2015年07月21日 15:55
インパクトファクターから見た生命科学の傾向
2014年のインパクトファクターが発表された。近年、新しいジャーナルの発行が相次ぎ、ジャーナル間の競争が激しくなっている。競争を生き抜く鍵はインパクトファクターを上げることにある。そこで必死になってインパクトファクターをあげようとするのだが、歴史のない新興雑誌はそうもいかない。NatureやCellの姉妹紙は出せばほぼ高いインパクトファクターを獲得し、成功している。また学会で出版している古くからあるジャーナルが軒並み苦戦しているのも目立つ。
基礎医学、生物学での上位ジャーナルは相変わらずNature, ScienceとCellが占めた。NatureのIFは41.456で他の2誌、Science (IF:33.611)及びCell (IF:32.242)と水をあけてtopを独走するようになった。続いてIF 20以上はNat Methods (32.072), Nat Gent (29.352), Nat Med (27.363), Can Cell (23.523), Cell Stem Cell (22.268), Immunity (21.561), Nat Immunol (20.004)と全てNatureとCellの姉妹紙が独占した。さらにNat Cell Biol (19.679)と続いて、ここで初めてNature, Cellの姉妹紙以外のアメリカの癌学会が新たに出したジャーナル、Can DiscoveryがIF:19.453に登場してきた。その後もCell Metabo (17.565), Nat Neurosci (16.095), Neuron (15.054)とIF 15以上をNature, Cellの姉妹誌が独占状態。
IF:15以下でやっと他のジャーナルが出始め、Circulation (14.43), PLOS Med (14.429), System Biol (14.387), Mol Cell (14.018), Nat Struc Mol Biol (13.309), J Clin Invest (13.215), Nat Chem Biol (12.996), JNCI (12.583), J Exp Med (12.515), Cell Res (12.413)と続き、最近の流行を反映してAuthophagy(11.753), そしてNat Commun (11.47), Am J Human Genet (10.931), Mol System Biol (10.872), Genome Biol (10.798)となる。Gene Devは随分ランクを落とし、今やIF:10.798となった。Blood (10.452), EMBO J(10.434)はかろうじて10点内に止まった。
一方、J Cell Biol (9.708)は10点以上に返り咲けなかった。Dev CellはCellの姉妹紙といえどIF:9.70と、いつの間にか10点以下に落ちてきた。昔の名門誌Proc Natl Acad SciもIF:9.674と10点に届かない。
Nat Protoc (9.673), Curre Biol (9.571), PLOS Biol (9.343), Can Res (9.329), Nucleic Acid Res (9.112), EMBO Rep (9.055)と続く。アメリカの癌学会誌はCan Discovery(19.453)とCan Res(9.329)とも高いIFを示している。またCellから出されているCan Cell(23.523)も非常に高いIFを示し、がん関係のジャーナルのIFの高さが際立つ。 さらに、Oncogene (8.467), Cell Report (8.358), Cell Death Differ (8.184)が8点台。これから下は多くの専門誌がひしめき合って、全てを記述するのは大変なので、顔なじみのジャーナルに限って紹介する。
PLOS Pathog (7.562), PLOS Genet (7.528), J Pathol (7.42)), Mol Cell Proteom (6.564), Stem Cell (6.523), Development (6.462), J Neurosci (6.344), Sci Signal (6.279), Genet (5.963), Struct (5.618), J Cell Sci (5.432), BBA Mol Biol Lipid (5.162), FASEB J (5.43), BBA Mol Cell Res (5.019), J Immunol (4.922), Mol Cell Biol (4.777)と続き、 昔の生化学雑誌の雄、J Biol Chem (4.573)はついに5以上になれず。アメリカの細胞生物学会誌のMol Biol Cellは IF:4.466とJCB (9.708)に比べかなり低い。J Virology (4.439), J Lipid Res (4.421)と続き。 Biochem J. (4.396)は一時JBCより上にあったがまた抜き返された。さらにCell Signal (4.315), FEBS J (4.001), Metabolomics (3.855), Proteomics (3.807). Cell Commun Signal (3.378), PLOS ONE (3.234), FEBS Lett (3.169), BBRC (2.297)となる。.
日本で出しているジャーナルではCancer SciがIF:3.523でトップを維持している。ついでGene Cell (2.805), J Biochem (2.582)で最下位はCell Struc Funct (1.684)と1点台になってきた。
ここ近年の傾向は昔からある名門雑誌の凋落ぶりが目立つ。JBCは1999年には7.666であったのに、今や4.573となってしまった。一方成功したジャーナルとして御三誌の中でもNatureがあげられる。Nat, Cell, Sciと比較すると1999年にはCellがダントツでIF:36.242, ついでNature IF:29.491 でScienceは IF:24.595, であった。それが2004年にはCell (28.389), Nature (32.182), Science (31.853)とNatureがIFをどんどん伸ばし始め2012年、Cell (31.957), Nature (38.597), Science (31.027)となり、2014年にはNatureは40点を突破して、41.415, 一方Cellは32.242でScience は33.611となり、Natureの独走状態に入った。
何がこの差を生んだのか?Natureがデータの綺麗さや信用性を要求するのは当然であるが内容が面白い生命現象を扱っていて、originalityの高いことが必須である。一方、Cellも内容のユニークさ面白さも必要であるが、何よりもデータの信頼性を要求し、細かい点に至るまでの実証を要求する。ともすれば内容はそれほどでもないのに、がっちりと固めた膨大なデータがあれば掲載されている傾向がある。
また一方の成功例として、印刷物をなくし、on-line ジャーナルに徹したPLOSグループがある。 PLOSグループのジャーナルを見ると、PLOS Med (18.649)を先頭に、PLOS Biol (9.343), PLOS Gent (7.528), PLOS Pathog (7.562),PLOS One (3.234)としっかりとした地位を築きつつある。
日本のジャーナルはなかなか世界に食い込めなく、悪戦苦闘している。せめてCan Sci (3.525)くらいまでGene Cellや JBは上がってもらいたいものである。
2014年のインパクトファクターが発表された。近年、新しいジャーナルの発行が相次ぎ、ジャーナル間の競争が激しくなっている。競争を生き抜く鍵はインパクトファクターを上げることにある。そこで必死になってインパクトファクターをあげようとするのだが、歴史のない新興雑誌はそうもいかない。NatureやCellの姉妹紙は出せばほぼ高いインパクトファクターを獲得し、成功している。また学会で出版している古くからあるジャーナルが軒並み苦戦しているのも目立つ。
基礎医学、生物学での上位ジャーナルは相変わらずNature, ScienceとCellが占めた。NatureのIFは41.456で他の2誌、Science (IF:33.611)及びCell (IF:32.242)と水をあけてtopを独走するようになった。続いてIF 20以上はNat Methods (32.072), Nat Gent (29.352), Nat Med (27.363), Can Cell (23.523), Cell Stem Cell (22.268), Immunity (21.561), Nat Immunol (20.004)と全てNatureとCellの姉妹紙が独占した。さらにNat Cell Biol (19.679)と続いて、ここで初めてNature, Cellの姉妹紙以外のアメリカの癌学会が新たに出したジャーナル、Can DiscoveryがIF:19.453に登場してきた。その後もCell Metabo (17.565), Nat Neurosci (16.095), Neuron (15.054)とIF 15以上をNature, Cellの姉妹誌が独占状態。
IF:15以下でやっと他のジャーナルが出始め、Circulation (14.43), PLOS Med (14.429), System Biol (14.387), Mol Cell (14.018), Nat Struc Mol Biol (13.309), J Clin Invest (13.215), Nat Chem Biol (12.996), JNCI (12.583), J Exp Med (12.515), Cell Res (12.413)と続き、最近の流行を反映してAuthophagy(11.753), そしてNat Commun (11.47), Am J Human Genet (10.931), Mol System Biol (10.872), Genome Biol (10.798)となる。Gene Devは随分ランクを落とし、今やIF:10.798となった。Blood (10.452), EMBO J(10.434)はかろうじて10点内に止まった。
一方、J Cell Biol (9.708)は10点以上に返り咲けなかった。Dev CellはCellの姉妹紙といえどIF:9.70と、いつの間にか10点以下に落ちてきた。昔の名門誌Proc Natl Acad SciもIF:9.674と10点に届かない。
Nat Protoc (9.673), Curre Biol (9.571), PLOS Biol (9.343), Can Res (9.329), Nucleic Acid Res (9.112), EMBO Rep (9.055)と続く。アメリカの癌学会誌はCan Discovery(19.453)とCan Res(9.329)とも高いIFを示している。またCellから出されているCan Cell(23.523)も非常に高いIFを示し、がん関係のジャーナルのIFの高さが際立つ。 さらに、Oncogene (8.467), Cell Report (8.358), Cell Death Differ (8.184)が8点台。これから下は多くの専門誌がひしめき合って、全てを記述するのは大変なので、顔なじみのジャーナルに限って紹介する。
PLOS Pathog (7.562), PLOS Genet (7.528), J Pathol (7.42)), Mol Cell Proteom (6.564), Stem Cell (6.523), Development (6.462), J Neurosci (6.344), Sci Signal (6.279), Genet (5.963), Struct (5.618), J Cell Sci (5.432), BBA Mol Biol Lipid (5.162), FASEB J (5.43), BBA Mol Cell Res (5.019), J Immunol (4.922), Mol Cell Biol (4.777)と続き、 昔の生化学雑誌の雄、J Biol Chem (4.573)はついに5以上になれず。アメリカの細胞生物学会誌のMol Biol Cellは IF:4.466とJCB (9.708)に比べかなり低い。J Virology (4.439), J Lipid Res (4.421)と続き。 Biochem J. (4.396)は一時JBCより上にあったがまた抜き返された。さらにCell Signal (4.315), FEBS J (4.001), Metabolomics (3.855), Proteomics (3.807). Cell Commun Signal (3.378), PLOS ONE (3.234), FEBS Lett (3.169), BBRC (2.297)となる。.
日本で出しているジャーナルではCancer SciがIF:3.523でトップを維持している。ついでGene Cell (2.805), J Biochem (2.582)で最下位はCell Struc Funct (1.684)と1点台になってきた。
ここ近年の傾向は昔からある名門雑誌の凋落ぶりが目立つ。JBCは1999年には7.666であったのに、今や4.573となってしまった。一方成功したジャーナルとして御三誌の中でもNatureがあげられる。Nat, Cell, Sciと比較すると1999年にはCellがダントツでIF:36.242, ついでNature IF:29.491 でScienceは IF:24.595, であった。それが2004年にはCell (28.389), Nature (32.182), Science (31.853)とNatureがIFをどんどん伸ばし始め2012年、Cell (31.957), Nature (38.597), Science (31.027)となり、2014年にはNatureは40点を突破して、41.415, 一方Cellは32.242でScience は33.611となり、Natureの独走状態に入った。
何がこの差を生んだのか?Natureがデータの綺麗さや信用性を要求するのは当然であるが内容が面白い生命現象を扱っていて、originalityの高いことが必須である。一方、Cellも内容のユニークさ面白さも必要であるが、何よりもデータの信頼性を要求し、細かい点に至るまでの実証を要求する。ともすれば内容はそれほどでもないのに、がっちりと固めた膨大なデータがあれば掲載されている傾向がある。
また一方の成功例として、印刷物をなくし、on-line ジャーナルに徹したPLOSグループがある。 PLOSグループのジャーナルを見ると、PLOS Med (18.649)を先頭に、PLOS Biol (9.343), PLOS Gent (7.528), PLOS Pathog (7.562),PLOS One (3.234)としっかりとした地位を築きつつある。
日本のジャーナルはなかなか世界に食い込めなく、悪戦苦闘している。せめてCan Sci (3.525)くらいまでGene Cellや JBは上がってもらいたいものである。
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