ビュイック・リエッタ 勘違いな高級車 Buick Reatta
ビュイックまあまあ、バランスの良いスタイルではあるものの、手作りの高級車という風格は、残念ながらありません。
ビュイック・リエッタは、88年に登場したビュイック唯一の2シーターでした。
80年代のGMは、ダウンサイジングの他にも、顧客の高齢化という深刻な問題も抱えていました。かつては若者にも絶大の人気を誇ったキャデラックやビュイックは、最早若者には見向きもされず、高齢者向けの車になってしまっていたのです。
そして、その頃、急速に売り上げを伸ばしていたのが、BMWやメルセデスといった、ヨーロッパ製の高級車でした。その中でも、特にメルセデスのSL系は、アメリカとは一味違う高級クーペとして、ヤング・エグゼクティブを中心に人気を得ていたのは、見逃すわけには行きませんでした。
そんな中で登場したのが、このビュイック・リエッタでした。グリルレスで、リトラクタブルライトを装備したクリーンなスタイルは、ニッサン240SX(輸出版シルビア)か何かを思わせるものがありました。
そのシャシーは、当時のGM製高級クーペのキャデラック・エルドラード、ビュイック・リビエラ、オールズモビル・トロナード3兄弟のEボディーを短縮したものに、ビュイックの3.8リッターV6エンジンを搭載していました。
この車の最大の特徴は・・・・実は、このボディースタイルに有るのです。アメリカの自動車産業といえば、大量生産の先駆者でもあり、それはキャデラックやリンカーンの高級車も例外ではありませんでした。
ところが、この車の場合、大規模なベルトコンベアーを使用せずに、手作業で組み立てられていたのです。
コレは同じ頃に登場した、キャデラック・アランテもそうなのですが、どうも、当時のGMは、高級というものを履き違えていた様です。
80年代当時のGMは、地に落ちたキャデラックやビュイックの高級イメージを何とかしようと懸命になっていたのですが、その解決策として、ロールス・ロイスを真似しようとしたのか、手作りボディーであったり、キャデラック・アランテの様に、イタリアのピニンファリーナでボディーを作り、アメリカまで空輸する・・・などという馬鹿げた事に大金を無駄にしていたのです。
高級車に必要なのは、「魅力的なスタイル」、「パフォーマンス」、「信頼性」、「アフターサービス」の4項目で、それさえしっかりしていれば、手作りだろうが、大量生産だろうが、そんな事はどうでも良いのです。
前述の4項目の全てを蔑ろにして、自己満足の高級に大金を費やしていても、そんな物に顧客が付いてくる訳が無いのですが、GMの官僚主義の中では、そんな声はかき消されてしまうのでしょう。
そして、最初はスポーティーカーとして企画されていたものが、結局エンジンは既製のビュイックのソレと何ら変わることも無く、正に全てが中途半端のままに終わってしまいました。
後に、コンバーチブルを追加したものの、特に人気が出ることも有りませんでした。
一つこの車を肯定するとしたら、特にこの車のリア周りのデザインは、後のマツダ「ユーノス・コスモ」に少なからず影響を与えているのでは?ということでしょう。
《加筆》
試しに、真横から見た写真に加工を加えてみました。
こちらがオリジナル
こうやって見ると、このデザインの最大の問題点は、FFゆえのフロントオーバーハングの長さだったのかも知れません。
まあ、それでも大したデザインでは無いのですが・・・。