老齢年金・障害年金・遺族年金…公的年金は若者にも関係
マネーの知識ここから 年金(1)
・年金制度は世代間の支え合いの仕組み
・年金は自分で「つくり」、「増やす」ことができる
国からもらう年金(公的年金)といえば、おじいさん、おばあさん世代のものだと思っていませんか? 実は20代や30代の若者も年金を受け取れる可能性があるのです。
障害を負ったり一家の大黒柱を失ったりするリスクに対応
就職や結婚、定年……。人生にはいろいろな出来事があります。思わぬアクシデントに見舞われることがあるかもしれません。年金は長生きだけでなく、病気やケガで障害を負ったり、一家の大黒柱を亡くしたりといったリスクにも対応します。それぞれ「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」と呼びます。
障害年金は病気やケガなどで障害が残り、長期にわたって働けなくなったときに自分の生活を支えてくれます。遺族年金は大黒柱が亡くなったときに、残された子や配偶者など家族の暮らしを補うものです。障害年金も遺族年金も、若くても受け取ることができる年金です。
年金は保険料をみなで出し合い、不測の事態が起こったときに一定の金額を支給して暮らしを支える社会保険です。20歳になるとすべての人に加入が義務付けられ、決められた保険料を納めなければなりません。「年金なんて遠い将来のこと」「自分には関係ない」などと保険料の納付を怠っていると、万一のときに受け取れないこともあるので注意が必要です。
日本の年金には「生涯にわたって受け取れる」「将来のお金の価値の変化に対応できる」といった特徴があります。根底に世代間の支え合いの仕組みがあるからです。
年金は世代間で支え合う仕組み
具体的には「賦課方式」と呼ぶ財政のスタイルです。年金支給に必要なお金を、そのときの現役世代の保険料でまかなう方式です。例えば想定を超えるインフレや賃金の上昇があっても、その時点の現役世代が納めた保険料をもとにしているので、実質的に価値のある年金を支給することができます。欧米の主要各国も賦課方式を基本にしています。
自分の将来の年金は自分で積み立てる「積み立て方式」の方が合理的だと言う人もいるでしょう。ただ、前述のような想定外のインフレなどがあった場合、積み立てていたお金の価値が下がり、インフレに見合った年金の支給が難しくなったり、終身で支給できなくなったりするかもしれません。
少子高齢化の影響で近年は年金財政も厳しくなり、現在の仕組みでも年金額はインフレ率と同じだけは増えませんが、ある程度はカバーしてくれます。年金を質の悪い運用商品のように言う人もいますが、そんなことはありません。年金より有利な商品はほかに見当たらないと言っても過言ではありません。
3つの給付を受けている人の数は、老齢年金が約4044万人、障害年金は約231万人、遺族年金が約678万人です。年を取ってから受け取る老齢年金が圧倒的に多いので「年金=おじいさん、おばあさんのもの」といったイメージがあるのももっともです。でも、障害や死亡のリスクは若いからといって無縁ではありません。
障害年金では約4分の1が20〜30代というデータもあります(障害基礎年金の受給権者)。若い人にも多い精神疾患も対象になるケースがあり、意外に身近な給付だと知っておくとよいでしょう。
そしてもうひとつ、受け取る年金額がいくらになるかは自分次第だということです。
年金は「つくり」「増やす」もの
年金には、会社員や公務員が入る「厚生年金」と、自営業やフリーランス、学生らが加入する「国民年金」があることは知っている人もいるでしょう。国民年金は「基礎年金」とも呼びます。それぞれに前述の3つの給付があります。
老齢厚生年金では、原則として高い報酬で長く加入するほど受け取る年金額が増えます。年金額はあらかじめ決まっているのではなく、自分で「つくる」ことができるわけです。若いうちから知っておけば、頑張って働くことが重要だと分かりますよね。
もう一方の老齢基礎年金は保険料を納めた期間に比例します。保険料を滞納していると年金を受け取れなくなったり、受け取ることができても金額が少なくなったりします。そのため若いうちからコツコツと納めることが大切なのです。家計が苦しいときには納付を免除したり、先送り(納付猶予)したりする制度もあるので、知っておくとよいでしょう。
【マネーの知識ここから・年金 記事一覧】
- (1)老齢年金・障害年金・遺族年金…公的年金は若者にも関係
- (2)国民年金とは?厚生年金とは? 働き方で加入先が変わる
- (3)年金加入、何歳から何歳まで? 猶予・免除の仕組みを知る
- (4)年金受給年齢どうする 繰り上げる?繰り下げる?
- (5)日本の年金制度は「破綻」しない 持続させる仕組みを知る
人生100年時代、生きている限り受け取れる公的老齢年金は長生きや老後生活の強力な備えです。また障害年金や遺族年金は若い世代にも関係します。年金額を増やす方法も併せてお教えします。
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