技能実習「廃止」提言へ 政府会議、外国人材確保に転換
外国人の日本での労働のあり方を検討する政府の有識者会議は10日、いまの技能実習制度の廃止を求める提言の試案をまとめた。途上国への技術移転という目的と実態が乖離(かいり)していると強調し、新制度の創設を訴えた。主要な受け入れ制度の一つが導入30年で転換する。
有識者会議は労使の代表者や地方自治体の首長らで構成し、国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長が座長を務める。月内にも中間報告、今秋に最終報告をまとめる予定だ。10日は中間報告の「たたき台」を決めた。
制度設計に向けた政府内の検討もこれに沿って進む見通しだ。法改正などを伴う可能性があり正式な変更は24年以降になる。
技能実習は1993年に始まった。耕種農業や機械加工など87の職種で外国人を雇用できる。2022年12月時点で32万5千人ほどが働き、日本への滞在を最長5年で認めている。
たたき台は実習生の労働力としての貢献を認めつつ「国際貢献のみを掲げたままで受け入れを続けるのは望ましくない」と明記した。
技能実習は廃止すべきだと踏み込み、人材確保と人材育成の双方を目的とした新しい制度に衣替えするよう提起した。
技能実習を巡っては企業による賃金不払いのほか実習生の就労先からの失踪といった問題も顕在化している。現行の技能実習では原則、転職ができず人権保護の観点で海外から批判を受けてきた経緯もある。
有識者会議は新制度の基本的な考え方も示した。転職の制限が人材確保も目的に加える新制度の趣旨に合わないと考え「緩和する方向で検討すべきだ」と盛り込んだ。
入国当初に定めた職種の範囲で勤め先の変更を認める方向だ。転職可能になる滞在年数や上限などは今後詰める。
一定の日本語能力や技術を持つ外国人向けには特定技能制度(19年創設)がある。現状で介護や農業など12分野で働くことができる。
技能実習にかわる新制度は特定技能への移行を念頭に置いたうえで、職種の数がばらばらの状況を改め二制度で統一するよう求めた。いまの技能実習から絞り込み、外国人がより幅広い業務に従事できるようにする。
働く上で必要な最低限の日本語を身につけるための改善点も指摘した。就労前に一定水準の日本語能力を担保し、来日後に上達するような仕組みを設けるべきだと提唱した。
受け入れ支援の管理・監督体制には不十分な点があると評した。監理団体が企業と癒着するケースがある。悪質な団体を排除しながら「独立性・中立性の確保や監理・保護・支援に関する要件を厳格化する」との方針を示した。
【関連記事】
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)