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新NISA、「成長投資枠」の考え方

知っ得・お金のトリセツ(129)

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2024年から始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)への関心が日々増している。今より格段にパワーアップして使い勝手も良くなる新制度だが、中には理解する時に、ちょっぴり読解力が必要なポイントもある。例えば「成長投資枠」だ。

主役はつみたて投資枠の方

現行制度と同じく2種類に大別される新NISAのうち、長期・積み立て・分散という投資の王道を具現化する主役は「つみたて投資枠」(現行のつみたてNISA)の方だ。選べる対象は投資信託だけ。投信は数ある金融資産の中から、プロが選んでいわば「幕の内弁当」にまとめた入門商品だ。

それをさらに金融庁が低コストなど一定の基準でふるいにかける。国内約6000本もの公募投信のうち、つみたて投資枠に名を連ねるのは約250本と4%の狭き門だ。投資に元本保証なしは大前提だが、長期にわたり定時・定額の積み立てを続ければ報われる可能性は高まる。

幅広い対象をカバーする成長投資枠

一方の成長投資枠。「じゃない方」としてそれ以外の幅広い投資対象をカバーする。上場する個別企業の株式が代表例で、不動産投資信託(REIT)や、つみたて枠以外の投信・上場投資信託(ETF)なども一定の基準をクリアすれば対象になる。

例えばシニアが、年金プラスアルファのキャッシュフロー確保を目的に高配当株に投資したり、お得に敏感な主婦(夫)が株主優待を目当てに銘柄を選んだりするのも、こっちの枠ではアリだ。

多様なニーズに応える幅広い投資対象、という意味では現行の「一般NISA」の呼び名の方が妥当ではある。それが来年から「成長投資」という、漠としつつも価値判断のニュアンスを帯びた名称に変わったことで、かえって対象商品のイメージが分かりにくくなった面もある。

誰の成長? 自分でなく日本企業

つみたて投資枠で積み立てをする主語は自分だが、成長投資枠で成長するのは自分ではない。企業だ。個別株投資とは付加価値創造の主体、企業に成長資金を供給することにほかならない。

新NISAは、金利ゼロの現預金に過半が眠る2000兆円超の家計金融資産を投資にいざなう先兵だ。企業が潤沢な資金を成長投資へと回し、一段の利益成長を実現し、株式市場がそれを評価して初めて「成長と分配の好循環」が回り始める――。成長投資枠とは、この政策目標ありきの呼び名だと割り切るとスッキリする。

個別株の対象は日本株だけでない

とはいえ、実際のところ成長投資枠で選べる個別株は日本株だけではない。米国や中国など海外の株式市場の上場株でも、外国人投資家に門戸を開いていて、証券会社が取り扱っていれば幅広く投資が可能だ。大手ネット証券は米国株売買の手数料をそろってゼロにして顧客獲得競争を繰り広げている。

米、中の他、楽天証券では東南アジア諸国連合(ASEAN)4カ国を加えた6カ国約6200銘柄に投資が可能で、SBI証券はさらに幅広く韓国、ロシアを含む9カ国をカバーする。対象は基本的には来年の新NISAに引き継がれるという。投信積み立てに比べてブレ幅の大きい個別株投資の特徴を理解した上で、幅広い対象の中から自分に適した成長投資枠の使い方を模索していきたい。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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