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接着剤はなぜくっつくの?

2013年01月28日 17:50

接着剤

小ちゃい頃から糊、セメンダイン、アロンアロファと色々な接着剤を使って様々なものをくっつけてきた。頻繁に使っている割には、接着剤がなぜくっつくのかなどの原理なんか考えてみた事も無かった。多分接着剤が何故くっつくのかということに疑問を抱いた事がある人は研究者としてのセンスがあるのかもしれない。身近にある科学的現象なのに疑問にすら思わなかった者(自分を含めて)は研究の素質がないのかもしれない(今更分かってもどうしようもないが)。

遅まきながら接着のメカニズムを調べてみた。

接着とは「接着剤を媒介とし、化学的もしくは物理的な力またはその両者によって二つの面が結合した状態」を言うのだそうだ。接着には1.機械的結合 2.物理的相互作用 3.化学的相互作用 の3つがある(参考Wikipedia)。

1. 機械的結合とはアンカー効果とか投錨効果とも言われ、材料表面の凹凸に液状接着剤が入り込んで、そこで固まることによって接着が成り立つと言う考え方。木材や繊維、皮等の吸い込みのある材料の接着を説明するのに有効。

2. 物理的相互作用とは分子間力(ファン・デル・ワールス力)をいい、2次結合力ともいって接着剤の 基本的原理とされる。物体と物体とがナノサイズ的に近づけば、つまり完全にすき間なく密着させただけで接着剤などなくても強力に接着する。つまり物体の表面は電気的に中性にみえても、局部的に分子の+、-の偏位があり、それが静電気的に引き合い、強力な磁石のように離れなくなる。ヤモリの足が微細構造で壁や天井にくっつくのがこれだ。

3. 3つ目の化学的相互作用とは、一次結合力と言って最も強い接着力が期待される共有結合や水素結合を言う。接着剤と被着材が化学結合(共有結合、水素結合、共重合、縮合反応、付加反応)をする接着する。イソシアネート、エポキシ、シランカップリング処理などがこの例とされる。接着剤自体も硬化剤を使用して化学反応することになり、最も強い接着力を実現する

接着のプロセス

接着の原理から言えば接着剤と被着材はその分子間力の及ぶ範囲に接近していなければならない。
ここで「ぬれ」と言うことがだいじになる。油の上に水を落としても水は拡がらないがそれは相溶性(親和性)が悪いから。 相性がよく、馴染みがよい時に「ぬれ」が起り、そこに分子間力が働き接着が可能になる。 ポリエチレンやポリプロピレンは油のような性質をもっているために接着が困難と言うわけです。 接着剤は被着材の表面をぬらして拡がった後、固まって始めて接着が完了する。
ちなみに石の硬さなんかもこの化学結合に関係している。共有結合でガッチリ結合したモノがこれまた、ガッチリと結晶を形成すれば、もの凄く 硬くなるワケですが、普通に2つの固体材料をすり合わせてもくっつきませんこれでは分子間の距離が離れすぎているんです。平らに見える固体材料も分子レベルで考えればガタガタな表面状態なわけで、化学結合の効果を期待するには数nmの距離に近づく必要があり、接着力といえるほどの力を生み出すためにはすり合わせるだけでは全然足りないわけです。よって、接着剤は共通して液体(粘度の差はあるが)です。液体であればこの距離に充分入りこめ、化学結合力によって固体材料に吸着し、接着剤自体が硬化すれば見事に”接着”されるというわけです。

ダイヤモンド [炭素(C):立方晶形結晶] なんかは とんでもなく硬い。そのダイヤモンドを作るには地球内環境と同じ状態の高圧(10万気圧)高温(1600 度)下に炭素を置く(これを高圧合成法という)ことで分子同士を限りなく近づけて共有結合を作り出して接着力を生み出している訳です。


昔から使われている接着剤

昔から使われている接着剤にニカワがあります。「膠」と書きますが、昔は「煮皮」と書かれたように、獣類の皮や骨、腸、爪などを煮出した液を分離・冷却し、さらに乾燥させてつくります。主な成分は、タンパク質です。乾燥させたものを水につけてから加熱してとかすと、接着剤になります。
中国では紀元前4000年頃、エジプトでは紀元前3000年頃から、ニカワが接着剤として使われていました。古代中国の古墳や、古代エジプトのピラミッドから発見された棺や家具、美術工芸品などに、それを見ることができます。膠は、動物の皮革や骨髄から採られる強力な糊です。主成分は、コラーゲンという蛋白質の一種です。 
本来、接着剤としての用途が中心ですが、絵具や絵画下地のバインダー、また、膠をさらに純粋に生成した「ゼラチン」は食用や写真用にも使用されます。
コラーゲンといえば最近流行の肌の瑞々しさを保つために使用されています。骨は、コラーゲンの線維を網の目のように張り巡らし、これをムコ多糖たんぱく質)という糊で固めます。その骨組みにカルシウムやリンなどを沈着させます。更に体の中でのコラーゲンの役割は、細胞と細胞をつなぎ合わせる、いわば接着剤。細い紐状のコラーゲンは、架橋といって、互いに橋を掛け合って結びつく性質があり、これにより細胞同士をしっかりとつなぎ合わせています。コラーゲンは生体内でも人工的に使われてもいい接着剤なのです。
古くから用いられていた接着剤として、漆もあげられます。

 漆といえば輪島塗に代表されるように、現在は塗料としての用途が一般的。また英語で漆器のことを「japan」と言うように、国際的にも日本の漆は有名ですが、古くは主に接着剤として使われていました。
 漆の原料はウルシの木からとれる樹液です。これを、中国では紀元前2000年頃から顔料の結合剤として使用していました。
漆液は、ウルシオール、ゴム質、含窒素物、水分等から構成される。漆の主成分はウルシオールとラッカーゼで、ウルシオールが多いほど質の良い漆。ウルシオールを含んでいる割合は日本産の漆で約66%、中国産で61~63%、ベトナム産で約34%。ペンキや洗濯物は中の水分や溶剤が蒸発して「乾く」が、漆は主成分のウルシオールと酸化酵素ラッカーゼとの反応で塗膜を作る。漆の乾燥とは、酵素が高分子を作るということ。漆を塗った漆器は見た目もよくなお強固になることで物理的に弱い材料で出来ている木工品によく使われる。

要するに接着剤は2つの物の間にしみ込んで分子間力の及ぶように限りなく近づき、更には化学結合なども起こして固まり2つの物を接着させる。


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