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STAP騒動 第2幕開演

2016年05月24日 12:20

STAP細胞その後
  
 STAP細胞騒動から早いもので2年が経った。STAP 細胞論文の筆頭著者であり、STAP細胞捏造の責任をとらされた小保方晴子氏が反撃の狼煙をあげ「あの日」という本を出版した。さらにヨーロッパや米国でSTAP 細胞再現か?の論文が出された。

 1. 小保方著 「あの日」

 彼女が出した本「あの日」には詳しくSTAP細胞作成の過程、論文作成に至るまで、疑惑の出現、論文撤回、過剰なほどの彼女へのバッシングなどが書かれている。この本は彼女による主張が一方的に書かれているので、鵜呑みにすることはできないが、それなりの彼女の主張は認められる。

Natureの論文の著者は順に小保方、若山、笹井、小島、Vacanti, M., 丹羽、大和、Vacanti, CAとなっており、Corresponding authorは小保方とVacanti, CAとなっている。Contributionとして論文を書いたのは小保方、笹井となっており、小保方、若山、笹井が実験したと記述されている。そしてプロジェクトを立案したのが小保方、若山、笹井、丹羽、Vacanti, CAとなっている。
これを踏まえると、笹井氏は実験には関わったとは思われないので、実質小保方さんと若山氏がほとんどの実験をしたと思われる。実験は大きく分けてSTAP細胞の分離とES様の株価細胞(STEM Cell)確立のためのin vitroの実験とマウスを使ってテラトーマ、作成とキメラマウス作成に分けられる。小保方さんはそのうち体細胞を用いて低PHで処理してSTAP細胞を作る実験にしか関わってなく、後は若山氏がすべてやったつまりSTAP細胞研究の主導権は、途中から若山照彦・山梨大教授が握っていた、と小保方氏は主張している。
しかしすでに本実験で用いられたのはSTAP細胞から得たES様細胞ではなく、ES細胞そのものだと断定されているので、STAP細胞とES細胞のすり替えを行ったのは誰かということであるが、これまでに、それを行ったのは小保方さんだと決めつけられている。実際に小保方さんがすり替えをおこなったのであろうか?
 論文上で、博士論文に使用した図を用いたり、電気泳動のバンドに細工をしたりしていて、これは明らかに小保方さんの責任でなされたものであるので、論文不正が行われていることは明らかである。彼女はこれはあくまで図の取り違えをした単純なミスで、バンドの細工は結果が変わらなければやってもいいと思っていたと言っているが、それは理由にならない。論文においては明らかに彼女に撤回の責任がある。
 
 STAP細胞研究の主導権は、途中から若山照彦・山梨大教授が握っていた、と小保方氏は主張する。若山氏は、理研の特許部門に特許配分案を提案しているが、その内訳は、小保方氏に39%、ハーバード大のチャールズ・バカンティ氏と小島宏司氏に5%、そして若山氏自身に51%だったと小保方氏は明らかにしている。この数字を見るだけでも、誰がメインプレーヤーだったかは明らかだろう。
一方で、「私が発見した未知の現象は間違いがないものであったし、若山研で私が担当していた実験部分の『STAP現象』の再現性は確認されていた」とも主張しており、STAP現象がすべて否定されたことへの不満を漏らしている。しかし、理研の外部における検証実験でSTAP現象が確認されなかったことに対しては、なんの言及もしなかった。また小保方氏自身も再現に成功していない。

 小保方氏が毎日作って渡してた スフェア 細胞塊をバラバラにしてからキメラマウスを作ろうとしてずっと失敗し続けてた若山氏が、スフェアをマイクロナイフで小さな細胞塊にして初期胚に注入すると言い出してから僅か10日でキメラマウス作りに成功し、次いでそのスフェアの残りの細胞を ES 細胞用の培養液を使って培養することにも 成功するが、それまで幾ら小保方氏が培養しようとしてもそんな兆候は微塵も見られなかったので、小保方氏がそのことを若山氏に訊くと、若山氏は笑って 「 特殊な手技を使ってるから僕がいなければ再現は出来ない」と豪語したのだそうだ。だからこそ若山氏は、STAP 研究に疑いが生じると間もなく「 小保方氏は自分の渡したマウスを使っておらず、別のマウスとスリ替えた 」とか 「 私は小保方氏に裏切られた 」という、暴露証言を、マスメディアに対して大々的に語り始めた。小保方氏は同書の中で、STAP細胞「捏造」疑惑を仕組まれたものと真っ向から反論し、STAP細胞の作製は論文の共著者である若山氏が主導していた主張している。

 これに対して、ほとんどのマスコミは「小保方氏は自分に都合よく事実を歪曲し、不利な事実にふれていない」「若山氏に罪を押し付け、自分をマスコミ報道の被害者として演出している」と反発し「この本もSTAP細胞同様、小保方さんの妄想と捏造でつくられている」とした。
 一方、ネットでは、意外にも小保方支持が少なくない。もともと、ネット上では、一部の研究者が、マスコミ報道や若山氏の主張の問題点をしきりに指摘していたのだが、同書の出版を契機に、こうした論考も改めてクローズアップされ、「やっぱり若山氏が黒幕だったのか」「小保方さんはすべての罪を押し付けられた被害者だった」という見方も一気に広まっている。

  2. 新たなSTAP細胞作成

 何が正しくて何が正しくないのか?真相は闇の中だが、最近になってSTAP細胞に関して新たな展開が見られた。ドイツのハイデルブルグ大学のStefan WolflらはSTAP細胞様の現象を見出したというのだ。
BBRC (472, 585-591, 2016): Modified STAP conditions facilitate bivalent fate decision between pluripotency and apoptosis in Jurkat T-lymphocytes.
この論文によれば、pH 3.3(Obokata conditionでは5.7)という厳しい条件での処理でほとんどの細胞はアポトーシスをおこし、万能細胞のマーカーであるOct4の発現は見られなかった。しかし生き残った細胞では別のマーカーであるアルカリホスファターゼ(AP)の発現の確率が増していた。pH3.3での処理で細胞はアポトーシス細胞または万能細胞へと移行するのではないかと言っている。小保方実験との違いは①異なる酸性条件とバッファーを用いてpHを厳密にコントロール ②使用した細胞がガン細胞(ある程度の初期化がすでにかかっている可能性がある)。
この論文ではただSTAP細胞作成の条件を検討しただけにすぎないし、これをもってSTAP細胞があるとはいえない。日本ではSTAP細胞の特許は放棄したが、なぜかハーバード大学はしっかり、特許を申請したままである。またしつこく、STAP細胞を追求している人がいて、あちらこちらからいろんな情報がまた出始めていることは間違いない。

ゲノム編集技術の応用が始まった

2016年03月09日 16:07

遺伝子改変が簡単に(いい面と悪い面)

今までの品種改良は偶然に生じる遺伝子の変化によって、長い間かけて少しづつ改良を重ねていくということで行われてきた。しかし最近開発されたCRISPR/Cas9系ゲノム編集技術を持ってすれば目的の遺伝子を狙い撃ちにでき、それも短期間で破壊、修復できる。当然動物や植物の品種改良への応用はすぐにはじまるだろうとは思っていたが、より大きい魚、病気にかかり難い鶏神戸牛のような牛、より甘い果物、美味しい野菜といくらでも品種改良に応用がきく。
 日本でもタイやフグに応用され、1.5倍の大きさの魚が得られている。
実際には筋肉の成長を抑える遺伝子「ミオスタチン」の破壊をゲノム編集で行っただけ。この「ミオスタチン」を破壊した魚をクローン化すれば、永久に大きくて味のいい魚が得られる。
他にも収穫量の多い米、腐らないトマトとかおとなしいマグロを作り出すことがすでに行われている。日本での研究はまだ可愛らしいものだが、アメリカでの研究は一歩進んですでに臨床応用もされている。27年前にエイズウイルスに感染し、発症を防ぐため毎日複数の大量な薬を飲んでいるマットシャープさんは長年飲んでる薬の副作用でめまいや下痢が起こり、それでも免疫力はだんだん低下してきた。
そこで行ったのがゲノム編集。エイズウイルスはリンパに侵入し、リンパの機能低下を起こし、免疫能を弱らせることがわかっている。リンパ球をとり、エイズウイルスが細胞に侵入するときにくっつく細胞表面にある受容体CCR5を破壊し、リンパ球を体に戻してやるというやりかたで治療を行った。実際にデルタ32-CCR5の変異を持っている人はエイズに耐性で、この骨髄を移植したエイズ患者は完全に正常の状態になり、エイズウイルスの検出も不可能になる。同様に、ゲノム編集すると免疫力が大幅に上昇し薬を飲む必要もなくなった。いまやHIVは完全に治る病気になったとゲノム編集を行った企業サンガモバイオサイエンス社(Sangamo BioSciences Inc)のCOEエドワードランフェイエ氏は述べている。
それどころではない。アメリカのブロード研究所(Broad Institute of Harvard and MIT)では人間のすべての遺伝子2万余をすべてゲノム編集できるようにしようとして将来の戦略に備えようとしている。
今の所、変異している遺伝子がわかっている患者から採った細胞をゲノム編集してさらに修復して元に戻すという方法がとられている。この方法は修復した細胞を体に戻したときに組織に入っていけるか、器官を作ることができるかという大きな問題があるが倫理的問題は少ない。
しかしこれが受精卵を使ってゲノム編集をするとなると、人造人間を作ることにもつながりかねない、危険な技術でもある。しかし受精卵を用いてのゲノム編集がすでに中国でなされたという。
中国のBoyalife Groupはゲノム編集以前にまずはクローン化した犬や食肉牛の生産を開始した。そして2020年までに200万頭の牛の生産を目論んでいる。将来は人のクローン化に進もうとしている。それに並行して人の受精卵の遺伝子のゲノム編集をして、基礎的データを積み上げ将来に備えている。しかしその過程でだれかが隠れて遺伝子操作をした卵を母体に戻して、遺伝子が改変された人を作り出さないとも限らない。
日本でも早急に使用指針を作成する必要がある。世界に共通のガイドラインの策定が望まれる。

追記
上で書いた魚のミオスタチン遺伝子を破壊して、大きな魚を得ようとするばかりか人にも応用しようとする動きがあるらしい。シャラポアの例で有名になったが、スポーツ選手は規制の目をくぐり抜けて、ドーピングしようとする。その主たる目的は筋肉強化だ。今までは男性ホルモンが主に用いられたが、規制が強化されたため、様々な薬物に逃れた。シャラポアはメルドニウムと言う抗虚血薬だ。この薬は血流を良くして疲れにくくする。
ドーピングの最終兵器として持ち出されたのが遺伝子ドーピングだ。実際にミオスタチン遺伝子に異常がある人がいて、その人の筋肉量は通常の人の倍近くあるそうだ。というわけで、ミオスタチンを破壊した筋肉細胞を選手に戻し、筋肉量をアップさせようという試み。おれおれ詐欺と一緒で、悪智慧の働く人は、次から次へと規制逃れの手段を考え、新たな規制ができると規制にかからない方法を考える。まさにいたちごっこ。

STAP事件と捏造

2015年01月29日 16:00

捏造と人間性

センセーショナルなSTAP細胞論文の発表と記者会見から丁度1年経った。しかし、矛盾だらけで、追試も全く効かず、本人も再現できなかったことでその論文が否定されるまでには時間はかからなかった。
いったいあの騒動はなにだったのだろうか?本人は絶対にあります。200回以上作成に成功していますといったけど、結局できなかった。この自信ある態度はなんだったんだろう。周りの研究者は完全に振り回され、尊い命さえ奪うはめになってしまった。それでもありますと主張していた。
実際にSTAP細胞様細胞があり、STAPマウス?も産まれていた。もしその細胞がSTAP細胞でないとしたら、何をもってSTAP細胞としSTAPマウスとしたのか? 一番疑われたのがマウスのES細胞であった。当然ES細胞ならマウスの作成はできる。最初は誤ってES細胞がコンタミしたのではないかと思われていたが、本人はES細胞については全く扱っておらずそんなはずは無いという。事実は不明のまま本人は理研を辞めてしまった。これで、真相はなぞのまま終るのかと思われた。

しかし突然理研のOBの石川智久氏が窃盗罪で小保方さんを告訴したという報道がTVでなされた。小保方氏が名声や安定した収入を得るため、ES細胞の権威であり小保方さんと共同研究していた若山照彦氏の研究室から盗み出したというのだ。
理研の調査委員会は昨年、STAP細胞はES細胞が混入したものだと「ほぼ断定できる」と見解を示したが、誰が混入したかについては分からないとしていた。それが今回の告発では小保方さんがそれを盗み出し, 全てのでっち上げを仕組んだと言う。完全なる捏造? 本人は最初から全て分かっていて、ES細胞を用いてデータを作ったというのか?弱酸処理で簡単にSTAP化するといい、200回以上作成に成功していると言っておきながら、問題が表面化下した後は一度も作成に成功しなかった。
本件に関わらず、ばれるのは分かっているのに、なぜ捏造するのか?そしてあんなに堂々と振る舞えるのか?凡人には心理状態が理解できない。言ってみれば理解不可能な人が稀にいて、自分がでっち上げたことが、いつしか本当に起っていることと信じ込んでいる人がいる。
 もう随分昔になってしまったが、小保方さん程ではないが、同じような人と共同研究した事がある。当時、その人はすでに教授になり、世間では大先生で通っていたのだが、自分で実験し、自分で論文を書いていた。スマートでアイデアがすばらしく、出してくるデータはみな興味深い物であった。私自身、彼の出す面白い結果に喜び、疑うという事は全くなかった。共同研究のため大学院生一人をそこの研究室に送り込んでいた。
突如彼と同じような研究をしている先生から電話があった。追試が全く効かないというのだ。そこから色々調べていると、誰も実験しているのを見た事がなく、教授室で一人でごそごそと何かをしていたみたいだ。それに学生や職員には実験のデータは慎重にとり、かならず2度以上繰り返して確認をとることと口を酸っぱくして言ってみたいだ。
 研究計画を建て、結果はこうあるべきだという路線に沿って、架空のデータを作り上げてしまうと、結果が一人歩きして、それが本当だと思い込む人物みたいだ。そして、始末に終えない事に、このようにするのが研究だと信じ込み、何が悪いんだと,反省もない。後から分かった事だけど、過去の研究結果のほとんどがでっち上げで、再現できなかった。海外での留学中を含めて、捏造した論文で昇進し、偉くなり大先生とよばれるまでになった。
まず疑って論文を読む事をしない。ましてや知っている研究者だと、面白い仕事をしてるじゃんくらいにしか考えず、だまされ易い。
大学院生は自分の実験結果は間違いないというものの、大先生の名前の入った論文では信用されないだろうと、最終学年になっていたが、テーマを変え、苦労して博士を取った。彼にはすまない事をした。
少々性格が変わっているとか、日頃から奇妙な行動をするという人なら、前もって注意もできる。正常に社会生活をし、性格もいい人が、ちょっとしたデータの改竄とか、盗用だったらまだ魔が差したと言えるけど、全てを捏造し、それが当たり前だと思い込んでいる常識では考えられない人が世の中にはいるということを知った事件であった。
  捏造の大先生は事実が表面化することなく、裏で取引され、大学を辞めて一流企業に移った。その日の新聞には「一流の教授が東大を辞め、民間会社へ行き、官民交流のさきがけとなる」と報道され、本人のコメントとして「民間に出て閉鎖的な大学ではできないことをやる」と言っていた。新聞ではこれを快挙として伝えていたが、裏にこんな事があろうとはお釈迦様もご存知なかろう。あーあ、いやだ、いやだ。

人類が起こす生物大量絶滅

2014年12月26日 15:20

生物多様性の危機

人類が科学技術や文明を発達させ、豊かになればなるほど、逆に生物の多様性は壊れていく。非常に多くの生物種が急激なスピードで失われている。サイや象のみならず、日本人の好きな黒マグロやうなぎまでもが絶滅危惧種に指定されるという。Natureから生物が置かれている現状についてのReportが出た。
Life Status Report (R. Monastersky, Nature 516, 159-161, 2014)

多くの生物種が絶滅の危機に瀕している。3.5億年前に地球上に存在していた種の95%が消滅した。それらの多くはいわゆる大量絶滅した. この大量絶滅は地球上に起った急激な環境の変化、(火山の噴火による酸素の減少や太陽光の遮断、隕星の衝突など、ペルム紀の大量絶滅)によって大量の種の絶滅がおきている(本Blogの過酷な自然環境を生き残った哺乳類参照)。
過去の絶滅についてどうしてどの程度の絶滅が有ったのかなどの研究者の見解は一致している。しかし、しかし今日どのくらい生物が存在するのかどのくらいの早さで消失しているのかは不確定である。
動物種、植物や菌種の数の推定は2百万より少ないから5千万より多い、まで幅が有る。問題は地球上の多様性のほんの一部しかサンプリングできない事で、ほとんどの未知のグループは非常に狭い領域にのみ生息し急速にその住処が破壊されている事である。自然保存の国際機関は絶滅危惧種のレッドリストで不確実性を言っている。そのレポートでは76,000種以上が前の調査時より増えていると言っている。しかしこれは1.7百万種の4%にしかなく信頼できるデータとはならない。
これらの警告を考慮しながら Natureは地球の生命に関しての状況を示す信頼のおける、データを発表した。評価できるグループのうち両生類は、一部ツボカビによって引き起こされる致命的とも言えるepigeneticの効果のため最も危険にさらされている。哺乳動物や鳥は住処を奪われたり、狩猟の対象になったりして絶滅の脅威に晒されている。更に天候の変化が急でそれも絶滅を促進させている。将来予想を絶滅速度が一定だと仮定して、一年に全生物の0.01から0.7%と推定されているが、これには大きな不確定さがある。一番速い速度だとして、一年に数千種が消滅する。もしその傾向が続けば、大量絶滅につながり、来る数世紀で75%の種が失われる。保護政策により絶滅を遅くする事はできるが、今日の傾向では防ぐ事には悲観的である。種を保護するために設けられた土地や海の領域は広がっているが、生物多様性の観点から見ると種に対する圧力は増加している。一般に、生物多様性の状況は多くの場合、明らかに悪くなりつつある。
不確実性はあるけれど、研究者たちは生物多様性への今日及び未来の危機の評価が大切で、もっと注目をする必要があると言っている。一つの解決策は如何に人の活動が環境を変えるかを予測できる統合的コンピュータモデルを開発することであろう。このような一般の環境システムのモデル, GEMは今年の始めまでは未成熟であった。
Tittensorとその同僚は気候モデルが大気や海洋をまねたように、全ての地球上での環境上の相関を模倣できる最初のグローバルモデルからの最初のデータを公表した(M.J.B. Harfoot etal. PloS Biol. 12, e1001841, 2014)。
 モデルでは体重が10 μg(小さなプランクトンレベル)から150,000 kg(blue whaleレベル)を現そうとしたためGEMの作成には3年かかった。まだより多くの改良とテストが必要で、理想的には多くの多様なモデルが存在することであろう。もしコンピューターで生命の広がりを捉えるような堅実なやり方をするのであれば、我々が気づかないような問題を警告してくれる能力を持つであろう。
 過去の地球の歴史において5回の大量絶滅が起こり、75%の種が失われた。これらは全て突然の自然環境の変化で生じた。今日、通常のスピードでいけば1000年以上大量絶滅は起らない事になるが、このまま行けば自然の変化ではなく、人類によって引き起こされる大量絶滅を2200年までに迎えることになるであろう。


参考:
 絶滅:1500年以降にすでに絶滅した種として:哺乳類79、鳥145, 両生類36, その他505, Total 765種がある。
 絶滅危惧種:絶滅が危惧されている種:哺乳類1199 (全体の26%), 鳥1373 (13%), 両生類1957 (41%) 昆虫993(?), Total5522種があげられる。
 

生物模倣(Biomimetics)の製品化への道 

2014年12月10日 13:30

生物模倣と進化 

 生物の持つ特殊な機能を模倣して工業製品を作ろうとする試み(Biomimetics)については以前のブログでも取り上げた。しかし製品化できた例は少ない。この障害を乗り越えるための方策として進化論的考察が必須であると言う。 Biomimetics and evolution. Patek, SN: Science 345, 1448-1449 (2014)

 生物模倣は生き物の持つ特異的な特徴が様々な工業的困難さに対して新たな解決策を与えてくれるという考えに基づいている。しかし今までに、生物模倣は盛んに研究されて実用化への試みが多くなされて来たが、製品化されて成功した例は少ない。生物システムを応用して工業化に成功した例としてイガの衣服や動物の毛皮への付着を模倣したマジックテープが有名であるが、モルフォ蝶の色彩や蜘蛛の糸などを大々的に応用した例はまだ聞かない。

 生物学的機能の模倣には成功するが、大規模な工業化には至らないのはどうしてであろうか?この論文では「生物学的特色をピンポイントで取り上げ工業製品に模倣するには生物がその特異的機能を獲得して来た過程で様々な試行を行なった、進化論的な見地からの改良が必要である」と言っている。
例として、ヤモリを模倣した粘着物質の開発において、生物模倣と進化論を結びつけるアプローチが生物模倣を工業化する戦略として極めて重要である事が示された。

 ヤモリは天井を逆さまで這ったり、ガラス面に張り付いたりする事が出来る事でよく知られている。今日まで、生物模倣の研究は接着の中心的役割を果たすヤモリの足に生えている細かい毛を重点的になされて来た。細かい毛は接着面に対して密着でき、様々な面に粘着物質なくして接着出来る。しかしながら大規模工業化において問題が出て来た。それは模倣される細い毛がそのままスケルアップすると大きな力に耐えられなくなることである。
 解決策としては細かい毛で覆われた膜の進化的解析を行なって、足の裏の面積や、動物の大きさと接着、脱着との関係を明らかにすることが重要である。
 
  研究チームは盛んに行なわれている細毛膜の研究から離れて、接着膜の進化論的解析からの見解と接着の物理学と結びつけた。そして彼らは最大接着力をインターフェースの分子間結合の強さ、接着面積、システムの信頼性と関係づける膜の式を提唱した。この仕事は線維と柔らかい素材、polydimethylsiloxane(PDMS)、を組み合わせることで、非常に細かな線維を必要しないでマイクロメーターからサブマイクロメーターのスケルでの接触を可能にするヤモリの皮膚の発明へと導いた。

 ヤモリの皮膚の接着は効率的で、いろんな規模の接着に理想的な柔らかさと硬さのバランスを持ち、臨界力での急激な脱着を行い、最適な弾性エネルギーの貯蔵による最小のエネルギーの使用を行なう。これらの性質は弾性エネルギー転移のために物質の粘弾性を使用し、脱着には連続した力を要する従来の繊維で行なわれる接着とは異なる。このようにして開発されたヤモリ模倣皮膚製品は十分な接着力を発生し、大きな面積へと拡大でき、様々な種類の表層へ応用できた。そして粘着質でなくdryで再利用可能で、大型化でき清潔でもある。

 ヤモリの進化の歴史を通して、その接触がある特殊な条件下によって異なった有用性を示し、細かい毛が繰り返し出来たり失われたりしている事が明らかとなった。模倣ヤモリ皮膚の発明は接着膜の進化の解析と接着の物理を組み合わせてなされた。比較研究は生物模倣において、重要さを増しているが、進化的解析を含まない統計学的解析は誤った相関を引き起こす。さらにヤモリ皮膚膜の解析には統計学を組み込んだ系統発生との相関を必要とする。
 

結論:生物模倣に於いて単独の種での研究では限界があり、進化の歴史の包括的なデータを利用する事により、生物から市場へ、コスト効果のある効率的転用を行なえる。


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