大学等における新たな修学支援システムには、制度と実務にどんな問題があるか?(2)
また、後者については次のとおり。
- JASSOに、家庭の資産・所得の正確な捕捉ができるのか?資産から不動産を除外している点は明らかに不公平で問題があるが、そもそも本人及び親の現預金・有価証券の正確な把握は容易ではない。両親が別居中など個別事情も加わり、保護者としての責任を放棄している親の肩代わりを税金でやることになれば、国民からは強い批判が出る。制度のQ&Aによれば、ひとり親の場合、現預金等1250万円以下が対象とされているのは、かなり高額な基準との印象を持つが、そのような家庭の子供も支援対象にすることは甘すぎるのではないか?
- 手続きを仲介する高校・大学等はもちろん、大検で入学資格を得て本人が申請するケースを含めて、手続きがミスなく適時に行われるのか不安がある。給付型奨学金の支給、大学による減免措置への国による支弁の2つの手続きが必要という点も、普通の人には分かりにくく、実務の混乱を招きそうである。
- 支援対象者の成績が上位50%に入っているという条件の確認が非常に難しい。まず、大学入試では合格者の総合順位はつけようがない。入試が多様化しているからである。また、入学後は、学科単位での順位は出せるだろうが、同じ科目を履修しているわけではなく、上位50%に大した意味があるとは思えない。修業年限内に単位を修得して学位を取得して卒業できる見込みがあれば十分ではないか?上位50%の条件を満たせなくなった者を無慈悲に切り捨てるのは、制度の趣旨からも間違いではないか?
- 親の死亡など事情が急変したために、このシステムによって年度途中に修学支援を希望する者への迅速な対応が、どのように可能なのか、親や学生が安心できる具体的な手続きを明確にしてもらいたい。一般的には、年度途中で事情変更が生じた場合は、行政の迅速な対応が難しいからである。また、減免・支弁や給付が遡及的に可能なのか、行政手続上の課題もある。所得金額によって支弁上限が異なってくるので、事情変更があれば、結果に反映すべきケースが相当多数出てくることが予想される。親の婚姻による家庭の資産・所得増など不利な変更については、届け出が遅れる可能性もある。JASSOが調べ上げて、公正を担保できるのだろうか?とても無理ではないか?
以上の内容のパブコメを送っておいたが、プロジェクトチームの人間は、失礼ながら欠陥のあるシステムが沈まないように穴をふさぐような仕事をさせられているという意味で、誠に気の毒である。また、今後実務を担当させられるJASSOや高校・大学等の担当者にも、心から同情する。
恐らく、実務遂行の過程で種々の困難が露呈し、正直者が馬鹿を見て、悪知恵に長けた連中が得をする阿呆らしい事態が生じ、現場や国民からの不満は危機的な水準に達することだろう。むしろ、安倍政権が最終段階で消費税10%を延期して、この矛盾だらけのシステムが稼働しないで済むことを密かに期待するものである。
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