国民年金とは?厚生年金とは? 働き方で加入先が変わる
マネーの知識ここから 年金(2)
・国民年金には20〜60歳のすべての人が加入
・厚生年金の保険料率は18.3%で勤務先と折半(9.15%ずつ)
まず始めにクイズから。国民年金、厚生年金、企業年金、個人年金、確定拠出年金のうち、公的年金に当てはまるものはどれですか――。
正解は国民年金と厚生年金。大学生約1000人のうち正解は3分の1でした。これは大学生が参加する「ユース年金学会」で2016年に報告された調査結果です。大学生の年金知識が乏しい事例として紹介されました。ユース年金学会は大学学部生のゼミや研究グループが集まって年金に対する問題意識を研究発表する場です。16年は第1回。今なら正解率は上がっているかもしれません。
会社員や公務員は2つの年金に加入
国民年金と厚生年金は2階建てといわれる日本の公的年金の1階と2階に当たります。国民年金は基礎年金ともいい、20〜60歳のすべての人が加入します。20歳になったときに日本年金機構から加入案内が届いたはずです。2階部分の厚生年金には会社員や公務員が入ります。つまり彼らは2つの年金に加入することになります。
冒頭のクイズで出てきた企業年金、個人年金、確定拠出年金はいわば「3階」部分で、私的年金といわれます。公的年金に上乗せされ、自助努力で増やす年金だと考えればいいでしょう。
以前は、会社に雇われている人が入る厚生年金、自営業や自由業、無職の人らが加入する国民年金、公務員や教職員の共済年金はそれぞれ別の制度でした。これらをまとめ、現在の形になったのが1986年度です。
国民年金は全員が加入する制度になりましたが、会社員や公務員は厚生年金と共済年金に引き続き入ったので、働き方で加入先が異なる点は変わりませんでした。共済年金は2015年10月から厚生年金と一緒になりました。
加入する人が保険料を納め、年をとったり、障害を負ったりしたときなどに年金を受け取るのが制度の基本です。加入者を被保険者と呼び、1階部分の国民年金の被保険者は約6744万人に上ります。
公的年金には3種類の加入者
被保険者は第1号から第3号に分かれ、それぞれ1405万人、4618万人、721万人となっています(22年度末)。1階部分のみ入るのが第1号被保険者と第3号被保険者、2階部分にも入るのが第2号被保険者です。働き方などで被保険者の種別は変わり、月々の保険料も年金の受取額も異なります。
第1号被保険者は国民年金に入る自営業者や学生など、会社員や公務員を除く多様な人が対象です。フリーランスで働く人もここに加入します。
以前は農林漁業や小売り・卸店主など伝統的な自営業の人が多かったのですが、今はパートタイマーやアルバイト、無職の人の割合が高くなっています。毎月定額の保険料(1万7000円程度)を自分で納めます。ずっと第1号だと老後に受け取る年金は最大で月6万8000円(24年度)。この金額だと年金だけで生活するのは苦しそうです。
続いて第2号被保険者です。厚生年金に入る会社員や公務員が該当します。入社してから退職するまで報酬に決まった率を掛けた保険料が月給から引かれます。給与天引きなので納め忘れがないのは利点ですが、自分がいくら保険料を払っているか無関心になりがちです。保険料率は18.3%で勤務先と折半(9.15%ずつ)します。
17年9月に固定されましたが、昇進などで報酬が増えれば納める保険料も増えます。老後の年金は平均で月16万円台(24年度)。高い報酬で長く勤めるほど金額は増えます。
第3号被保険者には見直しの声も
そして第2号に扶養されている専業主婦(夫)が第3号被保険者です。自分で納める保険料はゼロですが、国民年金の受け取りが保障されています。第2号被保険者全体で第3号の保険料を負担しているからです。第3号は自分で保険料を納めていないのに年金を受け取れるのは不公平だという指摘は以前からあり、制度を見直すべきだという声が強まっています。
被保険者の人数を見ると第1号と第3号が減って第2号が増える構図です。厚生年金加入者の増加が目立っているからです。厚生年金に入れば2階部分の年金も受け取ることができて老後の保障が厚くなることに加え、少ない負担で充実した医療サービスを受けられる健康保険にも加入することができます。国ではパートやアルバイトなど短時間労働者の暮らしを支える目的で、対象となる事業所の条件などを引き下げています。
転職や独立、結婚や離婚など、長い人生では、2つの年金や3つの被保険者の選び方を問われる場面があるでしょう。それぞれの特徴を知っておくことは進路を決める際の手助けになります。
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