米政権、北京五輪の外交ボイコット発表 選手は派遣へ
【ワシントン=坂口幸裕、北京=羽田野主】米ホワイトハウスのサキ大統領報道官は6日の記者会見で、2022年2月の北京冬季五輪に選手団以外の外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。米政府が懸念する新疆ウイグル自治区などでの中国の人権弾圧に抗議する狙いがある。
サキ氏は「バイデン政権は22年の北京冬季五輪・パラリンピックにいかなる外交・公式代表も派遣しない。中国がウイグルで大量虐殺や人道上の罪を犯し、その他の人権侵害を続けていることを考慮した」と述べた。米国の選手団は通常通りに派遣し「全面的に支援し、百パーセント応援する」と語った。
在米国中国大使館の報道官は6日、「この人たちが来るかどうかは誰も気にしないし、北京冬季五輪の成功には全く影響しない」とツイッターに投稿した。中国共産党系の環球時報の胡錫進編集長は7日、「米政府職員のほとんどが新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触している。北京市民が最も会いたくない人たちだ」とツイートした。
国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当者は仏AFP通信の取材に「政府責任者、外交官が出席するかどうかは各政府の純粋な政治的判断だ。IOCは政治的に中立であることから(決定を)完全に尊重する」と答えた。
バイデン米大統領は11月中旬に北京冬季五輪の外交ボイコットを検討していると明らかにしていた。バイデン政権は日本や欧州などの同盟国・友好国に同調を求めず、各国の判断に委ねる。国際社会がどこまで追随するかが焦点になる。
国務省のプライス報道官は6日の記者会見で北京冬季五輪のスポンサー企業にボイコットを求めるかを問われ「民間企業は米国が同盟国やパートナー国とともに提示した懸念事項に関する大量の情報を入手できる」と指摘。「民間セクターも(ウイグルで起きていることを)認識してほしいが、政府が指示することではない」と話した。
米欧は中国によるウイグルやチベットでの人権侵害、香港での民主化勢力の弾圧を問題視してきた。バイデン氏は11月15日に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とオンライン形式で協議した際にも中国の人権侵害について懸念を伝えた。
過去の五輪では、東西冷戦時代の1980年に米国や日本など一部の西側諸国がモスクワ夏季五輪に選手団も派遣しない全面的なボイコットに発展した。当時のカーター米政権がこの前年にあった旧ソ連のアフガニスタン侵攻を批判し、不参加を呼びかけた。
米民主党のペロシ下院議長は6日の声明で「過去30年間の中国共産党による虐待と抑圧的な行動に変化を期待できない」と指摘。「国際社会は中国の人権弾圧に対し、まとまって主張しなければならない」訴えた。
米議会下院の外交委員会で共和党の筆頭委員を務めるマイケル・マコール議員は「バイデン氏は米国の同盟国やパートナーに外交ボイコットに参加し、IOCと中国共産党の人権無視の責任を追及するよう働きかけてほしい」と求めた。
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