1年前に投稿した、次の記事は、先の第190回通常国会に「改正地方交付税法(地方交付税法を改正する法律)」のタイトルの法案に含まれて提出され、3月31日に成立しました。
自治体から地方公社への単年度の貸付金、通称タンコロを将来負担比率に加えさせる改正条項は、来年平成29年2017年4月1日(土)に施行されることになり、総務省令が整備されていくことになっています。
以下、追記分を含めて、1年前の記事を全文転載します。
【追記 2016年8月22日】
この内容は、平成28年度当初予算関連の改正地方交付税法に盛り込まれ、ことし2016年3月31日に成立しました。下の内容の改正条項は、平成29年2017年4月1日施行で、総務省令などが整備されます。
【追記終わり】
総務省が、平成28年2016年の通常国会(第190ないし191回国会)に、地方財政健全化法(平成19年6月22日法律94号)の改正法案を出したい意向を持っていることが分かりました。
2015年8月19日付日経新聞が報じました。
記事によると、自治体から第三セクターへの短期貸付金(1年未満)で、年度末に返済させて翌日に再び貸し付ける事例が、総務省の調べで37件あったようです。これは呆れ果てた話で、バランスシート(貸借対照表)上、長期貸付金(1年以上)にすべきものを、短期貸付金に。さらに言えば、「年度末ゼロ」にもできる話で、粉飾といっていいでしょう。
これを網羅するために、3セクへの短期貸付金を含める考えがあるようです。ただし、これは牽制で、行政指導で改善する思惑があるようにも思えます。
同法は、(1)実質赤字比率、(2)連結実質赤字比率、(3)実質公債費比率、(4)将来負担比率、そして、(5)早期健全化基準を定めています。これらを、自治体は決算後に計算し、議会と総務省に報告しなければならないとしています。
自治体は、(1)から(4)までの数値のいずれかが、早期健全化基準を上回った場合は、財政再建団体として、財政再建計画を定めなければなりません。
自治体の財政指標にはまず、財政力指数があり、これは、基準財政収入額を基準財政需要額で割った数値で、「1・0」を超えると財政力、とくに歳入力があることになります。
次に、経常収支比率があり、一般財源(歳出が限定されていない歳入)のうち、人件費、公債費、扶助費(生活保護費含む)の三大義務的経費の占める割合を言います。100%を超える自治体もあります。この三大義務的経費は4月1日の時点で予算化されていないと自治体財政の存続にかかわるため、予算審議が滞っても、全会一致で暫定予算として成立させる格好となります。
そして、地方財政健全化法が定める、実質公債費比率。これは公債の残高のみならず、一般会計・特別会計から繰り出す利払いなども含んだ金額を基準財政需要額で割った比率。
これらに加えて3セクも含んだうえで、その日に全職員が退職したと仮定した退職金などを加えたのが、将来負担比率です。
総務省のウェブサイトで見ることができます。
平成25年度2013年度決算ベースでみると次のようになります。なお、数字は適宜丸めます。
財政健全化団体である、夕張市は750%で突出していますが、過去に比べると減ってきており、財政力指数がわずか0・2で、経常収支比率が120%なので、国の補助がなければ再生は絶対に不可能です。
千葉市の将来負担比率は250%で、自治体順、政令市順、県内順のいずれよりも突出して高いです。ただ、これも推移をみると減ってきており、財政力指数は0・95あり、経常収支比率も95%に健全化されいます。これらの指標の推移をみると、歳出の削減で健全化しつつあるようですが、この間に行政サービスが減ったのかもしれません。一方、同県内で活気がある、浦安市、市川市、松戸市、柏市などは軒並み極めて健全な指標です。ただ、今後、経常収支比率が高まって、先行きの重しになるかもしれません。
東京都内でも港区、武蔵野市、立川市など活気があるところは指標が良い傾向が見て取れます。今後、経常収支比率が高まる可能性もあります。
神奈川県内では、横浜市の指標が意外と良くありません。人口減がいわれる横須賀市は、財政力指数が弱いのですが、将来負担比率は低い。つまり緩やかな停滞が続きながらも自治体としての持続可能性は高いといえるのかもしれません。相模原市、厚木市は極めて良好な数字であり、街の活気を裏付けます。
地方部は財政力指数はおしなべて低い。今世紀初頭には、青森県内のごく一部ながらも複数の町村には危機的な数字も見られましたが、今は改善傾向にあります。この辺は人口が少ないから改革しやすいと言えるでしょう。さきほどの380万自治体の横浜市とは対照的といえるかもしれません。
その中で、長野県内自治体は財政力指数は低いのですが、将来負担比率も低く、これまでも節約型の地方財政を維持してきたことがうかがえます。ただ、世帯収入が高い川上村は意外と財政力指数が「0・25」しかなく、現在の行政サービスが過剰であるのかもしれず、将来的なリスクがあるように思えます。同じ北陸信越では、今話題の石川県金沢市は地方にしては財政力指数が高いのですが、それ以外の指標はIターンするには微妙な数字です。
大阪府内では、政令市の大阪市と堺市を比べると興味深い。大阪市と堺市では、大阪市が軒並み不健全な数字となっています。ところが、財政力指数は大阪市が堺市よりもかなり強い。今後のやりようによっては大阪市は健全の余地、堺市は悪化の余地があるということになります。一方、高石市、泉佐野市などの財政は極めて不健全です。高石市が消防一部事務組合を堺市と組んでいるのは、この影響なのかもしれません。泉佐野市は自主的な再建はかなり難しいという見方もあるのかもしれません。
気を付けたいただきたいのは兵庫県。高級住宅街と思われがちな自治体。芦屋市、西宮市、宝塚市の指標が悪いのがはっきり出ています。過去の推移を見てもらうと、経常収支比率が100%を超えていた時期も長く、「公務員天国」だった時期があり、今は「過去の栄光の遺産」の改善傾向にあり、今後の街の活気の伸び方が限定的になるかもしれません。同様の傾向は奈良県内にもみられます。
今話題の薩摩川内市は、健全な傾向にあります。
沖縄県内自治体は、歴史的経緯もあり、将来負担比率は健全です。
このように指標が悪い自治体は、仮に健全化に成功したとしても、その間に住民が受ける行政サービスは低下するかもしれず、住宅を購入する予定がある人は、こういった数字を見ることは必須だと、私には思えます。公務員天国を批判するのは良しとしても、見返りに行政サービスが低下することも勘案する必要があります。その一方、今の活気にひかれて、港区、武蔵野市、浦安市などに住むにしても、現在の経常収支比率が低いということは、周辺から住民が流れ込み、将来的に悪化する可能性が高いともいえ、何世代も住み続ける前提の住宅購入ならば多少は考慮すべき。高齢者が賃貸住宅に住むにはいいと言えるのかも。
このように、従来の財政力指数、経常収支比率に加えて、新しく、自治体や3セクの公債費、利払い費、退職金負担などを網羅したのが地方財政健全化法になります。
総務省はこのエントリー記事を初投稿した時点で開かれている第189回通常国会に提出した7本がすべて6月の当初会期内に成立・公布されているほか、一部かかわった内閣府の第5次地方分権一括化法や議員立法の改正公職選挙法も施行されています。その他の公職選挙法改正案は一部審議入りしていないものもあります。
仮に「地方財政健全化法の改正法案」が提出された場合は、平成28年度年次地方税法改正案、総額を上書きする地方交付税法改正案、NHK予算の承認を求める件の処理が終わった、平成28年2016年3月下旬以降に衆議院総務委員会で審議入りするだろうと予測されます。
このエントリー記事の本文は以上です。
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