2018/05/12

衰退する離島の漁業

高齢化が進む舳倉島の漁業。海女も長年200人くらいで推移してきたが、2013年には70人、今では40人くらいに減っている。
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俺「いまブリは浜値いくらくらいですか?」
老漁師さん「わからんね。高いときもあれば安いときもある」
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能登半島の北にある舳倉島はバードウオッチングと海女の島だが、過疎化と高齢化が進む。いまのままでは10年後には海女はいなくなってるかもしれない。


新潟の粟島は大謀網漁(定置網の一種)で有名な島。大型の定置網が島の北西側に3か所あり、年間の水揚げ高の約7割を占める。大型定置網なくして粟島の漁業は語れない。
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粟島の漁師さんは行政とまき網に強い不満を持っている。もともとはマグロを獲るために入れた定置だが、今年の6月末まで自粛するようにと水産庁から通達があった。粟島のマグロ漁は6月が盛期である。不満が出るのは当たり前である。そしてブリはまき網が大量に獲るので値が付かずまったく儲からない。
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山形の飛島は刺し網が中心の漁業。狙いはオキメバルと答えていた。今月末から7月くらいまでは飛島近海にクロマグロが集まるのだが、それを専門で狙っている漁師はもういない。
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島民も昭和15年には1788人もいたが現在は203人。小中学生もピーク時は450人もいたが、現在は小学校は生徒がいないので休校。中学校に1人いるだけである。その中学校も2年後は休校になる。


飛島行の定期船が発着する酒田港の海鮮市場。海鮮市場なのに外国産の水産物がやたらと多い。
ホッケはアメリカ産。
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サバはノルウエー産。
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ウニはロシア産。サケはロシア産、明太子はアメリカ産、そしてイクラはデンマーク産だった。
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某大学の教授(水産庁OB)「日本の漁業生産が減った理由は、資源が減ったからと声高に言う人がいるが、そのような安直な答案を書いたらうちでは落第だ。……私は、さまざまな要因の中でも、特に水産物の需要減少が、生産量低下の一番の理由だと思っている」


そうですか???

離島の漁師さんに資源のことを聞くと90パーセントの人が減っていると応える。※対馬の調査結果


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その原因は乱獲と答える漁師が多い。

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水産関係企業のトップ150人のアンケート結果(みなと新聞)
減っている133人、増えている1人。


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需要減少の原因も探ってみよう。

まき網によるブリ大漁ニュースである。
ツバス(ブリの子供)が955トン、ブリが110トン。


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大量に獲るとキロ100円台に暴落する。まき網で獲ったブリは色が悪く、美味しくない。それも安い原因である。

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確かに色が悪い。こんな魚を食べて消費者は満足するのだろうか?
そして580円が安いのか?たぶん100グラム前後だろう。産地ではキロ200円前後であるから100グラム20円である。

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続いて、まき網のサバ

境港巻き網水揚げ サバ 870t、ツバス 119t、ハマチ 20t 計 1,009t
今日の獲物はローソクサバ呼ばれる小型のサバでした。
 (境港・共和産業からのお知らせより)
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ローソクサバとはロウソクのように細くて小さいということである。

こんな小さいサバはスーパーには並ばない。ではどこに行くか?


養殖の餌である。サバ、イワシ、アジの9割が養殖の餌である。


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そして安いのでアフリカがたくさん買ってくれる。

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そして我々日本人が食べるサバはノルウエー産がほとんどなのである。おかしな話である。日本の周りにはサバがいっぱいいるのに。そしてほんとうに美味しいサバは日本の美味しい時期に獲った大きなサバなのだが。


世界のマグロ類の漁獲量。1980年代からまき網の漁獲量が急激に増えている。効率の良いまき網は単価が安くても大量に獲れるので大きな利益が出る。

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そして世界の水産資源は激減。資源管理先進国はまき網などの大型漁業の規制に乗り出した。しかしアジアやアフリカは増える一方である。



今年もクロマグロの産卵期が来る(南西諸島ではすでに始まっている)。そしてまき網船があちこちに出没して大暴れを開始する。

一年のうちで一番美味しくない時期に集中して獲るのだ。当然セリ値は大暴落。そしてほとんどが売れ残る。

境港産(鳥取)は78本入荷して68本売れ残り。


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産地塩釜では安値400円。最後は「持ってけ泥棒」というセリだったらしい。

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塩釜から築地には良質のマグロを送るのだが、それでも68本中67本売れ残り。

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セリで売れ残ったマグロがどこへいくらで売られているのかは水産庁も答えられなかった。



境港は産地情報を公開してない。なので密かに入手。公設市場なのに公開しないのが悪いのだ。



なんともビックリなボロ安値だった!

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最安値はキロ200円。平均単価も7月4日は384円である。平均重量が91.97キロでも300円台。美味しい時期に獲ればキロ2万円以上は当たり前なのだが。

日本のまき網は生きたまま網から冷蔵庫に放り込む。血抜きもしてなければ神経締めもしてない。それがヤケと血栓の原因になるのだ。色変わりが早く、柵にしたら4日以内に売らないと売れなくなる。


需要減少は不味い魚ばかり食べさせてるからではないか?




昨年、水産庁の資料からこれ(大西洋クロマグロ東系群)が消えた。消えた理由はわからない。

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そして新しい資料は地中海も産卵期に巻いているとやたらと強調した内容になっている。

調べてみると

確かに産卵期に獲っているが、規制前の2007年は未報告も含めると4~5万トンくらい獲っていた。
※未報告もほとんどまき網だったと教えてくれたのは水研の中塚クロマグロ資源グループ長

それがこのICCATの報告を見ると2011年には漁獲量が4306トンまで激減している。さらに漁期も大幅に短縮しているのだ。そういう都合の悪いところはすべて隠して、「まき網も獲っている」という都合の良いところだけを資料に載せる。


まったく姑息としかいいようがない。


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大西洋クロマグロの資源量だが、昨年資源評価が修正された。1980年前後は大幅に上方修正。危機的と言われていた2000年前後も実はそこそこの資源量があった。


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結果として危機感を共有し、厳しい資源管理をやったことで、早期の資源回復へと繋がった。

資源管理の基本「早期に手を打ち、早期に回復させる」
こうすることにより、漁業者は少ない我慢で済むのである。




昨年、水産庁と対談したとき、水産庁側はこんなパネルを用意していた。
見た瞬間「フェイク」と思った。

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ようするに大西洋(東系群)はこんなにまき網で獲ってます。日本はそれより少ないのですと言いたかったのだ。
※対談前に水産庁側から質問内容を提出するようにと言われて提出していた。対談にはパネルが何枚も用意されていた。

大西洋東部側は前途したように大幅に規制した後、資源が急激に回復した。回復に伴いまき網の割り当ても増えている。それは理にかなった方法である。しかもまき網で獲ったあとに生きたまま蓄養の生け簀に移し、5~8か月餌を与え、しっかりと太らせてから出荷している。需要に合わせて1匹1匹活き締めするので高く売れる。これこそ資源の有効利用だろう。

では何が間違いなのか。

この表を見れば誰でも一目瞭然だろう。


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2016年を見ると

30キロ未満のまき網の漁獲は全体の52パーセント
30キロ以上のまき網の漁獲は全体の69パーセント
すべてのまき網の漁獲は全体の61パーセントである。



水産庁の用意したパネルは大きく間違っていたのである。
俺の指摘で水産庁側が間違いに気づき、このパネルは番組で使われることはなかったが、こんなパネルを作って国民を欺こうとしたわけである。



何が何でもまき網を正当化させようとしたわけである。



こんなことでは離島の漁師も沿岸の漁師も守れない。



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