
上条(また顔合わせた時にでも、もう一度謝っとこう)
インデックス「あ、おかえりとうま!」
上条「おう――……あれ?」ポカーン
上条(き、気のせい…………じゃ、ねえ)ゴシゴシ
上条(な、なんでたかだか五分席外しただけで皿が丸々一列分も増えてんですかー)タラー
インデックス「板さん板さんっ、中トロと炙りサーモン! それに甘エビもお願いするんだよ!」
上条「…………」ダクダク
板長「へいっ、お嬢ちゃんはホントに気持ちのいい食いっぷりだねぃ!」
上条(な、なんかいつも以上に食欲あるんじゃないか?)
小萌解説(※エステによるマッサージはよりカロリーを消費しやすいため、食欲増進の効果もあるんですよー?)
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:20:08.81 ID:y572Ovw+0
上条「あ、あのぅ、インデックスさん?」
インデックス「ん? ふぁに? ふぉうま」パクパクモグモグ
上条「そんなに詰め込んで、お腹の方は、大丈夫なんでせう?」
インデックス「まだまだ、へっちゃらなんだよ!」ゴックン
上条(そ、底なしかよ)
インデックス「ねぇねぇ板さん、他のネタでおすすめはないの?」
板長「おすすめか? そうだなぁ、活きのいいアナゴなんてのはどうだ?」
インデックス「あ、じゃあそれも一つ……じゃなかった、ねぇ、とうまも食べるよね?」
上条「あ、いや、俺は……」
インデックス「食べない、の? ……じゃあやっぱり、インデックスも」
上条(ぬぐ……)
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:22:14.93 ID:y572Ovw+0
上条「い、いやいやいやっ、食べないなんて一言も言ってないだろ?」
上条「板さんっ。アナゴ二つよろしく」
板長「おう、ちっと待ってくんな」
インデックス「だ、だよねだよねっ! やっぱり美味しい物は誰かと一緒に分かち合わなきゃ損だよね!」キラキラキラ
上条「そ、そうだな、はは」
インデックス「あ、とうまとうま! 向こうから流れてくる青いお皿も取って欲しいんだよ!」
上条「……はは……ははは」パシッ
インデックス「お寿司っ、お寿司っ、マグロッ、ヒラメッ、イクラにマダイッ」ルンルン
上条(み、見積もりが甘すぎた……)
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:26:04.03 ID:y572Ovw+0
――二週間後
黒子「……はぁ、予報通り雨ですのね」
黒子「こんな日くらいは出動要請がないといいのですけど……」
黒子(……あんにゅいですの)グテー
御坂「ね、ねぇ黒子。何かあったの?」
御坂「わたしでよかったら相談くらい乗るわよ?」
黒子「いえ、何でもないですの」
黒子(……ないからこそ、なんですの)
御坂「ここんところ、少し忙しすぎたんじゃないの? 二、三日休暇貰ってゆっくりしたら?」
黒子「負担が軽くなったとはいえ、そこまでの余裕はありませんの」ムク
黒子「初春にせよ固法さんにせよ、戦闘向きの能力ではありませんし」
黒子「現場に急行できる空間移動能力者は制圧行動の要なんですのよ?」
黒子「わたくしが抜けたら、一番重要な治安維持の業務が開店休業状態になってしまいますの」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:37:12.86 ID:y572Ovw+0
御坂「それだったら、ひとつ妙案があるんだけど?」
黒子「はぁ、それはどのような?」
御坂「簡単よ。あんたが休んでる間だけわたしがジャッジメント――じょ、冗談だって、そんな睨まないで」
黒子「今の顔は絶対に本気でしたの」ムスッ
御坂(う、鋭い)ヒク
黒子「まぁでも……お姉様を窘める資格などわたくしにはありませんわね」
御坂「……あんたホントどうしたの。そんな弱気、らしくないわよ?」
御坂「初春さんも佐天さんも随分と心配してたんだから。近頃あんたが元気ないって」
黒子「案じていただけるのはありがたいですけど、大丈夫ですの。黒子はそんなにやわじゃないですの」
御坂「……バカね。だからなおさら心配なんじゃないの」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:41:25.19 ID:y572Ovw+0
――ザアアアア
不良A「おいおい、兄ちゃんよお。俺たちぁ返さないとは言ってないんだぜぇ?」
不良B「そーそー、ちょっと財布をなくしちまってよぉ。家に帰る交通費を借りたいだけなんだよ」ヘヘ
学生「だ、だったら、その額を言ってください。そ、それくらいなら、なんとか」オドオド
不良C「アァン!?」ドン
学生「ひっ……」
不良C「つべこべ言ってないで財布出せや。それとも中身全部治療費に費やす気かぁ?」
不良B「Cクンったらホントわっるーい」キャハ
不良A「でもそこに痺れる憧れるぅ」クネクネ
学生「そ、そんな。ひ、ひどいですよ」
不良A「……あー、もう面倒くせえなあ」コキン
不良C「ま、二、三発殴ればちったぁ気が変わるだろ」ポキポキ
???「……お待ちなさい」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:50:02.47 ID:y572Ovw+0
不良A「あん、なんだぁ――げっ」
不良B「腕章……このガキ風紀委員かよ」チッ
黒子「……ジャッジメントですのー。学園の風紀を乱す輩は許しませんのー」ハァ
黒子「何より、この纏わりつくような気だるい雨の中を出動させた罪、万死に値しますのー」ハァ
不良B「……な、なんてやる気がなさそうなんだ」
不良A「見てるだけで気持ちが滅入ってくるぜ。……つうか、チョー私情混じってんじゃねえか」
不良C「……相手はたかがガキ一人。構うこたぁねえ、増援が来る前に畳んじまうぞっ」ダッ
不良B「おうっ」ダッ
黒子「……はぁ、たまには素直に引いてくださる方々がいらしてくれてもよろしいのに」グテー
黒子「ま、いいですの。考えようによっては」スッ
不良たち「うおおおおおおっっっ!」
黒子「少しは憂さ晴らしになるかも知れないですものねっ!」スチャッ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 14:56:08.03 ID:y572Ovw+0
不良A「ち、ちきしょう! お、覚えてろっ!」ズルズル
黒子「やれやれですの、台詞にまで負け犬根性が染みついてしまっていますのねぇ」
不良B「こいつ重っ、お、おいっ、ちゃんとそっち持ってんだろうなっ!」ヨロヨロ
不良A「うっせっ、黙って歩けやっ! 俺だって体中いてえんだよっ!」ヨロヨロ
不良C「…………」チーン
黒子「口ほどにもないですの」スッ
学生「あ、ありがとうございますっ」ペコ
黒子「いえいえ、大したことでは」ニコ
黒子「それよりこれからは、大通りからあまり外れないことですわね。この界隈は治安があまりよろしくないですの」
学生「は、はいっ。失礼しますっ」タッタッタ
黒子「……ふぅ、濡れた服の重みに押し潰されそうですの」
黒子「早く帰ってシャワーを……」
???「おいいたぞっ、そっちに回り込めっ!」タッタッタ
???「あんのくそガキャーっ! チョロチョロ逃げ回りやがってっ!」ビシャビシャビシャ
黒子「…………残業ですの?」ヒク
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:04:15.88 ID:y572Ovw+0
黒子「こちらの方でしたわね」ヒュン
黒子(ううぅ、下着がべったり張り付いて気持ち悪いですの)イライラ
黒子(……この先は確か三叉路ですわね)
黒子(先回りして待ち伏せした方がよろしいですわね。集まったところを叩きましょう)
黒子(ちょうど雨ですし、多少荒っぽくやっても、痕跡は残りませんわよね)ニタァ
???「まてやゴラァっ! 男だったらちゃんと足止めて勝負しやがれっ」
???「うっせ、脳みそ筋肉っ! 悔しかったら煙草やめて長距離走れる体になってから出直してきやがれっ」
黒子(……? ……今の声は)
黒子「……まさかとは、思いますけれど」ヒュン
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:11:11.11 ID:y572Ovw+0
上条「はっ、はぁっ、くそっ、しつこすぎだろあいつら」
上条「一人だと思って声かけっときまって後から数が増えるとか」
上条「ああもぅなんなんですかぁ、この不幸はっ!」
黒子(…………ふ)
黒子「ふふ……くふふふ……」
黒子「そうでしたの。このわたくしが全身びしょ濡れになって任務に勤しんでいる間」
黒子「約束を先延ばしにしているあなたは、どこぞの馬の骨とのんきに追いかけっこを……」プルプル
黒子「…………ぐ」ミシミシ
黒子(~~~~っ)ギリギリ
黒子「っざっけんなっですのっ」ヒュン
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:22:17.11 ID:y572Ovw+0
上条「よし、なんとか撒いたか――って」
不良F「……悪いが、はっ、こっちは行き止まりだぜ」ハァハァ
上条(くそっ、一度戻って――い゛い゛っ!?)
不良D「よっ、ようやく……追いついた、ぜぇ」ゼエゼエ
不良E「舐めた真似しやがってぇ。……か、覚悟はできてん、だろうなぁ」フゥフゥ
上条「お、お前ら、そんなフラフラの体でやろうってのか? やめとけって、転んで怪我すんぞ」ハハ
不良F「……んな心配すんなよ。手段は選ばねえからさ」ブン
上条(……相手三人で鉄パイプ有りかよ、……いくらなんでも)
上条「い、いやぁ、歓迎されすぎて涙出そうだなぁ」ジリ
不良E「俺たちにも慈悲はあっから、半殺しで勘弁してやんよ。ただまぁ」
不良E「目ぇ覚めたらすっぽんぽんで街路樹に吊るされてっかも知れねえがな」ニヤ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:28:47.67 ID:y572Ovw+0
上条「そ、そいつはさすがに勘弁してほしいな。……人として」
不良D「んだったら、まずは土下座だ。それから財布と」
不良F「キャッシュカードの番号もだ」ニタァ
上条「……どっちも御免だな。しゃあねえ」ミシミシ
――パキィ
不良F「……はっ、雨どいなんかで、どうにかなるとでも」
上条「こっちだって必死だかんな。後遺症残っても、恨むなよ」ギロ
不良E「……じょっ、上等――」
???「なるほど」ポツリ
不良D「――だ、誰だっ」バッ
黒子「……お姉様があなたにイラついていた理由が、なんとなくわかりましたの」スゥ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 15:48:05.99 ID:y572Ovw+0
黒子「学園三位を手玉に取るあなたが」
黒子「どこぞの馬の骨とも知れぬ連中を相手に後手後手に回っているのを見れば」
黒子「腹立たしさを抑えるのも一苦労ですわね。今のわたくしのように」ヒヤ
上条「く、黒子……どうして」
黒子「どうしてここに……ですの?」
黒子「それ、はっ、わたくしの台詞ですの」ピキ
黒子「あなた、こんなところで何を遊んでいるんですの!」
上条「べ、別に遊んでるわけじゃ――」
不良D「おいおいお嬢ちゃん。痛い目に遭いたくなかったらとっとと消えな」ニタニタ
不良E「そーそー、じゃないと、お兄さんたちにあんなことやこんなことをされちゃうぜぇ?」ワキワキ
上条「お、おいてめえらっ! こいつはまったく関係ない――」
黒子「現行犯ですわね。そういった脅し文句は」
――ギュッ
黒子「れっきとした恐喝に値するんですのよ」ザッ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 16:08:26.53 ID:y572Ovw+0
不良F「げっ、風紀委員の腕章!?」
黒子「いかにもジャッジメントですの。学園の規律や風紀を乱す輩はこのわたくしが成敗しますの」
黒子「それと」チラ
上条「」ビクッ
黒子「あなたも、彼らが片付くまで逃げないでくださいね。後ほどお聞きしたいことがたっぷりとありますの」ニコォ
上条「まっ、満面の笑みを見て嫌な予感が鰻登りなのはわたくしの気のせいですかっ?」ダラダラ
不良F「は、はっ。そういうことか、彼氏のピンチにいじましくも駆け付けたってわけか」
黒子「だっ、誰が彼氏ですのっ!///」
不良D「ちっ、何がジャッジメントだ。笑わせるぜ」
不良E「路地裏にしけこんでイチャイチャと、かぁ? 風紀乱してんのは、お互い様じゃねえか」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 16:12:46.54 ID:y572Ovw+0
黒子「なっ、な、なんっ! 黙って聞いていれば言いたい放題ぃ!」ワナワナ
不良E「つうかこいつもよ。こんな乳臭そうなガキに守られて恥だとは思わねえのかね」
不良F「まったくだな、男として終わってんぜ」
黒子「だ、誰が乳臭いですってっ! 取り消しなさいっ! さもなくば――」ガシ
上条「バ、バカ、やめとけって」
黒子「バっ……助けにきたわたくしに向かってバカとはなんですのっ!」
上条「お、落ち着いてくれよ」
不良D「あーあ、なんだかしらけちまったな。ゲーセンにでも行こうぜ」
不良E「サンセー」
黒子「まっ、待ちなさい――ちょっとっ、この手を放しなさいっ」
上条「冷静になれって。せっかく向こうから退散してくれるってぇのにこっちから波風立てることはねえだろ」グッ
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 16:31:55.20 ID:y572Ovw+0
黒子「何をのんきなことをっ。あなただって侮辱されたんですのよっ?」
黒子「あそこまで言われて悔しくなりませんのっ?」
上条「そりゃ、少しは腹も立つけどさ」
上条「いちいち挑発に乗ってたら体がいくつあっても足りねえよ。まともに相手にしたって時間の無駄だって」
黒子「よっ、よくもそう平然としていられますわね」ジロ
黒子「今のあなたの態度は、回りまわってわたくしたちへの侮辱に他なりませんの」
黒子「もしあんな連中に敗北してごらんなさい。あなたのみならず、お姉様も後ろ指を指されるんですのよっ」
黒子「それに、それにわたくしだって……」
上条「んなこと言われてもな。俺の能力はパンピーにはまったく意味がないんだぜ?」
上条「高校生同士の喧嘩なんて数がなんぼだろ。敵が二倍三倍いる時点で逃げの一手しかねーっつうの」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 16:47:41.21 ID:y572Ovw+0
黒子「だったらジャッジメントやアンチスキルを呼べばよろしいでしょうっ」
黒子「ましてや、あなたにはわたくし個人の連絡先をお教えしているんですのよ?」
上条「冗談はよしてくれよ。そりゃおまえの強さはわかってっけど、年下の女の子に助けを求めるなんて」
黒子「年下だろうが性別が違おうがわたくしはジャッジメントの一員ですのっ」
上条「……あのぉ、もしかして。黒子さんは俺が連絡しなかったからイジけてるんで――どわっ」グギュ
黒子「誰がいつっ、どこでっ、何時何分何秒そのようなことを申しましたのっ!!」グイグイ
上条「くっ、首が締ま……ギブ、ギブっ」パンパン
黒子「…………っ」バッ
上条「けほっ……す、少しは加減してくれよ」
黒子「ふ、ふんっ、身から出た錆ですの」プイ
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 17:13:21.49 ID:y572Ovw+0
黒子「そもそも、そちらから連絡すると申し出ておきながら音沙汰なしってどういう了見ですの?」クドクド
上条「ま、まぁ、それはこっちにも非があるけどさ」
黒子「自覚していらっしゃったのならなお質が悪いじゃありませんの」
上条「か、返す言葉もない」
黒子「おまけにこちらからかけても一向に繋がらないですし」クドクド
黒子「なんで今まで連絡が取れなかったんですの?」
上条「いや……そこはまぁ、なんといいますか、ですね」
上条(い、言えねえ。光熱費と食費を確保するのに精いっぱいで携帯を止められてましたなんて)
上条「そ、そうだ黒子。例の買い物の件についてなんだけど」
黒子「……何を今更」ジト
上条「お、俺の買い物に付き合わせるだけってのも気が引けるからさ。どこか遊べそうな場所にしないか?」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 17:18:08.41 ID:y572Ovw+0
黒子「では再度確認しますが、四日後の日曜日の午後12:30にアミューズメントパークのゲート前」
黒子「それで間違いありませんわね?」ジト
上条「あ、ああ。俺はそれでいいけど、ジャッジメントの方は大丈夫なのか?」
黒子「ええ。幸いその日はフリーですから問題ありませんの」
上条「そっか、じゃあそれでよろしく頼む」
黒子「了解ですの。それから」チラ
上条「わ、わかってるって。謝罪の意味も込めて、飯代くらいはこっちで持つよ」
黒子「大変よろしい」ニコ
上条「」ドキッ
黒子「もしすっぽかしたら」ニコニコ
黒子「どこかの高層住宅から上条さんの頭目がけて植木鉢が」ニコニコ
上条「……お、覚えときます」ガクブル
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 17:26:37.67 ID:y572Ovw+0
――常盤台女子寮
黒子(まだ残暑も厳しいですし、ニーソックスはパスですわね)ウーン
黒子(ここは縞のハイソックスにしておきましょう。足も幾分細く見えますし)
黒子(とすると、このスカートでは……ちょっと丈が短く感じますわね)ピタ
黒子(この際ブリーツじゃなくてフレアにしてみたら、色合いはどうかしら)スッスッ
黒子(んん、まぁまぁ、悪くないですわね)クルリンッ
黒子(続いて羽織る物は、と……こちらのカーデガンだと少し幼い感じが……小学生から使っていたものですものね)
どこかの不良『こんな乳臭そうなガキに――』モヤァ
――ドスッ
黒子(……あの間抜け面、今度会ったら覚えてらっしゃい!)ピクピク
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 17:39:06.38 ID:y572Ovw+0
黒子(……そりゃ、そうそう釣り合いなど取れませんわよ。三つも歳が離れてるんですのに)
黒子「せめて三年、いえ、二年もすれば……って」
黒子(わ、わたくし何を言ってるのやら)ババババ
黒子(あっ、そういえば以前に購入した夏用のジャケットが)クルッ
黒子(確かクローゼットの奥の方に……よっ、とっ)ゴソゴソ
黒子「あったっ! これこれ、これですの~」パァァ
黒子(んん、ちょっとナフタリン(樟脳)の匂いが気になりますわね)クンクン
黒子(ま、明日のうちに外干ししておけば問題ないでしょう)カチャカチャ
黒子「さて、小物入れは……」
黒子(途中で化粧直しなどもしたいですし、そこそこ大きめの方が便利ですわよね)ルンルン
黒子(日焼け止めもそろそろ尽きそうですの。必要な物ともども、薬局にいって揃えてしまいましょう)
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 18:03:19.89 ID:y572Ovw+0
――遊歩道
初春「……うーん」チラ
佐天「初春、さっきから何唸ってるの?」
初春「あ、いえー。白井さん、なんだかいつもと雰囲気が違うなって」
黒子「あら、そうですの?」
初春「うまく言えないんですけど、華やかというか大人っぽいというか」
黒子(ふふ、普段から一緒にいる初春が気づくのでしたら、問題なさそうですわね)
美琴「その薄手のジャケットってさ。確か春先にわたしと買いにいったやつよね」
黒子「え、ええ。そうですわね」
美琴「汚したくないからって滅多に着てるとこ見ないけど」
佐天「へぇ、そうなんですか?」チラ
黒子「た、たまにはよいかと思いまして。ずっと仕舞っておいても宝の持ち腐れですし」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 18:07:09.47 ID:y572Ovw+0
――ジリジリジリ
御坂「今日も暑くなりそうねぇ。そろそろ図書館にでも退散しようかしら」
御坂「みんなはこれからどうする?」
初春「わたしは家に戻ります。まだ宿題が手つかずですので」
佐天「あ、じゃあわたしも初春んちで一緒に」
初春「……写すのはなしですよ?」ジロ
佐天「わ、わかってるってぇ。んじゃ、いったん部屋に戻って勉強道具取ってくるね」
御坂「黒子は――そっか。朝出るとき、用事があるようなこと言ってたわね」
黒子「ええ、前々からのお約束がありまして」
黒子(冷房の効いた空間でお姉様と二人きりで過ごすというのも、なかなか誘惑に駆られますが)ジュル
黒子(ま、約束を反故にするわけにもいきませんものね)フッ
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 18:14:07.12 ID:y572Ovw+0
――アミューズメントパークゲート前
上条「ふぅ、あちぃ。思ったより早く着いちまったな」
上条(ま、いっか。散々引き延ばした手前、万が一にも遅刻するわけにいかねえもんな)
上条(黒子は、と……さすがにまだ来てないみたいだな。先に案内所でパンフレットでも――)
???「おーそーいーでーすーのっ!」
上条「うわっ、すんませんっ……って」
黒子「まったく、自分から誘っておきながら後れを取るとは」プン
上条「さ、先に着いてたのかよ。俺にしては随分と早く来たつもりだったんだけど」
黒子「それは、命拾いしましたわね。これ以上遅れたら何か罰ゲームでもやってもらおうかと考えていたところですの」
上条「つってもさ、まだ約束の時間まで20分以上もあんだぜ?」
黒子「だからなんですの? こういうお約束事は30分前到着を目安にするのが社会常識(スタンダード)ですの」
上条「き、厳しいなぁ」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 18:17:17.06 ID:y572Ovw+0
黒子「さっ、時間が惜しいですの。行きますわよっ」グイッ
上条「わっ、ちょっ、引っ張るなって」
黒子「ここに来たからには、やっぱりフリーフォールからですわよねっ!」
上条(ま、まぁ買い物は最後でいいよな。荷物になるし)
黒子「ほらぁ、上条さん、早く早くっ。置いていきますわよっ!」
上条(……こうしていると、ほんと普通の女の子だな)
上条(早く来てくれたってことは、ちっとは楽しみにしてくれてたってことだろうし)
上条「へへ、まぁ、悪い気はしないよな」ポソ
黒子「ん、なんのことですの?」
上条「いーや、こっちの話だ」
黒子「……? 変な上条さんですの」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 20:24:05.63 ID:y572Ovw+0
係員『間もなく稼働しまーす! 安全ベルトがロックされているかもう一度ご確認くださーい!』
黒子「あらあら、どうなさったんですの? 顔色が悪いですわよ」ウププ
上条「絶叫系の乗り物って昔からどうにも苦手なんだよ。そういうおまえは……全然リラックスしてんな」
黒子「それはまぁ、わたくしの空間移動は上空へのテレポート→タイムラグによる落下→再テレポートが基本ですし」
上条「日常茶飯事ってことかぁ」
黒子「無論、地面からでも移動するには困りませんけれど」
黒子「逃走する犯人を捕まえるには上空からの方が色々と都合がいいですの」
上条「込み入った街中なんかじゃ、空から追跡した方が圧倒的に発見しやすいもんな」
黒子「それだけではなく、自分の身の安全のためでもありますのよ」
上条「身の安全?」
黒子「ですの。相手が好戦的な性格ですと思わぬ反撃や待ち伏せに出くわすこともありますから」
黒子「ただ闇雲に追うより、目の行き届きにくい空から角度を変えつつ追った方がずっと安全なんですの」
上条「……こうして改めて聞くと、おまえって本当に危険な任務をこなしてんだなぁ」
黒子「あら、もしかして心配してくれているんですの?」
上条「当たり前だ――――っと、動き出したな」ガクン
黒子(…………)
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 20:36:19.44 ID:y572Ovw+0
――カタカタカタカタ
黒子「あぁ、この落下までの緩慢なひとときがたまりませんの」ウットリ
上条「空を自由に飛び回ってるおまえには物足りないんじゃないか?」
黒子「ノンノン。自由落下と機械による強制的な落下とでは、また違う類のスリルを味わえますの」ゾクゾク
上条「あれですか、おまえはマゾですか」
黒子「人聞きの悪いことをおっしゃらないでくださいな。刺激に対する健全な欲求ですの」
上条「ほんと、口が達者だよなぁ。……うぅ、あんなに地面が遠くに」ブルリ
黒子「もう見慣れた光景ですの」ヘーゼン
上条「……こんな光景を日常的に見てれば、そりゃ度胸もつくわけだ」ウヒー
黒子「わたくしの見ている世界が少しはわかっていただけましたかしら? さ、特等席に着きましたわよ」ガクン
上条「うっ、ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ――――…………」ヒュウウウウ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 20:50:54.72 ID:y572Ovw+0
黒子「さっ、次はあのジェットコースターに乗りますわよっ」
上条「く、黒子、少しだけ休憩しようぜ。絶叫モノ四連発はさすがにきついって」フィー
黒子「もぅ、上条さんたらもうへばりましたの? そんなことでは全部回れませんわよ」
上条「へ、へばっちゃいないけどさ。ほら、あそこの行列見てみろって」
黒子「行列? ……て、あら、ほんと。最後尾が見えませんわね」
上条「炎天下ん中待ってるのもバカバカしいし、少し涼しくなるまで施設内の催し物でも見て回ろうぜ」
黒子「まぁ、それも一つの手ですわね」
黒子「ですけど、その前にー」チラ
上条「……あぁ、移動屋台だな」
黒子「ですわねぇ……ちょうどお昼時ですものねぇ」チラッチラッ
上条「…………見に行ってみるか」
黒子「さっすが上条さんですの」ニパッ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 21:27:37.52 ID:y572Ovw+0
上条「黒子、まだ決まらないのか?」
黒子「そう急かさないでくださらない? もうすぐ決めますから」ウーン
黒子「メープルワッフル……いやいや、この生ハムサンドも捨てがたいですわね」ブツブツ
上条「あのさ、なんだったら欲しいやつ二つ頼んでも」
黒子「それじゃあ意味がありませんの。両方買ったらまた来た時の楽しみがなくなってしまいますの」
黒子「それに、いくら奢りだからといってそこまで甘えられませんの」
上条「そうか。じゃあ、ま、じっくり選んでくれ」
黒子「……決めましたの。すみません、こちらとこちらをくださいな」
販売員「はいっ、かしこまりましたっ。少々お待ちくださいねっ」
上条(黒子って、行動力は俺以上のくせに変なところで真面目だよなぁ)
上条(ま、そういうところがこいつの魅力なのかもな)
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 21:41:52.66 ID:y572Ovw+0
上条「その顔からすると、迷った甲斐があったみたいだな」
黒子「ええ。定番メニューですけれど、バジルソースの味がいいアクセントですの」
黒子「ところで、上条さんのそれって、お好み焼きですの?」
上条「いや、手巻きピザだってさ。頼むのは初めてだけどうまそうだったから」
黒子「ふむ、興味深いですわね。一口よろしいですの?」
上条「ああ、もちろん――っあ、黒子っ、ちょっと待っ」
黒子「今更ダメっていうのは無しですの――はむっ」
上条「……」ドキン
黒子「んんっ! これは新しい発見ですのっ」
黒子「カリカリのピザに蕩けるチーズ、それに甘辛の照り焼きチキンが絶妙ですわね」
上条「そ、そか。うまかったんなら、うん、よかった」ジー
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 21:53:24.35 ID:y572Ovw+0
黒子「ほらぁ、上条さんも早く食べてみなさいな。熱々の方が絶対美味しいですわよ?」
上条「そ、そうだな。じゃあ」ジー
黒子(……?)
黒子(気のせい、かしら。妙に食べにくそうにしていらっしゃる…………あ゛)
上条「……い、いただきます」アーン
黒子(や、やっちまったですのっ! お、お姉様たちとのいつものノリで、つい……)バッ
上条「……う、うん、確かにうまいな。これ」ムシャムシャ
黒子「で、ですわよねっ。そう、洋風の春巻きみたいな感じで手軽に――」
黒子(く、黒子のバカバカッ! これじゃあ間接キ……じゃありませんのっ!)アグアグ
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 22:09:43.06 ID:y572Ovw+0
上条「ふぅ、食った食った」
黒子「け、結構ボリュームがありましたね。見た目より」
上条「確かに黒子の小さな口じゃあ、食べるのは時間かかるよな」
黒子(口……)ドキン
黒子(うぅ……せっかくの室内ですのに、全然涼しくなった気がしませんの)カッカ
上条「しっかし、立ち食いピザってのもいいもんだな。もうちょい値段が安けりゃ文句なしなんだけど」
黒子(……この方はこの方で淡々としていらっしゃいますし)
黒子(もしやわたくしって、意外に自意識過剰なんですの?)ウーン
――ピンポンパンポーン
放送『午後2時より、ウェストリージョンのアトラクションステージでイベントが始まります。参加する方は――』
上条「イベント? そんなのパンフレットに載ってたったっけか」パラッ
黒子「あ、上条さん。ここ、裏側に詳細が記されてますわよ」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 22:38:28.43 ID:y572Ovw+0
――アトラクションステージゲート前
上条「すみません。先ほど放送されていたサバイバルイベントって、こちらが会場ですか?」
案内員「会場はそうですが、この先は観覧スペースになります」
案内員「お二人は参加希望ですか? でしたら正面左手の窓口で受け付けていますけれど」
黒子「いえ、まだ考慮中でして、説明を聞いてから決めようかと」
案内員「ああ、それくらいならお安い御用です」
案内員「大雑把に説明しますと、本イベントはアトラクションステージを戦場に見立てたサバイバルゲームです」
案内員「配布されたエフェクトガンを駆使しつつ生き残りを狙うものでして」
案内員「より長く生き残ることができれば豪華景品がもらえます」
黒子「能力の使用は、無しなんですのね?」
案内員「そうです。詳しくは中で説明がありますが、不正防止のための対策を何重にも講じてます」
案内員「もちろん意図的な暴力も即退場となります。銃口から発射されるエフェクト弾のみで戦っていただきます」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 22:59:45.17 ID:y572Ovw+0
黒子「時間制限は、あるんですわよね?」
案内員「ええ、イベントでの戦闘時間は20分になります」
黒子「では、もし制限時間が一杯になった時点で生存者が複数いた場合は、どうなるんですの?」
案内員「その場合には、残った生命力の数値がより高い参加者が上位となります」
上条「生命力?」
案内員「どれだけ撃たれたかを知る目安となる数字です。一般的なRPGのHPと思っていただければ」
黒子「なるほど、意外と面白そうですわね」
上条「どうする? 参加してみるか? 黒子」
黒子「いいですわよ。勝負事となればあなたが相手でも手加減いたしませんわよ」ムン
上条「い、いや、おまえが参加するんだったら俺はパス。どうも勝てる気がしないし」
黒子「んま、不利な勝負だからと敵前逃亡するのは卑怯ですの」
案内員「あのぉ、カップル限定なのでお二人一緒に参加していただかないと困るんですけど」
上条「え、い、いや、俺たちはそういう――///」
黒子「だっ、誰と誰がカップルですのっ///」クワッ
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:09:05.74 ID:y572Ovw+0
案内員「えっ、あ、し、失礼いたしました。ご兄妹だったんで――」
上条「ええと、違います、ハイ」ポリポリ
案内員「あれ……、ええっと」
案内員(カップルでも兄妹でもない男女が……どうして遊園地などに)ハテ
黒子「……な、なんですの?」
上条「べ、別に?」
――その時案内員に電流走る
案内員「おっ、お二人は、お友達なんですねっ」
上条&黒子『そ、そうなんですの(だよ)っ』
案内員「でしたら何ら問題ありませんね。出場の規定は二人組の男女、ですから」ニコニコ
黒子「ま、まぁ……」チラ
上条「……そういうことなら」チラ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2012/09/02(日) 23:11:57.28 ID:tYI4FrMAO
この案内人できる…!
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:25:37.54 ID:y572Ovw+0
――アトラクションステージ内
黒子「銃なんて初めて持ちましたの」
上条「本物はこんなに軽くねえけどな」
黒子「あら、まるで手にしたことがあるような口ぶりですわね」
上条「そ、それよか説明が始まるみたいだからちゃんと聞こうぜ」
司会『それでは、詳しいルールの説明をさせていただきますが、その前に』
司会『まずはただいま配布しておりますリストバンドを、どちらの腕でも構いませんので装着してください』
スタッフ「お二人とも、こちらをひとつずつどうぞ」
上条「あ、ども」
上条「パッと見モダンな血圧計、って感じだな」
黒子「わたくしにはちょっと緩い――――あぁ、このボタンでジャストサイズにフィットするんですのね」ウィーン
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:30:14.24 ID:y572Ovw+0
司会『装着しましたリストバンドのモニターには生命力を表す数字が出ているはずです』
司会『200という値がちゃんと表示されているか確認させていただきますので」
司会『当スタッフが近くに来ましたら数字をよく見えるように手をかざしてください』
上条「黒子は数字の色がピンクか」
黒子「あなたのはブルーですわね」
司会『ちなみに、そのリストバンドにはAIM拡散力場の数値変動を察知する機能もあります』
司会『この機能は能力による不正防止のためのものでして』
司会『もし着用している方が超能力を行使した場合、即座に機械が警報音を鳴らします」
司会『そうした場合には例外なく失格とさせていただきますので、あらかじめご了承ください』
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:41:33.25 ID:y572Ovw+0
司会『さて、参加者のリストバンドに表示されている生命力を減らすには』
司会『既に配布されておりますエフェクトガンで相手を撃つ必要があります』
司会『生命力の数字のすぐ真下に小さなマスが六つあるかと思いますが』
司会『これが銃の残存弾数を表しています』
司会『遊底をスライドさせるとすぐにでもリロード、弾込めが開始されます』
司会『玉一発分を補充するには約三秒かかります』
司会『もちろんリロード中に銃を撃つことはできませんので注意してください』
司会『銃で撃たれますと撃たれた箇所がこのように――数秒間赤く明滅します。同時に、リストバンドのバイブレーションが作動します』
司会『なお、参加者の頭や胸などの急所を狙って当てることで、より多くのダメージを与えることができます』
司会『逆に、手足の端などに当ててもダメージはごく軽微なものとなります』
司会『ですので反射神経、運動神経も生き残るための重要な要素と言えるでしょう』
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2012/09/02(日) 23:43:45.34 ID:tYI4FrMAO
やだ、普通に楽しそう
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:44:09.28 ID:y572Ovw+0
司会『また、男性のリストバンドは男性の持つ銃に、女性のリストバンドは女性の持つ銃に対応しています』
司会『つまり、男性の銃で女性を狙ってもゲージは減らせず、その逆も然りということになりますね』
司会『こうすることによって男女の体力差を考慮しているのと同時に』
司会『男性が女性を、女性が男性を、互いが互いを守れる状況を作り上げているわけです』
司会『愛する人を敵の銃弾から身を挺して守れるかどうかが、勝負の分かれ目になりますっ』ドドーン
黒子「あ、愛するって、いくらなんでも煽りすぎですの……」ボソボソ
上条「まぁまぁ、所詮お遊びなんだしさ、気楽にやろうぜ」
黒子「そうはいきませんの。勝負で手を抜くなどわたくしのキャラではないですの」
黒子(だいたい、ジャッジメントであるわたくしが誰かに守られる必要など)
黒子(……って、もう前例を作ってしまいましたわね)コホン
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:48:57.59 ID:y572Ovw+0
司会『さて、ここからが最も重要なポイントです』
上条「あれ、まだあるのか。そろそろ覚えきれなくなってきたぞ」
司会『申し訳ありません。あと少しで終わります』
上条「……こんなに離れてるのに、よく音拾えたなぁ」
黒子「おそらく会場内の各所に集音マイクを設置してるんですのね。不正防止の意図もあるのでしょう」
司会『実は、組ごとにお配りしたリストバンドは対になってまして、それぞれ連動しています』
司会『一方のリストバンドの生命力が0にされてしまいますと』
司会『もう一方の数字がどれだけ多く残っていても失格となってしまいます』
黒子「……だそうですよ? せいぜい足を引っ張らないでくださいな」
上条「が、頑張らせていただきます」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/02(日) 23:55:36.39 ID:y572Ovw+0
司会『そして、対となるリストバンドの距離が半径60センチメートル以内に隣接することで』
司会『リストバンド同士が反応し、ラブラブモードになります』
……ざわ……ざわ
黒子(ラ、ラブラブ……って言われましても)カァ
司会『その状態を保って戦いますと与えられるダメージはなんと2倍、受けるダメージは半分になりますっ!』ダダン
黒子(ろ、60センチって、相当ひっつかないと無理ってことじゃないですのっ///)
上条「……カップル限定って、つまりそういうことだったんだな」ポリポリ
司会『ルールを口実にし、お互いの距離を二重の意味で縮めちゃってくださいねっ!』
黒子「な、なんと悪趣味な」ヒク
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/03(月) 00:17:53.31 ID:H+oQ0r/m0
司会『では、二分間の作戦タイムを差し上げます。どうぞ二人で相談してください』
上条「発表された参加者数が64人ってことは、32組もいるのか」
黒子「軽薄さは否めませんけど、なかなかルールにはこだわっているようですわね」
上条「単独行動が推奨されてないってのは結構痛いな」
黒子「ま、弱音を零していても仕方ないですの」
黒子(お互いがあまり離れていれば御しやすいカモと見なされ、周りから集中砲火を食らう羽目になる)
黒子(片方を囮にしてもう片方を生き残らせるという戦略は、リストバンドの連動を考慮すると現実的でない)
黒子(かといって、あんまりべたべたくっつきながら戦うのも、何より公衆の面前では、は、恥ずかしすぎますの)ボシュ
黒子(ですけど、絶対に負けたくもないですし)ウウウ
黒子(……か、上条さんは、どう思っているのかしら)チラ
黒子(も、もし向こうから求めてくるのであれば、協力して差し上げても……)
黒子(って、も、求めてというのは決して深い意味合いはなく……)ブンブン
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/03(月) 00:29:58.43 ID:H+oQ0r/m0
上条「なんにせよ、ガチのカップルを相手にするのは得策じゃないみたいだな」
黒子(……ま、現実はこんなもんですわよね)ホッ
黒子「序盤は敵の数が多いですし、どちらかといえば流れ弾が厄介ですの」
黒子「開始直後の被害をどれだけ減らせるかに焦点を絞りましょう」
黒子(咄嗟にテレポートしてしまわないようよっぽど注意しないと)
黒子(失格負けなんて無様な終わり方だけは御免ですの)
上条「だとすると、どれだけ多対一の状況を回避できるかだな」
上条「最短距離でフィールドの地形や遮蔽物に身を隠し、後はそれを利用しつつ逃げ回…………あぁ」
黒子「……どうかいたしまして?」
上条「いやさ、折角のイベントなのに、あんまりいつもとやること変わらねえんだなって」
黒子「……頼もしい、と言ってよろしいところなのでしょうか」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 22:07:23.53 ID:ksm+2cwm0
司会『戦闘開始1分前です。開始後は5分毎に現在の状況をお知らせ――』
上条「へぇ、驚いたな。2階の観客席、ほとんど埋まってるぜ」
黒子「物好きな方もいらっしゃるんですのね」
黒子(んま゛、客寄せパンダのわたくしたちが言えたことでもないんですけれども゛)
黒子(にしても? あんな小さな子供までいますの? 情操教育によろしくありませんわね)
黒子「さて、わたくしたちはどう動きますの? 打ち合わせ通りにヨーイドンで最寄りの建物を目指すんですの?」
上条「さっきまではそのつもりだったんだけど、もしかすっと周りも似たようなこと考えてるかもな」チラ
黒子「……ふむ。言われてみれば、大方の人が建物の方を気にしているご様子」
黒子「悩ましいところですの。あまり人が密集しそうなところは避けたいですし」
黒子「かといって、広場に突っ立っていても蜂の巣にされるだけでしょうし」
上条「周りの状況がどう転がるかわからねえからな。結局出たとこ勝負になりそうだ」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 22:16:39.64 ID:ksm+2cwm0
司会『3、2、1、0!』ビー
上条「走るぞ、黒子っ」ダンッ
黒子「もう走ってますの! ――くっ!」ギュン
――ドンッドッドドドドッ
上条「うぉっ、あっぶねぇっ!」
黒子「上条さんっ、もう少し頭を低くしないと当たりますわよっ!」ドンッ
上条「わ、わかった!」サッ
黒子(一瞬にして乱戦に突入ですの。これはさすがに、ある程度の被弾は覚悟するべきですわね)ヒュンヒュン
上条「黒子っ、左手!」バッ
黒子「り、了解ですのっ!」ニギッ
――キュイン
黒子(あら、鎖状のエフェクトだったんですの? てっきりハートの形で覆われたりするのかと)
黒子(って、別にそっちがよかったってわけじゃないですけれど)
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 22:26:26.22 ID:ksm+2cwm0
黒子「どうやら、多少はバラけてきたようですわね」ドン
上条「やっぱり何発か食らっちまったな。黒子、おまえの生命力は?」カシャッ
黒子「186ですの。上条さんは?」サッ
上条「175だけど――な、なんだよそのしたり顔」
黒子「いえいえ、無理もないですのー。やはり実戦を重ねないと危機回避能力はなかなか身に付きませんものねぇ」フフーン
上条「べ、別にそれだけが原因じゃねえだろ? 俺の方が的はでかいんだしよ」
黒子「言っておきますけれど、わたくしの身長は同年代の平均よりも上――ひゃっ!」バッ
上条「いけね、喋ってる場合じゃなかったな。後続が来る前にとっととここの階段を上っちまおう」バンバン
黒子「そ、そうですわね」カシャッ
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 22:35:45.21 ID:ksm+2cwm0
黒子「ふぅ、なんとか高台まで辿り着けましたわね」カシャッ
上条「あれだけの射撃に晒されてこの程度の被害で済んだのはラッキーだったな」フゥ
黒子「あら、あなたの口から不幸以外の言葉が飛び出すこともあるんですの?」
上条「大きなお世話だ」ムス
黒子「ほんの冗談ですのに」クスッ
上条「ん゛ん゛っ。さてと、どうする? ここで建物を盾にしつつ終了まで粘るか?」
黒子「その判断をするのは、二十秒後にいたしません?」
上条「……なんで二十秒?」
黒子「正確にはあと十四秒で、五分ちょうどですの」チラッ
上条「途中経過か。よし、そうするか」コクン
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 23:01:09.06 ID:ksm+2cwm0
司会『――以上、22組です。終了まで全力を尽くしてくださいね』
黒子「…………」
上条「…………」
黒子「どういうことですの?」チラ
上条「俺が聞きてえよ」ハァ
上条「わずか五分で三分の一近いペアが脱落したってのは……いくらなんでも」
黒子「……わたくしたちが今いるのはベイサイドエリア。そしてあちら側は」
上条「アスレチックエリアだな。見ていた限りじゃ人数もほぼ半々くらいに別れてたと思う」
上条「さっきから銃撃の音も止んでないし、こっちのエリアにはそれなりに人数がいそうな感じだ」
黒子「つまり、アスレチックエリアの方に向かった参加者は、ほぼ全滅したということですわね」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 23:24:15.20 ID:ksm+2cwm0
上条「この状況下で、黒子はどう動くべきだと思う?」
黒子「現状維持ですの。状況がわからないまま動くよりは出来るだけ安全な場所で時間を稼いだ方がいいですの」
上条「最上段のここなら上を取られる心配もないしな」
黒子「ですわね。こちらが階段前に陣取っている以上、下階の方々が斜線から逃れるのは難しいですし」
黒子「階段を上っている間に挟み撃ちされたら目も当てられませんの。おいそれとは上ってこないでしょう」
上条「ただまぁ、全弾撃っちまうと18秒もの間無防備になるんだよな」
黒子「そこはわたくしたちの心構えと連携次第でどうにでもなりますの」
黒子「撃たれた瞬間にバイブレーションが反応する以上」
黒子「二発目以降を同じ箇所に当てるのはかなり難しいということですの」
上条「予期せぬとこから攻撃を受ければ自然と仰け反ったり身を翻したりしちまうもんな」
黒子「そう、不必要な弾を撃たないだけで、相当効率は上がりますの」
黒子「先ほど連射の間隔を図ってみましたところ、初撃と二撃目の時間差はだいたい0.5秒」
黒子「狙撃後には後追いの威嚇射撃を交えた方が効果的ですし、最低でも2発分残してのリロードが理想的かと」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/06(木) 23:48:17.95 ID:ksm+2cwm0
黒子「もらいましたのっ!」サッ
――ドンッドンッ
システム音声『18番、生命力0。ゲームオーバーです』
上条「ナイス、黒子!」
女「ううっ、ごめんね、やられちゃったぁ」グスグス
男「はは、気にするなよ。おまえは精いっぱいやったさ」ナデナデ
黒子「…………」チラ
上条「ん、どうしたんだ?」キョトン
黒子「……別に、どうもしませんの」カシャン
司会『10分経過。現在の状況をお知らせします。ただ今の生命力一位は194ポイント。次点で188ポイントとなっております』
黒子「……2トップが先ほどの途中経過と変わらないですわね」
上条「黒子はまだ180台をキープできてるけど、こっちはもう150台後半だ。いい加減動かないと、まずいかな」
司会『生き残っているペアは17組です。終了まで――」
黒子「わたくしたちが本当に一位を目指すのであれば、どのみち避けては通れない道ですわね」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 20:49:55.85 ID:jF2Ussxx0
上条「あった、金属製の支柱だ」
黒子「太さはそれなりのようですけど、強度の方は」
上条「引っ張ってもびくともしない。使っても問題なさそうだ」グッグッ
黒子「よかった。なら登り棒の要領で地上に戻れますわね」
上条「来た道引き返すなんて悠長なこと言ってられないからな」
黒子「やれやれですの、テレポートさえ使えたら一瞬で降りられますのに」
上条「まぁまぁ、あんまり能力に頼りすぎてると体の反応だって鈍るんじゃないか?」
黒子「む……さらりと手厳しいことをおっしゃいますわね」
上条「ま、運動不足のようには見えないけどな。おまえって御坂と比べてもスリムだし」
黒子(……えーえー、どーせわたくしの体は貧相ですわよ)
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 20:55:16.98 ID:jF2Ussxx0
上条「んじゃ行くか。黒子は俺が下っている間近づいてくるやつがいないか見張って」
黒子「いいえ、ここはレディファーストで」バッ
上条「おまえから? どうして」
黒子「はぁ、少しは察してくださいな。こちらはこの通りスカートを穿いているんですのよ?」ヒョイ
黒子「それともなんですの? 上条さんはひらひらの中身が気になりますの?」パタパタ
上条「ばっ、んなわけないだろっ!」カッ
黒子「あらあら、顔が赤いですわよ? もしかして図星でしたの~?」
上条「ちげえよっ! もういいから、先に降りるんなら早く行ってくれ」
黒子「はいはい、そんな照れなくてもよろしい――」ギュ
――ヒュオオオ
黒子「え……」フワッ
上条「……へ」ピシッ
黒子「~~~~っ!?///」バッ
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 21:03:09.20 ID:jF2Ussxx0
上条「…………え、えと」ポリポリ
黒子「…………」ギュウ
上条「い、いやー、最近の技術革新はマジすごいよなあ。吹き上がりの風まで再現してるなんて」
黒子「…………くっ」ギロ
上条「で、ででで、でもさすがに、ちょっと懲りすぎてる気も、ははは……は」
黒子「……見ましたの?」ボソ
上条「」ブンブンブンブン
黒子「よもや嘘は、仰っていませんわね?」
上条「いやその、両の太腿に巻かれてたレザーバンド? みたいなのは一瞬見えちまったけど」
上条「それより上は全然、これっぽっちも。だからぎりぎりセーフかな、みたいな」アセアセ
黒子「…………」ジト
上条「そ、それより、早く降りないとまた同じようなことになっちまうとも限らないんじゃあ」
黒子「わ、わかってますのっ!」ガシッ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 21:07:56.25 ID:jF2Ussxx0
上条「よっ、と。お待たせ」スタン
黒子「…………」プゥ
上条「まーだむくれてるのかよ。さっきのはどう考えたって不可抗力だろ?」
黒子「別に、むくれてなどいませんの」
黒子(太腿くらいならオッケー、とでも思ってるんでしょうかね。この殿方は)
上条「てか、おまえ普段は学生服で大暴れしてるだろ? あれって周りの人間には見えちまうことも」
黒子「だからなんですの? 自分は悪くないアピールですの? それとも、お姉様みたくダサイ短パンを穿けとでも?」
上条「い、いや、そうは言わねえけど……つうか何気にひどいな」
――ドンッドンッ
黒子「……上階の方に交戦ポイントが移動したようですわね」チラ
上条「他のプレイヤーもいよいよ賭けに出たってことか。タイミング的にはよかったっぽいな」
黒子「どちらにしても、これで後戻りはできなくなりましたの」
黒子「……残り8分少々、急いで移動しますわよ」ツカツカ
上条「ちょ、黒子。待ってくれって」タッタッ
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 21:31:41.03 ID:jF2Ussxx0
――オオオォォォ
上条「へぇ、こっちのエリアだと観客の歓声が聞こえるんだな」
黒子「なかなか盛り上がっているようですわね」
上条「ああ、それにしても――」キョロキョロ
上条「アスレチックっていうだけあって、懐かしい遊具が揃い踏みだな」
黒子「確かに、丸太の壁にハンモック、トンネルに滑り台まで」
上条「おまえなんかお世話になった口じゃないか? 体動かすの好きそうだし」
黒子「否定はしませんの。ともあれ、障害物が多い分戦いにくそうですわね」チャッ
上条「そうだな、ここからはより慎重に進まないと――ん」
――シャアアアア
上条「なんの音だ? どんどん近づいてくるぞ」チャッ
黒子「……はて、この摩擦音どこかで聞き覚えが」
黒子(……壁に細長い影? ……っ、ターザンロープッ!)バッ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 21:51:37.15 ID:jF2Ussxx0
黒子「上条さんっ!」
上条「うぉっ、いきなり大声出すな――」
男「っし、もらったぁ!」バッ
上条「なっ、上からっ!? ――うぉっ!」ドン
――ヒュン、ヒュン
上条「いでっ!」ドスンッ
黒子「あうっ!」ドサッ
黒子(ふう、何とか間に合いましたわね。……やむなく押し倒してしまいましたけど)
上条「ぃてて……わ、わりぃ黒子! 助かった!」
黒子「なんてことないですの。さっ、反撃に転じますわよ!」スクッ
上条「あ、ああっ!」チャッ
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:04:54.52 ID:jF2Ussxx0
男「くそっ、しくじったかっ!」
女「男! 早くこっちに合流して」バッ
上条「逃がすかよっ!」チャッ
男「――ちっ!」パッ
――ダンッダンッ
男「――やべっ!」ヴヴヴ
上条「うっし、二発とも当たった!」
黒子「もう少し早くにロープを手放すべきでしたわね」
女「このっ、あんたさえ邪魔しなければっ!」チャッ
黒子「ふふっ」グイ
上条「おわっ、っと」ヨロッ
――キン、キン
黒子「生憎でしたわね、こちらには盾がありますの」ピト
上条「よ、予告なしに引っ張るなよ」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:13:24.05 ID:jF2Ussxx0
女「なんなのよあの子! 全然攻撃が当たらないじゃない!」ドンドン
黒子(これで4発……そろそろですわね)
黒子「さぁ、いきますわよっ」ダッ
女「飛び出し――っ、調子に乗んなっ」ダンッダンッ
黒子(できるだけ体勢を低く、地を這うように)タッタッ
――ヒュン、ヒュン
女「嘘でしょっ、何で当たらないのよ!? ――えっ」ガチンッ
黒子「ご自分の弾数くらいちゃんと把握なさいな。それと」チャッ
――ドンッ、ドンッ
女「きゃああっ!?」ヴヴヴ
黒子「素人さんが考えているほど、動く的に当てるのは簡単じゃありませんのよ?」ファサ
上条(……で、出番がねえ)ポカーン
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:20:28.19 ID:jF2Ussxx0
男「だ、駄目だ、こいつら強すぎる!」クルッ
女「ええっ、ちょっと男! 置いてかないでよっ!」タッタ
黒子「もっとも愚かな選択ですわね。パートナーを見捨てるなんて」カチャ
上条「――黒子っ、後ろだっ!」
黒子「――っ」バッ
――ビシッ
黒子「……っ!」ヴヴヴ
上条「黒子っ!?」
黒子「へ、平気ですのっ!」バッ
黒子(生命力は……168、直撃は免れたようですわね)カシャン
黒子(それよりも、襲われる直前までまったく気配を感じなかったですの。これではまるで本職の)チラ
???「さっすが、いい反応してんじゃん。一年生ながらダントツの検挙率を誇るだけあるねぇ」コツコツ
???「でもまだまだ。もし本物の銃の弾速だったら、今ので終わってるじゃん?」コツ
黒子「こ、この特徴のある喋り方は」ゾクッ
黄泉川「いや、それ、おまえにだけは言われたくないじゃん?」スッ
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:30:50.51 ID:jF2Ussxx0
黒子「やっぱり、黄泉川先生っ!」
上条「げっ、黄泉川……って、黒子も面識あるのか?」
黒子「もちろん、よぅく存じてますの」
黒子「黄泉川愛穂。警備員(アンチスキル)に所属している対能力者戦闘のエキスパートですの」
上条「警備員(アンチスキル)か。そういや、んな話をチラっと小萌先生から聞いた気もするな」
上条「それで、おまえがそんなに警戒してるってことは、強いのか」チラ
黒子「たった今エキスパートと申しましたでしょう。過去にはレベル3の能力者を丸腰で捕獲したこともあるんですのよ?」
上条「丸腰だ? おいおい、ほんとに俺たちと同じ人間なんですか?」
黒子「さあ、ご本人に直接尋ねられてはいかがですの?」
黒子(驚異的な身体能力に加え、銃器の扱いにも長けている。このエリアの参加者を葬ったのも恐らく……)
黒子(能力使用を禁じられている上に敵の土俵で戦わねばならないというのは)
黒子(……正直、厳しすぎますわね)
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 22:52:10.15 ID:jF2Ussxx0
黄泉川「へぇ、味方のデータまでよく調べてるなぁ。感心感心」
黄泉川「だけど、常盤台のジャッジメントが私服で男とデートってのは色々とまずいじゃん?」ニヤ
黒子「か、勘違いなさらないでくださいっ! これはデートなどではありませんのっ!///」
黄泉川「おやおや、だったらいったいなんだってんだい?」
黒子「そ、それは、その」モジモジ
黒子「ただ一緒に遊んだり、お食事したり、お買い物しているだけですの」
黄泉川「……世間一般では、その一連の行程をひっくるめてデートっていうじゃん?」
上条「へぇ、常盤台って私服での外出すら認められていないんだな。さすが世界的なお嬢様校」
黒子「そんなカビの生えた校則など真面目に守ってる人は数えるほどしか……って、そんなことはどうでもいいですの!」
黒子(まともにやり合ったところで勝ち目は……よくて相打ちでは戦う意味がありませんし)グヌヌ
上条「黒子、今ふと思ったんだけどさ」
黒子「……なんですの?」
上条「黄泉川先生も、誰かとペア組んでるんじゃないか?」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:02:35.62 ID:jF2Ussxx0
黒子「ペア、そういえばそうですわね」キョロ
黒子(彼女のパートナー次第では、まだ勝ち目が)
黒子(いえ、ですけど、その男性はどちらにいるんですの? 別行動中?)チラ
黄泉川「仕掛けてこないなら、こっちから行くじゃん?」ダッ
黒子(くっ、さすがに考える時間は与えてくれませんわね)ドン
黄泉川「おっと」サッ
――キンキンッ
黒子「盾っ!? どこからそんなものを調達して――」
――ドンッ
上条「い゛っ、なんで俺っ!?」ヴヴヴ
黒子「か、上条さん!?」
黒子(……額に残光が! ……ですけど、男性には男性の銃しか効かないはずじゃ)
???「ンな隙だらけじゃァ、狙う張り合いもねえなァ」ユラユラ
上条「……お、おまえは」
一方「よォ、久しぶりだなァ、三下ァ」ニタァ
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:16:30.30 ID:jF2Ussxx0
上条「……一方通行(アクセラレータ)」
黒子「一方通行(アクセラレータ)って学園一位のっ!? こんな雪国もやしみたいな方でしたの!?」
一方「ハァ? 誰がもやしだァ? ガキだからってェ舐めた口利いてっとすり潰すゾ?」
黒子(……すごい圧力ですわね。……ですけど)
一方「しっかし、くだンねェ催しに参加してみりゃまさかまさか、テメェがいるたあなァ?」ブラーン
上条「いや、その格好で凄まれても反応に困るぞ」ビッビ
黒子「よもや第一位が盾代わりに使われてるなんて……お気の毒ですの」
一方「あァ? 何ならいつかの借りを利息付きで返してやっても――うォッ」ブンッ
――ヒュン
黄泉川「っと、危ない危ない」ガシ
上条「くそっ、避けられたっ!」
黒子「そ、それが適当な表現かは疑問が残るところですけれども」
一方「…………」イライラ
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2012/09/12(水) 23:18:48.68 ID:lP/RbYtAO
もやし宙ぶらりんワロタ
しかし黄泉川先生の握力とかやべえな
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:24:24.02 ID:jF2Ussxx0
一方「て……ンめェ、黄泉川ァ」プラーン
黄泉川「まぁまぁ、せっかく遊びに来てるのに殺気立っても仕方ないじゃん?」グイ
黄泉川「あんたたちも、くだらない柵や私怨は脇においといて、今はゲームに興じようじゃん?」
黒子「それは、校則違反については、お目こぼししてくれるってことですのね?」
一方「俺が一番頭にキてんのはテメェだ黄泉川! 人の襟首振り回して遊んでんじゃあああァっ!?」ブウン
――キン、キン
黒子「惜しいぃ! もう少しでしたのに!」ギリギリ
黄泉川「危ない危ない、一瞬ひやっとしたじゃん」
上条「お、女の腕力じゃねえ。いくらあいつが痩せてるっつったって、片腕で人一人振り回すとか」
黄泉川「慣れてるからね。暴徒鎮圧用シールドに比べりゃ、そりゃ少しは重たいけど」
上条「……黒子、ああいう盾って何キロくらいあるか知ってるか?」
黒子「記憶に間違いがなければ、4キロ前後だったかと」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:47:11.96 ID:jF2Ussxx0
――ドンッドンッ
上条「はぁ、まいったな。まったく隙がねえ」ザッ
黒子「悔しいですけど、打開策が見当たりませんわね」カチャ
黒子(……上条さんの残りの数字は)チラ
上条「47、か。最初の一発が効いたな、しっかりラブラブモードが乗ってやがった」
黒子「盲点でしたの。リストバンドを付けた腕にもやしっ子さんを装備すれば、常時あの状態で戦えますのね」
一方『ヤロッ、今装備って言いやがったァッ!』
黒子「……地獄耳ですの」
黄泉川『師弟一心同体。名付けてガンシールド作戦じゃん』
一方通行『……ハァァァ?』
上条「……あっちはあっちで大変みたいだ」
司会『残り五分です。――生き残っている組は九組。現在のトップは189ポイント、次点で174ポイントです』
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/12(水) 23:54:36.23 ID:jF2Ussxx0
黒子「黄泉川先生。ひとつだけお尋ねしてもよろしいですの?」
黄泉川『生命力のことかい?』
黒子「……ええ」
黄泉川『この状況からわかりそうなもんじゃん? 前回の途中経過を聞いていたからこそ、仕掛けに来たんだろ?』
黒子「やはり、お二人が2トップということですわね」
黄泉川「それを知ったところでどうする? 彼氏の方はもう脱落すれすれ、まさか単独でどうにかなるとは」
黒子「もちろん、それほど自惚れてはおりませんの。あと、まだ彼氏ではありませんの」コホン
黄泉川『ふぅん。まだ、ねぇ』
黒子(わたくしの生命力のみであれば、おそらく上位に食い込めているでしょうけれど)
黒子(わずかな可能性に縋って戦うか……それとも)
上条「黒子、ここは引こう」
黒子「え……、か、上条さん?」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:11:36.98 ID:KpMQpQpO0
上条「予想通り、あの二人も無理に追ってはこなかったな」テクテク
黒子(残り四分弱。……これで順位はほぼ本決まりですわね)
黒子「本当に、よろしかったんですの?」
上条「ああ、共倒れになるよりはずっといいだろ?」
上条「黒子の生命力もあいつらのとそんなにかけ離れちゃいないし、それなりの景品はもらえるんじゃないか?」
黒子「ですけど、上条さんは……」
上条「こんなのただの寄り道だろ。当初の目的は黒子との買物兼デートだしな」
黒子(デ……)ドキ
上条「なんてな、俺だけそう思ってるのかもしれないけど」ポリポリ
黒子「い、いえ、さっきはああ言いましたけれど、わたくしだって……その」ゴニョゴニョ
――ヴヴヴ――ヴヴヴ
黒子(……ん、この音は)
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:21:13.91 ID:KpMQpQpO0
上条「あれ、俺の携帯か? ――いや、違うな」シーン
黒子「と、いうことは」ゴソゴソ
携帯『着信中』ヴヴ
黒子「失礼、わたくしでした。出がけにマナーにしておいたのを忘れてましたの」パチ
黒子(って、固法さんですの? 非番の日に電話を寄越すなんて珍しいですわね)ピッ
黒子「もしもし、こちら白井ですの」
固法『あっ、白井さん? よかった、やっと繋がった!』
黒子「……なにかあったんですの?」
固法『スキルアウトが第三、第十五、十六学区で大規模な暴動を! 負傷者の報告も多数入って来ているわ!』
黒子「な、なんですって!?」
固法『今日は休日だし非番の人も多いでしょ。アンチスキルもジャッジメントも人手不足で鎮圧に手が回らないの』
固法『すでに支部員にも応援の要請が回り始めてるわ。初春さんもあと数分で到着するって』
黒子「初春も……」
固法『白井さん。あなた、今どこにいるの? もし来てもらえるようならすごく助かるんだけど』
黒子(……た、助かるって言われましても)チラ
上条「……ん?」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:27:40.35 ID:KpMQpQpO0
黒子「こ、固法さん。わたくしは、その」
固法『どうしたの? もしかして体調が優れないの? 生理とか?』
黒子「……いえ、そういうわけでは」
黒子(なにを、考えているんですの。これはれっきとした事件ですのに)
黒子(ジャッジメントなら迷わず駆けつけなければいけませんのに……どうして)
上条「黒子? なにかあったのか?」
固法『白井さん? もしもし? 聞こえてる?』
黒子「……ご、ごめんなさい。折り返しご連絡いたしますの」
固法『え、ちょっと? 白井さ――』ピッ
黒子「…………」
黒子(……なんで、……なんで今日に限って)ギリ
司会『8番、棄権により脱落です』
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:32:44.34 ID:KpMQpQpO0
上条「おい、今の電話、誰からだ?」
黒子「……風紀委員の先輩ですの。商業地区で暴動が発生、緊急出動するようにと」
上条「暴動って、一大事じゃねえか! 一刻も早く行かないとまずいんじゃないのか?」
黒子「……そう、ですわね」
上条「しゃあねえ、係員に事情を話して棄権しよう」
黒子「ですけど! それでは約束が果たせませんの!」
上条「……約束?」
黒子「上条さんの買い物がまだ終わってませんの」
上条「買い物っつったって、そういう事情があるんじゃ仕方ねえだろ?」
黒子「そ、それが叶わなくとも、せめてこのイベントが終わるまでは」
上条「何言ってんだよ、おまえらしくもねえ。一言詫び入れりゃ済むことだろ」
黒子「軽々しく仰らないでくださいな! こんな中途半端なところで棄権だなんて」
黒子(……初デートがこんな終わり方なんて……あんまりですの)グッ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 00:56:48.82 ID:KpMQpQpO0
上条「確かに時間だけ見りゃあと二、三分だけど」チラ
上条「何かのテレビ番組でやってたけど、事件勃発後の初動ってすごく重要なんだろ?」
黒子「う……」
上条「その数分の間に知り合いが大怪我でもする羽目になったら、おまえ絶対後悔するだろが」
黒子「そ、それは――――上条さん?」
上条「すみません。31番、上条白井ペア、棄権します」スッ
黒子「……あ」
司会『31番、棄権により脱落です』
黒子(……数値が……消えた)
上条「そんな顔するなって。さ、リストバンドと銃は預かるから、早く行ってこい」
黒子「……そんなに、わたくしを追い払いたいんですの?」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:29:43.86 ID:KpMQpQpO0
上条「……おまえな、しまいにゃ本気で怒るぞ?」
黒子「……冗談、言ってみただけですの」フゥ
黒子「ほんの少し恨み言を呟きたくなっただけですから、気にしないでくださいな」ニコ
上条「……黒子」
黒子「じゃあ、これとこれ、お願いしますわね」スッ
上条「あぁ。――あのさ」
黒子「なんですの?」
上条「この際言っとくけどさ、今日はおまえと一緒に過ごせてとても楽しかった」
上条「俺もこんなところで中断しちまうのは、すごく残念だよ」
黒子「……上条さん」
上条「だから、後日改めて仕切り直ししないか?」
黒子「……いーえ、その必要はないですの」
上条「え……」
黒子「すぐに終わらせて戻ってきますから。後ほどまた合流いたしましょう」
上条「いや、だけど、時間がほとんど残らないんじゃ」
黒子「関係ありませんの。これはわたくしなりのケジメですの」
上条「……わかった、おまえがそれで納得できるんなら」コクン
黒子「ふふ、決まりですわね」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:34:54.80 ID:KpMQpQpO0
黄泉川「話はまとまったかい?」スッ
黒子「……っ!」バッ
上条「黄泉川先生! 一方通行も」
一方「……チ」
黄泉川「構えなくていいよ。うちらもついさっき、途中棄権の申告したからさ」
黒子「……え、ということは」
上条「さっき司会が言ってた棄権って、二人のことだったんですか」
黄泉川「どうやらほとんど同じタイミングで連絡が来たみたいじゃん」
黄泉川「一応、わたしら二人は9位確定みたいじゃん」
上条「んじゃ、俺たちは8位ってことか。順位が入れ替わっちまったな」ポリポリ
黒子「負けていた手前、少々後ろめたいですわね」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:41:05.49 ID:KpMQpQpO0
黄泉川「それで白井、物は相談なんだけどさ」
黒子「わかってますの、現場まで運べばよろしいんですのね?」
黄泉川「さすが、話が早くて助かるじゃん」ニヤ
一方「う゛ォい待て。俺も連れていけ」
黒子「え? でもあなた、名目上は一般人でしょう?」
一方「ンだァ? 超電磁砲(レールガン)には暴れることを認めてンのに、他がダメってのは差別だろ」
黒子(お姉様に関しては、許可した覚えはまったくないのですけれども)ハァ
黒子「どちらにしても無理ですの。わたくしが一度に運搬できる重さはせいぜい130キロまで」
一方「てめえと黄泉川と俺、か。ぎりぎりいけンじゃねえかァ?」
黒子(どう考えても無理ですの)
黄泉川「こらこら、あの子を一人置き去りにするわけにはいかないジャンよ」
上条「あの子? ……あぁ、打ち止めか。連れてきてたんだな」
黄泉川「イベントで上位まで残るともれなく限定ゲコタストラップがもらえるって聞いてね」
黄泉川「あの子の無言の催促にこの子が応じてやったと――」
一方「テメエ、余計なことべらべら喋ってンじゃねェ!」
上条「相変わらず面倒見いいんだな」
一方「……ウ、ウッセェよ」プイ
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:45:47.24 ID:KpMQpQpO0
黒子「では、しっかり掴まっていてくださいな」
黄泉川「あいよ。じゃあアンタは、ちゃんとあの子を家まで送り届けるんだよ」
一方「…………」ハァ
黄泉川「一方通行(アクセラレータ)」
一方「……わァってるよ」
黒子「じゃあ上条さん。とっとと片付けて戻ってきますの」
上条「ああ、――黒子」
黒子「はいな?」
上条「怪我だけはすんなよ、絶対に」
黒子(…………ふふ)
黒子「当然ですのっ。わたくしを誰だと思ってますの?」ビッ
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:49:02.56 ID:KpMQpQpO0
上条「行っちまったな」
一方「あァ……って、気安く話しかけンな」クル
上条「あ、おい待てよ」
一方「…………ア゛ァ?」ズズ
上条「松葉杖なしじゃ階段登るのきついんじゃねえか? よかったら上まで肩貸すぜ」
一方「ハッ、お断りだ。三下に同情されるほど落ちぶれちゃいねぇンだよ」ズズ
上条「そうやって突っ張っても疲れるだけだろ。ちったぁ世渡り上手になれって」
一方「……鏡見て言ってろ」スゥッ
上条「……たく、あいつといい御坂といい、誰かに頼るのがとことん下手だよなぁ」
上条(そういや、8位の景品って何が貰えるんだろうな)
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:55:41.62 ID:KpMQpQpO0
――シュイン
黄泉川「おぉっ、こりゃあ爽快じゃん!」パッ
黒子「瞬間移動は初めてですの?」シュイン
黄泉川「負傷したときに一度だけ。ま、出血で意識がおぼつかなかったからろくに覚えちゃいないんだけど」パッ
黒子「アンチスキルも大変ですわねぇ」ピッピッピッ
黒子「初春、聞こえてますわね?」
初春『はい、白井さん。今どちらですか? 合流できそうなんですか?』
黒子「第六学区の鉄橋を横断中ですの。こちらの位置情報を同期してくださいな。固法さんにも遅れてすみませんと一言」
初春『了解、伝えておきますね』
黒子「では、作業中に現在の状況を掻い摘んでお願いしますの」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 01:57:36.51 ID:KpMQpQpO0
初春「はい、現在第十六学区内の三個所でATM強盗及び商店の破壊が行われている模様です」カタカタ
黒子『割と近いですわね、まずはそちらを叩けばよろしいかしら?』
初春「お願いします。銃器類を所持している犯人もいるとのことなので注意してください。それと」パチ
――ヴン
黒子『なんですの?』
初春「これは別の学区内の話ですけれど、敵側に能力者がいたとの報告が数件上がって来ています」
黒子『能力者ですって?』
初春「ええ、手をかざして離れたところにある物体を動かしたとか」
黒子『……ふむ。念動力系といったところでしょうか』
初春「どういった能力なのかはまだ何とも言えませんが、他にも能力者がいないとも限りません」
黒子『わかりました。頭に入れておきますの』
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/13(木) 02:01:43.39 ID:KpMQpQpO0
黄泉川「了解。そっちも気をつけて」パチン
黒子「アンチスキルの方はどうですの?」
黄泉川「非番の連中はほぼ出揃ったみたいじゃん。徐々に逮捕者も増えてきてる」
黄泉川「それから、能力者についてもうちょい詳しい話が聞けた。放置自転車を浮かべてビルに突っ込ませたらしい」
黒子「……自転車というからには、それなりの重量がありますわね」
黄泉川「おそらく、レベル3ないし4ってところじゃん」
黒子「しかし、それほどの能力者がどうしてスキルアウトなどと手を組んでるんですの?」
黄泉川「そこは、誰かをとっ捕まえて吐かせればいいことじゃん」
黒子「そう簡単にいけばよろしいんですけれど」
初春『白井さん、聞こえますか? あと一五秒ほどで犯人の乗った白いワンボックスカーがそこの交差点を通過します』
――ブウウウウ
黒子「――こちらでも視認。いったん切りますわね」パチ
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:00:11.89 ID:OG9dtuKr0
――車内
スキルアウトA「へっへ、思いのほかうまくいったな」
スキルアウトB「これだけの規模となると、こっちの狙いを絞るのも難しいだろうからな」
スキルアウトC「無駄口叩いてないで合流ポイントへ急げ。視覚阻害の能力者が待っているはずだ」
スキルアウトA「認識させなければ監視衛星も意味がない。安全に持ち出せるってわけか」
スキルアウトC「そういうことだ。この仕事が終わったら南の島でバカンスさ」
スキルアウトA「へへ、悪くねえな」
――ブツン
スキルアウトA「ん? ……あれ」
スキルアウトB「どうした? ……ん、なんか変な音がすんぞ?」カラカラ
スキルアウトA「な、なんだこれ、どうなってやがる!」
スキルアウトC「おい、何やってる。速度が落ちてきているぞ、ちゃんとアクセルを」
スキルアウトA「ふ、踏んでるよ! ベタ踏みしてんのに、一向に反応しねえんだよ!」
スキルアウトB「……ちっ、こんなときにエンジントラブルかよ、ついてねえ」
スキルアウトC「……待て、前方に誰かいるぞ!」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:03:50.48 ID:OG9dtuKr0
――プスンプスン
黄泉川「車を止めるっていうからてっきりパンクでもさせるのかと思ったら」
黄泉川「こいつは一本取られたじゃんよ」ニヤ
黒子「犯罪者の身柄を気遣う必要があるかどうかには疑問の余地が残りますけれど」
黒子「なるべく公共の施設を破壊しないようにとのお達しがありますから」
黄泉川「より安全に停車できるよう、タイミングチェーンを断ち切ったってわけか」
黒子「ええ、エアバックの強制作動という手も考えましたけれど」
黒子「操縦ミスでその辺の店にでも突っ込まれたら後始末に困りますし」
黄泉川(確かに、クランクシャフトとカムシャフトを繋ぐチェーンを切っちまえば)
黄泉川(エンジンの起動に必須である吸気と排気ができなくなる)
黄泉川(よって、車はハンドル操作を損なわれることなく、慣性に従って緩やかに止まる)
黄泉川(知識もさることながら、実行してのける胆力と能力の精度が半端じゃないね)
黒子「車外に出た瞬間を狙いますの。フォローの方、よろしくお願いします」
黄泉川「あぁ、任せな」カチャン
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:07:48.82 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトA「……くそ、出るぞ!」バン
スキルアウトB「で、出るつったってくそ重いぞ、この鞄!」
黒子「逃がしませんわよ」ヒュン
スキルアウトA「へ? ――ぐぁ!」ドゴッ
スキルアウトC「ばっ……なにいきなりやられてやがる!」バッ
黒子「ほっ……と」スタン
スキルアウトB「……な、なんなんだてめえ! どこから湧いて出やがった!」
黒子「乙女に向かって湧いて出たとは無礼千万」
黒子「ジャッジメントですの。そちらの車体ナンバーは手配済みです。風紀委員の緊急時約定に基づき」
黒子「あなた方を強盗傷害の容疑により拘束しますっ」キッ
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:12:52.83 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトB「お、おい、ど、どうすんだよ!?」
スキルアウトC「しゃらくせぇ! とっとと始末してズラかんぞ!」バッ
黒子(懐に手を! やらせは)
――パンッ
スキルアウトC「ぐあぁっ!?」メキィッ
――カッカッ
黒子(……、とと)
黄泉川「いい年した大人が、物騒なもんを女の子に向けるもんじゃないよ」スチャ
スキルアウトC「痛ぅぅ、く、くそがぁ……っ!」
黒子(硬質ゴム弾。先ほどの音、手骨にひびくらいは入りましたかしら)
黒子(それにしても、抜く瞬間に狙いを定めたんですの? やはりこの方、相当のやり手ですわね)
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:19:09.19 ID:OG9dtuKr0
黄泉川「これ以上の抵抗は無意味だよ。大人しくお縄に」
スキルアウトC「くっ、まだ終わっちゃいねぇっ」バッ
黄泉川「ったく、聞き分けが悪いじゃんよ」バンッ
――バシィッ
スキルアウト(なっ、落ちてる銃に当てやがったっ――はっ)
――ガスッ
スキルアウトC「い゛ぎっ!? かっ……はっ」
黄泉川「武器を抜かせもしなかった相手が、拾わせてくれると本気で思ったのかい?」ギリギリ
スキルアウトC「ぐ、ぐるじ、……ぎぶっ、ぎぶ……ぁ――」カクン
スキルアウトB「……あ……なん」
黄泉川「……さて、あんたに少々聞きたいことがあるんだけど」スチャ
スキルアウトB「ひっ、じゅ、銃を向けないでくれ!」
黄泉川「うん、撃たれたくなかったら今みたいにはきはき喋りな」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:29:53.08 ID:OG9dtuKr0
黒子「ええ、保育園前の歩道橋です。では、よろしくお願いします」カチャ
黒子「近くで展開している部隊が収容しにきてくれるそうですの。十分くらいかかるそうですけど」
黄泉川「そっか。んじゃあただ待ってるのもなんだし、先に尋問を始めちまおう」
スキルアウトB「な、なんでも喋るから、暴力は……俺は運び屋として雇われただけで」
黄泉川「あんた次第だね。さて問1、あんたたちはこの騒動の計画をどこで知った?」
スキルアウトB「が、学園のアングラサイトだ。仲間内で話題になってたから、チラッと覗いてみたんだよ」
黒子「アングラサイト? 先のレベルアッパー事件のときのような?」
スキルアウトB「そ、そんな感じだ」
黄泉川「問2、呼びかけの内容はどういったものだった?」
スキルアウトB「た、確か見出しは『学園に不満や恨みのある者たちに告ぐ』って煽り文句で」
スキルアウトB「多箇所同時襲撃の概要が記されてたんだ」
黒子「……所在もわからぬ人間の呼びかけで、これだけ大規模な暴動になったと?」
スキルアウトB「それが、襲撃日が近づくにつれて、アンチスキルやジャッジメントの対応予測なんかも」
黒子(……対応予測? なんで部外者にそんなことが……単なるでまかせ? それとも……)
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:38:49.15 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトB「その顔、言いたいことはわかるよ。俺たちだって最初は半信半疑だったさ」
スキルアウトB「けど、そのサイトには何人かの能力者も計画に加わるみたいなことが書いてあって」
スキルアウトB「出回ってるソーシャルツールを見る限りじゃ参加者もかなりいるみたいでさ」
スキルアウトB「これならいけるんじゃないかって、周りの連中も次第に乗り気になってったんだ」
黒子「赤の他人の意見を鵜呑みにしたんですの? もし単なるいたずらだったら」
スキルアウトB「単なるいたずらに、車や武器を提供するやつがいると思うか?」
黄泉川「じゃあ、この車やあんたたちの武器も?」
スキルアウトB「あぁ、全部が全部とはいわねえけど、大体は計画者側からの提供品だ」
黒子「……どうも、きな臭いですわね」
黄泉川「騒動が収束すれば、全容も掴めるかもしれないけど」
黄泉川「じゃあ問3、首謀者のことをできるだけ詳しく教えろ」
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:45:54.41 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトB「いや、まったく。――ま、待て! ほ、本当だって!」
黒子「これは忠告じゃなくて命令ですのよ。さっさと答えないと、少々荒っぽく」キラン
スキルアウトB「し、知ってたら答えるって! 俺だって、嫌々参加させられたんだよ」
黒子「で、大事そうに抱えているその鞄の中身はなんですの?」
スキルアウトB「……そ、それは」
黒子「金銭の管理者はもちろん、その部下。あるいは輸送屋にガードマン。もしくはその家族たち」
黒子「あなたがそうやって金を持ち逃げすることで、何十人もの人の人生が狂いますの。自覚してますの?」
スキルアウト「…………」
黄泉川「……ふぅ。知っていることだけでいい、とっとと話しな」
スキルアウトB「……襲撃グループの代表者が集まったときが一度だけあって」
スキルアウトB「味方についた能力者が代表してデモンストレーションしてみせたとは聞いてる」
スキルアウトB「だから、もしかするとそいつが。それ以上のことは、なにも――」
――ドゴォォォン
黒子「……今のは、爆発音?」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:48:45.85 ID:OG9dtuKr0
黄泉川「……ここからそう遠くはなさそうだね。本部に応援を寄越してもらうか」ピッピ
黒子(…………)
黒子「黄泉川先生」
黄泉川「ん、なんだい?」チラ
黒子「申し訳ないのですが、この方々を見張っていただいてもよろしいですの?」
黄泉川「……ちょっと待った。まさかあんた、一人で偵察にいくつもりかい?」
黒子「はい、仮に今までのが陽動だとすれば、ここで一歩出遅れると取り逃がしてしまう可能性が」
黒子「わたくしが見ましたところ、先生がお持ちの武器は改造拳銃のみ」
黒子「装備が整っていればともかく、敵に強力な能力者が加わっていることを考えますと」
黄泉川「心もとないってかい? わたしの武勇伝は知っているんだろ?」
黒子「もちろん、リスクマネジメントに関してはアンチスキルの方に一日の長があると思ってますの」
黒子「ですが、彼らをこのままにしておくこともできませんし」
黄泉川「む……」
黒子「敵の戦力が不明である以上、二人のどちらかが仕掛けるなら一撃離脱が容易なわたくしの方かと」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 20:57:55.79 ID:OG9dtuKr0
黄泉川「……んんー」
黄泉川「わかった、気が進まないけど、この状況ではおまえの意見に分があるじゃん」
黒子「ありがとうございます」
黄泉川「ただし、わたしも一教師として、生徒を危険な目に合わせるわけにはいかない」
黄泉川「これは手に負えないと感じたらすぐに戻ってくるんだ。いいね?」
黒子「かしこまりました、黄泉川先生もお気をつけて」
黒子「…………」チラ
スキルアウトB「……な、なんだよ」
黒子「……あなたのその消沈した顔が、反省したフリではないことを祈ってますの」シュン
スキルアウトB「あ……」
黄泉川「……いったか」
スキルアウトB「……あんな女の子に説教されるなんて、……俺、マジ、格好悪いな」
黄泉川「格好悪いって思うだけの自尊心が残ってるなら、必死にやり直すことだね」ポン
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:05:22.18 ID:OG9dtuKr0
黒子(この辺りのはずですけれど……っ)ヒュン
黒子(割れた窓ガラスから黒煙……、どうやらここで間違いなさそうですわね)パッ
黒子(一階は、食料品売り場のようですわね……と)パキ
黒子(……割れたガラスを踏むと、音が響きますわね)ヒュン
黒子(さて、ここからは慎重に)
――ガシャーン
黒子(……奥から物音が……戦闘中?)
スキルアウトD「へっへへ、ちょろいもんだぜ」
黒子(……話し声)バッ
黒子(ふぅ、こちらに気づいたわけでは、ないようですわね)
黒子(敵が何名いるのか把握しきれていないうちは)
黒子(こちらが入り込んでいることを悟られないように……あら?)
ガードマンA「う……ぐぅ……」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:15:04.63 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトE「デパートのガードマンなんてものの数じゃねえっつうの」ガッ
ガードマンA「ぐわっ! ……う……」
黒子(…………!)
スキルアウトD「生意気にも一撃くれやがってよ。おら、目ぇ覚ませやっ」ドスッ
ガードマンA「ぐっ……ごほっ、ごほっ」
黒子(……き、気絶してる相手に、なんてこと)
スキルアウトE「おい、遊んでる暇はねえぞ。ちゃんと仕事しねえと旦那がキレるぜ」
黒子(……旦那)
スキルアウトD「わかったわかった。んじゃあ、お返しに腕を一本だけもらっとこうか」グイ
ガードマン「う……や、止め……ろ……」
スキルアウトD「ほれほれ、ちゃんと力いれないと折れちまうぞ」ミシミシ
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:20:05.06 ID:OG9dtuKr0
ガードマンA「ぐあ、ああぁぁ……!」ミシミシ
スキルアウトE「おまえってほんと執念深い――D! 左だ!」
スキルアウトD「何……っ!」バッ
スキルアウトE「バカっ! そっちじゃなくて向かって左――」
黒子「――ふっ!」パシ
――ヒュン
スキルアウトD「へっ――ぐあっ!」ズダン
黒子「少しばかり、おいたが過ぎますわよ」スチャ
――ズガッ、ズガガガガッ
スキルアウトD「つつつ……って、な、なんだあこりゃあ!? う、動けねえ!」ピン
黒子「暴れても無駄ですわよ。そのダーツ、床に食い込んでますから」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:30:40.80 ID:OG9dtuKr0
黒子(余計なリスクを背負いたくはなかったですけど)
黒子(目の前で行われている暴力行為は、風紀委員として見過ごすわけには参りませんの)
ガードマンA「お、お嬢ちゃんは……」
黒子「走る力は残ってますの?」
ガードマンA「あ、ああ。なんとか」
スキルアウトE「な、なんなんだてめえ!」
黒子「ジャッジメントですの。住民に対する強盗傷害、及び器物破損の現行犯で拘束します」
スキルアウトE「……なに! いくらなんでも到着が早すぎるぞ!」
???「焦る必要はねえよ」
スキルアウトD「……あ!」
黒子「何者ですの!? こそこそ隠れてないで出ていらっしゃいな!」バッ
???「ふん、威勢のいいお嬢ちゃんだ」ヌゥ
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:35:51.54 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトD「は、ハウンドの旦那!」
黒子(……ハウンド、猟犬? ……通称ですの?)
ハウンド「ずいぶんと器用な真似をするじゃないか、ダーツで人間を床に縫い留めるなんて」
ハウンド「んなことができるのは、上位のテレポーターくらいのもんだろうな」
黒子(…………っ)
スキルアウトE「テレポーター、つまり単独先行ってことすか」
ハウンド「おおかた、さっきの轟音に気づいて様子見に来たってところだろう」
ハウンド「味方がいるとしてせいぜい一人か二人。大能力者であっても、自重以上の物を運搬するのは難しいはずだ」
ハウンド「と、今の説明で何か訂正する箇所があるかな?」
黒子(……この男)ジリ
黒子「……外に出たら、全力で南に走って」ボソ
ガードマンA「……え」トン
――ヒュン
スキルアウトE「……っ、男が消えた!?」
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:51:28.00 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「……いい判断だ、足手まといがいちゃあ勝負ありだからな」
ハウンド「だが、自分も一緒に逃げなくてよかったのかな?」
黒子「逃げるか否かは別にして、確認したいことがありますから」
ハウンド「ほぅ、確認ねぇ」
黒子「あなたは、いったい何者ですの? なんの目的でこのような騒動を起こしたんですの?」
ハウンド「……何者ってほどのモンでもねえな。それから、そうだな。この騒ぎは」
ハウンド「言うなれば、ただの娯楽(ゲーム)だ」
黒子「……ゲーム……ですって」ワナワナ
ハウンド「そうさ、学園の警備機構が不測の事態にどの程度対応できるか」
ハウンド「それに興味があったんでな。余った資金を費やして試してみた」
ハウンド「お陰様で結果は上々だ、貴重なデータがたくさん取れたよ」
黒子「……なるほど、あなた、わたくしの一番きらいなタイプですわね」スチャ
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 21:57:01.65 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「やる気まんまんって面だな。いいぜ、それじゃあ」
ハウンド「お手並み拝見といこうかっ」バッ
――ガラガラガラ
黒子(……なにかが来る? ……、レジカート!)
――シャアアアアアッ
黒子「くっ、速いっ……!」バッ
――ドゴッ――ガッターン
ハウンド「ほぅ、なかなかすばしっこいじゃねえか」
――ガラガラガラガラ
黒子(横っ、後ろからもっ!? ……っ)ヒュン
――スタッ――ガコーン
ハウンド「商品棚の上に逃れたか。なるほど、テレポーターってなぁ厄介だな」
黒子「……あまり調子に乗っていると、痛い目を見ますわよ」スチャ
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 22:08:04.38 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「ダーツか、そりゃあ怖いな」バッ
――スルッ
黒子「……なっ!?」
黒子(ダ、ダーツが指からすっぽ抜けた!?)
黒子(……いえ、違う。今の感触は、まるで見えない手に引き抜かれたような)
ハウンド「よそ見してる暇はねぇぜ?」クン
黒子「……はっ」
――ギュンッ
黒子「……まずい!」ヒュン
――ドガガガガッ
黒子(今わたくしに降ってきたダーツ、自然落下の速度とは明らかに違いましたの)パッ
黒子(あの男の手の動きから見ても、ほぼ間違いない)スタン
ハウンド「また外したか、ちょこまかとうぜえなぁ」イラ
黒子(離れた場所にある物を自在に操る……十中八九、念動力系の能力者ですの)
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 22:16:20.41 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「ち、このままじゃ埒があかねえな」
ハウンド「おい、ぼけっとしてねえでおまえらも手伝え」チラ
スキルアウトE「へ、へい」
スキルアウトD「お、俺も、そうしたい、んですけど」ジタバタ
ハウンド「……あー、そうだったな」ズゥゥ
――ググググ――キンッ
黒子(……!)
スキルアウトD「す、すんません。助かりました」ムク
黒子(……地面に埋め込まれていた縛めまで、こうもあっさりと)
ハウンド「礼を言ってる暇あったら、とっととそいつをふんじばれ」
スキルアウトD「へ、へい」
黒子(く、この分では、拘束してもまったく意味がないですわね)
黒子(少々危険ですけれど、体内に直接打ち込むしか、なさそうですの)
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 22:32:14.08 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「よぉし、いけっ」
スキルアウトD「う、うおおおおっっ!」ダッ
黒子(……! 向かってくる男が死角になってる。これなら一本くらい――)
――ツルッ
黒子「……くっ、またですのっ!?」
スキルアウトD「おらぁっ!」
黒子「……っ」バッ
スキルアウトD「なっ――いでっ」ズガッ
ハウンド「つっかえねー、ちゃんと相手の動きくらい見ろよ」
黒子「……このっ」キュッ
スキルアウトE「うりゃぁっ!」ブン
黒子(後ろっ!? ……避けきれない!)ヒュン
――スカッ
黒子「……はぁ……はぁ」パ
ハウンド「おー、今のはまぁまぁ惜しかったっぽいな」
黒子(……や、やっぱりおかしい。人を壁にしても、ダーツだけを操作できるなんて)
ハウンド「へっへっ。ようやく疲れが見え始めたじゃねえか」ニタァ
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:00:29.62 ID:OG9dtuKr0
黒子(……完全に、最強手を封じられましたわね)
黒子(ですけど、もし敵が離れた場所にある物を操る能力者だとしたら)
黒子(視界を遮られた状況で、わたしの手にしたダーツだけを操れるはずはありませんの)
黒子(……この状況で相手の能力を誤解していたら、絶対命取りになる)ポタ
黒子「……ビルに自転車を突っ込ませたという能力者は、あなただったんですのね」
ハウンド「ほぅ? さすがは学園の警備機構。情報共有の早さもピカいちだな」
ハウンド「ん、待てよ? ってことは、結構前から監視カメラで動きを悟られてたのか」
ハウンド「これ以上時間を稼がれると、ちっとまずいな」
――ズゥゥゥゥゥン
黒子(……? なんですの? 一瞬、肌がピリピリと……)
黒子(……いえ、今の違和感も敵の能力の可能性がありますわね。気を引き締めないと)
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:15:54.11 ID:OG9dtuKr0
黒子(今のところ確定しているのは、人間は動かせないという点ですわね)
黒子(ダーツ以外に何かを持ったとしても、敵の能力如何では奪われてしまう可能性が高い)
黒子(飛び道具が使えないとなると、残るは接近戦のみ)
黒子(とはいえ、相手は三人。正面から向かうにはあまりにも無謀ですの)
ハウンド「そろそろ終わりにすんぞ。おまえらは全力であの小娘を追い回せ、隙ができたところを仕留める」
スキルアウトD「了解っす」
スキルアウトE「今度こそ、やってやるぜ」ブンッブン
黒子(……真っ先に仕留めるべきは、あの能力者)
黒子(やせ形とはいえ締まった体をしていますし、なるべくお近づきになりたくはないですけど)
黒子(あの三人の距離を引き離した瞬間を狙い……)
黒子(死角に転移後、直接相手に触れて壁に埋め込む)
黒子(もしそれが失敗したら、さすがに引き時ですわね)
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:23:51.16 ID:OG9dtuKr0
スキルアウトD「よし、行くぞ!」
スキルアウトE「おぅ、今度こそぶっちめてやる!」
ハウンド「さて、何か適当に動かす物はと……」キョロ
黒子(少しずつ、後ろに下がるんですの)タッタッ
スキルアウトD「そう簡単に逃がすかよ」
スキルアウトE「おまえはそっちからいけ、俺は棚の後ろに回る!」
スキルアウトD「わかった!」
黒子「くっ、いい加減しつこいですわよ!」タッタッタ
黒子(……よし、大分距離が稼げた。後ろに走りながら。3、2――)
スキルアウトE「おっしゃ、挟み撃ちだ!」バッ
黒子(1――今!)ヒュン
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:31:31.83 ID:OG9dtuKr0
黒子(ビンゴ! 敵の三メートル後方!)パッ
黒子(これで終わらせ――え)ダッ
ハウンド「ひひ、やっと近くにきたなぁ」クルッ
黒子(なっ、なんでもう後ろを向いて――まずいっ!)タンッ
――ダンッ
ハウンド「はっ、バックステップなんかで俺から逃げられっかよ」
黒子(くっ、一歩で間合いを潰され……!)
ハウンド「わざわざ殴られにぃ」ググ
黒子(お願いっ、間に合――)
ハウンド「ご苦労さぁんっ!」シュッ
――ドボォッ!
黒子「ぐぶッッッ!!!」ビクン
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/22(土) 23:53:38.35 ID:OG9dtuKr0
ハウンド「そぉっ、らぁっっ!!」グンッ
黒子(う゛あ゛っっ!!)
――ズダンッ――ダン――ズザザァ
黒子「ぐっ、ぶっ……う゛っ」ビクン
黒子(ぎゃ、逆、流……喉元、まで……耐え……う゛……無……理)ジワ
黒子「う゛っ、げぼぉッッ!!!」ビクン
――バシャアッ
ハウンド「くく、こりゃあまた盛大にぶちまけたなぁ。いいのか? ここ、他人のお店だぜ?」
ハウンド「うまく不意をつけたと思っただろ? 真逆の結果になっちまって残念だったなぁ?」
黒子「げぼっ! あ゛、あ゛っ……お゛っ、う゛え゛え゛ぇっ!」ビチャビチャ
ハウンド「あぁ、悪ィ悪ィ。吐き気と痛みで答える余裕もなさそうだなぁ」ザッザッ
黒子(……ど、どうして……です……の)クラ
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 20:52:55.69 ID:ZLb7EMui0
黒子「ぐ……うっ……う゛……ぐっ」ググ
ハウンド「お、まだ立つか。結構頑張るねぇ」ニヤニヤ
黒子「こ……の……っ、うぷっ……」グラ
黒子(……どうして、転移する場所が、一瞬に、して)ググ
ハウンド「はは、あまり無理すんなって。大分しんどそうな顔してんぜ?」ザッザッ
黒子(……はぁ、近づいて、来る。……はぁ……お願い……動いて)
ハウンド「待ってな、今楽にしてやるから、よっ!」シュッ
黒子「――グッ!」グンッ
――クルン
ハウンド「おおぉっ!?」
黒子「……っ! ……はぁっ」ヨロ
黒子(……あ、危なかった。反応がわずかでも遅れてたら、終わってましたの)ゾク
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 21:12:29.41 ID:ZLb7EMui0
ハウンド「いやぁ、すげぇすげぇ。俺の拳食らっといてあんな芸当ができるとはな」パチパチパチ
スキルアウトD「容赦ないっすねぇ。うずくまってる女の顔面目がけて蹴り放つなんて」
ハウンド「おまえは、実験動物(モルモット)の雌雄をいちいち気にするのか?」
スキルアウトD「い、いえ」
ハウンド「はは、だよなぁ?」ポンポン
黒子「……はぁ…………はぁ」
ハウンド「体重が軽かったのと後ろに跳んでたのが幸いしたってところか」
ハウンド「だがまぁ、さすがにもう一発もらったらゲームオーバーだな?」ククク
黒子(……ただの念動力であれば、転移を瞬時に察する力などないはず)
ハウンド「ずいぶんと口数が少なくなっちまったな、さっきまでの威勢はどうしたよ?」
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 21:42:57.90 ID:ZLb7EMui0
黒子(ですけど、この男が物体を動かしているのは紛れもない事実ですの)
ハウンド「顔色が悪いぜ? 負けた後のことを想像しちまったかぁ?」
黒子(……となれば、別系統の能力を応用しているとしか)
黒子(ビルに自転車を飛ばし、わたくしには商品カートを放ち)
黒子(取り出したダーツをことごとく奪い、利用する。……操る物の共通項は)
黒子(――ある。だとすれば、先ほどの妙な感触に関連付けることも)
黒子「――そう。そういうこと、でしたの」
黒子「あなた、電磁力を扱えますのね」ギリ
ハウンド「くく、やっと気づいたか」
ハウンド「俺の能力はちょっとクセがあってな、電荷制御ってんだ」
ハウンド「身の回りにある空間や磁性体に存在する電子を高速スピンさせ、強力な磁場を形成するのさ」
黒子(自転車、商品カート、そして、ダーツも。これらには等しく磁性体である鉄やニッケルが使われている)
黒子(てっきり殺傷力に勝る金属具を選んでいるものと思っていたのが、失点でしたわね)
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 22:34:29.32 ID:ZLb7EMui0
ハウンド「そこまで理解したってことは、さっきのカラクリにも気づかれたかな」
黒子「電磁波の反射の有無で、身の回りにある物体の大まかな位置や形を感じ取れる、といったところですわよね?」
ハウンド「ふん、頭の回転は悪くねえみてえだな」
ハウンド「その通り。俺と対象との間に障害物がない限りは電磁波の乱れを把握し、即時対応できるのさ」
ハウンド「無論、てめえがどこに瞬間移動したかも例外じゃねえ」
黒子「先ほどからの手の動き、あれも念動力に見せかけるダミーですのね?」
ハウンド「初見だとこれに引っかかるやつが多いんだよ。気づいた時には大抵手遅れだがな」
黒子(ホント、お喋りな男ですの。ですけど、おかげで呼吸を整えるだけの時間は稼げましたわね)グ
黒子(偏りがあるとはいえ、お姉様と類似する能力者。すぐに看破できたはずですのに)
黒子(こちらから近寄るにはリスクが大きすぎる。ですけど、鉄矢での拘束は不可能)
黒子(残るは体内への転移ですけど、風紀委員のわたくしが重度の怪我を負わせるわけには)
黒子(黄泉川先生との約束もある。やられっぱなしは口惜しいですけども、いったん引くべきですわね)
黒子(まずは外へ――)
――シーン
黒子「…………え」
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 22:56:39.73 ID:ZLb7EMui0
黒子(な、なんで転移しないんですの!? 痛みも大分引いてますのに)
ハウンド「ひひ、余所見してる余裕があるのかぁ?」ダッ
黒子「……っ」タッタッ
ハウンド「追いかけっこをご所望か? こっちが何人いると思ってんだ?」
黒子(……やはり、入口を塞ぐように回り込んでる。……これではまるで)
黒子(いえ、間違いない。この男、こちらが移動できないことを知っていて)
スキルアウトE「へっへ、今度は逃がさねえよ」ダッ
黒子(……! 裏口も塞がれてますの!?)
黒子(……そうだ、地下駐車場からなら地上に)ダッ
スキルアウトD「待てやこらぁ!」ダッ
黒子(……く、息が……上がって)ハァハァ
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 23:02:17.41 ID:ZLb7EMui0
黒子「はっ、はっ、はっ……はぁっ、はぁっ」ヨロ
黒子(……あった、非常階段……っ)ハッハッ
スキルアウトF「旦那ー、地下の確認終わりましたぜ。――って」
黒子「……ま、まだいましたの?」ジリ
スキルアウトF「……なんだあ、このガキ」
ハウンド「ジャッジメントの回しモンだ。ちょうどいい、おまえも狩りに参加しろ」
スキルアウトF「……狩り? 捕まえればいいんすか?」
黒子(しょ、冗談じゃないですの! ただでさえ劣勢に立たされていますのに!)タンタンタン
ハウンド「おいおい、そっちは上り階段だぜ? はは、言われなくてもわかってるか」
ハウンド「頭の回転が早いってのも残酷だよなぁ。てめえはどうやったってここから出られねぇ」
ハウンド「俺たちの手でボロ雑巾みてぇにされるまではなァッ!!」
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 23:05:03.94 ID:ZLb7EMui0
ハウンド「F、おまえは他の連中と一緒に一階を完全封鎖しろ。非常階段も、業務用エレベーターも含めてだ」
スキルアウトF「あ、はい。了解っす」
ハウンド「DとEは俺と兎狩りだ。2階にも2、3人仲間がいるし、それで十分だろ」
スキルアウトD「ですけど、いくらガキっつっても相手はレベル4すよ? 旦那ならいざ知らず」
ハウンド「心配すんな、やつは今能力をまともに使えねえ。せいぜいレベル2ってとこだ」ツカツカ
スキルアウトE「へ、どういうことっすか?」
ハウンド「企業秘密だ。ともかく、今のやつの戦闘力は一般人と大差ねえんだよ」
スキルアウトD「まぁ、それがホントなら楽勝っすね」
スキルアウトE「世の中の厳しさってやつをたっぷり味合わせてやらなきゃな」ボキボキ
ハウンド「さぁて、店内放送のスイッチは……これだな」
――カチ
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 23:26:11.51 ID:ZLb7EMui0
ハウンドドッグ『テレポーターのお嬢ちゃん、聞いてるかぁ?』
黒子(…………この声っ)
ハウンド『俺は親切だからよ。おまえの処遇について教えといてやる』
ハウンド『まずは手足を拘束し、おまえの着ている服を残らず剥ぎ取る』
黒子「な、何をお馬鹿なことを」ブル
ハウンド『お次はお待ちかね、楽しい撮影会だ。ここにいる全員でひぃひぃよがらせてやるよ』
ハウンド『一生思い出に残る動画が撮れるぜ。親が見たら嬉し泣きしちまうくらいのなぁ』
ハウンド『次に俺の声を聴く時を楽しみに待ってな。――さぁ、ゲームスタートだ!』
――プツン
黒子「……あ、悪趣味にも、ほどがありますの」カチカチ
黒子(もう、なりふり構っていられませんわね。携帯で助けを呼ぶしか……)ゴソゴソ
黒子(……え、嘘。……ない……ない!)バッ
黒子(……まさか殴られた拍子に、落とした?)サァー
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/29(土) 23:43:08.69 ID:ZLb7EMui0
黒子(くっ、ともかくどこかで備え付けの電話を……サービスカウンターなら絶対にあるはず)キョロキョロ
――パチン
黒子「――! 店内照明が一斉に……」
黒子(ブレーカーを切ったんですのね。だとすると通話も)
黒子「っ!」バッ
スキルアウトG「おっと、気づいちまったか。忍び足ってな難しいな」バッ
黒子(もうっ、まだ増えますの!?)
スキルアウトG「痛い目に遭いたくなかったら、大人しく――あ?」グイッ
黒子「小娘だからって」パシッ
スキルアウトG「うぉっ――ぐあッ!」ズダン
黒子「甘く見ると怪我しますわよ」
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 08:57:32.52 ID:KVbZdlp10
――バチバチ
黒子(……電気!?)バッ
スキルアウトH「あ、俺バカみて。闇に乗じる意味がねえじゃん」カチ
スキルアウトG「このガキ、舐めた真似しやがって」スッ
黒子(……スタンガン。一度でも電流を浴びせられたら、アウトですわね)ジリ
黒子(つくづく、能力のありがたみを感じる日ですの)ダッ
スキルアウトH「待ちやがれ!」
――ヂヂ
黒子(……よかった、非常灯が作動したようですわね)タッタッタ
黒子(もう下手に接触することもできない。なんとか脱出する方法を考えないと)
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 09:31:38.67 ID:KVbZdlp10
スキルアウトG「くそっ、どこ行きやがった! 出てこい!」
黒子(何とか、やり過ごせましたわね)スッ
黒子(奥のエレベーターの階数表示は、一階のまま)チラ
黒子(ボタンを押してから到着を待つ時間くらいは稼げ……いえ)
黒子(連絡手段を断つ脳みそがあるんですから、一階は封鎖されていると考えるべき)
黒子(おそらくは非常口も……となると、災害用の救助袋で脱出するしか)
ハウンド「そこかぁ?」ヒュッ
黒子「……っ!? ――きゃっ!!」ビッ
――パラッ
ハウンド「っと、残念。掠っただけか」
黒子(ヘアリボンが。これ、お気にいりでしたのに)ギリ
黒子(って、そんな場合ではありませんわね。階段もエスカレーターもあちら側にあるんですのに)
黒子(……バックヤードなら従業員用の階段があるはず。下は無理だとしても上なら)ダッ
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 09:53:04.48 ID:KVbZdlp10
――階段
ハウンド「その逃げっぷりからすると、まだ望みは捨ててなさそうだなぁ」コツコツ
黒子「はっ、はっ、はぁっ」タッタッタッ
黒子(……し、しつこいですわね)ポタポタ
ハウンド「以前、上司が対能力者用の演算阻害器を開発したんだが、如何せん大きさが大きさでな」
黒子(大きい演算阻害器……もしかして、キャパシティダウン?)ピク
黒子(でも、確かあれはスキルアウトが所持していて)
黒子(……まさか、実戦用のデータを取るために払い下げたんですの?)
ハウンド「これじゃあ使い勝手が悪すぎるってんで、秘密裏に小型化の開発が続けられていたんだよ」ゴソッ
ハウンド「その試作品がこのウォークマンみたいな器械。レベルダウナーってんだ」
ハウンド「サイズダウンしたせいで威力こそ落ちたが、こうして隠し持っておけるってメリットはでけえよなぁ」
ハウンド「こいつを使用すればもちろん俺の演算能力も下がっちまうわけだが」
ハウンド「能力頼みのやつをボコるには最高のアイテムだ。お嬢ちゃんみたいにな」ニタァ
黒子「はぁ……はぁ……」フラ
黒子(……下がる。……ということは、まったく使えないわけでも)
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 10:17:03.77 ID:KVbZdlp10
黒子「はっ……はぁ、はぁ」
黒子「……この上が最上階、ですのね」
黒子(ふ、ふくらはぎが、攣りそうですの)ガクガク
黒子(敵の足音は、まだ遥か下。焦らずじっくりと、追い詰める気か)
黒子(――時間は無駄にできない。まずは今の能力限界を見極めないと)
――ヒュン
黒子(成功。やはり、レベル2程度なら問題なく使える)
黒子(とはいえ、低レベルで複雑な演算は無理ですわね。距離も、せいぜい6、7メートル)
――ヒュン――――カツーン
黒子(……壁の中には、転移不可能)
黒子(体内への直接転移ができれば勝負になりましたのに、正直、八方塞がりですわね)グッタリ
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 10:43:36.43 ID:KVbZdlp10
黒子(耳鳴りが、ひどいですわね。疲労によるものか、男の持つ器械のせいなのか)イーン
黒子(……と、いけない。酸欠で、頭がぼーっとして)クラ
黒子(しっかり気を持たなくては。気を失いでもしたら一巻の終わりですのに)ブンブン
黒子(あの男が磁力を扱える以上、わたくしの鉄矢も含めて金属具は通用しない)
黒子(今の能力レベルで無理なく使えそうなのは重量が軽い物に限られる)
黒子(最上階はレストラン。でしたら、ガラスや陶器の食器類くらいは)
黒子(小麦粉で粉じん爆発という禁じ手もないことはないですけど)
黒子(前のように解体中のビルというわけではありませんし)
黒子(緊急避難とはいえ、会社所有の不動産を意図的に損壊させようものなら確実に査問委員会行きですわね)
黒子(どこかに隠れて味方が来るまでやり過ごせば)
黒子(……駄目。磁波の反射で物体を捉えるということは、隠れている場所もじきにバレる)
黒子(能力を封じられ、退路も連絡手段もすべて断たれた状態で、大勢の男を相手に)
黒子「……ふ、ふふふ、とことん絶望的ですのね。……このままじゃわたくし、本当に」ギュウ
――コツ
黒子(……ヒッ)ゾク
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 10:54:20.59 ID:KVbZdlp10
――コツ、コツ
黒子「……もうはっきり聞こえる。時間が、ない」ガクガク
黒子(ど、どうして……足の震えが、止まらないんですの)
黒子(こんなんじゃ逃げることすら。……信じたくない、能力を封じられたわたくしは)
黒子(わたくしは、こんなにも弱かったんですの?)
黒子(ジャッジメントですのに、犯罪者を律する立場にいますのに)
黒子(……ダメ……怖い。……どうしようもなく、怖いんですの。……お姉様)ブルブル
黒子(……上条、さん。ごめんなさい、黒子は、黒子はもう)ジワ
上条『怪我だけはすんなよ、絶対に』
黒子「――――」
黒子「……ですの」
黒子「そんな結末、絶対に嫌ですの」グッ
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:04:59.35 ID:KVbZdlp10
黒子(何を、わたくしは弱気になってるんですの)パン
黒子(あんなやつらの好き勝手にさせるなんて死んでも御免ですの!)
黒子(今までの苦難だって乗り越えてきたんですもの。やってやれないはずがないですの)
黒子「……すぅ……はぁ……すぅ」
黒子「んっ」グッ
黒子「まだ体は動く。ならば、まだ戦える」ダッ
黒子(自信がないなら取り戻すまで、不安があるなら吹き飛ばすまで!)
黒子(他に手立てがなくば、躊躇わずフロア毎でも吹き飛ばしてしまえばいい)
黒子(たとえジャッジメントを辞めることになったとしても)
黒子(お姉様や上条さんに無様な姿を晒すよりは、百万倍マシなのですから)
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:19:25.49 ID:KVbZdlp10
黒子(……開き直った途端、頭が妙に冴えてきましたの)
黒子(小麦粉による粉塵爆発は、あくまで最終手段にするべきですわね)ガサ
黒子(昨今のTV番組や小説などで濫用されていますし、相手が知ってる可能性も大いにある)
黒子(……その前に、ひとつでも試せることがないか)
黒子(そう、例えば、上条さんがこの状況に陥ったとしたらどう動くのか)
黒子(相手は複数。上条さんの右腕は必然的に後の先。決定的な攻撃手段には成りえない)
黒子(決め手がない以上は周りの物を最大限活用しようとするはず)
黒子(ナイフやフォークは金属だから敵には通用しない。客椅子、テーブル、陶器、ガラス)
黒子(体力のある上条さんなら大立ち回りも可能でしょうけど、わたくしは上条さんではない)
黒子(別の切り口で考えるべきですの。非力であっても問題ない方策を)
黒子(ガス、コンセント。貯蔵庫には食べ物も…………、はっ)
黒子(そうですの! レストランなら絶対にあれが!)キョロキョロ
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:27:05.79 ID:KVbZdlp10
――ガサゴソガサゴソ
黒子(……よし、これだけあれば)
ハウンド「見ぃーつけた」
黒子「……はっ」クル
ハウンド「最上階は展望レストラン、か。終わりとしてはなかなかだな」
黒子(くっ、ひとまず非常口に……)ダンッ
ハウンド「おいおい、テーブルを足蹴にするたぁ行儀が悪いなぁ。下着が見えちまうぜ」ヘラヘラ
黒子(……くっ///)バッ
――ギィ
黒子(……、)ピタ
スキルアウトE「残念だったな。逃げ道は全部塞いだぜ」ノソ
黒子(……ここでは位置が悪いですのっ)クルッ
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:33:50.31 ID:KVbZdlp10
ハウンド「おいおい、逃げ場なんかどこにもないって言ってるだろ?」
黒子「はっ、はっ」タッタッ
スキルアウトD「四対一だ。もちろん下にも仲間がわんさかいる」
黒子「はぁ、はぁ、はぁ」タッタッ
スキルアウトF「抵抗すりゃするだけ、痛い目に遭うぜ」ザッ
スキルアウトE「へっへへ、ジャッジメントが主演のAVか。いい金になりそうだな」ザッ
黒子「……まったく、反吐が出る連中、ですわね」ゼェゼェ
ハウンド「行き止まりだ。もうどこにも逃げ場はねえぞ?」ニタ
ハウンド「いい加減追いかけっこも飽きてきたからな。お待ちかね、お仕置きタイムといこうじゃないか」
ハウンド「学園都市にも掲示板がわんさかあるからな」
ハウンド「そこに動画のアドレスをいっぱい張り付けてやるよ」
ハウンド「おまえの家族や、友達や、彼氏なんかがちゃんと見れるようになぁ。憎い心遣いだろぉ?」
ハウンド「ヒーロー気取りのジャッジメントが、一躍電子ポルノスターってわけだ!」
黒子「……はぁ……はぁ」
ハウンド「どうした? もっと獲物らしく怯えろよ? 散々追い立てられて思考がマヒしちまったか?」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:37:51.98 ID:KVbZdlp10
黒子(道幅が広いとはいえ、四人並べば完全な袋小路……ですけど)
黒子(ここなら、不意打ちの心配もない。そして、全員が視界に収まる)
スキルアウトF「近くで見っと上玉っすね。もうちょい発育がよけりゃ文句なしなんすけど」
黒子「」カチン
ハウンド「ネット上にはそういう趣味のやつだって多いだろ。口のきき方さえ教育してやりゃ問題ねえ」
スキルアウトE「そうそう、ジャッジメントに恨みを持ってるやつだって大勢いるしな」
黒子「……これが、最終通告ですの」
ハウンド「あ?」
黒子「大人しく武器を捨て、投降しなさい。さもないと、身の安全の保障は、出来かねますわよ」
スキルアウトD「……ぷっ」
スキルアウトE「くっくっく……だぁっはっはっはっは!」
ハウンド「この期に及んでそんな台詞が出てくるたぁな。ある意味ソンケーすんわ」
ハウンド「あるいは、恐怖で頭がイカれちまったか? レベルダウナーのこと忘れたわけじゃねえよな?」パシ
黒子「もちろん、覚えていますの。それを使ったままでは、あなたがろくに能力を使えないことも含めて」
ハウンド「……あ?」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:41:32.38 ID:KVbZdlp10
黒子「一人では返り討ちにされる不安があったからこそ、ここにお仲間を連れてきたのでしょう」
ハウンド「」ピク
黒子「んまぁ、もっとも? 人数を揃えないと女の子一人襲えないチキン野郎なんて、こちらから願い下げですけど」
ハウンド「……どうやら、自分の立場ってもんをよくよくわからせる必要があるみてぇだな」ピキ
黒子「そのお言葉――」
黒子「そっくりそのままお返ししますわよ」ザッ
スキルアウトF「まだ抵抗する気か? レベル2程度の能力で何ができるってんだ」
スキルアウトD「まぁまぁ、余興としては悪くねえさ。少し跳ねっ返りくらいの方が人気も出るだろ」
ハウンド「もたもたしてると助けがきちまうとも限らねえ。さっさと撮影会に入るぞ」
黒子「……交渉決裂、ですわね」
ハウンド「顔は殴るなよ。商品価値が下がっちまうからな」
スキルアウトD「わかってますって」ニタニタ
スキルアウトE「へへ、その生意気な面がどんな泣き顔に歪むのかねぇ」ジュルリ
黒子「……残念ですけど、あなたたちを喜ばせるつもりは毛筋ほどもありませんの」パシッ
ハウンド(……なんだ? 何を握ってやがる?)
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:48:18.36 ID:KVbZdlp10
黒子「金属は内部で電子が自由に動き回れるからこそ良質な磁性体となりうる」
黒子「逆に言えば、合金やそれ以外の物に関して、あなたの力は及びませんの」
ハウンド「それがどうした? 他の物を武器にして戦おうってか?」
黒子「武器、ね。まぁ、それも考えましたけれど、何分レベルダウンしている身ですし」
黒子「どう足掻こうと、そちらの優位を覆すには至らないでしょうね」
スキルアウトD「ならどうする? まさか、ガチンコで俺たちとやり合おうってか?」
スキルアウトE「ははは、いいぜ? たっぷりと教えてやるよ。寝技をな」
黒子「……ところで、……これがなんだかおわかりかしら?」スッ
スキルアウトF「んだぁ、そりゃ? スチール缶か?」
黒子「わたくしの瞬間移動は、手に触れたものの位置情報を演算によって特定」パカッ
黒子「同じく演算によって詳らかにした任意の場所に送り込むもの」サラサラ
黒子「たとえば、こんな風に」ギュッ
――ヒュン
ハウンド「――――ぎっ!?!?」ガクン
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 11:51:46.21 ID:KVbZdlp10
ハウンド「が……はっ……あがぁっ!」ドッ
スキルアウトE「ちょ、いきなりどうしたんすか!?」
黒子「あら、思った以上に効果覿面ですわね」
ハウンド「かひゅー……ひゅーっ……」ガクガク
スキルアウトD「か、過呼吸? このクソガキ、いったいなにしやがっ」
――ヒュン
スキルアウトD「い゛っ――ぐがああああああっっっ!!」ビクン
スキルアウトF「なっ、Dっ!?」
スキルアウトD「目が! ……目がぁぁぁあああ!」ジタバタ
スキルアウトE「な、なにがどうなってっ! てめえ、いったいなにを!」
スキルアウトE(……っ、あの缶のせい、なのか?)
黒子「粉末わさびですの。あなた方のような輩には一生縁がないでしょうけど」
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:01:53.92 ID:KVbZdlp10
スキルアウトE「わ、わさびだぁ?」
黒子「鈍いですわねぇ。あなた方にも経験がおありでしょう? 目鼻に抜けるツンとした辛さを」
スキルアウトE「……っ!」
黒子「ご覧の通り粉末状ですから非常に軽い。レベルが低くても転移に支障はない」
黒子「最大の難関は体内に直接入れられるか、ということだったのですが」
黒子「眼窩、口腔、鼻腔、喉と、少ないながら空間は存在する。しかも、自らの意志で狭めるのは不可能」
スキルアウトF「……こ、このクソガキが」
黒子「そもそも、なぜわさびが辛いのかご存知かしら?」
黒子「周りに生息している植物の成長を阻害し、自身の成長に必要な養分を確保するためですの」
黒子「つまり、自然界ではれっきとした毒ですのよ」ニィ
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:09:35.20 ID:KVbZdlp10
黒子「……ふむ」
スキルアウトD「……あ……あっ」ガクガク
スキルアウトE「……い……が」ピクピク
スキルアウトF「…………う」グッタリ
黒子「先ほどは殴られた動揺もあってか、まったく勝てる気がしませんでしたけれど」
黒子「たとえレベル2であろうと、戦い方次第では何とでもなるものですわねぇ」
ハウンド「くっ……この、クソガキが……」ヨロ
黒子「うるさいですの」ピト
ハウンド「~~~~~ッッ!!」ビクン
黒子「やっぱり、別にわさびでなくともよさそうですわね」
黒子「おろし生姜でも、山椒でも、胡椒、だと少し弱いかしら。七味唐辛子なら」
ハウンド「あっ、あっ、あぁっ!」ガクガク
黒子「いくら体力に自信を持っていようと、いかに強靭な筋肉に覆われていようと」
黒子「人体でももっとも敏感な部分、感覚器の粘膜に刺激物を入れられては」
黒子「さすがにひとたまりもないようですわね」フン
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:12:49.28 ID:KVbZdlp10
ハウンド「……てめぇ……ぶっ殺してや――がぁっ!?」ガクン
黒子「どうぞ、気が済むまで刃向かってくださいな? まだまだ在庫はありますわよ」
黒子「ほら、ほらっ、ほらぁ!」チョンチョン
――シュン、シュン、シュン
ハウンド「か……はっ……いぎっ! あ゛っあ゛っ、あ゛っ!!」グラグラ
黒子「うふふふ、へんてこなダンスですわ、ねっ!」ゲシ
ハウンド「ぐはっ!」ドッ
ハウンド「こ、こんの、あがっ、よくも、俺の顔を、足蹴にしやがっ――あぎぃっ!」
黒子「ふふふ、見下していた相手に手玉に取られる気分はいかがですの?」
ハウンド「ち、畜生! は、はだがっ……いぎがぁっ!」ヨロヨロ
――ガッ――ドシャ
ハウンド「ぐあっ――ぐっ……はっ」
黒子「そんなに涙を溜めていてはろくに前が見えないでしょう。やみくもに歩き回ると怪我しますわよ?」クス
黒子「――さて、忘れないうちにその厄介な機械を、没収しておきましょうか」スッ
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:31:40.90 ID:KVbZdlp10
――パチン
黒子「ふぅ、これでやっと、能力も元通りですわね」コキコキ
ハウンド「……が……あ゛っ」ピクピク
黒子「もっともそちらは、とても演算できる状態ではなさそうですけれど」
ハウンド「ちょ、調子こくな、よ。下には、まだ、わんさか仲、間が」
――ブツ
???『旦那っ、助けっ――ぎゃああああああーーーーーッッッ!!!』
黒子「」ビクッ
???『黒子、あんた今どこいんの!? 無事なんでしょうね!』
ハウンド「……な、女の声!?」
黒子「この声……! お姉様ッ!?」
美琴『事情は初春さんと下の連中から聞いた。すぐに見つけ出すから、それまで持ちこたえなさい!』プツン
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:43:28.66 ID:KVbZdlp10
ハウンド「……い、いったいなにが、どうなって」
黒子「……わたくしがガードマンの方を逃がしたこと、お忘れですの?」
ハウンド「……、」
黒子「おそらくあの方が、本部に緊急連絡を入れてくだすったんですのね」
黒子「そして、同じタイミングで連絡がつかなくなっていたことで」
黒子「初春、わたくしのパートナーがいち早く窮地を察してくれた」
黒子「余裕のないジャッジメントとは違うルートで、最強の援軍を寄越してくれた」
黒子「常盤台が誇るレベル5、超電磁砲(レールガン)を」
ハウンド「……ば、バカな」
黒子「皮肉なことに、あなたのゲスな感性に救われたわけですわね」
黒子「もう、万にひとつも勝ち目はありませんわよ」
黒子(嗚呼、お姉様。わたくしを救うために駆けつけてくれるなんて、黒子は、黒子は)ウットリ
黒子(って、酔ってる場合じゃありませんわね。早く合流しないと、建物被害がひどいことに)タラ
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 12:53:11.07 ID:KVbZdlp10
黒子「」チラ
ハウンド「…………ひっ」
黒子「……ダメですの。やっぱり、あなただけは、このまま見逃す気になれませんわね」
ハウンド「……な゛、何をする気だ」ズザ
黒子「さっきは、ずいぶんと息巻いておりましたわね?」
黒子「裸にひん剥くだの、恥ずかしい動画を撮ってやるだの、それをネットにバラ撒いてやるだの」
黒子「んまぁ? あそこまでの脅し文句を並べ立てたのですから」コツ
黒子「穏やかな解決方法が望めないことくらい、わかっていらっしゃいますわよね」コツ
ハウンド「……あ゛……く、来るな! 俺に触るな!」ズル
黒子「そうおっしゃらずに、気分転換に空の旅にでもいってらっしゃいな。――ただし」ポン
ハウンド「や、やめっ」
――ヒュン
黒子「片道切符(おひとり)でね」
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 13:04:45.87 ID:KVbZdlp10
――ピーポーピーポー
ハウンド「…………」ジョロロロロ
黄泉川「野次馬の目の前で盛大に失禁か。これじゃあ二度と学園都市で大手を振って歩けないじゃん」
黒子「わざわざ植え込みのあるところを選んでやっただけ、ありがたいと思って欲しいですの」パンパン
黒子(まったく、あんな小者に怯えてたかと思うと腸が煮えくり返りますの)
美琴「はぁ、初春さんが受話器の向こうで焦ってるからやばいやばいと思ってきてみれば」
美琴「ちゃっかりリーダー片づけちゃってるんだから、心配して損しちゃったわよ」
黒子「ああん、そんなことはないですの。お姉様が来てくれて、黒子は、黒子はぁ」クネクネ
美琴「ちょっ、こらっ、暑苦しいから引っ付くなっての――」
黒子「あうっ」ドスン
美琴「ご、ごめん! ……てか、あんた、しがみつく力も残ってないの?」
黒子「い、いえ、めっそうもない」ヨロ
美琴「……ったく、無茶しすぎなのよ、あんたは。ほら、手貸しなさい」スッ
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 13:27:03.63 ID:KVbZdlp10
黄泉川「で、それがあんたの回収したっていう?」チラ
黒子「ええ、演算妨害装置ですの。あの男はレベルダウナーって呼んでいましたけれど」ス
黄泉川「まさか、こんな隠し玉があったなんてね。そんな相手によく勝てたじゃんよ」マジマジ
黒子「正直に申告しますと、相手が油断していなかったらまずこちらがやられていましたの」
美琴「あんたの能力は強力だけど、大勢を相手にするのには向かない。引き際の判断ミスよ」ムス
黄泉川「確かに、負傷者を一人でも確保した時点で一度こっちと合流するべきだったじゃん」ムス
黒子「う……」
美琴「いい? 今回は運が良かっただけ。あんた自身の安全が担保できないなら、ジャッジメントなんてやめなさい」
黒子「も、申し開きのしようがありませんの」シュン
美琴「ま、お説教はこれくらいにして――これが量産化でもされたら能力者にとって恐るべき脅威ですね」
黄泉川「むしろ、アンチスキルにこそ欲しい装備じゃん」
美琴「いずれ実戦配備されるんじゃないですか? 解析チームに引き渡せば構造も自ずとわかってくるでしょうし」
黄泉川「まぁ、そうなることを祈るじゃんよ」
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 13:36:32.87 ID:KVbZdlp10
美琴「んじゃ、寮長に頼まれた買い物があるから」
黒子「はい、お姉様。本当にありがとうございます」ペコ
美琴「気にしないで。それより、早く初春さんに連絡してあげなさいよ」タッタッ
黒子「はい。――――さて、わたくしも」
黄泉川「怪我の治療はしていかないのか?」
黒子「別に怪我というほどのものでは。お腹に一発もらっただけですし」
黄泉川「だったらなおさらじゃん。女の子にとっちゃ軽視できないじゃんよ」
黒子「で、ですけど、時間が押してますし」
黄泉川「事情はわかってるけどさ。あの少年がここにいたらなんて言うかな?」
黒子「う゛……」
黄泉川「だろ? 検査だけでも受けときなって。こっそり順番早めるよう頼んでやっから」
黒子「……はぁ、そこまで仰るのでしたら」トボトボ
黄泉川(常盤台の白井黒子、か。能力もさることながら状況への適応と機転)
黄泉川(ふふ、本当、先が楽しみじゃんよ)ニヤ
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 15:37:53.74 ID:KVbZdlp10
――ヒュン
黒子「ううっ、すっかり遅くなってしまいましたの」パ
黒子(疲労のせいか、跳べる距離もいつもの半分がいいところですわね)
黒子(折角見つけてくださった携帯も壊れているわ、初春には説教されるわ、散々ですの)
黒子(っと、トラック発見。ちょっと屋根をお借りしましょう)ヒュン
――スタッ
黒子「……もう、日も暮れかけてますわね」
黒子(……上条さん。こんなに待たされて、怒っているでしょうね)
黒子(すぐ戻ってくるなんて言わなければ……自分の軽率さが恨めしい)
黒子(……それも、これも全部)ギリギリ
黒子(馬鹿騒ぎを起こしたあの連中のせいですの!)ムキー
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 15:41:53.45 ID:KVbZdlp10
――パッ
黒子「……はっ、はっ、はぁっ」ヨロ
黒子(や、やっと、着いた)ング
黒子「……か、上条さんは。……大分薄暗いですわね」キョロキョロ
観覧車『18:27』
黒子(えっ、十八時半!?)
黒子(み、見込みが甘すぎましたの。まさか、ここまで)
黒子(……さすがに、帰られたかしら)
女「やだぁ、なにあの子ー。あんなに汗だくでみっともなーい」
男「ぎゃはは、おまえあんまりひでーこと言うなよ」
黒子(……ぐ。こっちの気も知らないで、勝手なことをっ)キッ
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 15:51:28.27 ID:KVbZdlp10
男「んだぁっ? なに一丁前にガンつけてんだ?」グッ
黒子「……付き合ってられませんの」ボソ
黒子「おい、聞いてんのか? こっち向けよ、てめえ!」ガシ
黒子「……っ」ユラ
――ドシャ
黒子「……、やりましたわね」
男「はあぁ? てめえが勝手に転んだんだろうが」
女「ちょっとちょっと、ダーリン。ガキ相手にマジになんないでよ」
男「マジになんてなってねえよ。身の程知らずにちっと教育してやるだけだ」
女「そりゃあ、わたしだってムカつくけどさ」チラッ
警備員「……ん?」チラッ
女「……監視カメラや警備の目もあるしさ。こんなとこで騒ぎ起こしたらヤバイって」ボソ
男「……ちっ、それもそうだな」ボソ
男「はっ、命拾いしたな」クルッ
女「せいぜい、わたしの慈悲深さに感謝することね」スタスタ
黒子「…………」ムク
黒子(…………反論する気力も、わかないですの)フラ
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:04:51.46 ID:KVbZdlp10
放送『お客様の呼び出しを申し上げます。第七学区からお越しの、上条、当麻様。お連れ様が――」
子供「パパー、すっごく楽しかったね」
パパ「はは、そうか。またいつかこような」
黒子(…………やはり、帰られたみたいですわね)ボー
係員「すみません。放送はかけたんですけど、19時で閉園なので」
黒子「はい、お手間を取らせて申し訳ありませんでした」ペコ
係員「あ、いえいえ。――あれ、まだ時間は少し残って」
黒子「大丈夫です、そろそろ帰りますので」ニコ
黒子(……嫌われましたかしら)
黒子(いえ、やめましょう。疲れた頭で考えても、ネガティブの連鎖に陥るだけですの)
黒子(寮に戻ったら、すぐに謝罪の電話を)フラ
黒子(――とと、足が、もつれ)カクン
――ガシ
黒子「あ……し、失礼しましたのっ。支えてくださって――」トン
上条「よっ、お疲れさん」ニッ
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:14:31.72 ID:KVbZdlp10
黒子「……上条、さん?」ポケー
上条「おう、上条さんですよ? なんですか? 黒子さんの目には他の誰かに見えますか?」
黒子「こ、こんな時間まで待っていてくださったんですの?」
上条「向かいの本屋で時間潰してたんだ。放送入れてくれて助かったぜ」
上条「何度か携帯にかけたんだけど通じなかったから、マジで心配したんだぞ?」
黒子「す、すみません。交戦中に携帯が壊れてしまいまして」アセアセ
上条「いや、何事もなければいいんだ。体の方は平気か?」
黒子「少し疲れましたけど、見ての通りですの。掠り傷ひとつ――」
上条「ここ、膝、擦りむけてるぞ?」
黒子「あ、いえ、これはっ、ついさっき転んでしまいまして」アタフタ
上条「はは、そっか。……無事でよかった」ニコッ
黒子「」ドキ
黒子(も、もう、この人は。なんて嬉しそうな顔をしますのよ///)プイ
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:23:04.46 ID:KVbZdlp10
上条「そのなりからすっと大仕事だったみたいだな――ほい」ポイ
黒子「とっ」パシ
黒子(……缶ジュース)
上条「立ちっぱってのもあれだしベンチに座って飲もうぜ。閉園までまだ少し時間あるしな」
黒子(……時間、……っ)
黒子「なにか他に言うことは、ありませんの?」
上条「……ん? 他にって?」キョトン
黒子「で、ですから、その、わたくしを責めなくてよろしいんですの?」
上条「責める? おまえを? ……俺がか? どうして」
黒子「そ、そりゃそうですわよ。すぐ戻るだなんて適当なことを言った挙句、こんなに待たせてしまって」
上条「…………」ジー
黒子「ですから、その、本当に」
上条「先に言っとくけど、謝る必要はないからな」
黒子「……え」
上条「だってそうだろ? 黒子自身が何か悪いことをしたってわけじゃねえんだし」
上条「学園の平和を守るために頑張ったおまえを、いったい誰が責められるんだ?」
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:30:42.82 ID:KVbZdlp10
黒子「いえ、で、ですけどっ。あなたをお待たせしてしまったことに変わりは」
上条「だーかーらっ、俺はまったく気にしてねえっての」
黒子「わ、わたくしが気にしますのっ」
上条「ったく、おまえの強情さも筋金入りだな」ポリ
黒子「よ、余計なお世話ですのっ」
上条「つまりだな。あんだけ身嗜みに小うるさいおまえが、着衣の乱れも髪の乱れも無視してだな」
黒子「えっ……あっ」ババッ
黒子(こ、これはわたくしとしたことが)サッサッ
上条「そんなに汗だくになって、息絶え絶えになってまでこの場に駆け付けてくれたんだぜ?」
黒子「それは、まぁ、そうなんですけれど」
上条「今のおまえの姿は、俺との約束を懸命に果たそうとしてくれた何よりの証だろ」
黒子「……そ、そうとも、言えますかしらね」ボソボソ
上条「それを目の当たりにして、俺はこれ以上なにも望むことはねえって思った。それじゃダメなのか?」
黒子「……ダ、ダメってことは、……ないのですけど」モジモジ
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:36:47.52 ID:KVbZdlp10
上条「っつうことでさ、ここは先輩の顔を立ててくれよな」
上条「ここまで言って謝られたんじゃあ、格好つかねえだろ?」
黒子(……、)ジワ
黒子(……っ)ゴシゴシ
黒子「……え」
上条「うん?」
黒子「ええかっこしいにも、ほどがありますわね」
上条「……バーカ、お互い様だろ」スッ
黒子「…………」ギュ
黒子(……危うく、泣きついてしまうところでしたの)フー
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:40:48.59 ID:KVbZdlp10
上条「あれ、リボン、解いちまうのか?」
黒子「ええ。片方だけつけていても見栄えが悪いですし」シュルン
――フワッ
上条「……へぇ」
黒子「……? なんですの、人の顔をジロジロ見て」
上条「いやぁ、おろした髪も新鮮ってか、似合うなって思ってさ」
黒子「……いっ、いつもその調子で女性を口説いてるんですの?」ツン
上条「率直な感想だよ」プシュッ
黒子「本当かしら。……む、むむ」カリ
上条「ん、どうかしたのか? ――あぁ」
黒子(く、ぬ、指に力が――あ)ヒョイ
上条「よっと――ほら、開いたぞ」スッ
黒子「べ、別に一人でも開けれましたのに」ムンズ
上条「疲れてるときくらい頼ってくれたっていいだろ?」グビッ
黒子(……それができたら、苦労しませんの)
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:42:03.09 ID:KVbZdlp10
放送『本日はご来場いただき、まことにありがとうございます。当園は間もなく――』
上条「閉園まであと15分ってところか」
黒子「……そうですわね」
上条「あ、そうそう、忘れるところだった」
黒子「……?」
上条「ほら、さっきのイベントの景品さ。ペアグラスだったんだ」カサカサ
黒子「あら、可愛らしい。小洒落たデザインですわね」
上条「あそこまで残れたのはおまえのおかげだから、持って帰ってくれよ」
黒子「え、でも……」
上条「一つずつってのも考えたけど、それじゃあ寂しいしさ」
黒子「……そうですわね。今日という日の記念には、なるかも」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:50:44.25 ID:KVbZdlp10
上条「なぁ、黒子」
黒子「…………」ウトウト
上条「黒子? 寝ちまったのか?」
黒子「……あ、いえ、なんですの?」
上条「俺はここまでバスで来たけど、おまえはどうすんだ? 能力で帰るのか?」
黒子「いえ、わたくしもバスで帰りますの。これ以上能力を使ったら、当分動けなくなりそうですし」
黒子(なんて、今の状態では、寮に辿り着けるかも怪しいですわね)
上条「…………間に合うか」ボソ
黒子「……はい?」
上条「……黒子、悪ぃけど少しの間だけ」
黒子「」ドキン
黒子(ま、まさか、目を瞑ってくれ、とか? ――そ、そんな、ここ心の準備が///)
上条「トイレ行ってきてもいいか?」
黒子「」ズル
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:53:38.19 ID:KVbZdlp10
黒子「……お、お手洗いですの?」
上条「ホントすまん。閉園までにはちゃんと戻るから、ここで待っててくれ」ダッ
黒子「あ、ちょっと!」
黒子「……もう、デリカシーの欠片もないんですから」
――カァ、カァ
黒子(……怒涛の一日、でしたわねぇ)
黒子(でも、まぁ、終わりよければ、という言葉も、ありますわよね)ウトウト
黒子(……次回は、もう少し落ち着いて……過ごしたい……ですの……)ズル
黒子(…………――――――)
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 16:59:28.05 ID:KVbZdlp10
黒子「……ん……くぅ」
上条「おい、……おい黒子。次で降りるぞ」ユサユサ
黒子「……むにゃ、あとちょっとだけ、ですの~」ギュウ
上条「ですの~、じゃなくてさ。ちょ、そんなにしがみついたら」
上条(うぅ、こうしていたいのは、やまやまだけど)ギュウ
上条(こんな状態で目覚めようものなら殺されるのが目に見えてっし――仕方ねえ)グイ
黒子「……ん、……んんっ」スポンッ
上条「ふぅ、脱出成功」
上条「黒子、頼むから起きてくれよ。門限あるんだろ、おまえんとこ」
放送『――次は常盤台中学、常盤台中学』
黒子「……常盤、台」パチ
上条「やっと起きたか」ホッ
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:06:49.67 ID:KVbZdlp10
黒子「……んん、なんで上条さんがわたくしの部屋に」ゴシゴシ
上条「いたら大問題だってぇの。まだ寝ぼけてるんですか?」
黒子「……なんで窓の外が、動いてますの~?」ホケー
上条「だから違うって、動いてんのは俺たちの方」
黒子「……あら、そうでしたのねぇ」トロン
上条「おま、ぜってぇ理解してねえだろ。ほらほら、しゃんとしろって」ポンポン
黒子(……ふぁふぅ、もう20時を回っていたんですのね)
黒子(って、ここは、バスの中? いつの間に……)キョロ
上条「今度こそ起きたか?」
黒子「……あれ、わたくしたち、遊園地にいたはずでは」
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:15:37.66 ID:KVbZdlp10
上条「手洗いから戻ってきたら、おまえ完全に寝ちまってたんだよ」
黒子「あら、そうでしたの。……寝て」
黒子「い、今、何と仰いましたのっ?」ガバッ
上条「だから、ちょっとやそっとじゃ起きそうになかったから――――なに顔抑えてんだ?」
黒子「な、なんてことですの。淑女たるわたくしが、あろうことか無防備な寝顔を他人様に晒すなどっ!」
黒子(はっ! ということは、当然上条さんにも見られ……っ、く、口元によだれがっ!)グイ
黒子「だっ、だいたいどうやってバスに」
上条「はぁ? そんなのおんぶしてに決まって――いだっ、ちょおっ、いきなりなにすんだよっ!」
黒子「きょ、きょきょ、許可もなくよくもそのようなっ!///」ポカポカ
上条「そ、そんなに怒ることじゃっ、あだぁっ! やめろって!」
黒子「そ、それをわかっていないから怒ってるんですのッ!」ポカポカ
黒子(あ、汗まみれのままおんぶされるなんてえええぇッッ!!///)ウガー
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:19:48.31 ID:KVbZdlp10
上条「しょーがないだろっ! おまえはくーくー気持ちよさげに寝てるし閉園まで間もなかったしっ!」
黒子「でっ、でしたらなんでその場で起こしてくれなかったんですのっ!」
???「あのー、もしもし?」
上条「だからぁっ、疲れてるところを無理に起こすのも悪いと思ったって言ってるだろっ!」
黒子「だとしてもっ、自分の判断だけで先走った言い訳にはなりませんのっ!」
???「ちょっと、お客さーん」
黒子「外野が口を挟まないでくださいましっ! これはわたくしたち二人の問題――」
運転手「他の乗客のご迷惑ですんで、もうすこし声のトーン、落としてもらえませんかねぇ」
上条「……え……あ」チラ
――クスクスクスクス
黒子「…………ぅぁ///」プシュー
上条「か、勘弁してくれ///」
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:23:40.07 ID:KVbZdlp10
――ブォォォォ
上条「…………」チラ
黒子「…………」チラ
上条&黒子「……はあぁ」
黒子「運転手さん、苦笑いしてましたわね」
上条「途中で放り出されなかっただけマシだ。しばらくこの路線のバスは使えねえな」
黒子「あ、あなたはまだマシじゃありませんの。わたくしなどこちらのバスは日常的に利用するんですのよ?」
黒子(よもや、公共の乗り物であのような醜態を……)ドヨーン
黒子(ジャッジメントのどなたかに知れたら、始末書モノですわね)ヒク
黒子(休日だったのが不幸中の幸いでしたの。もし常盤台の制服を着ていたらと思うと)ゾゾゾ
上条「先生しっつもーんでーす。自業自得って言葉の意味を教えてくださーい」
黒子「んなっ、もとはといえばあなたがっ――な、なんですの、その鬱陶しい人差し指は」
上条「いやぁ別に? ただ上条さんはぁ、もたもたしてっとどっかの誰かさんがー」
上条「あそこの怖ーい寮長さんに大目玉食らっちゃうんじゃないかなー、と気が気じゃないわけですよ」クイックイッ
黒子(ぐ……ぐぬぬ)プルプル
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:30:53.62 ID:KVbZdlp10
上条「ほーらー、どうしました? あと十分もないんじゃないですか?」
黒子「……っ、この決着は後日改めてつけさせていただきますのっ!」クルッ
上条「決着ぅ? 八つ当たりの間違いだろ」ヘラ
黒子「~~~~っ」ムッカー
黒子「……その減らず口、いずれ完膚なきまでに叩き潰して差し上げますわ」ギロ
上条「おおこわ。んじゃま、胃袋に下剤とか送り込まれないうちに退散させてもらいますか」クルッ
黒子「だ、誰がそんな鬼畜な真似をっ――って」クワッ
上条『今日はゆっくりと休めよ。んじゃな』フリフリ
黒子「も、もうあんなところまで……ほんと逃げ足の速い」フリ
黒子(って、なに手を振ってますのよ!)ダンッ
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:36:00.14 ID:KVbZdlp10
――常盤台女子寮
ドア「バタン」
美琴「あっ、黒子。遅くまでご苦労様……って」
美琴「ど、どしたのその阿修羅顔。なんか気に食わないことでもあった?」
黒子「いーえ、なんでも、ないですの」ヒクッヒクッ
黒子(まったくもぅ、さっきまでの心地よい疲労感が全部台無しじゃありませんの!)ムカムカ
黒子(……少し寝たからか、頭はすっきりしましたけど)キィ
黒子(さすがに体の気怠さまでは、抜けきっていませんわね)ズウン
黒子(今日はささっと、シャワーだけで済ませてしまいましょう)カチャカチャ
――パサ
美琴「うん?」チラ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:39:58.20 ID:KVbZdlp10
黒子(それにしても、下剤。なるほど、外道な発想に関してはわたくしの及ぶところではないですの)
黒子(刃物みたく直接的に外傷を与えるわけでもなし、武装犯に対しては意外に効果的かも)
黒子(仲間がより安全に立ち回れる起点にもなりますし)
黒子(一度提案してみるのも一興――いえ、後始末の問題がありますわね)タラ
美琴「ねぇ、黒子ってば、聞いてる?」
黒子「あ、すみませんお姉様。少し考え事を」
美琴「別に謝んなくてもいいわよ。それよか、あんたの足元になんか落ちたわよ」
黒子「足元?」
黒子(……包装紙、ですわね)ヒョイ
黒子(あれ? ですけど、こんなものを買った覚えは……)ウーン
黒子(ペアグラス、は、机の上にありますわね)
黒子(……いったいなにが入って)カサッ
黒子「……っ、こ、これっ!?」
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 17:42:42.67 ID:KVbZdlp10
美琴「ど、どうしたの? いきなり大声上げて」
黒子「い、いえっ、なんでもないですのっ」バッ
黒子(ど、どういうことですの? なんでこんなものが)チラ
黒子(ジャケットのポケットに入って……いえ、入れられていた?)
黒子(で、ですけど、そんなことが出来たのは)
黒子(――やっぱりおかしいですの。入れるチャンスがいくらあったにせよ、閉店間際で買いに行く暇など)
上条『トイレ行ってきてもいいか?』
黒子(――――)
黒子「……ふ、ふふ」
黒子「……本当に、あの方は」
黒子(どれだけわたくしをやきもきさせたら、気が済むんですの?)ギュウ
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:24:47.84 ID:KVbZdlp10
――喫茶店
佐天「あれ、今気づいた。白井さん。リボン変えたんですね」
黒子「ええ、つい先日片割れをなくしてしまいまして」
初春「以前の物とは趣が異なりますけど、それもいいですね。白井さんの髪色とぴったりです」
黒子「うふふふ、そうでしょう? わたくしも気にいっていますの」パァ
佐天(……へぇ、白井さんって、こういう顔するんだ)
美琴「そういえばさ。あんたのそのリボン、なんてお店で買ったの?」
黒子「ああ、いえ。お店の名前までは。そこまで詳しく聞くのも」
美琴「……ちょっと待った」
黒子「……はい?」
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:29:48.46 ID:KVbZdlp10
美琴「買ったお店がわからないって、つまりどういうことかしら? 佐天さん?」
佐天「それはつまり、自分で購入したものではないわけで」
佐天「……もしかして、誰かからのプレゼント、ですか?」
黒子「い、いえっ! それは、そのっ。あ、あー、今思い出しましたの! ちょっと前にセブンスミストで」
美琴「黒子ぉ、往生際が悪いわよ~?」ニヤニヤ
黒子「な、なな、なんのことですの?」ダラダラ
美琴「あんたはさっきこうも言った。〝そこまで詳しく聞くのも〝――その続きは?」
初春「あ、なるほどー。贈り物を買ったお店まで根掘り葉掘り聞くのは失礼ですもんね」
黒子(ま、まずいですの)ダラダラ
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:34:00.59 ID:KVbZdlp10
佐天「単刀直入に聞きます。贈り主は男性ですね?」キラーン
黒子「」ドキーン
美琴「咄嗟に切り返せないところを見ると、図星みたいね」
黒子「い、いえっ、決してそのようなことは」
美琴「いやいやまっさか、男嫌いのあんたがねぇ」ニマァ
黒子「いいから、話を聞いてくださいましっ!」
初春「白井さんが遠くに行ってしまったようで、初春は少し寂しいのです」
黒子「断じて違いますのっ! 勘違いですのっ!」ブンブン
美琴「ま、ま、照れることないじゃない? わたしなんかを追いかけ回すよりよっぽど健全よ」ヒラヒラ
黒子「そ、そのようなご無体なことっ! わたくしのお姉様への愛は未来永劫変わりませんのにっ!」
――ドヨッ
美琴「だ、だからあんたはっ! 勘違いされるようなことを大声でぬかすなってのっ!///」
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:42:26.05 ID:KVbZdlp10
初春「でも、どういった方なんですか? ジャッジメントの関係者とか?」
黒子「知りません! だ、だいたい、まだ付き合ってるわけじゃありませんし」
佐天「まだってことは、白井さん的に脈はあるんですねー」ニヨニヨ
黒子「い、いえっ、決してそういうわけでは」
黒子(さ、三人して誘導尋問なんて卑怯ですの~)
美琴「で、どうなのよ、相手との関係は。うまくいってるわけ?」ズイ
初春「な、馴れ初めとかあるんですか? 初春は興味あります!」ズイ
黒子「ですからっ! そういったことはまったく考えて――」
佐天「隙ありっ」ヒョイ
黒子「って、あぁっ!? ちょ、ちょっと佐天さんっ!」ガタ
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:48:19.96 ID:KVbZdlp10
佐天「こういうのはぁ、メールの履歴を見れば一目瞭然ですよね」カチカチ
黒子「わたくしの携帯! か、返しなさいっ!」シュピッ
佐天「おっと危ない」ヒラリッ
黒子「ああもうっ、返しなさいって言ってますのにっ!」グイ
佐天「そんなこと言わずに、ちょっくら拝見するだけですからぁ」タッタッタッ
黒子「くっ、かくなる上はっ」キッ
佐天「よく見たらこれ新機種じゃないですかー。もしかしてこれもプレゼン――」カチカチ
――パッ
佐天「――って、うわぁっ!?」ビク
黒子「まったく、油断も隙もあったものじゃありませんわね」パシッ
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 22:50:45.19 ID:KVbZdlp10
佐天「あーっ、ずるっ! 店内での能力行使は禁止されてるじゃないですか!」
黒子「不意打ちを仕掛けたかたに文句を言われる筋合いはございませんの」
黒子(ふっ、始末書一枚でこの秘密が守れるなら安いものですの)ニヤ
美琴「しっかしあの黒子をここまで慌てさせるなんて。いったいどこのヒーローさんかしらね?」クスッ
黒子「な、なんと意地悪な仰りようっ! からかうのもいい加減に」
初春「わたしは逆に安心しました。白井さんにも乙女な一面があったんですね」ニコ
黒子「う、初春までそのようなことっ」
美琴「ま、陰ながら応援してるわよ」パチ
佐天「仲が進展したら、わたしたちにも紹介してくださいね」ビッ
初春「いいなぁ、男性からの心尽くしのプレゼント。憧れます~」
黒子「ご、ごーかーいーでーすーのッッ!!」
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 23:08:25.33 ID:KVbZdlp10
――from 黒子 21:36
『新しいリボン、確かに受け取りました』
『ですけど、ずいぶんと回りくどい渡し方をしてくださったものですわね』
『まぁ、物自体は割にまともなようですし』
『代わりをわざわざ買うのもなんですから、とりあえず使わせていただきますの』
『勘違いなさらないように言っておきますけど、おんぶの一件は許したわけじゃないんですのよ』
『次回は埋め合わせとしてこちらの買い物にも付き合っていただく所存ですので、そのつもりで』
『P.S』
『わたくしを待っていてくださって、本当にありがとうございます』
『あの時のあなたには、その、不覚にも、ぐっときてしまいました』
『今度あなたに会う時には、もう少し素直になれるよう、頑張ってみますの』
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 23:16:36.71 ID:KVbZdlp10
――from 黒子 21:40
『さっきのメールはなしですのっ! 一時の気の迷いですからすぐに削除してくださいなっ!』
『万が一そう思わされてしまったとしても、本当に本当に、ちょぴっとなんですからねっ!』
――このメッセージを保存しますか?
はい/いいえ
――メッセージを○○しました。
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/09/30(日) 23:27:01.53 ID:KVbZdlp10
以上で完了です、不定期にも関わらず多くの支援とコメを賜り、感謝してます
アニメ小説ともに黒子は結構な頻度で痛い目に遭わされてる可哀想な子ですけど
それにめげない黒子も『らしさ』のひとつなのかな、と暴力シーンを書いた言い訳にしてみます
後日談(another)は書いたとしても、プラトニック(死語)なイチャイチャに終始するでしょう
キスだけで硬直する黒子っていうのも考えようによってはありなのか、筆が進みそうだったらやってみますんノ
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/09/30(日) 23:29:17.76 ID:UPOdsDPI0
乙ー!
そして是非是非後日談のイチャラブを書いてください
お願いします
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/09/30(日) 23:30:22.73 ID:qjgoReRC0
いい感じに締めた。でも後日談ほしい!
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:03:29.14 ID:N1FzZWVG0
――図書館
――ザアアアアア
佐天「雨、止みそうにないですねー」
美琴「佐天さん、上から二番目の証明問題、当てはめる公式間違ってない?」
佐天「えっ、あぁ、ほんとだ。さっすが御坂さん」ゴシゴシ
初春「うーん……」
美琴「ん、どうしたの初春さん? 難しい顔して、解けない問題でもあった?」
初春「ああいえ、ちょっと気になることがありまして」
佐天「なになに? 恋の悩み?」
初春「違います! ただ、最近白井さんが妙に可愛いので――――何で二人して後ずさるんですかー?」
美琴「い、いや、その、ねぇ?」チラ
佐天「し、白井さんの性癖がいよいよ周りにまで猛威を振るい始めたんじゃないかって」コクコク
初春「ウ、ウイルスみたく言わないでください! あくまで客観的に見ての話ですって」
佐天「そっかそっか。でも、気にしてるからにはなんかしら根拠があるんだよね?」
初春「そう、ですね。わかりやすい一例をあげますと――」
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:10:35.52 ID:N1FzZWVG0
初春「たとえば一昨日ですけど、低気圧の影響ですごい風だったじゃないですか」
美琴「あぁ、そういえば」
初春「あの日、白井さんと並んで支部に向かっていたんですが」
初春「細い路地を出た途端突風に襲われて、スカートが思いきり捲れてしまったんです」
佐天「あー、あるある。でも、初春はわたしのおかげで慣れてるから問題ないっしょ?」
初春「そ、そんなわけないでしょう! 何が誰のおかげですか!」
佐天「あはは、冗談冗談。本気にしない」
美琴「でもさ、それと黒子といったい何の関係があるの?」
初春「ああ、つまりですね。その時の白井さんの様子が、なんというか」
美琴「いつもと違ったってことかしら?」
初春「はい、以前は鬱陶しそうに眉をひそめながらスカートを抑えるくらいだったんですけれど」
初春「頬を染めながら慌てて両足をすり寄せて、みたいな感じで」
佐天「……それって、単に人並みの羞恥心に目覚めたってだけのことなんじゃ」
美琴「あんなエグイ水着着ても平然としてたくらいだしねぇ。まぁ、らしくないとは思うけど」
初春「でもでも、こんなのは序の口なんです」
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:15:29.85 ID:N1FzZWVG0
――回想
初春「うわぁ、すごい量の銀杏ですね」
黒子「そろそろ秋も終わりですわね。にしても、この鼻につく臭いはどうにかならないものかしら」
初春「乾煎りして茶碗蒸しに入れると美味しいですよ? お父さんがよく食べて――」
男A「あのぅ、白井黒子さん、ですよね?」
黒子「はい? ええと、どちら様ですの?」
男A「ああ、申し遅れました。長点上機学園一年のAっていいます。校名くらいはご存知ですよね」
黒子「え、ええ。名門高校の一角と認識しておりますけども」
男A「そうです! 何を隠そう僕も白井さんと同じレベル4でして」
黒子「はぁ。……あの、ご用件はなんですの?」
男A「ああ、す、すみません。その、つまり、ですね」
男A「もしよろしければ、僕と付き合っていただけませんか?」
黒子「付き合うって、どちらまでですの?」
男A「いえ、そういう意味ではなくて。あなたに、僕の彼女になっていただけたらと」
初春(こ、これって、交際のお申込みじゃないですか!)
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:18:35.25 ID:N1FzZWVG0
男A「以前から腕章をつけて活躍している姿をお見かけしたことがありまして」
男A「それからというもの、すっかりあなたのファンになってしまったんです」
黒子「それはまぁ、光栄に思うべきなのでしょうけども」
男A「僕もこれで結構モテるんですよ? 何度かラブレターを頂いたこともありますし」
男A「でも、できれば自分により相応しい女性に、傍にいて欲しいと思いまして」
初春(うわっ、結構本気っぽい。白井さん、どうするんだろう)
男A「こう言ってはなんですが、同じ高み(レベル5)を目指す者同士、釣り合いは取れてるんじゃないかと」
黒子「」ピク
男A「何分急な話ですし、すぐ返事をいただこうとは思っていませんので、じっくり考えていただいて」
黒子「いーえ、その必要はありませんの」
男A「え、それじゃあ」パァ
黒子「申し訳ありませんが、お引き取りください」ニコ
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:24:18.92 ID:N1FzZWVG0
男A「な、え……」パクパク
黒子「それでは、失礼いたします。さ、固法さんをお待たせしないうちに」グイ
初春「あ、は、はい……」チラ
男A「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」バッ
黒子「……まだなにか?」
男A「……納得できません!」
黒子「納得もなにも、ご縁がなかったと諦めていただくしか」
男A「で、ですからっ、付き合えないって言うならせめて理由(わけ)を教えてください!」
黒子「理由、ねぇ」
男A「……も、もしかして、もう好きな男性がいらっしゃるんですか?」
黒子「……っ」
初春(あ、そ、そうだった。白井さんにはすでに彼氏疑惑が)チラ
黒子「ま、まぁ、確かにわたくしも年頃ですし、気になっている方のひとりくらいはいますけれども」
黒子「そうしたこととは関係なく、よい返事は致しかねますわね」
男A「ど、どうしてっ!」
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:26:00.56 ID:N1FzZWVG0
黒子「記憶違いでなければ、わたくしたちが面と向かって話すのは、これが初めてですわよね」
男A「そ、それがなんだっていうんですか」
黒子「ろくすっぽ会話もしていないのに、相手が自分に相応しいだなんてどうして見極められるんですの?」
男A「そ、それは……だ、だからこそ、付き合って親睦を深めるんじゃ」
黒子「残念ですけど、あなたの物言いからするとそれ以前の問題ですわね」
黒子「釣り合いなどとしょうもないことを気にする殿方とは、うまくやっていける自信がございません」
男A「な……なっ!」
黒子「もし何かの拍子でわたくしの能力レベルがガタ落ちしたら、その瞬間に二人の関係は終わる」
黒子「詰まるところ、あなたが仰っているのはそういうことですわよね?」
男A「そ、それのどこがいけないっていうんですか」
黒子「……その顔。どうやら本気でそう考えていらっしゃるようですわね」
黒子「自分がどれだけ自惚れているのか、一度省みた方がよろしいんではなくて?」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:39:18.38 ID:N1FzZWVG0
男A「と、常盤台では礼儀作法を教わっていないのかな? それが目上に対しての口の利き方ですか」プルプル
黒子「そういうご自分は礼節を弁えてるとでも思っていらっしゃるのかしら」
黒子「わたくしは一人の人間です。まかり間違ってもあなたのステータスを上げるオプションパーツではございません」
黒子「憚りながら申しますが、あなた、礼節と体裁とをはき違えているんじゃありませんの?」
男A「……て、てめぇ! ちょっと可愛いからって調子に乗りやがって!」ギリ
黒子「あらあら、そのように声を荒らげるということは図星だったんですの?」
男A「……ぐっ」
黒子「残念ですが、少々欠点を指摘されたくらいで逆上するような方に向ける敬意はございません」
黒子「お話はこれで終わりですわね。さ、初春、行きますわよ」ツカツカ
初春「あ、し、白井さん! 待ってください!」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:49:40.43 ID:N1FzZWVG0
初春「とまぁ、そんな顛末だったんですが」
美琴「んー、黒子の気持ちもわからないではないわね」
佐天「ですね。レベルだの名門校だのって肩書きから切り出すのは、さすがに」
美琴「そうそう、なーんか鼻持ちならないのよね。男ってのはさ、やっぱこう、頼りがいがないと――」
初春「ああいえ、ここでわたしが主張したかったのは、白井さんが告白されたという事実なんです」
佐天「ん、どういうこと?」
初春「実は、ここ一か月ほどでそうしたことが立て続けに起きてるんですよ」
美琴「えええ? それ、本当なの?」
初春「はい。お相手はやはり先輩だったり同級生だったりするんですが」
初春「こっ酷く振らないまでも、全然脈がなさそうなんです。中には格好いい人もいたんですけど」
佐天「うわぁ、本格的にモテ期到来?」ゴク
美琴「まぁ、あり得ない話でもないのか。あの子も黙って慎ましくしている分には可愛いし」
初春「あはは、御坂さんが言うと含蓄がありますね」
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 00:56:53.19 ID:N1FzZWVG0
美琴「ともあれ、初春さんが気にしてのは、何が黒子を変えたのかってことね」
初春「そうですそうです」
佐天「それはやっぱり、意中の人の存在じゃないんですか?」
初春「でも、人を好きになるだけでそんなに変わるものなんですか?」
美琴「え、う、うーん、どうなんだろ///」
佐天(やっぱり御坂さんも好きな人いるんだ。本当、わかりやすいなぁ)ニマニマ
美琴「そういえば、黒子とお相手との仲って、どこまで進んでいるんだろ」
佐天「……もう、女の喜びを教え込まれちゃってたりなんかして///」
美琴「じょっ、冗談! 確かにあの子ませてるところあるけど、まだ中一よ!?」
初春「あの、女の喜びって、なんなんですか? ちょっと背徳的な響きですね」
美琴「そ、そこは聞き流してくれると助かるわ///」
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:00:10.79 ID:N1FzZWVG0
美琴「恋する女は綺麗って昔から言うけど、やっぱりそういう気持ちの変化って外に滲み出てくるものなのかしら」
佐天「実際、不特定多数の男性が白井さんに魅力を感じ始めているのは間違いないわけで――」
黒子「あら、なんだか三人とも盛り上がっていますわね」
初春「」
佐天「こ、ここ、こんにちわ、白井さん」
美琴「はっ、早かったわね。寮監の手伝いは終わったの?」
黒子「ええ、友達との勉強会があることを仄めかしたら、少しお目こぼししていただけたんですの」
黒子「それより、いったい何の話をしていたんですの?」チョコン
初春「え、ええと、それはですね」
佐天「白井さんが、最近よく男の人に声をかけられるって初春から聞いて」
黒子「むっ」ジロ
初春「さ、佐天さん!」ガタ
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:06:11.06 ID:N1FzZWVG0
黒子「……少し口が軽いんじゃなくて? 初春」ジトー
初春「す、すみません」
美琴「ま、まぁまぁ。たまたまそういう話の流れになっただけだから、許したげて、ね?」
黒子「ま、まぁ、お姉様がそこまで仰るのでしたら」パサッ
初春(さ、佐天さん! ひどいじゃないですか)パクパク
佐天(こういうときは変に口裏を合わせるとボロが出るって)パクパク
美琴「ところでさ、ジャッジメントの方は最近どうなのよ?」
黒子「平常運行ですの。忙しくなったのはアンチスキルの方ですわね」カリカリ
佐天「アンチスキル? なにか問題でもあったんですか?」
黒子「初春、説明」チラ
初春「は、はい。二人とも、テレスティーナ木原を覚えていらっしゃいますか?」
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:17:05.38 ID:N1FzZWVG0
美琴「そりゃまぁ、忘れたくてもそうそう忘れられないわね。あのイカれ女」
佐天「はっはー、もう二度とあの顔芸は見たくないですけどね」
初春「実は先だっての暴動の件で、その木原の一族が運営している施設から資金供与があったみたいで」
初春「そこで、いくつかの研究所に警備員が立ち入り調査を行っているそうなんですよ」
美琴「ふぅん。未だにそんなことがまかり通っているってことは、あの狂乱女も枝葉の一つに過ぎなかったってわけか」
黒子「そのようです。ポルターガイストの件も含めまして、学園の求めているものを見直すよい契機になりましたの」
初春「学園の求めるもの、ですか?」
佐天「お偉方が掲げている目標って、確か人類の夢、レベル6への到達、という話でしたよね」
黒子「考えようによっては、その目標のためにわたくしたちひとりひとりが能力開発という実験に加担している」
黒子「ともすれば、誰もがいつでも、被害者にも加害者にもなりえるということですわね」
美琴「…………加害者、か」ポツリ
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:27:31.94 ID:N1FzZWVG0
――学生寮
――ヴィーン
黒子(さっきのお姉様、どうもご様子が変でしたわね。めっきり口数が減っていましたし)
黒子(やはり、学園と何か深刻なトラブルがあったのかしら)
黒子(さて、どうしますやら。真正面から問いただしてもいつものようにとぼけられるだけでしょうし)
黒子(いっそのこと、初春と協力して調べれば……こそこそ嗅ぎ回るのは気が進みませんけれど)
寮監「白井、ちょっといいか」
黒子「うひっ」ビクッ
寮監「少し話がある――おい、いきなり逃げ腰なのは何故だ」
黒子「りょ、寮監様? あの、本日はまだ寮則を破った覚えはありませんけれども」ブルブル
寮監「やましいことがないなら堂々としていろ、まったく」
黒子(そう言われましても、これはもはや条件反射ですの)
黒子「あの、それで話というのは……」
寮監「別に構えんでいいと言っている。明後日の予定を聞きたかっただけだ」
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:30:31.40 ID:N1FzZWVG0
黒子「明後日ですの? いえ、特にこれといった用事は」
寮監「そうか。では、ひとつ代理を頼まれてくれないか?」
黒子「代理? どういったご用件ですの?」
寮監「実は明後日あすなろ園に行くことになっていたんだが、ついさっき父が倒れたと連絡を受けてな」
黒子「い、一大事じゃありませんの! その、容体の方は――」
寮監「症状自体は大したことない。軽度の気胸だそうだ」
黒子「それは、何よりですの」
寮監「ただまぁ、一週間ほど入院が必要らしくてな。ここの所忙しくて帰郷も出来なかったから世話を焼きたいんだが」
寮監「こちらの都合で子供たちとの約束を反故にするのも、なんだか申し訳なくてな」
黒子「そういうご事情でしたら喜んで。わたくしでよろしければお引き受けいたしますの」
寮監「そうか、助かるよ。おまえなら子供たちとも顔見知りだし特に問題はないだろう」スッ
黒子「……あら、これは? 何かのチケットですの?」
寮監「友人が切り盛りしているレストランのディナー券だ。二枚あるから、友達を誘って行ってくるといい」
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:35:43.47 ID:N1FzZWVG0
――prrrrr
黒子(あら、もしかして)ゴソゴソ
黒子(やっぱり、上条さんですのっ)
黒子(……引き受けて、いただけるかしら)ピッ
黒子「はい、もしもし」
上条『ああ、黒子か? さっき電話もらったみたいだけど』
黒子「ええ。明後日なんですけれど、何かご予定はおありですの?」
上条『明後日は、いや、空いてるけど』
黒子「それでしたら、ちょっとわたくしに付き合っていただけません?」
上条『うん? どこか行きたいところでもあるのか?』
黒子「行きたいと申しますか、ボランティアなんですけれども」
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 01:40:08.75 ID:N1FzZWVG0
上条『ボランティア? おまえ、風紀委員に加えてそんなことまでやってたのか。優等生の鑑だな』
黒子「と、とんでもない。たまにちょこちょこっとお手伝いをさせていただいているくらいで」
上条『謙遜することないだろ。んで、具体的にはどこで何をやるんだ?』
黒子「行き先は第13学区。あすなろ園という孤児院ですの」
上条『コジイン? ――あ、孤児院か』
黒子「ええ。そちらでは主に置き去り(チャイルドエラー)の子を引き取っていまして」
上条『それってあれだよな、入学金だけ納めて親がばっくれちまったってやつ』
黒子「そうですの。もちろん院にも園長先生や非常勤の先生が来てくださるんですけれど」
黒子「人数が少なければできることも限られますし、負担も大きいでしょうから」
上条『要は、子供たちの遊び相手になってやりゃあいいんだな?』
黒子「はい、基本的にそう思っていただいて差し支えないですの」
黒子「大勢の子供たちを相手にするのは物理的にも体力的もきついですし」
黒子「もし、上条さんがご一緒してくださるなら、大助かりなんですけれども」
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:00:55.75 ID:N1FzZWVG0
上条『ま、他ならぬ黒子さんに頼られたとあっちゃあ、一肌脱がないわけにはいかねえな』
黒子「よ、よろしいんですの!?」パァ
上条『もちろん。つっても、何分初めての経験だから、どんだけ役に立てるかは怪しいけどな』
黒子「ふふ、そんなにご心配なさらなくとも、上条さんなら絶対大丈夫ですわ」
上条『はは、黒子に太鼓判を押されるなんて、何か妙な感じだな』
黒子「それ、どういう意味ですの?」
上条『いやさ、つい数か月前までは、どっちかっていうと敵視されてると思ってたしさ』
黒子「か、過去は過去、今は今ですの!」
上条『あ、ああ、そうだよな、ごめん。んじゃあ念のため聞いとくけど、今は嫌ってないんだな?』
黒子「当たり前ですの。嫌っている方に対してマメに連絡を取るわけないでしょう?」
上条『それもそうだな。良かった、おまえにだけは嫌われたくないと思ってたから』
黒子(おまえにだけは、って――)
上条『ん、どうかしたのか?』
黒子「え? あ、いえ、そ、あ、ま、また改めてご連絡しますの!///」
上条『へ? ちょっ、黒――』ピッ
黒子「……え、ええと、あと何を伝えたらよろしかったんでしたっけ」コツン
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:03:57.67 ID:N1FzZWVG0
上条「よし、時間通りだな。黒子はどの辺りに」キョロキョロ
黒子「おはようございます」パッ
上条「うおっ! お、おはよう」
黒子「またそんなに驚かれて。いい加減テレポートにも慣れてくださらないと」ジト
上条「いや、でも、慣れたら慣れたで反応が鈍りそうだしな」ポリポリ
黒子「ま、それくらいは大目に見ますけども。……ふむ、ちゃんと動きやすい服装で来てくれたようですわね」
上条「おぅ、準備万端ですよ。おまえも言っていたように、ガキ相手だと体力勝負だしな」
黒子「期待していますわ。では、あすなろ園までご案内しますの」
上条「ああ、その前に」スッ
黒子「……?」
上条「荷物持つよ。重い方寄越してくれ」
黒子「あ、は、はい。ありがとうございます」スッ
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:06:44.04 ID:N1FzZWVG0
上条「このでかい風呂敷包みってなにが入ってるんだ?」
黒子「お弁当の重箱ですの。寮住まいの方々が進んで手伝ってくださって」
上条「へぇ、みんな優しいんだな」
黒子「学生はみんな親元から離れて暮らしていますし、やはり思うところがあるのでしょうね」
上条「黒子は、両親と会えなくて寂しくなったりはしないのか?」
黒子「来た当初は少し寂しいというか、心細かったですわね」
黒子「でも、今はお姉様がいますし、仲のいい友達もできましたし、それに――」チラ
上条「……ん?」
黒子「その、か、上条さんもいますし」
上条「お、おう、そうだな///」カァ
黒子「で、ですの///」プシュー
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:21:09.83 ID:N1FzZWVG0
園長「休日だというのにわざわざお越しいただいて、感謝の言葉もありません」
黒子「お気遣いは無用ですの。わたくしたちも童心に返って遊ばせていただきますわ」
黒子「ですわよね、上条さん?」
上条「ええっと、どれだけお力になれるかは正直心許ないんですが」カリカリ
大吾「いえいえ、男子ってあまりこういうボランティアやりたがらないからとても助かります」
上条「そ、そうすか。だったらいいんですけど」
大吾「では早速ですが、僕について来てください。子供たちに紹介します」
上条「わかりました。あの、今日一日、よろしくお願いします」ペコ
大吾「こちらこそ」ニコ
園長「よろしくね、上条さん」ニコ
黒子(まさか初春たちの担任と鉢合わせするなんて、ついているのかいないのか)
黒子(一応、後で口止めした方が無難ですわね)
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:23:54.06 ID:N1FzZWVG0
大吾「みんな、今日は新しいお兄さんが来てくれたよ」
上条「上条当麻だ。長いからとうまって呼んでくれ、よろしくな」
子供たち『よろしくお願いしまーす!』
上条「はは、元気いっぱいだな。んじゃあ最初は、何して遊ぶ?」
男の子A「僕鬼ごっこがいい!」
女の子A「えー、たまにはおままごとにしようよー」
男の子A「おままごとじゃ大勢で遊べないじゃんかー」
女の子A「あんただって、自分が足早いからっていつも――」
上条「ま、まぁまぁ、順番にひとつずつやろうか。時間はたっぷりあるからさ」
男の子A&女の子A「はぁーい」
上条「んじゃあ、まずは俺が鬼をやるな。10数える間に逃げるんだぞ。1――2――」
子供たち『うわぁ! 逃げろー!』
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/06(土) 02:40:34.50 ID:N1FzZWVG0
――調理室
園長「ここまで歓声が聞こえるわ。あの子たちもおおはしゃぎね」トントントン
園長「彼氏さんを連れてきてくれて助かったわ。白井さん」ニコ
黒子「い、いえっ! 上条さんとは別に交際しているわけじゃ」
園長「照れることないでしょう。いいんじゃない? 意志が強そうだし、懐も深そうで」
黒子「も、もぅ、あまりからかわないでくださいまし。そもそも、あの方とは歳の差が」
園長「歳の差っていうなら、わたしも大吾先生と一緒になるとは思っていなかったわ」
黒子(……まぁ、それはこちらも同じですけれど)ヒク
黒子「でも、わたくしはまだ中学に上がったばかりで」
園長「まぁ、確かに大人の恋愛をするにはまだ少し早いかも知れないけれど」
園長「上条さんは高校一年でしょう? あと三年経てば、白井さんも今の彼と同い年じゃない」
黒子「そ、それは……まぁ」
園長「あなただって彼のこと、心から信頼しているんでしょう?」
黒子「…………ぅ///」
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 13:40:47.80 ID:qE71Ur120
園長「その沈黙は肯定よね。大丈夫、あなたたちならきっとうまくいくわ」
黒子「し、信頼と好意は別物ですの」
園長「あら? じゃあ、彼のこと好きじゃないの?」
黒子「そ、それは、……その」ゴニョゴニョ
園長「そうね、心にもないことを口にするのは躊躇われるわよね。逆説的に考えれば自ずと答えも」
黒子「え、園長先生っ!///」
園長「うふふふ、ごめんなさいね。お二人があんまり初々しいものだから」
黒子「んもぅ、勘弁してくださいな」
園長「でも、お互いに意識し合っているみたいだし、結ばれるのは秒読みの段階じゃないかしら」
黒子「ど、どうしてそんなことがわかるんですの?」
園長「視線。好きな人が視界に入ると、どうしても目で追ってしまうものだから」
黒子「……あの、上条さんも、わたくしを?」
園長「ええ、その点はお二人とも抜かりないわ。安心した?」
黒子「…………ぅ///」
園長「あらあら」コロコロ
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 13:49:13.82 ID:qE71Ur120
――バタン
女の子A「とうまお兄ちゃん、早く早くぅ!」グイグイ
上条「おいおい、そんなに引っ張るなって。袖が延びちまうだろ」
男の子B「おいこら、とうま! ままごとが終わったら俺とジャッジメントごっこだからな!」
上条「わぁったわぁった。んでもその前に、外から戻ったらまず手洗いうがいをしなきゃな」
子供たち『はぁーい♪』ゾロゾロ
園長「あらあら、すっかり懐かれてしまったみたいね」
大吾「いやぁ、驚きました。彼、本当に今回がボランティア初めてなんですか?」
黒子「いえ、あの方は……、普段の行いをボランティアだと自覚していないだけですの」
黒子「そこに困った人がいれば手を差し伸べずにはいられない。そんな人ですから」クス
園長「そう、正義感が人一倍強いのね。それも、白井さんが惹かれた理由のひとつかしら」
黒子(ちょ、大吾先生も聞いていますのに!///)
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 13:50:59.44 ID:qE71Ur120
大吾「あれ、もしかしてお二人って」
園長「友達以上恋人未満、ってところかしら」
黒子「か、勝手なことを吹き込まれては困ります! 妙な噂が流れれば上条さんのご迷惑に」
上条「うん? 俺がどうしたって?」
黒子「」ドキーン
黒子「あ、かか、上条さん///」
上条「あれ、おまえ少し顔赤いぞ? 熱でもあるんじゃないか?」スッ
黒子「え、あの、近っ……ひゃっ!」ピト
上条「どれどれ? ――――うーん、若干熱い気もするけど」
黒子(あ、あぅあぅ///)カチンコチン
園長「……あらあら、これじゃあ白井さんも大変ね」クス
大吾「いやいや、意外と丸く収まるんじゃないですか」クス
上条「……? 何の話っすか?」
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 13:59:56.31 ID:qE71Ur120
男の子B「じゃあ、とうまお兄ちゃんがパパ役で」
女の子B「くろこお姉ちゃんがママ役だよ」
上条「ほ、本当にそれでやるのか?」チラ
黒子「ま、まぁ、しょうがないですわね。お遊戯と割り切って」
女の子B「お遊戯じゃないよ! 二人とも真剣にやんなきゃだめなんだよ!」
上条「あ、ああ、悪かった。ごめんごめん」
黒子(真剣にって言われましても)チラ
上条「でさ、いつもはどういう段取りでやってるんだ?」
黒子(ど、どうしても意識してしまいますの。園長先生が変なこと仰るから)
女の子C「黒子お姉ちゃん、ちゃんと聞いてる?」
黒子「あ、も、もちろんですの!」アタフタ
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:05:32.95 ID:qE71Ur120
男の子C「じゃあ、とうまパパがお仕事を終えて帰ってくるところからね」
女の子C「そんでねそんでね、ママとあたしたちが、パパをお疲れ様ってお迎えするの」ニパァ
黒子「わ、わかりました。では上条さん、スタンバってくださ――」
女の子A「ちょっとー、駄目だよママ」
黒子「は、はい?」
女の子A「名字で呼び合う夫婦なんてどこの世の中にいるの?」
黒子「そ、そう言われましても、なんとお呼びすればよろしいやら」
女の子B「それはやっぱりー、とうまさん、とか、あなた、とか」
上条「……あ、あなたって///」ポリ
黒子(ど、どんな羞恥プレイですの///)ググ
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:13:34.16 ID:qE71Ur120
――TAKE1
上条「た、ただいまー」
黒子「お、おかえりなさい。あ、あなた」
上条「お、おう///」カァ
黒子(て、照れないでくださいまし! こっちだって恥ずかしいんですの!///)
上条(わ、わかってっけどさ///)
子供たち『パパー、おかえりなさーい!』
上条「ただいま。今日もママの言うこと聞いて、ちゃんといい子にしてたか?」
女の子A「うん、窓のお掃除一緒にやったんだよ!」
黒子「今日もお勤めご苦労様でした。お鞄お持ちしますの」スッ
上条「ああ、さんきゅ」スッ
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:22:56.74 ID:qE71Ur120
上条「ええと、もう風呂は沸いてるのかな?」
黒子「はい、少し熱めにしておきましたの」
男の子B「僕、頑張ってお風呂掃除したんだよ!」
女の子B「あたしもー!」
上条「そうか。みんなお手伝いできて偉いなー」
女の子A「ねぇパパ、早くお風呂入ろう!」
上条「よし、みんな一緒に入るか!」
子供たち『わーい!』
女の子C「あ、そうだ。ママも一緒に入るよね?」
黒子「無理ですの! 早すぎますの!///」
園長&大吾「」プハッ
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:27:14.14 ID:qE71Ur120
――ダメだし中
女の子C『夫婦ならお風呂だって普通に入るでしょー?』プンスカ
黒子『ごめんなさいごめんなさい! つい条件反射で!』
――TAKE2
上条「ただいまー」
黒子「おかえりなさい。ご飯の支度、整っていますわよ」
上条「そっか。今日のおかずはなんだ?」
黒子「秋刀魚の蒲焼と、銀杏と鶏肉の茶碗蒸し、それから空豆とトマトの冷製スープですの」
上条「おお、旬の食材がてんこ盛りだな」
女の子A「パパー、ママー。わたしお腹空いたー」
黒子「はいはい、じゃあ早いとこ食事にしましょう」
男の子B「僕、お皿とお箸並べるの手伝うよ!」
黒子「あら本当? Bは本当に良い子ですわね」ナデナデ
男の子B「えへへへー」
女の子A「あれー、パパ。襟元に口紅がついてるよ?」
黒子「――――なんですって?」ギラッ
上条「ちょっ、流れおかしくね!?」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:30:48.27 ID:qE71Ur120
女の子A『さっきのは不倫ルートだったの! 黒子も乗ってくれたんだからアドリブしなきゃ』クドクド
上条(か、仮にも孤児たちの前でそういう生々しい展開はどうかと思うのでありますが!?)
――TAKE3
上条「ただいまー」
黒子「おかえりなさい」
上条「これ、俺からおまえにプレゼントだ」スッ
黒子「あら、なにかしら? まぁ、素敵なリボンですわね!」
上条「あ、ああ。気に入ってくれたなら何よりだ」
黒子「ありがとですの。か、……と、とうまさん」
黒子(セ、セーフですの)
女の子B「ねぇパパぁ。わたしたちにはお土産ないの?」
上条「え、ええと? そうそう、たこ焼きがあるぞー」
男の子C「ええー、やっすー」
女の子B「そこはせめてケーキって言って欲しかったなー」
上条「も、持ち合わせが少なかったから、またの機会にな」
黒子(まったくこの子たち、たくましく育ちそうですわね)クス
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:32:29.64 ID:qE71Ur120
黒子「ジャッジメントですの!」ビッ
男の子C「です!」ビッ
女の子D「ですのー!」ビッ
上条「なんだぁ、おまえら。俺の邪魔をする気なら容赦しないぞ」チャラチャラ
上条(薄々わかってはいた……わかってはいたんだが)
上条(やっぱり俺がスキルアウト役か)トホホ
黒子「さぁみなさん、協力して悪いやつをやっつけますわよ!」ビッ
男の子B「よぉし、いっくぞー!」
子供たち『うわあああああ!』ドドド
上条「ちょっ、多勢に無勢すぎるんですが!?」
黒子「子供たちに規範を示すためにも、ここは大人しくやられていただかないと」キラーン
上条「黒子さん冷たい! くそぅっ、絶対に逃げきってやる!」ダッ
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:50:01.61 ID:qE71Ur120
上条「ふぅ、走った走った」トントン
男の子A「と、とうま兄ちゃんって、足べらぼうに速いんだね」ゼエゼエ
上条「いやぁ、おまえも子供にしちゃあ大したモンだったぜ?」
男の子A「いつか絶対に追い抜いてやっからな」ビッ
上条「おぅ、受けて立つぜ」クイ
黒子「お疲れ様。さ、こちらへ、汗を拭って差し上げますわ」
上条「あ、あぁ、悪ぃな」
黒子「それにしても、いつにもまして見事な逃げっぷりでしたわねぇ」フキフキ
上条「8人に追われちゃあ、こっちも必死になるさ」
黒子(あら……あれだけ走り回ったにしては発汗が少ないですの)
黒子(息もほとんど切れていない。やはり殿方なんですのねぇ)
上条「うん? どうかしたか?」
黒子「いーえ、なんでもありませんの。少し屈んでくださるかしら」
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 14:58:01.90 ID:qE71Ur120
――食堂
男の子C「うわーっ、すっごいご馳走!」
園長「お姉さんたちが作ってきてくれたお弁当ですよ。さぁ、みんな一緒にお礼を言いましょう」
子供たち『お兄さん、お姉さん、ありがとうございます!』
黒子「どういたしまして。あなたたちの言葉、寮のみんなにも伝えさせていただきますわ」ニコ
上条「お、俺は何もしてねえんだけどなぁ」
黒子「細かいことはいいっこなしですの」チッチ
上条「それもそうだ。にしても、これだけあると目移りしちまうな」
黒子「その、あとでわたくしの作ったおかずの感想、聞かせていただきたいんですけど」ボソ
上条「ああもちろん、おまえの作ったもんなら何だって食わせてもらうよ」
黒子(……えへへ、もぅ、嬉しいこと言ってくれますわ……ハっ)
黒子(こ、子供たちの面前ですの!)ピシ
大吾「それじゃあ、みんな手を合わせてー。せーのっ」パシ
全員『いただきまーす!』
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/07(日) 15:13:57.20 ID:qE71Ur120
男の子B「ふぇ、ふろほとほうまっへ」モグモグ
園長「B君? 口に物を入れながら喋るのはお行儀がよくないわよ?」
男の子B「ほ、ほめんなふぁい。ごくっ、くろこととうまってさ、どういう関係なの?」
上条「え、ええと、どういう関係って言われてもなぁ」
黒子「仲のよいお友達ですの」
黒子(もうこの手の質問にも大分慣れてきましたの)
女の子B「恋人じゃないの?」
上条&黒子「ングッ」
男の子C「あはっ、二人ともおもしろーい」
黒子「げほっ、げほっ、と、年上をからかうものではありませんわよ」
上条「…………」ドンドンドンドン
大吾「上条君、はいお水」ニコ
上条「――ぷはっ、す、すんません」
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:26:33.19 ID:LcltX4Dr0
男の子B「もう無理、入らねー」ポンポン
女の子C「わ、わたしもお腹いっぱい」
大吾「あれだけあったのに、ほぼ完食だね」
上条「みんな好き嫌いせずに食べられるんだな。残ってるおかずに偏りがない」
男の子C「だって、どれもすごく美味しかったから!」
女の子D「うん! くろこお姉ちゃんって凄いんだね!」ソンケー
黒子「お口に合ったようでなによりですわ」ニコ
園長「それじゃ、みなさんでご馳走様をしましょう」
大吾「はーい、じゃあみんな一緒にいくよー。せーの」
『ご馳走様でしたッ!』
園長「はい、大変よくできました。じゃあ、食べ終わったお皿は台所へ持っていきましょうね」
男の子D「…………」ガタッ
黒子(……あら?)チラ
黒子(あの子のお皿、ほとんど汚れてないですの。食欲なかったのかしら?)
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:30:17.37 ID:LcltX4Dr0
大吾「本当にすみません、洗い物までやっていただいて」
黒子「いえいえ、これくらい何でもありませんの」ジャー
上条「黒子の家事スキルは半端じゃないっすからね」キュッキュッ
院長「ほんと、いいお嫁さんになれそうね」
黒子「は、はぁ///」
上条「ははは、本当のことなんだし照れることないだろ」
黒子「べ、別に照れてなど」カチャ
院長「じゃあ、私はちょっと洗濯機を回してくるから、ここはお願いね」
大吾「僕も子供たちを遊ばせてきます」
黒子「ええ、お願いしますの」
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:34:14.25 ID:LcltX4Dr0
上条「子供たち相当喜んでたな。いっそのこと俺も黒子に料理習おうかなぁ」キュッキュ
黒子「教えるのは一向に構いませんけども、わたくしはスパルタですわよ?」パチ
上条「厳しくっても、お前と一緒に作業するのは楽しそうだから」
黒子「ふふ、まぁ、一度そういった機会を作るのも面白そうですわね」
上条「あ、流し場に重なってるやつは全部終わってるから」
黒子「了解ですの」パッパッ
――カシャン――カシャン
上条「洗い物にホント便利だよな、それ。……ん?」
黒子「どうかしまして?」ピタ
上条「ああいや、そのまま続けてくれ」
黒子「……? はいですの」シュンシュン
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:39:45.85 ID:LcltX4Dr0
――カシャン――カシャン――カシャン
上条「やっぱ気のせいじゃなさそうだな。発動の間隔、気持ち短縮されてねえか?」
黒子「あらまあ、よくおわかりになりましたわね。ここ一か月ほどで0.2秒ほどタイムラグが縮まりましたの」
上条「能力開発相当頑張ってんだなぁ。この分だとレベル5も間近か」
黒子「いえ、さすがにそこまでは。このまま順調に伸び続けたとして、高等部に上がるくらいまではかかるかと」
上条「黒子が高校生、か」
黒子「ん、何を想像してますの?」
上条「い、いや、別に」
黒子「まさか、いやらしいことを考えていませんでしょうね?」ジト
上条「そ、そういうんじゃなくてさ、単純にその」
黒子「……はっきり仰ったらどうですの?」
上条「すごい美人になってるだろうなーって思ったわけです、はい」ポリ
黒子「…………///」プイ
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:50:22.29 ID:LcltX4Dr0
上条「なんでさっきから顔逸らしてんだよ。怒ったのか?」
黒子「お、怒ってなどいませんの」
上条「……? ならいいけどさ」
黒子(もう、この方は)
黒子(自分の言葉がどういう風に相手に伝わるか、少しは配慮して発言して欲しいですの)
黒子(高校生。やはりそれくらいの年頃が上条さんの理想なのでしょうか)
黒子(それまでお付き合いが続くかもわからないのに。……いえ、始まってもいませんけど)
上条「そういやさ、学園全部見渡してもレベル5の空間移動能力者はいないんだっけ」
黒子「……それなら、条件次第であるいは、という方もいないことはないですけど」
上条「え、まじで? お前より強力な空間移動能力者がいるのか?」
黒子「結標淡希。座標移動(ムーブポイント)と呼ばれる能力者ですの」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:54:25.93 ID:LcltX4Dr0
上条「座標移動。って、お前の瞬間移動とどう違うんだ?」
黒子「一番大きな違いは、離れた場所にある物をも転移させることができる点ですわね」
上条「それってつまり、手に触れなくても移動できるってことか? ほとんど万能じゃねえか」
黒子「人間性はともかくとして、空間移動能力の到達点の一つではあるでしょうね。わたくしも完敗しましたし」
上条「お前が、負けたってのか?」
黒子「能力の差異もそうですが、演算能力の差を痛感しましたの。何しろ相手はトン単位で物を飛ばしてきますから」
黒子「あの女と張り合うにはまだまだ力不足。それこそレベル5になるくらいでないと」
上条「超能力者か。もしなったら、今度は黒子が「お姉様ーっ!」て叫ばれる日が来るのかな」
黒子「あまり実感が湧きませんわね。頼りがいという点では、お姉様の足元にも及びませんもの」
上条「謙遜するなって。真面目だし面倒見もいいから下級生には慕われるぜ、きっと」
黒子「どうも、話半分に受け取っておきますわ」
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 22:57:36.41 ID:LcltX4Dr0
上条「やっぱりすげえな。あれだけの量を洗ったってのに十分しか経ってねえ」テクテク
黒子「上条さん、お料理の話ですけれどどうします?」シズシズ
上条「そうだな。俺んちでって言いたいところだけど、二人で料理するには少し狭いよな」
黒子「女子寮にお連れするわけにもいきませんし。いっそボランティアにかこつけてここを借ります?」
上条「ああ、悪くないかも。子供たちが食べてくれるなら色々試せるし――ん?」トテテテ
男の子A「隙ありぃっ!」バッ
――ブワ
黒子「――ほぇ?」キョトン
上条「イ゛イ゛ッ!?///」バッ
男の子B「おおー、白かぁ。意外、くろこって清楚系だったのな」
男の子A「変なの、足にバンド巻いてら。何に使うんだろ、これ」チョンチョン
黒子「な、ななななッッ///」フルフル
黒子「何をやってますのッ!///」バシッ
上条「俺ェーッ!?」
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:01:02.26 ID:LcltX4Dr0
園長「いくら子供でも、やっていいことと悪いことがあるのよ?」
大吾「そうだよ。もう誰もボランティア来てくれなくなっちゃうよ?」
男の子B「ご、ごめんなさい」シュン
男の子A「……反省してます」ショボン
園長「本当に、申し訳ありませんでした。ちゃんと言って聞かせますので」フカブカ
黒子「そ、そこまで大袈裟にされることではないかと」ブンブン
上条「そうっすよ。実質的な被害者は何も悪くないのに殴られた俺くらい――」
黒子「黙っててくださいな」ドス
上条「お、おぅふ」ゲホ
男の子B「く、くろこたち、もう来てくれないの?」グス
男の子A「あ、謝るから、もうしないから……嫌いにならないで」スン
黒子「こらこら、男の子が簡単に泣くものではありませんわよ」ナデナデ
黒子「大丈夫、嫌ってなどいませんから。さ、顔をお上げなさい」ニコ
上条「…………」フッ
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:07:27.11 ID:LcltX4Dr0
――お手洗い
黒子「このファンデーション、ノリがいまいちですわね」パタパタ
黒子「午後から日差しも強くなるみたいですし、リップはUVに変えておこうかしら」キュ
黒子(……さ、さすがにさっきのは、見られてしまいましたわね///)カァ
黒子(変な下着ではなかったはずですけど……新品ですし)
黒子(見られてしまうなら黒とか赤を穿いてきた方が、大人っぽいと思われたかしら)ハァ
黒子(でも、淫乱だと思われてしまうのも嫌ですし)
黒子(はぁ、わたくし本当、どうかしてますわね)コツン
黒子(他人からどう思われようと一向に構わない、そう思ってたはずなのに)パタン
黒子(あの方に関してだけは……どうにも臆病になりがちで)コツコツ
――ドンッ!
黒子「とっ! こーら、室内を走ったら危ない――」
男の子D「……ッ」クル
黒子「あら? あなた確か」
――タンタン
黒子「ちょ、ちょっと! 待ちなさい!」ダッ
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:11:49.51 ID:LcltX4Dr0
――バタン!
黒子(……寝室のプレート)トン
黒子(……やはり鍵をかけられてますわね)ガチャガチャ
黒子「ですけど、こちらには瞬間移動が」
上条「ちょいタンマ」ポン
黒子「っひゃ――か、上条さん」クル
黒子(びっくりした、気配が全く感じられなかったですの)
上条「今押し入っても、多分逆効果だ。少し落ち着くまで待った方がいい」
黒子「何かあったんですの?」
上条「些細な言葉のすれ違いってとこかな。どっちも悪気はなかったと思う」
黒子「……喧嘩、ですのね?」
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:20:30.16 ID:LcltX4Dr0
大吾「D君は、先月の中頃にあすなろ園にやって来たばかりでね」
大吾「元々ご両親の仲がうまくいっていなくて、話し合いの末にお父さん側が引き取ったみたいなんだけど」
大吾「学園の寮にD君を入れて、一年分の入学費だけ振り込んで、その後全く連絡がつかなくなったらしい」
黒子「……ひどいことをする親もいたものですわね」
上条「あの、お母さんの方に預けるわけにはいかないんすか?」
大吾「失踪が発覚した当初は、そういう話も出ていたみたいだけど」
大吾「養育費のことも含めて諸々ご家庭の事情があるから、不用意に立ち入ることも出来なくてね」
大吾「少しずつ施設に馴染んでいければと思っていたけど、今まで我慢していた物が噴き出てしまった結果だろう」
大吾「何度も顔を合わせていたのに、癇癪の兆候を見過ごしてしまうなんて、教師失格だな」ハァ
黒子「そんなことありませんわ。園長先生も大吾先生も十分やってくださってますの」
上条「俺も黒子と同意見っす。個別での対応にはどうしたって限界あるじゃないすか」
大吾「そう言ってもらえると少しは救われるけど、やっぱ口惜しいな」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:24:24.97 ID:LcltX4Dr0
黒子「そもそも、喧嘩の原因はなんだったんですの?」
上条「砂遊びの輪に交じってこようとしないDをAちゃんが誘ったんだ」
黒子「……それで喧嘩に? 無理強いしたんですの?」
上条「それだったら、俺たちも止められたんだよ」
大吾「Aちゃんは優しい子だけどちょっと気が強いところがあるから」
大吾「その誘い文句が、施設に来て日も浅いD君には、刺激が強かったんだろうね」
女の子A『一人で遊んでてもつまんないでしょ。か、可哀そうだからわたしが仲良くしてあげる、感謝しなさい』
上条「って感じでさ」
黒子「……ツンデレですの」
上条「言葉通りに受け取っちまったんだろうなぁ。子供に機微を察しろってのも酷な話だけど」ポリポリ
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:30:51.35 ID:LcltX4Dr0
上条「振り返ってみると、午前中、Dはほとんど絡んでこなかったな」
黒子「確かにあまり目立たなかったですわね。わたくしも、昼食をあまり食べていなかったのが気になってましたの」
上条「へえ、よく見てるんだな」
黒子「そういえば、園長先生はどうされたんですの? あの方ならそういったケアもお手の物では」
上条「それが、洗濯を終えた後すぐ車で出かけちまって。買い出しだっていうから、当分戻らないかもしれない」
黒子「あらまあ、タイミングが悪かったですわね」
上条「Dも、まだ捨てられたって事実が頭から離れないんだろうな。処理しようのない感情を持て余してるんだと思う」
黒子「あり得ますわね。ともかく、わたくしが中に入って一度説得してみますの」
上条「黒子。悪いんだけどその役回り、俺に譲ってくれないか?」
黒子「え、上条さんに?」
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/19(金) 23:43:04.86 ID:LcltX4Dr0
黒子「それはつまり……わたくしには任せられないと?」
上条「違う違う。そういうんじゃなくて、相性の問題かな」
黒子「相性、ですの?」
上条「男が意固地になってる時に女の子に慰められるってのは、なおさら惨めに感じちまうんじゃないかな」
黒子「んー、いまいち仰っていることがわかりませんの」
上条(まぁ、同じ男じゃないとわかんねえかもな)
上条「……正直言えば私情もちっと交じってるんだけど」
上条「もし無理そうだったらすぐお前にバトンタッチするからさ。な、この通り」パン
黒子「……まあ、そこまでおっしゃるなら」
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 21:57:17.55 ID:XqMpXJyJ0
――カチ
男の子D「……っ!?」ガバッ
上条「よぉ、ちっと邪魔するぜ」ガラガラ
男の子D「な、なんで! ちゃんと鍵をかけておいたはず」
上条「外から開けた。黒子お姉さんに窓ガラスを一枚抜いてもらってな」
男の子D「ぬ、抜いたって、いったいどうやって」
上条「そりゃ、後で本人に直接聞くこったな」
男の子D「……な、何しに来たんだよ」ジリ
上条「そう構えるなって。少し話をしたかっただけだ」
男の子D「あ、あんたと話すことなんかこっちにはない!」
上条「なんだ、でけえ声出せるんじゃねえか。午前中はてんで大人しかったのに」ドサッ
男の子D「か、勝手に人のベッドに腰掛けるなよ!」
上条「Aちゃん、お前に突き飛ばされた後ずっと泣いてたんだぞ?」
男の子D「……ッ」
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:09:26.92 ID:XqMpXJyJ0
上条「…………」ジ
男の子D「そ、そんなことをわざわざ伝えに来たのかよ。んな暇があるならみんなの相手してやれよ」
上条「理由がどうあれ、あんま女の子に暴力を振るうのは感心しないな」
男の子D「あ、あんたに説教される筋合いなんてないだろ」
上条「あのなぁ、女を殴るなんてのは男として最低の」
アニェーゼ『はぁっ!? あんたがそれを言いやがるんですか』
上条「」ギク
男の子D「ど、どうしたんだよ。いきなり黙りこくって」
上条「い、いや……別に」
シェリー『私を盛大に殴り飛ばしましたよね、糞痛かったぞゲロ野郎』
上条「……」ダラダラ
オリアナ『あんな強く叩きつけて意識まで飛ばされちゃって、もうお姉さんお嫁にいけないわぁ」
ヴェント『スン(↓)マセーン(↑)! 年頃の娘が野郎にグーパン食らっちまってスン(↓)マセーン(↑)!』
上条「……それはともかく、なんでAを突き飛ばしたりしたんだ?」フッ
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:19:37.03 ID:XqMpXJyJ0
男の子D「……あいつは、俺を可哀そうだって言いやがった」
上条「やっぱり、それが許せなかったのか」
男の子D「……同情されればされるだけ惨めになるのに」
男の子D「親に厄介者扱いされて、こんなところに預けられて」
男の子D「……その上、同じ境遇のやつにまで、あんなこと」プルプル
上条「あのさ、Aは悪気があってあんなこと言ったわけじゃないと思うぞ?」
男の子D「だとしても、傷を舐め合ってることには変わりないじゃないか」
上条「へえ、まだ子供なのにそんな言い回しよく知ってるな」
男の子D「ちゃ、茶化すなよ!」
上条「ああ、悪い。でもさ、傷を舐め合うのってそんなに悪いことなのかな」
男の子D「……え」
上条「だって、それって一人じゃ絶対にできないんだぜ?」
男の子D「……、」
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:28:28.87 ID:XqMpXJyJ0
上条「たとえわずかでも誰かが自分の支えになってくれて、自分が誰かの支えになれるってのは」
上条「結構幸せなことなんじゃないか?」
男の子D「ひ、一人の方が気が楽なやつだっているだろ!」
上条「……Dは、話し相手がろくにいないとどうなるか知ってるか?」
男の子D「し、知るかよそんなの」
上条「まず、言語中枢と声帯、聴覚の神経の働きが鈍って、咄嗟に言葉を返せなくなる」
上条「のみにとどまらず、いずれは腹筋や喉の筋肉まで衰えてきて声が細く小さくなっていく」
男の子D「……ッ」ゾッ
男の子D「そ、そうやってガキ脅して面白いのかよ。だいたい、あんたみたいなやつに俺の気持ちなんて」
上条「――そんな様子を見るに見かねて、両親は俺を学園都市に入れようと決意したんだ」
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:41:30.29 ID:XqMpXJyJ0
男の子D「え……あんたの、話?」
上条「ああ、ここだけの話だ」
上条「俺がおまえと同じか少し下くらいの年齢のときは、周りの連中から滅茶苦茶嫌われてた」
男の子D「……そ」
男の子D「そんな見え見えの作り話、しなくていいよ」プィ
上条「作り話?」
男の子D「そうに決まってる。あんたはどう見てもそういうタイプじゃ」
上条「だったらよかったけど、本当なんだな、これが」フッ
上条「友達は誰ひとりとしていないし、周りの大人には疫病神呼ばわりされてる有様でさ」
男の子D「や、疫病神? 大人まで? どうしてそんな」
上条「……だよな、普通疑問に思うはずだよな。どうしてみんなは俺を嫌うんだろうって」
上条「で、そのうちに原因は何となく理解できた。……けれど」
上条「問題を解決する方法なんてのは、どうしたって見つからなかった」
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:42:53.84 ID:XqMpXJyJ0
上条「文字通り腫物のように扱われてるうちに、疲れちまったんだろうな」
上条「俺は、全てを諦めちまった。誰かに近づかなければ、余計に傷つかずに済むから」
男の子D(……俺と、一緒だ)
上条「幼稚園じゃあ飯はいつもひとりで食べてた」
上条「担任の先生ですら俺を恐れてろくに声をかけてきやしなかった」
上条「お遊戯の時間なんて苦痛以外の何物でもない」
上条「自分がひとりぼっちだってこと、嫌でも突きつけられるから」
上条「楽しんでいる声を聞くのが苦痛で、ひそひそ話されるのがもっと苦痛で」
上条「ただ部屋の隅の方で縮こまって、じっと息を殺して、ひたすら時間が過ぎるのを待って」
上条「窓の外に意識を飛ばす。そんな毎日を繰り返してた」
上条「気が休まったのは、昼寝の時間くらいなもんさ」
男の子D「……な、何で」
上条「うん?」
男の子D「今のあんたは何で、そんなに明るいんだよ」
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 22:52:46.83 ID:XqMpXJyJ0
上条「……そうだなぁ。正直あまり実感はねえんだけど」
上条「おそらく周りの連中のおかげだったんだろう、とは思ってる」
男の子D「……なにそれ、ずいぶん適当なんだね」
上条「はは、返す言葉がねえな」
上条「でも、学園都市に預けた両親については、当時は恨んでいたと思う」
上条「まだ甘えたい盛りに親と離れて暮らすのは、やっぱし寂しいもんだからな」
上条「だから、ここにいる子たちの気持ちも、ちっとはわかるつもりだ」
男の子D「…………」
上条「俺は――なんていうか、これまで人間の汚い面、醜い面もいっぱい見る機会があったからさ」
上条「いつかおまえの親が迎えにきてくれるかも、なんて無責任なことを言うつもりはさらさらねえ」
上条「けどさ、俺から見てもここの園長さんや大吾先生は信頼できそうな人だし」
上条「ここにいる子たちだって、みんないい子たちだと思うぜ。もちろん、Aちゃんも」
男の子D「…………」
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:19:16.64 ID:XqMpXJyJ0
上条「あすなろ園には、今は元気そうに見えても、昔はそうじゃなかった子だって一杯いるはずだ」
上条「いや、きっと今だって実の親のことを忘れられない子がほとんどだろうな」
上条「だから誰よりお前の気持ちがわかるし、だから放っておけない」
上条「たとえ不器用で、思いをきちんと伝えきれてなくたって」
上条「お前の力になってやりたい気持ちに偽りはないと思う」
上条「そんな好意を無碍にしちまうのは、誰よりお前自身が、一番堪えてるんじゃないか?」
上条「俺はいったい何をやってるんだろう。そんなふうに思ってる自分が、どこかにいやしないか?」
男の子D「……お、俺は」グ
上条「……まっ、いきなりあれこれ言われてたって簡単には踏ん切りつかないよな」
上条「だから、ここから先は俺の独り言だ」
男の子D「……?」
上条「いつかまた、新しい子があすなろ園にやって来たとき」
上条「きっとその子も苦しんでる。今のお前みたいに」
上条「……たとえばDなら、その子になんて声をかけるんだろうな?」
男の子D「――――ッ!」
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:29:37.58 ID:XqMpXJyJ0
園長「今日は本当にありがとうございました」ペコ
黒子「いえいえ、こちらこそお世話になりました」ペコ
大吾「子供たちもお二人とたくさん遊べて大満足だったんでしょうね。みんなぐっすり眠ってしまって」
大吾「本当なら、お別れの挨拶もしたかったと思うんだけど」
黒子「また近い内に伺いますわ。次回は子供たちも交えて料理教室を、と上条さんと相談してまして」
園長「あら、素敵ね。私たちも交ざっていいのかしら?」
上条「もちろん、大歓迎っす。打ち合わせについては後日にこちらからメールで送ります」
上条「……」チラ
園長「そんなに気にしないでも大丈夫ですよ、上条さん」
上条「え……」
園長「D君には、後で私からもお話してみますので」
上条「……す、すみません。もしかしたら俺、余計なことしちまっただけかも」ポリ
園長「そんなことはありませんよ。真摯な心は年齢にかかわらず、ちゃんと伝わるものですから」フフ
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:32:11.58 ID:XqMpXJyJ0
上条「……どっと疲れたな」
黒子「……そうですわねぇ」
上条「保育って、やっぱり一筋縄じゃいかねえんだなぁ。それに、体力的にも精神的にもタフじゃないと」
黒子「これをほぼ毎日だなんて、園長先生は本当、尊敬に値するお方ですわね」
上条「今までにもDみたいなケースがあったんだろうな。全然動じてなかったし」
黒子「孤児全員の教師にしてお母様ですもの。肝っ玉が据わってなければやっていけませんわ」
上条「はは、そりゃそうだ」
黒子「……あの」
上条「ん、どした?」
黒子「本当の話なんですの?」
上条「何の話だ?」
黒子「……あなたの、幼少期のこと」
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:35:45.10 ID:XqMpXJyJ0
上条「……聞いてたのか。道理で、あの後よそよそしかったわけだ」
黒子「ごめんなさい。あなたがどんなふうに説得するのか、気になってしまって」
上条「いや、別に構わねえよ」
黒子「それで、どうなんですの?」
上条「んー、まー、本当らしい」
黒子「まるで、他人事みたいな仰りようですわね」
上条「当たらずとも遠からずだな」
黒子「……どうして、今まで話してくださらなかったんですの?」
上条「いやそりゃ、お前にだって触れられたくない過去の一つや二つあるだろ? おねしょしたとか、誰かに怪我させちまったとか」
黒子「そんなこととは比較にならないでしょう」
上条「そ、そうかな」
黒子「気を遣われるのが嫌でしたの? それとも、わたくしがその程度のことで上条さんを遠ざけると?」
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:44:25.10 ID:XqMpXJyJ0
上条「いやさ、実際園児の俺は遠ざけられていたわけで、あまり話す気には」
黒子「……信用していただけなかったんですのね」
上条「おいおい、むくれるなって」
黒子「むくれていませんの。上条さんに頼られない自分に不甲斐なさを感じているだけですの」
上条「い、いやだから。そもそもが、さっきの話自体虚言みたいなもんなんだよ」
黒子「……虚言? 先ほどの話が方便だと仰るんですの?」
上条「少なくとも、今の俺にとってはな。ちょいと話がややこしいんだよ」
黒子「今のご時世、本当かどうかなんて調べればすぐにわかりますのよ?」
上条「……はぁ、放って置いたら本当に調べかねないな」
黒子「さすが、わたくしのことをよくご存知ですわね」
上条「……わかった、認めるよ。確かにそういう事実はあった」
黒子「ほらごらんなさい! 適当なこと言って誤魔化したところでわたくしは全部」
上条「ただ、俺はそのことを歯牙にもかけちゃいねえ。これも事実だ」
黒子「お見通し――――なんですって?」
上条「より正確に言うと、そうやって扱われていたことにどういった思いを抱いていたかを、思い出せない」
黒子「ご、ご冗談を! それほどのことがあって記憶に残らないなんてことあるはずが」
上条「だから――肝心なその記憶が、なくなっちまったんだよ」ポリポリ
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/26(金) 23:53:43.03 ID:XqMpXJyJ0
黒子「……な」
上条「むしろ、隠しておきたかったのはそっちの方でさ」
黒子「何を、仰ってますの?」
上条「だから、さっきDに言ってやったことは全て伝聞なの。なんだよ、なんです三段活用」
黒子「で、伝聞って……」
上条「たとえば、幼少期の境遇を両親から聞いたり、当時の事件を自分で調べたりして」
黒子「事件?」
上条「以前、俺の不幸体質のことについて少し説明したろ?」
黒子「え、ええ……。確か生まれつきという話でしたわね」
上条「ああ。幼稚園に通い始めてから間もなく、見知らぬ男に背中を刺されたことがあったらしいんだ。今もその傷跡が残ってる」
黒子「……ッ」
上条「成長した今でこそある程度の不幸は跳ね返せるようになったけど、さすがに幼稚園児じゃ大人から逃げるのは無理だよな」
上条「そうやって怪我やトラブルが絶えなかった俺に巻き込まれるのを恐れて、みんながみんな離れてったってわけ」
上条「大人だって刃物で刺されちまったら普通に死ねるからな。無理ねえよ」
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:00:25.86 ID:t8h9KcE30
上条「とはいえ、そう考えるのは高校生で、記憶の消えている俺だからで」
上条「幼い上条当麻なら、むしろこう思ったんじゃないか、ってのを想像してDに伝えたわけ」
上条「だから、嘘とまでは言いきれない。俺の本心に違いはないから」
上条「でも、実体験の記憶が失われてる以上は虚言とも取れる。ややこしいけどそんな感じだ」
黒子「……に、にわかには信じがたいですが、仰ることは理解できましたの」
黒子「ですけど、記憶喪失? いったいいつ、何が原因で?」
上条「今年の梅雨くらいだったかな。ちっと厄介事に関わって、何とか事は収まったんだけど、記憶を司る脳細胞を破壊されちまった」
黒子「脳細胞って、それこそ質の悪い冗談じゃ」
上条「なーいーんーでーすーの」
黒子「で、ですけど、今もこうして普通に話せているじゃありませんの」
上条「黒子も脳医学関係は領域外か。俺が失ったのは主に思い出記憶ってやつみたいなんだ」
上条「知識や会話の仕方、体の動かし方なんかは特に問題ない。ただ――」
上条「自分が誰なのか、とか、学園にいた理由とかは、全く思い出せなかった。目が覚めたら外国にいたって感じだ」
上条(……本当は病院のベッドの上だけどな)
黒子「……そ、そのようなことが」フルフル
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:30:52.39 ID:t8h9KcE30
上条「困ったことにマジなんだよ、これが」
上条「何しろ、自分を生んでくれた両親の顔すら思い出せねえってんだから」ハハ
黒子「か、上条、さん」ブワ
上条「って、ちょお! なんでお前が泣きそうになってんだよ!」
黒子「だ、だって。そんなこと、思ってもみなくて」グシュ
上条「ま、待てまてまて! まじでそれは勘弁――」
――ムギュ
上条「え、お、く、くく、黒子さん!?」
黒子「……ごめん、なさい、興味本位でこんな、こんなこと」ポロポロ
上条「お、おいおい、大袈裟すぎるだろ! 泣くなんて勝気なお前らしくもねえ」
上条「そ、そうだ、少し前に両親と会う機会があったんだ」
黒子「……お父様と、お母様に?」スン
上条「ああ、実際に会ってみても戸惑うばかりで、まぁそれでも、思い出せないことに悲しくなったりはしなかったな」
上条「でさ、父さんも母さんもすげえいい人そうだったんだ。それに、親父が『俺の息子だっ』て認めてくれてさ」
上条「うん、まぁ、あんときは自分のルーツがちゃんとあるんだってわかって、正直ほっとしたかな」
黒子「……上条さん」
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/27(土) 00:36:44.66 ID:gyb5KWgl0
記憶の事を話すとはなかなかに意外
それだけ黒子の事を信頼してるってことか
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:37:17.50 ID:t8h9KcE30
上条「当事者以外にこのことを話したのは、今回が初めてだ。親にさえ伝えてない」
黒子「……ッ」
上条「なのにそんな辛気臭い顔されたら、もう誰にも話そうなんて思えなくなっちまうぞ?」
黒子「…………わ」
黒子「わかり、ましたの」ゴシゴシ
上条「ま、世の中何がどう転ぶかなんてわからないさ。もし仮に」
上条「上条当麻が記憶を失っていなければ、白井黒子とは出会えなかったのかもしれない。そうだろ?」
黒子「――――」
上条「もし、廃ビルでの一件でお前を助けられなかったら。そう思うと、今の状況は満更でもねえよ」
黒子「……ほ、本当、ですの?」オズ
上条「もちろん。ここんところ、お前のおかげで毎日が充実してるよ」
上条「昔の不幸を笑って話せるのも、今が幸せだからだと思うし」
上条「そんなわけでさ、黒子にはすごく感謝してるんだ。いや、感謝だけじゃなくて――」
――俺は白井黒子って女の子が、好きなんだと思う。
黒子「……ッ!?///」
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:49:59.81 ID:t8h9KcE30
上条「……って」
黒子(い、今のは、聞き違いでは……)
上条「……はぁ、やっと出てきやがりましたよ///」ポリ
上条「今まで何度言おうとしても、どうしても喉に引っかかっちまうんだよな」アーアーホンジツワセイテンナリ
上条「ったく、どんな魚の骨よりたちが悪いっての」チラ
黒子「……///」ポー
上条「あ、まぁ、迷惑だと思ったらいつでもフってくれ。俺の盛大な勘違いってことも」
黒子「……あ、あの、その///」パクパク
黒子(……ダ、ダメですの! 落ち着くんですの!)スーハースーハー
上条「く、黒子さん?」
黒子「はほっ、ほ、本当によろしいんですの? わ、わたくしで?」
上条「そ、それを訊くってことは……OKってことか?」
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 00:58:52.33 ID:t8h9KcE30
黒子「…………わ」
上条「……お?」
黒子「わ、わたくしはまだ中1ですし、胸の大きさも微々たるものですし!」
黒子「こういう性格ですからきついことも平気で口にしてしまいますし友人たちと喧嘩もしょっちゅうですし!」
黒子「ジャッジメントで以前のように急な呼び出しがかかったりとかしてものすごいご不便やご苦労をお掛けしてしまうやも――」
上条「やめやめ。つか、わざわざ短所ばかり並べなくても」ハハ
上条「俺の知ってる黒子は、自分に厳しくて、後輩とは思えないくらい頭の回転が早くて」
上条「曲がったことが許せなくて、大の男をあっという間にのしちまうくらい強くて」
上条「そのくせ分け隔てない優しさも持っていて、料理上手で」
上条「とってもお洒落で、少し意地っ張りなところもあるけど、そこがまた可愛らしくて」
上条「まぁ、なんつうか、何気ない仕草一つ取っても、俺の視線を丸ごとかっ攫っていくような女の子なわけですよ」
黒子「か、かかか、上条、さん///」
上条「だから、お前が俺の彼女になってくれたら、すげえ嬉しいなーとか言ってみたりして」
黒子「……ぁ///」ボシュッ
黒子(……ダ、ダメですの、抑えてないと顔が崩れてしまいますの///)バッ
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/27(土) 01:08:38.63 ID:t8h9KcE30
上条「って、やべえな、急に恥ずかしくなってきた。か、体がむずむずしちまう///」クル
黒子「ちょっ、ちょっと! どちらへ!」
上条「も、もし俺と交際してくれるんなら、今度会った時下の名前で呼んでくれ。それがOKのサインってことで――――じゃな!///」タッタッタッ
黒子「――まッ!」
――ヒュン
上条「……へ? ――どっわっ!」ムギュ
――ドサッ
上条「てて、あ、危ねえだろ! いきなり進行方向に転移するなんて」
黒子「……ご、ごめんなさい。……当麻、さん」
上条「……ッ」
黒子「こ、こここれで、契約成立ですわね///」ピト
上条「ちょ、く、黒子、くっつきすぎっつうか///」ググ
黒子「今引き剥がすのは禁止ですの! 見れた顔じゃないですの!///」シッカリ
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 22:57:50.61 ID:I7BaMo0v0
上条「ほ、本当に、いいのか? よく考えないで」
黒子「……なんですの? 中途半端な気持ちで口にしたんですの?」
上条「そ、そんなわけねえだろ。これでも一か月近く悩んでたっつうの」
上条「だけど、俺はやっぱり不幸体質な男で、そこはどうしたって変えられないわけで――ッ」ピト
黒子「今さら見当違いのことを言うのは、この口ですの?」ツツ-
上条「……く、黒子」
黒子「あなたは知るべきですの。今の告白が、わたくしをどれほど浮かれさせているかを」
――トクントクン
黒子「心臓は嘘をつきませんわ。こうしてあなたに抱き締められているだけで、十二分に幸せなんですの」ピト
上条「……ッ」
黒子「……黒子は、黒子は」
黒子「当麻さんのことを、心からお慕いしておりますの」
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:01:46.77 ID:I7BaMo0v0
上条「……へ」
上条「へへ、そっか」
上条「……今日は人生最良の日ってやつだな」ギュ
上条「……当麻さん、か。いい響きだなぁ」
黒子「も、もう、あなたってばほんと大袈裟ですのっ」
上条「今日くらいはいいのっ。好きな娘と名前を呼び合えるなんて、最高じゃねえか」
黒子(……好きな娘///)キュン
黒子「……あ、あの」オズオズ
上条「うん?」
黒子「も、もう一度、お願いしてもよろしいですの?」
上条「もう一度って……」
黒子「その、告白を」ドキドキ
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:08:28.93 ID:I7BaMo0v0
上条「ええ? ああいうのは一回こっきりが普通なんじゃ」
黒子「だ、ダメですの?」モジモジ
上条(……か、可愛い///)
上条「ま、まぁ、黒子の頼みなら仕方ねえな」
上条「……す、好きだ、黒子」
エコー(――好きだ――好きだ――好きだ)
黒子「……ッ///」プルプルプルプル
上条「……こ、こらこら! 自分で頼んでおきながらなぁに照れてんですかっ!///」
黒子「……あ、あら、当麻さんの胸元に変な虫がついてますの」
上条「へ、胸元? ど、どこだ?」バッ
黒子「――――んっ」クン
――チュ
上条「」
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:32:54.59 ID:I7BaMo0v0
黒子「……ッ///」バッ
上条「……お、お前」
黒子「……い、一応ファーストキスなんですからね」
上条(ほ、ほとんど不意打ちだったじゃねえか)ドギマギ
黒子「……だ、黙ってないで、なにか気の利いた感想はないんですの?」
上条(か、感想って言われてもな)
上条「……キスした相手の顔をまともに見れない黒子さん可愛――いでででッ!」ギュウウ
黒子「んもうっ、少しは真面目に答えてくださいなッ!///」バッ
上条「わ、悪い。でも、あれだな」
黒子「な、なんですの?」
上条「背伸びしながらのキスって、うまく説明できないけどなんかいいよな///」
黒子「……聞いたこちらがバカでしたの」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:50:46.25 ID:I7BaMo0v0
――後日
黒子「とぅんたららん、とぅとぅとぅ~♪」クルクルクル
寮監「ご機嫌だな、白井」
黒子「あっ、寮監様。お戻りでしたのね」
寮監「ああ、頼みは引き受けてくれたようだな。あすなろ園から礼状が届いたぞ」
寮監「お陰様でD君もすっかり馴染みましたとのことだ。わたしにはなんのことかさっぱりわからんが」
黒子「ええ、心当たりはありますの」
黒子(後で当麻さんにメール送っておかなきゃ。きっと喜んでくれますわね)
寮監「ところで、何かわたしに言い忘れていることはないか?」
黒子「え? ええと、門限はきちんと守ったつもりですけれど」
寮監「……ほう?」
黒子「も、もちろん寮監様が帰省なされている時もですわよ?」
寮監「なるほど、なるほど」ウンウン
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/28(日) 23:52:42.94 ID:I7BaMo0v0
黒子(……な、なんでかしら? 嫌な予感が止まらないですの)
寮監「……あのチケットを渡すとき、ちゃんと伝えたはずだな?」
寮監「あそこはわたしの知り合いがやっているレストランだと」
黒子「……え」ゾ
寮監「よりによってわたしが紹介したレストランで男とデートとは、いい度胸だ」
黒子「……あ……いえ、でも、それは」ダクダク
黒子「あ、そうですの! 用事を思い出しました――」ガシ
寮監「規則は、守るためにあるんだ。破るためのものではない」
寮監「よもや、言い訳はあるまいな」グググ
黒子「ま、待ってぇ――」
――ゴキッ!
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:34:54.57 ID:UyHAEZFc0
――レストラン
従業員『いらっしゃいませ』スッ
黒子『一週間前に電話で予約しました白井黒子と申しますの』
従業員『白井様……はい、承っております。どうぞこちらへ』
上条『……オイオイ、ずいぶんと本格的なレストランだな』
黒子『最近お会いできる時間が少ないですし、たまにはこういうのも悪くないでしょう』
従業員『お二人は未成年でございますね。お飲物は他のジュースに変更することもできますが』
黒子『いえ、コースのままでお願いしますの』
従業員『かしこまりました』
上条『つうか、中学生がシャンパンなんて飲んでいいのか?』
黒子『高校生だってダメですの。心配しなくともアルコールは1%未満と書いてありますわ』
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:36:25.35 ID:UyHAEZFc0
上条『ああそうだ。食事の前に見せたいものがあるんだけど』
黒子『あら、もしかして何かプレゼントですの?』パァ
上条『プレゼントっていうか、事後報告だな』スッ
黒子(……え)
黒子『……な、なんで当麻さんが、風紀委員の腕章を?』
黒子(わたくしのは……、カバンにありますわね)
上条『このたび第四十九支部で新人研修することになりました、上条当麻っす』ビッ
黒子『な、なんですって!?』
上条『まだ経験不足で何かとご迷惑をかけることもあると思いますが、ご指導のほどよろしくな、先輩』ニッ
上条『っとまぁ、まだ研修の段階だし、希望を出しても黒子の一七七支部に配属されるかはわかんねえけど』
黒子『さ、サプライズですの』
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:39:30.03 ID:UyHAEZFc0
上条『ほら、お前最近ずっと会える時間が少ないってこぼしてたし』
黒子『そ、それはっ……その……こ、ここまで望んでいたわけでは』モジモジ
上条『あれ、もしかしてありがた迷惑だったか?』
黒子『と、とんでもない! すごく、嬉しいですの///』
上条『んなら良かった。じゃあ――』
従業員『大変お待たせいたしました。差支えなければ料理の方、初めてもよろしいですか?』
黒子『は、はい』
従業員『それでは、前を失礼いたします』
――キュポンッ――――シュワワワワア
従業員『では、ごゆるりとお楽しみください』ペコ
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:46:48.96 ID:UyHAEZFc0
上条『さてと、何に乾杯しようか』
黒子『んん、そうですわね』
黒子『――二人の三年後に乾杯といったところでどうですの?』
上条『三年っていうと、お前は高等部、俺は社会人か大学生か。新たな転機にってわけだな』
黒子『そ、それもあるんですけれど』
黒子『お、大人の恋愛ができるまで、ちゃんとお付き合いできますようにって///』ポッ
上条『あ、な、なるほどな///』
黒子『も、もう始めますわよっ』
黒子『し、白井黒子と上条当麻の三年後に――』
上条&黒子『乾杯っ』tin
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:48:36.21 ID:UyHAEZFc0
――後日談
黄泉川『ふうん、あの坊やがそんなことをねぇ。それで白井がそれを信じたと』ニヤ
黒子『なんだか、含んだような言い方ですわね』チラ
黄泉川『スキルアウトの暴動直後にふらっと職員室に来てさ、風紀委員のことについて聞かれたジャン』
黒子『……え』
黄泉川『忘れたのか? 本来ジャッジメントの研修は修了するまでに数か月かかるじゃん』
黒子『……あっ』
黒子(そ、そうでしたわ。誰かの推薦があったからって、すぐに入れるわけじゃ)
黄泉川『きっと会うたびに怪我してるお前を見て、心配になったんジャン?』
黒子『で、ですけど、そんなこと一言も』
黄泉川『ま、そこでジャッジメントを辞めろって言わないあたりが大人っていうか、あの坊やらしいけどね』ニヤ
黄泉川『白井の意志は尊重したいから、せめて危ない時には傍で守ってあげられるようにって考えたんジャン?』
黒子『……もぅ、当麻さんったら』
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 08:54:25.63 ID:UyHAEZFc0
黄泉川『無能力者っていうから通せるかは微妙なとこだったけど、あの体術なら問題なさそうだ』
黒子『体術……』
黄泉川『ここんとこ、知り合いの道場に通い詰めていたらしいよ。確か、天草式とかなんとか』
黄泉川『今ならわたしとも結構いい勝負するジャン』
黒子『そ、そこまで強くなってたんですの?』
黄泉川『ありゃ今どきの男子にしちゃ、感心なくらいにストイックだね』
黄泉川『教育者の立場でこういうのもなんだけど、あんたたちみたいなのは見てると応援したくなるジャン』
黄泉川『ま、ああいう男の彼女ってのは、別の意味で大変そうだけどね』
黒子『……それは確かに、否定できませんわね』クス
黄泉川『ほぉ、それは両方とも、かい?』
黒子『――――ええ。両方とも、ですの』ニコ
――the end
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/10/29(月) 09:02:07.45 ID:UyHAEZFc0
これにてanother完結です
上条さんが黒子と付き合ったら十中八九ジャッジメントに入っちゃうだろうなと思ったのがそもそもの始まり
まさかこんなに長く続くとは思わなんだ
VIPから引き続いて多くの乙、支援のほどありがとうございました
また機会がありましたらノ
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/10/29(月) 18:36:12.05 ID:GYXQBEMto
乙です最高でした
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/10/29(月) 19:05:46.44 ID:D7kCaosV0
遅くなったが乙
ニヨニヨしちまったぜ
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/10/29(月) 19:07:14.48 ID:Q9dGi1Deo
乙
やはり上黒はいいものだ
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この記事へのコメント
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名前: うむ #JZSsvYOs: 2012/11/25(日) 13:58: :edit感動した!
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/25(日) 15:14: :editいやー楽しめた
良い休日になったわ -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/25(日) 15:34: :editわーい、黒子と上条だー。
黒子かわいいよ黒子
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/25(日) 16:23: :edit素晴らしい
-
名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/25(日) 16:44: :edit初春のふとももにおにんにんはさみたいよぉ
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/25(日) 20:36: :editこれが黒子√の一部ならPSP買うわ
-
名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/25(日) 20:49: :editやはり上黒に限るな
-
名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/25(日) 21:48: :edit008getだぜ!
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/25(日) 22:28: :editいいね
もうちょっと続いてほしかったけど流石に蛇足が過ぎるか… -
名前: あ #-: 2012/11/25(日) 22:36: :edit禁書のSSはあんま読まないけど、これは良かった。
バトルもイチャイチャも上手に書いてるし
乙乙! -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/26(月) 00:46: :edit黒子が上条さんと恋愛したらこんなんだろうなってのを
余すとこ無く書かれてて僕満足 -
名前: 名無し #oWe3P4HM: 2012/11/26(月) 02:25: :edit素晴らしい!>>1乙でした!
考えてみれば、黒子ってレズで変態じゃなけりゃすごくいいヒロインだよな。いやそこがいいところでもあるんだけど、原作準拠だと美琴一筋だし男と絡みようがないからね。そういう意味じゃ、上黒を違和感なく書き上げた>>1はすごい。黒子の可愛さに気付けただけでも読む価値があったなと思えるよ。 -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/26(月) 04:54: :editうん、文句なしで良作だったな。
久々にじっくり読んじまった。 -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/26(月) 21:46: :edit五和に体術を教わったことがバレて修羅場になるんですね
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/27(火) 13:56: :edit>>14
それでまた話が書けるな -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/11/28(水) 06:03: :editひさびさこめ!
よかった! -
名前: ゆとりある名無し #-: 2012/11/29(木) 12:39: :edit・・・グレィト!
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/12/02(日) 23:57: :editこんなに丁寧に書かれたSS読んだのはいつ以来か
良い物を読ませてもらった -
名前: 通常のナナシ #-: 2012/12/17(月) 20:02: :edit3年後が楽しみ・・・
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名前: 通常のナナシ #-: 2012/12/25(火) 12:23: :edit大変面白かったです!ゲームのエピソードに欲しいくらい
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名前: MCC #-: 2013/01/12(土) 11:23: :edit乙!
面白かったお☆ -
名前: 通常のナナシ #-: 2013/02/10(日) 16:10: :edit細かい所とかも良く出来てたわ。
あざーす! -
名前: 通常のナナシ #-: 2013/03/09(土) 14:13: :edit上黒最高ですの!!
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名前: 通常のナナシ #-: 2013/03/09(土) 17:36: :edit続きが・・・見たいぜ
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名前: あ #-: 2013/03/21(木) 02:43: :edit3年後のストーリーを是非
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名前: 通常のナナシ #-: 2013/05/16(木) 21:45: :editこれは素晴らしい上黒……!!
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 黒猫 白猫Ver.