木造戸建てのリノベ、「建築確認」の対象拡大 コスト増に
2025年4月から木造戸建ての大規模な修繕や模様替えに関するルールが変わります。中古戸建て住宅を取得したあと、自分なりにカスタマイズして暮らしたいという人、相続した空き家を活用したいという人に影響が出る可能性がありそうです。
「2階建て以上」または「200平方メートル超」が対象
これまでは、2階建て以下で一定の規模以下である一般的な木造戸建て住宅については、「大規模の修繕」や「大規模の模様替え」をする場合、建築確認申請の提出が不要でした。しかし25年4月から、2階建て以上または延べ床面積200平方メートル超となる戸建て住宅で大規模の修繕や大規模の模様替えをする場合、建築確認申請が必要となります。建築確認申請とは、役所に対して「このような修繕または模様替えをします」という申請です。建築確認申請が必要になることでどのような影響が出るのでしょうか。
費用・時間の負担が増加
大規模の修繕や模様替えをする場合、これまでは建築士の責任のもと法律に沿った設計をすることで進めることができましたが、来春からは建築確認申請をしなければなりません。建築確認申請にあたっては、構造計算書を併せて提出する必要があります。1級建築士事務所スターパイロッツの三浦丈典さんは「建物によって費用は変わるが、構造計算書だけでも30万〜50万円程度かかるケースが多い」と話します。
特に問題となるのは、検査済証がない場合です。検査済証とは、建築確認申請の内容について役所のチェックを経たうえで、その通りに建築されていることを検査した証明となるものです。検査済証がない場合、竣工当時の建築基準法などの各種ルールに合致した建物かどうかを証明してからでないと、建築確認申請の手続きをすることができません。途中で増改築を施している場合はさらに複雑になります。この作業もケース・バイ・ケースですが「半年以上の時間がかかることがあり、費用は100万円以上かかることもしばしばある」(三浦さん)といいます。
建築確認が不要なケースも
大規模の修繕と大規模の模様替えは、建物の主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)の過半を改修する場合に該当します。ただし最下階の床、屋外階段、構造上主要でない壁、局部的な小階段などは主要構造部から除かれます。木造戸建て住宅の間仕切り壁は主要構造部に当たらないので、修繕や模様替えの方法によっては建築確認申請は不要と判断できるケースも多々あるでしょう。また一般的なリフォーム(主要構造部に手を付けない、または過半未満しか手を付けない修繕や模様替え)なら、建築確認申請は必要ありません。一方、階段を付け替える場合は主要構造部である階段の全てを改修するので、大規模の修繕・大規模の模様替えに該当します。
戸建て住宅を自分なりにカスタマイズしたい場合、いわゆるリノベーションと呼ばれる大規模な修繕や模様替えに該当する工事をするケースがこれまでよくありました。リノベーションは今後、建築確認申請が必要となり、時間と費用がかかることを理解しておくといいでしょう。
まず検査済証の有無を確認
いま住んでいる戸建て住宅が2階建てである、延べ床面積が200平方メートル超に該当する、あるいはそうした中古戸建てを購入し、自分なりにカスタマイズして暮らしたい、相続した空き家を改修して活用したいという場合は、まず検査済証があるかどうかを確認したうえで、大規模の修繕や模様替えに該当するような工事が必要なのかどうかを建築士に相談したほうが良さそうです。
検査済証がないケースでも、大規模の修繕や模様替えに当たらない程度の工事で済むのであれば、建築確認申請は不要となります。時間とコストをかけたくない場合は、上手にカスタマイズできる方法を建築士と検討するといいでしょう。
(20代からのマイホーム考 第113回)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。
住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。
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