
マイナンバーカードを巡るトラブルが止まらない。政府は「デジタル社会のパスポート」を誘い文句に推進の姿勢を崩していないが、本当にこのまま突き進んで大丈夫なのか。かねて懸念を示してきたIT企業サイボウズの青野慶久社長と、国際ジャーナリストの堤未果さんが指摘するマイナカードの「穴」とは――。【金志尚】
<目次>
不明確な目的とずさんな設計
兆単位のコスト、投資に見合わぬ利便性
ひも付く個人情報、一極集中はリスク大
なし崩し的「適用拡大」に危機感
国際的潮流に逆行、サイバー攻撃で流出懸念
国民監視、思想・言論統制つながる恐れ
国、推奨しながら「流出の責任負わぬ」規定
デジタル弱者切り捨て、公共の精神に背く
事業停止し再考を 本来のデジタル化とは
不明確な目的とずさんな設計
マイナカードを巡っては、コンビニの証明書発行サービスで住民票の誤交付が確認されたのを皮切りに、問題が次々と広がっている。健康保険証と一体化した「マイナ保険証」では別人の情報を登録するミスが約7400件発覚したほか、医療機関で情報を読み取れず、患者が窓口で全額を負担させられるケースも相次ぐ。また、公的給付金の受取口座をひも付ける際に本人ではない口座を登録したケースも約13万件判明している。
こうした中、「だいたい予想通りの展開」と受け止めているのがサイボウズの青野さんだ。「トラブルの根本原因はマイナカードの目的の不明確さと設計のずさんさにあるので、何が起きても驚きはありません。このままいけば、もっと大変なことが起きると思います」
兆単位のコスト、投資に見合わぬ利便性
青野さんは約3年前からマイナカード不要論を唱えてきた。まず問題なのは、誰の、何の困り事を解決しようとしているのかが分からないことだという。例えば、と挙げるのがコンビニでの住民票の交付。そもそも住民票を必要と…
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