きのう夕方から報道されていますが(安倍首相「獣医大学いいね」=加計氏、15年2月に説明―愛媛県が国会に新文書提出)、参議院予算委員会は、愛媛県庁と今治市役所に対して資料の提出を求めました。県庁は応じ、市役所は拒みました。愛媛県庁が、きのう平成30年2018年5月21日(月)に参議院に提出した資料には、安保法国会のさなかの、平成27年2015年2月25日(水)に加計理事長と安倍晋三首相(自民党総裁)が会ったとの記述がありました。
各紙が報じていますが、朝日新聞29面(第3社会面)はほとんどの文書の要旨を載せました。
これによると、「報告 獣医師養成系大学の設置に係る内閣府及び首相秘書官訪問について」とする同年3月の県庁地域政策課作成のペーパーでは、「(参考)加計学園の直近の動向・今後の予定」として「2月25日 理事長と安倍総理が面談 3月3日 県との打合せ会 3月4日 今治市長と面談 3月8日 下村文科大臣との面談 3月15日今治市と協議 3月24日柳瀬首相秘書官との面談」とあります。首相が知った日の答弁が違ううえ、首相が直接会った1か月後に官邸で首相秘書官と会っているのですから、首相の指示があったであろうことは9割以上確実です。
もう一つ。「内閣府藤原次長と柳瀬総理秘書官との面談について」とするペーパーの中で、柳瀬秘書官の発言として「確認だが、愛媛県・今治市の両首長がやる気である、ということで間違いないか」と確認する場面が出てきます。参考人質疑と違います。
また、終盤国会1か月とは直接関係ないところで、私から3点。柳瀬秘書官の発言として「役所としても、厚生省(ママ)・農水省や獣医学部の空白地帯である四国に学部ができることは、鳥インフル対策の観点からも望ましいと思っているはず。文科省もいい大学ができるのであれば反対はしないだろう」と発言。これは皮肉にも今年1月に四国の玉木雄一郎代表の選挙区内で鳥インフルが発生してしまっており、関係者の複数の主張と腹合わせができていた感じがします。
それから、藤原内閣府次長が「新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状は、愛媛県・今治市としても気になるところだと理解できるし、ここだけの話であるが、新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状は、当初よりもトーンが少し下がってきており、大学用地を用意している今治市と比べても、具体性に欠けていると感じている」と語った、としています。ここまでの議論では、加計学園と京都産業大学との比較が多かったのですが、新潟市特区を気にしていたところも浮き彫りになります。
仮に加計学園の獣医学部が認められたとして、日本全体で一つだけの新設大学である方が、市場の寡占度が上がりますから、この4月入学者でも明らかになったように、志願倍率は大幅に増えるわけです。いわば、特例であることを法律で担保し、それでいてライバルの新規参入を阻止する。この特例も、新規参入阻止も両方とも「合法」なのです。
そこで、もり・かけに限らず、私が前々回の総選挙よりも前から指摘していた「特区法を毎国会改正する」との首相所信表明演説の問題点をしめした部分があります。
愛媛県庁文書には加計学園との打合せで、「3月3日に開催された国家戦略特区諮問会議では、特区法改正案に盛り込む追加規制緩和案が決定されたが、新潟市の国家戦略特区(獣医学部設置に係る規制緩和)は、含まれていない。今後、26年度末までに出される構造改革特区提案(愛媛県・今治市)に対する回答と合わせて、国家戦略特区の結論も出される模様。」とあります
このように、県庁が総力を挙げて、国家戦略特区あるいは構造改革特区の法律改正案の内容について情報をとろうとしている。これが「改め文」として国会に提出されても、野党や国民は歯が立たない。
いわば、国家戦略特区は規制緩和ではなく、新規参入規制強化にも使われていたわけで、ごく一部の者に利益を分配する、一般会計が余裕の無い時代の、実質的な補助金・官公需として使われていた、という構造的な問題にもメスを入れねばなりません。
安倍首相「獣医大学いいね」=加計氏、15年2月に説明―愛媛県が国会に新文書提出
加計学園問題をめぐり、愛媛県が国会に提出した同学園の加計孝太郎理事長が安倍晋三首相と面談したとする文書(写真)。首相は加計氏に「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と述べたとされている。【時事通信社】
(時事通信)
愛媛県は21日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、新たな文書を国会に提出した。中村時広知事が記者団に明らかにした。文書には、安倍晋三首相が学園の加計孝太郎理事長と2015年2月25日に面談し、「獣医大学の考えはいいね」と発言したと記載されている。首相は計画を知った時期を17年1月20日と答弁しており、新文書と首相答弁の食い違いについて、再び国会で争点になるのは避けられない情勢だ。
加計学園は21日夜、「理事長が15年2月に総理とお会いしたことはございません」と文書内容を否定するコメントを発表した。政権関係者によると、首相も面会を否定する方針だ。
文書は15年2〜4月に学園から報告を受けるなどした愛媛県が作成。参院予算委員会が10日に提出を要請していた。中村知事は21日、愛媛県伊予市内で記者団に、県庁内を調査したところ見つかったと説明した。首相と加計氏の面談や首相発言は15年3月の日付の文書に含まれている。
それによると、首相と加計氏の面談は15分程度で、加計氏から「獣医師養成系大学空白地帯の四国の(愛媛県)今治市に設置予定の獣医学部では国際水準の獣医学教育を目指す」などと説明。これに対し首相は「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と応じた。
また、この面談後の3月24日、当時の柳瀬唯夫首相秘書官は学園事務局長と首相官邸で面会し、「獣医師会の反対が強い」などと伝達した。
15年4月2日の学園関係者らとの面会で柳瀬氏は「本件は首相案件」と発言したとされている。柳瀬氏は「私は首相という言葉は使わない」と国会で答弁しているが、今回の文書の中には同氏が「獣医学部新設の話は総理案件になっている。なんとか実現をと考えている」と記しているものがあった。
15年2月の日付がある文書には、学園と面会した加藤勝信官房副長官(当時)が「獣医師会の強力な反対運動がある」「既存大学からの反発も大きく、文科大臣の対応にも影響か」とコメントしたとの記述もあった。
首相は昨年7月、国会での閉会中審査で計画を知ったのは同1月20日と明言。「彼(加計氏)が私の地位や立場を利用して何かを成し遂げようとしたことは一度もない。今まで獣医学部をつくりたいという話は一切なかった」と述べていた。
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Miyazaki Nobuyuki