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生物学の金鉱って残っている?

2010年10月26日 18:36

金鉱探し
研究者は誰もが新たな金鉱脈を探し当てたいと願っている。ところで、まだ生物学に佐渡の金山のような金鉱は残っているのであろうか?それとも佐渡の金山の様にすでにほり尽くされてしまっているのであろうか?
 ゲノムは終わり、タンパクも分かり、シグナルマップも、代謝産物マップも大方明らかになり、もう大きな金鉱はないのではないかと考えられていた。誰も手をつけていない大きなDark Matter。そんなものの存在は予想だにされていなかった。分かっている分子での相関シュミレーションやモデル。それから何か見失っているものDark Matterが見えて来ると思っていた。しかしそんなものはそこからは見えてこなかった。
最近、生物学のDark MatterとしてmicroRNAが脚光を浴びている。そのDark Matterについての話。

Dark Matterより抜粋
Journal of Cell Science 123, 3217-3218 (2010)

ここは砂漠の中、ブッシュやサボテンとカーボイ小屋に囲まれている。生化学の授業を聴きながら(野外のウエスターンブロット)それらがなんと複雑なのであろうかと考えてみる。砂漠の空の星のように多くのシグナルと分子。

ポストゲノム、ポストプロテオーム、ポスト相互作用解析の時代、全てが非常に複雑、しかし我々が計れる全ての変異体をインプットして、起こりえるすべてのことを予想するという物理学者がやっているような事をやらなければならない。多分これらのモデルは予想以上に多方面に渡って、よく機能している。この種の分析をコンピューターバイオロジイと呼ぶ。我々がコンピュターを持つ以前に、すでに生物学概念については歴史がある。HaldaneとFisherは20世紀初頭に再発見されたメンデルの遺伝学の法則がいかにダウインの自然淘汰説に統合され、集団生物学が発見されて行ったかを解説している。HamiltonとSmithはこのアイデアを発展させ、集団ダイナミックスの理論的道しるべを作り出した。相互作用するグループから個々の個体の研究に移ると、Turingは拡散するシグナルの濃度勾配を形態形成のパターンニングの調節因子として、Waddingtonのcanalizationというすばらしいアイデアとともに捉えた。


Weaselと私は、イーグルというパブで会うたびに現代生物学のありとあらゆる話、たとえば核酸のDNAでのpositioningやその現象に関連したことなど、を話した。寒い冬の夜、我々年寄りを暖める暖炉の火があり、砂漠からは時間的にも空間的にも遠くはなれていた。Weaselと私は多くの事を話し合った。そして話が生物学を我々のモデルで厳格にテストし我々が理解していると思っている事を本当に理解しているのかを確かめてみようということになった。しかしWeaselは全く取り合あってくれなかった。宇宙物理学者は注意深く観察できる宇宙の全体を計算し、そして重力のモデルを応用してみて、何かが、Dark Matterが欠けていると結論した。そしてかれらはどのくらいのDark Matterがあるべきなのかも知っている。空になったコップを見つめる。Dark Matter って日蝕と関係した事? 
我々はDNAと遺伝子の関係を知って以来、転写の調節、タンパクの代謝回転、そして細胞機能の複雑なネットワークのモデルを作ろうとして来た。そしてモデルはかなりうまく働いた。我々は生物を実際に理解できたように思われた。しかしそれが問題なのだ。我々は進歩し、モデルは如何に複雑なシステムで生物ができているのかを示していた。何が間違っているのか?Dark Matter. だれもDark Matterを発見できていない。

microRNAはどうだい?何百、多分何千のmicroRNAがタンパクの産生に影響を及ぼし、遺伝子と表現形の関係にも影響を及ぼしている。生物現象に基本的役割を果たす巨大な調節因子がある。だれもそのようなものがなければならないなどと想像していなかった。全てのモデルや計算ではそのようなものの存在は推定されていなかった。更に、だれもそのようなもの、なにかしら大きくて考慮に入れていないもの、がなければならないなどと言っていなかった。microRNAは生物の大きなDark Matter問題の一つを解いた。
何時の日か生物現象における分子相関の研究がルーチンにコンピューターモデルに組み込まれるのを夢見るのを止められない。このようなことを可能にするためには、単純なXがYに結合するという解析を越えて、個々の細胞内で相互作用する一定量分子の反応速度論的パラメーターを決定し、その経時的変化を決定する必要がある。それは簡単に行くとは思わない。しかしすでにスタートしている。何時の日かどのくらいのDark Matterが存在するのかを知らせてくれるであろう。しかし今は、宇宙物理学者のDark Matter が輝きもう一杯のマルガリータを期待し、砂漠の空を眺める事で満足しよう。もうすぐ自分のキャンプサイト(それはかなりいいホテルルーム)に歩いて行くだろうがしかし今ではない。あ!流れ星。

microRNAのような大きなDark Matterを発見するかshooting star を見つけるかそれともこれらのもの全てを放り込んだモデルを完成するか、諸君頑張ってくれ。老兵は消え去るのみです。


青魚に含まれる脂肪酸が身体にいいわけ

2010年10月16日 15:48

今日の話は少し専門的で、難しいかもしれないのでお覚悟を。

巷ではドコサヘキサエン酸やヘキサペンタエン酸は身体にいいといわれ、食べるのを推奨されている。血液をサラサラにするとかアレルギーにならないとかがその理由。
秋刀魚や鯖などの青魚に含まれる油のドコサヘキサエン酸(DHA, C22:6, 炭素鎖22で2重結合が6個ある)やヘキサペンタエン酸(EPA, C20:5)というオメガ3系列の脂肪酸(ω3 FA)は健康にいいと言われて来た。(ω3 と言うのはメチル末端から数えて3番目の炭素から2重結合がある事を示す)がその実態は明らかではなかった。

 少しぼけて来ているので定かではないが、授業で習ったのは多分こうだ。我々は高度不飽和脂肪酸を合成する事ができず、食事から摂取したリノール酸(ω6, C18:2)やリノレン酸(ω3, C18:3)から合成する。よってリノール酸やα-リノレン酸は必須脂肪酸と呼ばれ、食事から摂る必要がある。

これらの不飽和脂肪酸の分布を見てみると、牛肉などの肉に含まれる脂肪酸はアラキドン酸(C20:4)が多く、これは必須脂肪酸のリノール酸(ω6 系列)から合成される。一方、青魚に多いDHAやEPAは(ω3系列)のα-リノレン酸から合成される。何がアラキドン酸(ω6 系列)とEPA(ω3系列)で違うのか?アラキドン酸は炎症性、アレルギー性のプロスタグランジンに変換され、EPAは反対に抗炎症や抗アレルギー作用がある事が知られていた。授業でも魚介類を主に食べるエスキモー人は血がさらさらとし動脈硬化が少ない、肉を良く食べる北欧人は血がどろどろとして、心筋梗塞など起こし易く動脈硬化が多いと習った。しかし実際どのようにして抗炎症作用を発揮しているのかは今まで不明であった。

最近出版されたCell 142, 687-698(2010)でその分子機序が明らかになった。
サンジェゴのカリフォルニア大学のOlefskyらはそれらの脂肪酸(ω3系列)が結合する受容体、GPR120を見つけた。GPR120はその名の如く、Gタンパク質共役の受容体で、ホルモン受容体の中で最も多い種類の受容体であるが、未だにその結合する生理活性物質が分からない孤児受容体(オーファン受容体)の一つであった。GPRには未だにそのリガンド(受容体に結合する生理活性物質)が分からないものが多く残っている。その中の一つGPR120がω3系列の脂肪酸、DHAやEPAの受容体である事が明らかになった。GPR120は脂肪細胞やマクロファージに多く発現していた。これらの細胞は炎症に関係するが、この脂肪酸が受容体に結合すると炎症状態が抑制された。更に高脂肪食を与えたマウスにω3系列の脂肪酸を与えると、炎症状態が抑制され、インスリン感受性も増大した。しかしGPR120を欠損させたマウスではそのような効果は見られなかった。これでやっとω3系列の脂肪酸を摂取する事が身体にいいのだという分子レベルでの科学的な証拠が得られた。

異常気象で全く採れず、庶民の魚ではなくなっていた秋刀魚も秋風が吹くとともに豊漁となり、ぐんと安く、食べれるようになって来た。最近は秋刀魚を焼くと煙とにおいが立ちこめるため、食べるのを敬遠する人が増えているが、この際、せっせと食べて、アレルギー、炎症を予防し、動脈硬化を防ごう。

てんとう虫

2010年10月05日 19:49

てんとう虫の斑点の数ってどうやって決まるの?

てんとう虫ってどこか愛嬌があって、不器用に飛んで行く様など親しみがもてる。昆虫一般嫌いな人でもてんとう虫だったら見たり,掴んだりできる。
そのてんとう虫、背中の色は黒や赤をバックに赤や黒の斑点があるのが多くこの辺りでみかける。その斑点のでき方に少し興味を持って調べてみたら、なんと複雑。てんとう虫は世界で5,000種、日本でも100種は存在するそうである。
テントウムシ(天道虫・紅娘・瓢虫)は、コウチュウ目・テントウムシ科(Coccinellidae)に分類される昆虫の総称(Wikipedia)。鮮やかな体色の小型の甲虫である。和名の由来は太陽に向かって飛んで行くことから、太陽神の天道からとられた。
体は黒や赤の他、橙や黄や褐色などで彩られ、体の模様も種類間で変異に富んでいる。日本では赤や黄の地色に黒い水玉模様、あるいは黄に白の水玉模様のものが多く、その多くはそれらの斑点の数で命名されている。幼虫・成虫とも強い物理刺激を受けると死んだふりをし、さらに関節部から黄色の液体を分泌する。この液体には強い異臭と苦味があり、外敵を撃退する。体色の鮮やかさは異臭とまずさを警告する警戒色といえる。このため鳥などはテントウムシをあまり捕食しないが、それでも寄生バチや寄生バエ、菌類などの天敵が存在する。食性は種類によって大きく異なり、アブラムシやカイガラムシなどを食べる肉食性の種類、うどんこ病菌などを食べる菌食性の種類、ナス科植物などを食べる草食性の種類の3つに分けることができる。このため農作物にとっては益虫と害虫に大きく分かれることとなる。
赤地に7つの黒のスポット(斑点)を持つのがよく見かける、7星てんとう虫で、小さい頃はこれをてんとう虫であとはてんとう虫だましと言っていたような気がする。正確には益虫のてんとう虫に対し、害虫のてんとう虫をてんとう虫だましと言うそうだ。そこらでよく見かけるのが「なみてんとう虫」で黒地に赤のスポットを持ってる。スポットの数で2紋型、4紋型、6紋型、12紋型に分けられ、さらに赤地に黒のスポットの紅型もいる。
( 図1)

これらのスポットの数や形はどのようにして決まるのであろうか?
なみてんとう虫には4つの基本的なスポット遺伝子が存在しているんだそうだ。
紅型(h遺伝子)、2紋型(hc遺伝子)、4紋型(hsp遺伝子)と班紋型(ha遺伝子)で一匹のてんとう虫は2つの遺伝子を持ち、それが組合わさる事で複雑なスポットが形成される。例えば2つのスポット遺伝子が同じ場合にはスポットはスポット遺伝子とおなじになり、2つの遺伝子が異なる場合、スポットは黒い部分が重なり合ったようになる。例えば紅型と紅型は紅型に、紅型と2紋型は変形2紋型に4紋型と2紋型は2紋型になる。

  紅型と紅型は紅型に(図2)

  紅型と2紋型は変形2紋型に(図3)

  4紋型と2紋型は2紋型に(図4)

なみてんとう虫の遺伝形を優性から劣勢にならべると2紋型>4紋型>斑紋型>紅型となるようです。
ますます複雑になっていくのでこれで止めにしますがこれ以上の詳しいことはhttp://nemutou.fc2web.com/namitento/namitento.htmlを参照してください。詳しく解説されています。


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