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若者政策-返還義務のない給付型奨学金制度の創設

日記
07 /01 2016
社民党はこれまでも「すべての若者に『ホーム』を」を旗印に、(非正規雇用、ブラック企業など労働環境の悪化など)グローバリゼーションの結果としての若者の「生きづらさ」を具体的に解決し、真に若者が生きやすい社会を実現するための政策を主張してきた。

すべての若者に「ホーム」を(社民党の若者政策)

今回の参院選公約・総合版でも、この若者政策には特に一章を設けている(Change3. 若者)。

これらの政策課題の中で、福島候補、森候補が街頭演説で常に訴えていることの一つが、「返還義務のない奨学金制度の創立」だ。

○教育の機会均等を保障するため奨学金・育英制度を充実させます。奨学金は無利子を原則とし、返済滞納時の滞納金も悪質な例外を除いて課さないことにします。現行の「所得連動返還型無利子奨学金制度」は有利子奨学金利用者や返還中の旧利用者も含むより柔軟な制度に転換し、20年~25年継続して返還した者に対しては残債務の返還を免除する制度を設けます。

○国の制度として返還義務のない給付型奨学金制度を創設します。


現在、日本には、この「返還義務のない奨学金(給付型奨学金)」がどれくらいあるのか? 答えは驚くなかれ、0(ゼロ)である。筆者のような「団塊世代」には、これを聞いてびっくり、という人が多いだろう。当時は、学業成績優秀な学生に対して給付される(返還義務のない)奨学金があったし、返還する必要がある(貸与型)奨学金でも、教員や公務員職で一定期間努めれば、返還が免除されたからだ。

そんな団塊世代にとって、今の若者が直面している困難な状況は想像を絶する。現在、奨学金はすべて貸与制で、しかもそのほとんどが有利子。つまり実質的には紛れもない「学生ローン」であって、奨学金とはとても呼べないものだ。

具体的なデータを見てみよう。今の日本では、大学生の半数以上(2012年で52.5%)が「奨学金」を「借りて」大学に通っている。その利率は年3%。「ローン」であるから、卒業後は借りたお金を「日本学生支援機構」に返済しなければならない。返済期間は20年間。例えば月に10万円の「奨学金」を借りた場合、4年間で480万、これに利子が付くので、卒業時には500万円近い借金を背負うことになる。

それでも月々の返済が滞りなく出来れば良いが(正社員になることができず、非正規雇用の職にしかつけなかった場合、この月々の返済は大きな負担となる)、何等かの理由で返済金を滞納した場合、「延滞金(なんとこの利子が10%!)」が課され、負担はさらに重くなってしまう。

さらに3か月延滞すると、いわゆる「ブラックリスト(個人信用情報機関の延滞者リスト)」に登録され、クレジットカードなども作れなくなってしまう。延滞が9か月におよぶと、裁判所から支払督促を申し立てられることになる。この裁判所からの支払督促を受けた滞納者が2012年には1万人を突破し、大きな社会問題となっている。

社会に出たばかりの若者に対して、こういう厳しい「取り立て」をする「学生支援機構」とは一体何なのか。市井のサラ金会社と、実質的に違いがないではないか。

若者が借金の返済に苦しみながら生きていかなくてはならない、このような事態は、何としてでも解決しなければならない。その手段の一端が、社民党が主張する「無利子化」や「返還義務のない奨学金(給付型奨学金)」制度の導入だ。つまり「教育は個々の家庭の負担で行うのではなく、社会全体が負担して次世代を育てる」ということだ。

この問題に対する政権の動きはどうか。「ニッポン1億総活躍プラン」では、給付型奨学金制度の設立は財源を理由に、「検討する」という文言を示しただけで、実質的に導入を先送りした。

「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)

毎日新聞は(閣議決定の前だが)以下のように報じている。

「給付型」見送り…政府、年末の予算編成で判断

結局、現政権は財源不足を理由に、やる気がないことが見え見えだ。社民党は、この参院選に勝利し、「給付型奨学金制度」の創立に向けて戦っていく。

(2016-7-1)