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サカナ新時代

日本の海に「変化」が起きています。漁業の現場から食卓までその影響に迫ります。

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「すしブーム」で需要急増 外資企業が狙う陸上養殖の付加価値

プロキシマーが建設した閉鎖循環式の陸上養殖施設で泳ぐアトランティックサーモン=同社提供
プロキシマーが建設した閉鎖循環式の陸上養殖施設で泳ぐアトランティックサーモン=同社提供

 なぜ、サーモンを「海」ではなく、「陸上」で養殖する動きが活発になっているのだろうか。

 生食用として人気を集める「アトランティックサーモン」の養殖は、ノルウェーが世界をリードしている。同国では、波が穏やかで年間を通して低水温という環境を生かし、1980年代からサーモンの海面養殖が盛んになった。天然のサーモンは寄生虫などの問題で生で食べるのには向かない。海面で餌を管理して育てることで、生食用サーモンという新たな市場を開拓したのだ。

 現在、ノルウェー資本の会社が、日本でサーモンの陸上養殖を進めている。同社幹部への取材を通じて、なぜ「陸上」での事業参入が相次いでいるのか、背景に迫りたい。

 連載「サカナ新時代・養殖編」(全7回)は以下のラインアップでお届けします。
 第1回 サーモン生み出す巨大な「プラント」
 第2回 外資企業が狙う陸上養殖の付加価値
 第3回 限界突破の「ゲームチェンジャー」
 第4回 飛行機に乗る「近大マグロ」の卵
 第5回 「完全養殖」に立ちはだかる壁
 第6回 60年来の悲願マダコ養殖
 第7回 カニを食べ、個室に住まうマダコ

投資のプロが注目した理由

 富士山のふもとにある静岡県小山町は、面積のおよそ7割が森林に覆われ、登山シーズンには多くの観光客でにぎわう。山あいにあるこの町で、ノルウェー資本の養殖事業会社「プロキシマー」(横浜市)が、大規模な養殖場を建設している。2024年に初めての水揚げを迎え、27年に年間5300トンの生産量に達する予定。施設をさらに建設して、最終的には2万6000トンまで増やす計画だ。

 「世界のサーモンマーケットは非常に大きく、需要は伸びている。しかし、養殖に適した海面には限りがあり、供給の伸びは鈍化している。効率を高めて生産していくには、陸上養殖に移っていく必要がある」

 ヨアキム・ニールセン最高経営責任者(CEO)はそう力を込める。同氏は鉄道建設会社のCFO(最高財務責任者)を務めるなど投資や資金運用の分野でキャリアを積んできたが、日本でのサーモンの陸上養殖に可能性を感じ、17年にプロキシマーを設立した。

 まずは事業参入の背景にある、需要の伸びについて見ていきたい。

 国連食糧農業機関(FAO)のデータを基に水産研究・教育機構がまとめた統計によると、世界のサーモンの養殖量は右肩上がりで、00年の生産量約150万トンから、20年には約400万トンにまで増加。世界的なすしブームで需要が増え、国際取引される全水産物の輸出金額のうち、サーモン類は全体の2割近くを占める市場規模にまで成長している。

 海外でサーモンは高級食材として扱われていることもあり、価格は上昇傾向だ。ノルウェーや同じく主要産地であるチリから日本に輸入されている生食用サーモンの価格は、数年前と比べて1・5倍ほど高くなっている。

 増え続ける需要の一方で、既存の海面養殖だけでは大きく供給を増やせない事情がある。

 アトランティックサーモンの養殖に適した海域は世界の中で限られている。ノルウェーやチリなどには、既に適した海域…

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