2016年04月22日 13:08
石原慎太郎著 「天才」を読んで
石原慎太郎は現役の議員時代、田中角栄を金権政治の悪の権化のように追及していた。その慎太郎が何を思ったか田中角栄を持ち上げる小説「天才」を書いた。田中角栄の行動力、破天荒ぶり、まさに超人のように書かれているが、その中で一番興味があるのは田中角栄の起こしたロッキード事件は実はアメリカ政府陰謀だというものだ。ロッキードを導入するに際し、巨額な賄賂を受け取ったという話は、田中角栄を陥れようとしたCIAによる謀略か?
1976年に発覚したロッキード事件はアメリカが田中角栄潰しのために仕組んだ陰謀である可能性が高いそうだ。ロッキード社は、全日空の旅客機に自社の「トライスター」を導入させるため、合計30億円のカネを日本政界工作に使ったといわれている。そのうち5値円を総理大臣だった田中が受け取ったとされ、田中は収賄容疑、外為法違反容疑などで逮捕された。
元首相で、田中角栄と同時代を生き抜き、いまは数少ない戦後昭和政治の生き証人となった中曽根康弘が、当時をふり返ってこう述べている(私と角栄氏とキッシンジャーの言葉、中曽根康弘)
「田中内閣が発足して2年目の1973年秋、第4次中東戦争をきっかけとしてオイル・ショックが起こる。ペルシャ湾岸の石油産出国6カ国は石油価格を21%引き上げ、OPEC10ヵ国石油担当相会議が5%の生産削減とアメリカなどイスラエル支持国(アラブ非友好国)に対する石油輸出禁止を決めた。仮に日本への石油輸出が5%削減された場合、日本経済は翌年3月には立ち行かなくなることが目に見えていた。」
「オイル・ショックの頃から、田中君は日本独自の石油資源外交に積極的な姿勢を取り、アラブ諸国から日本が直に買い付けてくる「日の丸石油」にまで色気を見せていた。さらに、渡欧の際には、英国の北海油田からも日本に原油を入れたいと発言し、ソ連・ムルマンスクの天然ガスにも関心を示して、独自の資源獲得外交を展開しようとした。これがアメリカの虎の尾を踏むことになったと私は想像する。
世界を支配している石油メジャーの力は絶大である。いささか冒険主義的だった田中君の資源外交戦略が淵源となり、「ロッキード事件」が起こったのではないかと考えることがある。」「田中君が逮捕されてから間もなく、日本を訪れたキッシンジャー氏と二人きりで話していた折のことである。氏は、「ロッキード事件は、間違いだった。あれはやりすぎだったと思う」と、密かに私に言ったことがある。キッシンジャー氏は事件の本質、真相をおそらく知っていたに違いない。」
なぜロッキードが仕組まれた事件であるのか。ここにもまた、岸の盟友である右翼の大物・児玉誉士夫が介在する。ロッキードからのカネは、日本におけるその代理人であった児玉を通して分配されていた。児玉は「コンサルタント料」として個人で21億円のカネを受け取っていたといわれている。つまり30億円のほとんどは児玉個人に渡っているのだ。ところが、捜査やマスコミの関心は田中に流れた5億円ばかりに集中し、児玉が受け取ったカネについてはまったく解明が進まなかった。
実はロッキード社の狙いは旅客機ではなく、軍用機のほうにあったといわれている。ロッキードの日本側代理人である児玉は、岸や自民党の人物たちに働きかけ、ロッキードの戦闘機F−104を自衛隊機に選定させるよう工作を行なっていたのだ。また、ロッキード社のP3C対潜哨戒機導入という大問題もある。当時の防衛庁長官だった中曽根康弘、官房副長官たった故・後藤田正晴などをはじめとする有力な自民党議員のほとんどすべてが、P3C導入をめぐって賄賂をもらっていたといわれている。 つまり、事件の本丸は民間機ではなくて軍用機なのである。自衛隊がロッキード社の軍用機を採用すれば、動くカネは旅客機と比較にならないほど大きい。田中は日中国交回復や、独自のエネルギー政策を提唱するなど、明らかにアメリカから距離をおく自主外交路線を選択していた。アメリカにとってそれは非常に気に食わないことでもあった。だから、この機に乗じて田中だけを潰そうという狙いもあったのではないかといわれている。それが田中の5億円だけを取り上げて、児玉に流れた30億円の大半について解明がまったく進まない理由の一つである。
石原新太郎は最後に 「いずれにせよ、私たちは田中角栄という未曾有の天才をアメリカという私たちの年来の支配者の策謀で失ってしまったのだった。歴史への回顧に、もしもという言葉は禁句だとしても、無慈悲に奪われてしまった田中角栄という天才の人生は、この国にとって実はかけがえのないものだったということを改めて知ることは、けして意味のないことではありはしまい」と締めくっている。
大なり、小なり謀略はいつの世にもある。アメリカのCIAは最大の謀略機関である。膨大な兵器、関連機器を製造、輸出しているアメリカにとって、世界が平和だと商売が成り立たない。アフガニスタンへ武器供与しての戦闘支援、ありもしない核兵器との言いがかりをつけイランのサダムフセイン体制を滅ぼした戦争。結局はそのため中東情勢が不穏になり、テロリストの横行する地域を作ってしまった。イランやシリアは常時戦闘状態に置かれてしまった。これも全てわかってやった陰謀?
石原慎太郎は現役の議員時代、田中角栄を金権政治の悪の権化のように追及していた。その慎太郎が何を思ったか田中角栄を持ち上げる小説「天才」を書いた。田中角栄の行動力、破天荒ぶり、まさに超人のように書かれているが、その中で一番興味があるのは田中角栄の起こしたロッキード事件は実はアメリカ政府陰謀だというものだ。ロッキードを導入するに際し、巨額な賄賂を受け取ったという話は、田中角栄を陥れようとしたCIAによる謀略か?
1976年に発覚したロッキード事件はアメリカが田中角栄潰しのために仕組んだ陰謀である可能性が高いそうだ。ロッキード社は、全日空の旅客機に自社の「トライスター」を導入させるため、合計30億円のカネを日本政界工作に使ったといわれている。そのうち5値円を総理大臣だった田中が受け取ったとされ、田中は収賄容疑、外為法違反容疑などで逮捕された。
元首相で、田中角栄と同時代を生き抜き、いまは数少ない戦後昭和政治の生き証人となった中曽根康弘が、当時をふり返ってこう述べている(私と角栄氏とキッシンジャーの言葉、中曽根康弘)
「田中内閣が発足して2年目の1973年秋、第4次中東戦争をきっかけとしてオイル・ショックが起こる。ペルシャ湾岸の石油産出国6カ国は石油価格を21%引き上げ、OPEC10ヵ国石油担当相会議が5%の生産削減とアメリカなどイスラエル支持国(アラブ非友好国)に対する石油輸出禁止を決めた。仮に日本への石油輸出が5%削減された場合、日本経済は翌年3月には立ち行かなくなることが目に見えていた。」
「オイル・ショックの頃から、田中君は日本独自の石油資源外交に積極的な姿勢を取り、アラブ諸国から日本が直に買い付けてくる「日の丸石油」にまで色気を見せていた。さらに、渡欧の際には、英国の北海油田からも日本に原油を入れたいと発言し、ソ連・ムルマンスクの天然ガスにも関心を示して、独自の資源獲得外交を展開しようとした。これがアメリカの虎の尾を踏むことになったと私は想像する。
世界を支配している石油メジャーの力は絶大である。いささか冒険主義的だった田中君の資源外交戦略が淵源となり、「ロッキード事件」が起こったのではないかと考えることがある。」「田中君が逮捕されてから間もなく、日本を訪れたキッシンジャー氏と二人きりで話していた折のことである。氏は、「ロッキード事件は、間違いだった。あれはやりすぎだったと思う」と、密かに私に言ったことがある。キッシンジャー氏は事件の本質、真相をおそらく知っていたに違いない。」
なぜロッキードが仕組まれた事件であるのか。ここにもまた、岸の盟友である右翼の大物・児玉誉士夫が介在する。ロッキードからのカネは、日本におけるその代理人であった児玉を通して分配されていた。児玉は「コンサルタント料」として個人で21億円のカネを受け取っていたといわれている。つまり30億円のほとんどは児玉個人に渡っているのだ。ところが、捜査やマスコミの関心は田中に流れた5億円ばかりに集中し、児玉が受け取ったカネについてはまったく解明が進まなかった。
実はロッキード社の狙いは旅客機ではなく、軍用機のほうにあったといわれている。ロッキードの日本側代理人である児玉は、岸や自民党の人物たちに働きかけ、ロッキードの戦闘機F−104を自衛隊機に選定させるよう工作を行なっていたのだ。また、ロッキード社のP3C対潜哨戒機導入という大問題もある。当時の防衛庁長官だった中曽根康弘、官房副長官たった故・後藤田正晴などをはじめとする有力な自民党議員のほとんどすべてが、P3C導入をめぐって賄賂をもらっていたといわれている。 つまり、事件の本丸は民間機ではなくて軍用機なのである。自衛隊がロッキード社の軍用機を採用すれば、動くカネは旅客機と比較にならないほど大きい。田中は日中国交回復や、独自のエネルギー政策を提唱するなど、明らかにアメリカから距離をおく自主外交路線を選択していた。アメリカにとってそれは非常に気に食わないことでもあった。だから、この機に乗じて田中だけを潰そうという狙いもあったのではないかといわれている。それが田中の5億円だけを取り上げて、児玉に流れた30億円の大半について解明がまったく進まない理由の一つである。
石原新太郎は最後に 「いずれにせよ、私たちは田中角栄という未曾有の天才をアメリカという私たちの年来の支配者の策謀で失ってしまったのだった。歴史への回顧に、もしもという言葉は禁句だとしても、無慈悲に奪われてしまった田中角栄という天才の人生は、この国にとって実はかけがえのないものだったということを改めて知ることは、けして意味のないことではありはしまい」と締めくっている。
大なり、小なり謀略はいつの世にもある。アメリカのCIAは最大の謀略機関である。膨大な兵器、関連機器を製造、輸出しているアメリカにとって、世界が平和だと商売が成り立たない。アフガニスタンへ武器供与しての戦闘支援、ありもしない核兵器との言いがかりをつけイランのサダムフセイン体制を滅ぼした戦争。結局はそのため中東情勢が不穏になり、テロリストの横行する地域を作ってしまった。イランやシリアは常時戦闘状態に置かれてしまった。これも全てわかってやった陰謀?
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