著作権の権利保護と利用促進のバランスをどうするか?
10月14日までの期間、文化庁が、「簡素で一元的な権利処理」の在り方に関する意見募集を行っている。単に、政府として決まった方針を示して異論のある人たちのガス抜きをするという性格のものではなく、権利者や利用者の立場からの意見を、幅広く募集するものだという。著作権分科会基本政策小委員会の今後の検討において、これらの意見がどう使われるのかは不明だが、この機会に、デジタルアーカイブの構築を進め、オンライン教育等の新しい手法の普及を図り、民間資格であるデジタル・アーキビストの活用を後押しする意味で、以下のコメントを提出しておいた。ご参考までに、ここに転載しておきたい。
パブコメは知らないうちに行われ、知らないうちに締め切られ、出したコメントが実際にどう取り扱われたのか分からないことが多い。文化庁の発信力が絶対的に不足しているので、このパブコメも世の中にほとんど知られていないだろう。著作権に関して問題意識があって、発信力のある人には、ぜひパブコメの存在を広めてほしい。
1.授業コンテンツ(オンライン教育を含む)の二次的利用
オンライン教育を含む授業コンテンツの二次的利用(複製、公衆送信など)は、教育ビジネスの拡大に止まらず、生涯学習社会の実質化に重要な意味を持つ。授業の範囲内では、権利制限や補償金制度により扉が開かれているが、その先の利用については、制約が大きい。この点も、特段の意思表示がない場合は、実質的に、報酬請求権(又は補償金制度に組み込む)として扱えるようにされたい。
2.入試問題の二次的利用
入試問題に他人の著作物を利用することは現行法でも可能だが、その二次的利用は範囲外になっている。この制約を解除できれば、入試問題の種々の二次的利用によるビジネス展開の可能性が高まる。また、受験生、学校関係者らにとっても利便性が上がる。入試問題の二次的利用を禁止するなどの特段の意思表示がない場合は、実質的に、著作者の権利を報酬請求権と扱うことにされたい。
3.特定のデジタルアーカイブの構築における特例の創設
公益性を有するデジタルアーカイブの構築に当たっては、集中管理されていない著作物(権利者不明の場合を含む)に関しては、特段の意思表示がなければ、実質的に、報酬請求権として扱えるようにするのが適当である。こうした特例を与える特定のデジタルアーカイブに関しては、民間資格であるデジタル・アーキビスト(上級)を有する者を専任で配置することを条件の一つとされたい。これにより、著作権の権利保護の枠組みを遵守しつつ、公益性を有するデジタルアーカイブの構築に係る経済的・時間的なコストが大幅に低減できる。なお、報酬請求・支払いが終わるまでの間の利用は、暫定的利用という位置づけでも差し支えない。
4.UGC等のデジタルコンテンツの利用促進
ネット上に公開されているコンテンツ(特段の意思表示がない場合)について、暫定的利用を広く認めることには賛成するが、利用する側に、民間資格であるデジタルアーキビスト(上級)の資格を有する者が配置されているなど、著作権法制の趣旨を踏まえた利用が確保されるように条件を付すことが適当である。あくまで著作者の権利を尊重しつつ、意思表示のデフォルトを利用促進の方向へと舵を切るのであるから、運用に関して無法・脱法的なことが行われぬよう歯止めをかける必要がある。
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