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八木ひとみさん「相場原稿の書き方を書店で探した頃」

フリーアナウンサー

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最初は「小じっかり」が分からずに…

――BSテレ東の「NIKKEI NEWS NEXT」をはじめ経済キャスターとして活躍中の八木さんですが、キャリアの出発点は?

2008年に新卒で山口朝日放送のアナウンサーとして就職したのが最初です。情報系番組の担当が多く、田んぼの中で「泥んこビーチボールバレー」とか各駅停車の旅みたいな、エンタメ色の強い仕事を3年間していました。

その後25歳で上京し、「TBSニュースバード」で3年間、ニュースキャスターを務めました。私はその中の「東証中継」というコーナーに入ることが多く、東京証券取引所に張り付いて、寄り付きからその日のまとめまで一日4回中継していたんです。経済が主な仕事になったのはそこからですね。

――最初はどうでした?

相場概況の原稿も自分で書く必要があって、QUICKなど情報端末を見れば相場の動きは出てくるんですが、知識がなく何を言っているかが分からない。ほぼお手上げ状態でした。なので大きな書店に行って「株式の原稿の書き方」という本を探したんです(笑)。あるわけないんですが、そのぐらい株のことを知らなかったんですね。

仕方なく株式用語集を買ってきて、QUICKの概況に出てくる「小じっかり」や「上値が重い」とはどういうことなのかという「日本語の翻訳」から始めました。

――相場用語は独特ですもんね。

その後「日経CNBC」やNHK BS1を経て、18年3月から「日経モーニングプラスFT」の担当になりました。モープラはそこから6年続いて、今年4月から「日経ニュース プラス9」、現在のNEWS NEXTのメインキャスターになったという形です。

就職試験でショックを受ける

――朝7時から夜9時の番組へのシフトは体が大変だったのでは。

体力には自信があったんですが、年齢もあるのかすごくガタが来まして。最初の1カ月は土日ずっと寝てるぐらいしんどかったです。

モープラの時は朝3時頃に起きて、移動のタクシーの中で日経電子版で今日のニュースを必死にチェックしつつ、4時半に局に入ってました。今は夕方6時から会議なので5時頃に入ります。情報収集の時間は長くなりましたが、逆に時間がありすぎて、何を見たらいいのか迷いが出てきています。

――子供の頃からアナウンサー志望だったんですか。

もともと読書や人前でしゃべることは好きだったんですが、幼い頃からの夢だったわけではないんです。大学時代のある日、父親が「子供が4人もいるんだから1人ぐらいテレビに出る人になってくれたらな」と軽く言い、それを私がなぜか真剣に受け止めてしまったんです。地元の局にも「こういう女性になりたいな」と思える好きなアナウンサーがいたので、それがうまくかみ合ったんですね。

そこからすぐ地元のアナウンススクールに入りましたが、早くから進路を決めて準備する人が多い中で、それはすごく遅いスタートでした。就職試験で東京の大きな局を受けた時も、面接で「アナウンサー志望ならなぜ地方の大学に行ったのか」と言われました。「地方のイントネーションはすぐには直らないから、日常生活から既に差がついているんだ」と。本当に殴られたような衝撃でした。

また、私と同じ香川大学から名古屋のテレビ局に受かった子がいて、彼女は毎週夜行バスで東京のアナウンススクールに通ってたんですよ。これも衝撃でしたね。

その時に「物事は戦略的に逆算して考えるのが大事だし、自分が精いっぱいやっていると思っても、上には上がいる」というのを後悔を含めて学びました。

立ったまま勉強してMBAを取得

――昨年は早稲田大学ビジネススクールに通われてMBA(経営学修士)の資格も取られたとか。

きっかけはコロナ禍で夜の時間が空いたことでしたが、一方で自分が経済キャスターとしてどれだけバリューを出せているのかが分からずに悩んだからです。フリーランスなので仕事がずっとあるとも限りませんし、コロナで人と会えなくなったのもあり、強制的にでも外からの知識を入れないといけないのではと思ったんですね。

ただ早朝の番組も子育てもある中で忙しく、座ると寝ちゃうんで、キッチンにパソコンを置いて立ったまま大学院の課題をやってました(笑)。毎日が睡眠不足との戦いで大変でしたが、楽しかったです。知識欲も満たされるし、普段出会わない人たちとも会えました。

――どんな学びがありましたか。

1年目は経営や会計の基礎を学び、2年目はマーケティングのゼミに入ってディスカッションする日々でした。例えば日経CNBCでやっていた決算書速報も、意味は分からず数字だけ読んでたんですが、それまで積み重ねてきた知識が「こういうことだったのか」と初めて体系的に合致したんです。

自己効力感も得られました。自己肯定感は自分に自信を持つことだと思うんですが、自己効力感は今からやることに対して絶対できるとか、成功しなかったとしても得るものがあると捉える、未来に向けての自信ですかね。今まで39年間の人生でも「プラスだと思ったらとにかく行動!」でやってきました。行動したらその先に必ず何か得るものがあると思うので。

ただ私は会社員経験がほとんどないので、エクセルやパワーポイントに触ったこともなかったんですよ。大学院に入って最初の障壁がこれで、これまた死ぬほどつらかった。だから「MBAなんか取りに行かず、パソコン教室に行けばよかった」と思ってました(笑)。

――今、番組の中ではどんな思いで伝えていらっしゃいますか。

今は新NISA(少額投資非課税制度)の開始もあり世間の関心が投資に向かっていて、経済ニュースの重要性がすごく高まっていますよね。ただその中でも、昔の私と同じような方は大勢いると思うんです。

例えば、いきなり「円キャリートレード」という言葉が出てくるとハードルが高くなりすぎ、そういう方が投資を学ぶ選択肢をなくしてしまうかも。NEXTはビジネスに効く番組なので、経済や国際情勢、投資の情報にシャッターが下りないように、「もっと分かりやすく」というのを常に心掛けています。幸い、スタッフさんにそう言えるのも今の私の立場なので、番組の分かりやすさは全て私にかかっていると勝手に思ってます。

――八木さんのように堂々と分かりやすくしゃべるコツは?

実は緊張しいなんで、私が教えてほしいぐらいですよ(笑)。ただリアルイベントでは、自分の話を聞いてうなずいてくださってる方を目ざとく見つけ、そこに向かって話すようにしています。もちろん目線はある程度分散させなくちゃいけないんですが、その人は会場にいる自分の味方ですからね。

オンライン会議ならカメラの横に自分の子供や犬の写真を貼っておくと、優しい目線で語りかけることができます。私自身もスタジオで昔から「カメラをおばあちゃんだと思って話せ」と言われてましたので。後は慣れです。しゃべりは完全に場数だと思いますね。だから機会があれば自分から手を挙げた方がいいと思います。

失敗しても私は「これでクビになるなら、それまでだな」と開き直ります。再起不能にならなきゃいいか、ぐらいの感覚でやってますね。本番でかんだら「一回失敗しちゃった。じゃここからは何回失敗しても一緒だ」と思って。

漫画でも野球でも、好きなことを打ち出せば世界が広がる

――漫画好きで、私もモープラの「漫画で学ぶ経済」のコーナーでずっとご一緒させていただきました。

漫画は子供の頃からすごく好きで、兄と弟がいたので、3人で順番にお小遣いを出し合って『少年ジャンプ』なんかを買ってました。でもどうしても単行本が欲しくなるので、その時はこの漫画がいかに面白いか、母親にプレゼンするんです。プレゼンが通って母親も読みたいと思ったら買ってくれる(笑)。ちょっと変わってますね。

――例えばどんな作品ですか?

『ワンピース』や『20世紀少年』『名探偵コナン』など、当時人気だった少年漫画はほぼ全て読んでました。後は『ちびまる子ちゃん』。中学に入ったら少女漫画好きな友達ができ、貸し借りするようになって少女漫画にも広がりました。

――紙派ですか、電子派ですか。

本当は紙派なんですが、スペースの問題もあって今は電子書籍派です。子供が寝ている時に部屋の電気をつけずに読めるのは電子の方なので。書店に行かず深夜0時からでもすぐ読めるのも魅力です。そういえば昔、金融が何も分からないのに原稿書かなきゃって時には、『ナニワ金融道』を読んで学びましたよ。金融漫画には名作が多くて、例えば『望郷太郎』では通貨の成り立ちも学べますよね。

――漫画の魅力とは何でしょう。

私は主人公になったつもりで読むタイプなので、漫画を読むことでいろんな人生を生きられる点です。さらに主人公なのか相手なのかで立場の違いも学べて、お手軽に人生を何周もできる(笑)。例えばSFなら、宇宙の豆知識とかもいっぱい入ってるじゃないですか。普段の生活では出合わないような知識や光景を見せてくれるわけで、世界を広げてくれるいいツールだと思いますけどね。

――仲間も広がりますね。

私は野球も好きなんですが、趣味があると年齢やバックボーンが違う人とも共通の話題で話せます。「好き」を前面に押し出していると人との接点もどんどん増えていきますし、お声がかかったりもするんです。漫画好きの方から「自分の好きな漫画について語り合う会がある」と誘われ、そこで経営学者である早稲田大学の入山章栄教授にも出会えました。そこで『キングダム』を経営戦略論やリーダーシップ論から読むという、自分では思いもしなかった読み方を教わり、それもすごく面白くて。

でもまずは自分から漫画好きだとアピールしないと、「キミ、漫画好きそうな顔してるね」なんて誰も言ってくれませんから(笑)。

――最後に、お金については?

資産形成を始めるのは遅かったんですが、稼ぐのも増やすのも興味はあります。NISAで積み立て投資もしていて、インド株投信やS&P500、半導体系の投信などに注目しています。そういう個人投資家の立場から知りたいと思うことを、番組にも提案するようにしています。

(撮影/大沼正彦 取材・文/大口克人)

[日経マネー2024年10月号の記事を再構成]

八木ひとみ(やぎ・ひとみ)
1985年生まれ、岡山県出身。香川大学を卒業後、2008年に山口朝日放送アナウンサーに。その後上京し11年から24時間ニュースチャンネルの「TBSニュースバード」キャスター、14年から「日経CNBC」、17年からNHK BS1「経済フロントライン」のキャスターを務める。18年3月からBSテレ東「日経モーニングプラスFT」のメインキャスターを6年間務め、24年4月から同「日経ニュース プラス9」、7月から同「NIKKEI NEWS NEXT」のメインキャスターに。

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