新NISA、今年あと10週間で整える準備
知っ得・お金のトリセツ(128)
気がつけば今年も残りわずか。カレンダー上は残り11週だが、祝日や年末を勘案すると実質的にはもはや10週間ちょっと。びっくりだ。来年、2024年になれば話題沸騰の新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まる。スタートダッシュのために今年中にやっておきたい準備と注意点を確認しよう。
「不稼働口座」の人は要注意
NISAを始めるにあたっては、金融機関を1つ選び、専用のNISA口座を開設する必要がある。23年に終了する現行のNISA口座(一般、つみたて)を開いている人は、来年になると同じ金融機関で新NISAの口座(成長投資枠、つみたて投資枠)が自動開設される。特別な手続きなく、来年すぐに新NISA投資が始められる。
やや注意が必要なのが、口座は開設したが実際には投資していない「不稼働口座」の人だ。中には、自分が口座を開いたことがあるか、どの金融機関で開いたか記憶が曖昧な人もいるだろう。「そんな人いる?」と思うかもしれないが、実際いるのだ。金融庁の統計によると、NISA口座開設後に1円も投資していない口座は一般NISAの半分、つみたてNISAの約3割にも上る。
最新の視点で金融機関選びを
一般NISAが始まったのは14年と、もう10年も前のこと(つみたてNISAは18年〜)。当時深く考えず「付き合いのある金融機関に頼まれて開いたけど、投資はしていない」という人が多そうだ。その口座も放っておくと新NISAに引き継がれる。
便利だが、逆に変更したい人は一手間必要になる。例えば付き合いの深い郵便局や地銀などでNISA口座を開いていたが、新制度を機に個別株や不動産投資信託(REIT)などに投資したい場合などが考えられそう。銀行ではなく、証券会社で口座開設をし直す必要がある。
銀行・証券、両方が取り扱う投資信託を購入する場合でも、最新の金融商品ラインアップや手数料も勘案して金融機関選びを行いたい。選べるのはあくまで1つ。成長投資枠とつみたて投資枠で別々の会社に開設することもできない。
10月以降、来年に備えた口座開設が可能に
今の口座を引き継ぎたくない人は、10月以降可能になった来年に向けた金融機関の変更手続きを早めに済ませておこう。既存口座の金融機関に「金融商品取引業者等変更届出書」を出して「勘定廃止通知書」をもらい、それを新たに選んだ金融機関に「非課税口座開設届出書」とともに提出する。
ちょっとした手間が必要なので、来年イチから始めるより今年済ませておいた方が、年始の相場変動にも機動的に対応できる。
今年のNISA枠もムダにせず
一方で、現行NISAの非課税枠をムダにしない視点も重要だ。新NISAの生涯投資非課税枠1800万円とは別枠でカウントされるので、いわば非課税枠のボーナス(上乗せ)になる。口座開設済みで余力のある人は、一般NISAなら120万円、つみたてNISAなら40万円の非課税枠は今年いっぱい活用できる。
あと10週間で、一括投資はともかく「積み立てってどうなの?」と思うかもしれないが、制度上は2回以上の複数回引き落としを設定すれば、つみたてNISAの利用も可能だ(一般とつみたては併用不可)。つみたてNISAで購入した金融商品は最長42年まで非課税で運用し続けることができる。
ただし、投資は受け渡し日ベースで管理される。年内に注文して約定しても、受け渡しが来年になれば、来年の新NISA枠を使った取引とカウントされてしまう。個別株は約定日から3営業日目が受け渡し日だし、投信はそれ以上にかかる場合が多いので余裕をもって取引しよう。
ジュニアNISAの駆け込みは……?
新NISAに引き継がれず、今年で終了するのが、ジュニアNISAだ。未成年の子どものために親や祖父母が資金を出して、年間80万円分の非課税運用を行う制度だ。これまでは子が18歳になるまで、引き出しができない払い出し制限がネックとなって利用が伸び悩んできたが、廃止決定を受け、今後は年齢にかかわらず引き出しが可能になった。
「かえって使い勝手が良くなった」と評判で、年内の駆け込み利用を考える人もいるようだが、残念ながら新規の口座開設は既に9月末に終了している。既に口座があり非課税枠が残っていれば、年末ギリギリまで投資することも可能だが、その場合は原則、子どもが18歳になったときに課税口座に自動的に払い出されることも覚えておこう。
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
食べたものが体をつくり、使ったお金が人生をつくる――。人生100年時代にますます重要になる真剣なお金との対話。お金のことを考え続けてきたマネー・エディターが気づきの手掛かりをお届けします。