
有権者の代表として選ばれた「議会」への不信が深まっている。
私たちの意見をどうすれば社会に反映させられるのか。
この記事では、以下の内容を知ることができます。
・くじ引きで気候市民会議のメンバー選んだ世田谷区の取り組み
・140を超える市民の提案が実現したパリの成果
・くじ引きで参院議員? どこまで広げられるか
次の関連記事があります。
私たちのことは自分で決める
議会反発でついえた市民参加
政治や行政に参加する方法は、選挙以外にもある。パブリックコメントを書いてもいい。議会に陳情や請願を出すこともできる。
だが、そこには「声を上げるのはいつも同じ人」という課題がある。こうした制度を使うのは、一部の「意識の高い人」や「利害がある人」ばかりという点だ。
対して、世の大多数は積極的に発言をしない。サイレントマジョリティーと呼ばれる存在だ。「私たちが本当に聞きたいのは、そういう人たちの声です」と東京都内のある自治体職員は言う。
そこで、こんな取り組みがある。
92万人から選ばれた55人
2024年11月、東京都世田谷区で4000軒の家のポストに縦長の茶封筒が一斉に届いた。
差出人は区環境計画課。中に入っている案内文は、こんなタイトルだった。
「気候市民会議の実施及び会議参加のご案内」
受け取って「なぜ私に?」と驚いた人もいただろう。送り先は完全なランダムで選ばれた。
区は25年1月から区民による「気候市民会議」を3回開く。テーマは、各家庭でどうしたら再生可能エネルギーの利用が進むか。最後に区への提言をまとめる。そのメンバーを集めるために区の取った手法が「くじ引き」だった。
「ただ単に募ると、環境問題に関心がある人や時間に余裕のある高齢の方が多くなるでしょう。一方で30代の働き盛りの人は忙しくて、あまり手を挙げない。そもそも普段は区政に関心のない人が多い。でも、そんな人にこそ意見を言ってほしくて、設ける場なんです」と上原雅三・環境計画課長は説く。
住民基本台帳から乱数表で抽出した4000人に送った案内には、250人から応募があった。区は、その中からさらに性別や年代、職業、居住エリアが区民全体と同じような構成比になるよう55人を選定した。全区民92万人を模した「ミニ世田谷区」をつくるイメージだ。
「関心は強くないけど個別に呼びかければ『行こうかな』と思う人も来るでしょう」(上原課長)という効果を狙う。
OECD「市民に真の発言権」
このように選挙でも公募でもなく、無作為に選んだ市民から意見を募る手法は「くじ引き民主主義(ロトクラシー)」と呼ばれる。
アイルランドでは13年から、無作為抽選で選ばれた一般国民が国会議員と共に議論し、憲法改正案を練り上げた。ベルギー東部のドイツ…
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