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益尾知佐子

九州大学大学院比較社会文化研究院 教授

九州大学大学院比較社会文化研究院 教授

専門は現代中国の政治外交、およびユーラシア国際関係。1996年に交換留学生として北京大学に滞在。以来、中国と隣国との関係に関心を持つ。日本国際問題研究所研究員、故エズラ・ヴォーゲル教授研究助手などを経て、2008年から九州大学で勤務。毎日、海を見て過ごすうちに海洋問題の研究も始めた。著書に『中国の行動原理』『中国外交史』『中国政治外交の転換点』など。
【注目するニュース分野】中国、国際関係、海洋、科学技術
専門は現代中国の政治外交、およびユーラシア国際関係。1996年に交換留学生として北京大学に滞在。以来、中国と隣国との関係に関心を持つ。日本国際問題研究所研究員、故エズラ・ヴォーゲル教授研究助手などを経て、2008年から九州大学で勤務。毎日、海を見て過ごすうちに海洋問題の研究も始めた。著書に『中国の行動原理』『中国外交史』『中国政治外交の転換点』など。
【注目するニュース分野】中国、国際関係、海洋、科学技術

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益尾知佐子

不安定な国際環境の中で、企業経営のリスク管理が難しくなっているのを示す事例です。 西側諸国にとって新疆でのウイグル族弾圧は言語道断。「再教育施設」収容者が新疆綿の収穫等をやらされているという情報があるため、新疆綿はボイコットの対象になってきました。ただやや話が飛躍しているきらいもあり、中国市場で成長してきたファストリはあえて原材料の産地を公表してきませんでした。しかし、今後の成長のためには欧州に食い込む必要があります。柳井会長発言はそうした中でなされたのでしょう。でも、今度は中国人の愛国的反発を集める結果に。国際関係の緊張が高まる中では、政治の火の粉がいつ経済に飛んでくるかわかりません。

益尾知佐子

これ、興味深い連載ですよね。 習近平政権は歴代の中でもかなり個性的ですが、中国の庶民の生活はまた別。彼らは不況になったらなったで、なんとかそれに適合しながら小さな幸せを見つけていきます。実際に中国ブランドの質もかなり向上しているので(ここは「世界の工場」としての蓄積)、そこまでの不都合はないのでしょう。これまで日本人がそうだったように、中国人は今後どんどん草食化するでしょう。変化は日本の数倍の速度で訪れます。 中国人の嗜好の変化によって影響を受ける産業は少なくないはず。中国はなお人口がなお多いので、重要な市場であることは間違いありませんが、戦略の見直しは早急に進めるべきです。

益尾知佐子

ようやく、ですね。ビジネスや観光で行きたいというニーズは一定してあるので、よかったとは思います。ただ、中国が日本人へのビザ免除措置を凍結している間に、日本人の対中警戒心は格段と高まってしまいました。その原因が除去され、さらにそれが多くの人の認識として定着しなければ、中国への渡航がかつてのレベルに復活するのは相当難しいでしょう。 しかし、中国の多くの人は(研究者も含めて)、外国人がなぜ中国に行かないのか、なぜ不安を感じるのか、こちらがどれだけ説明しても納得できないようです。つまりまだ、上記の原因の根本的除去からはほど遠い。なので各国の中国研究者と同様、私もまだ中国に渡航できる気がしません。

益尾知佐子

中国ではいまや外交は内政の重要な一部です。国内では政権に対するさまざまな不満が蠢いていますが、習近平は自分を非西側諸国のリーダーとして印象付けることで、国民の自尊心を高め、不満のガス抜きをするようになっています。国連、上海協力機構、BRICSがそのための重要なプラットフォームと位置付けられてきましたが、それらでの力固めがひと段落したので、次は西側と影響力が交差するAPECでも、という計画なのでしょう。 習近平が後押ししてきた「一帯一路」にとって、チャンカイ港開港は久々のビッグニュース。先日、ペルーに行く機会がありましたが、現地では実際に中国に対する不安より期待の方が大きいようでした。

益尾知佐子

米国での政権交代がはっきりした今、習近平がバイデンと会う意味は、米国との対話重視の姿勢を自国民に印象付け、最高指導者としての威厳を維持することくらいしかありません。今何を話し合っても、明日の問題解決につながらないからです。 中国国内ではトランプ新政権の反中姿勢について、かなり暗い予測が多いです。台湾には積極介入しないかもしれない、米国の国内分裂を広げてくれるかもしれない、という2点には多少の期待が寄せられていますが、トランプ第1期の時よりも米国内で反中認識が広がっているため、米中関係のマネージメントはより困難になる、と思われています。各国は、中国のそうした不安感を外交交渉に活用すべきです。

益尾知佐子

グローバルレベルで米中間の覇権競争が展開されています。その中で、「権威主義」「専制主義」側の利益は反米闘争のためかなりまとまっているように思われてきました。ところが北朝鮮のこの動きは、それらの国々の利益を分断し、全体構造を崩しうるものになりえます。 ロシアのウクライナ侵攻は、米国の注目を中国ではなくロシアに向けさせ、東アジアではなくヨーロッパを米国の主戦場にする点で中国の利益に叶っています。だから中国はロシアが崩壊しないよう支援してきたのです。ですが北朝鮮の挑発的な動きは、中国のそうした意向に逆行し、米国の注目を再び東アジアに呼び込んでしまう。陣営内の関係性が今後どう推移するか、要観察です。

益尾知佐子

西側諸国が民主主義をとるからこそ、専制主義側にとって認知戦は仕掛けがいがあります。認知戦は善悪の判断軸を揺らがし、ひいては逆転させる作戦です。専制・権威主義国では、物事の善悪を判断するのは政権で、優秀な政権ほどメディアやサイバー空間をしっかり統制しています。庶民はその判断を受け入れるしかありません。しかし、民主主義国では個人に判断が任されている。認知戦はそこを突いてきます。 対抗策は個人の判断力の向上がもっとも有効。主体的・批判的思考力を鍛えるなど、教育面での措置が大切です。もっともそれは本来、民主主義の基本です。国際政治の変動期には、教育などの国内の制度設計にも改善や再建が求められます。

益尾知佐子

コロナ後は中国に行けておりませんが、コロナ前からアウトドアスポーツは堅調に拡大していました。昔、中国では大気汚染がひどかったですが、その後、成立した習近平政権は環境改善を強く意識し、国立公園の設立などを進めました。 中国人の嗜好性も一昔前とはだいぶ変わり、大金を使って自分のステータスを確認するより、いまは自分の生活の質を重視する人が多いです。マイカーを運転して郊外に出て、自然に親しむ人が増えました。釣りなどはかなり人気で(ダムなどでやるらしい)、日本製の釣具は高くても欲しい人がいっぱいいます。中国社会は常に変化しておりますので、新たなニーズをぜひ商機に変えていただきたいです。

益尾知佐子

不思議なことに、中国の主要紙はほとんどこの軍事演習について報じていません。ざっと見たところだと、環球時報だけ戦闘機からの動画つきで記事を出しているくらい。中国当局としては、独立志向の台湾人は脅したい、でも戦争ムードを高めすぎて自国経済をこれ以上冷やしたくない、という考えでしょうか。もっとも、その余裕のなさを台湾側に読まれ、どうせたいした反応はできんだろうと判断されて、頼総統が今回のような演説に踏み切ったのだろうと思います。 他方で、この演習でも明らかですが、中国海警の行動範囲は台湾島へと広がり始めています。それが日本にどのような意味を持つのか、引き続き注目したいです。

益尾知佐子

「アジア版NATO」がインド太平洋の状況に適合的かどうかは熟考すべきですが、日本の主権国家としての独自性を打ち出し、日米安保の片務性を是正していくというメッセージは、政治的には正しいと思います。 現在、膠着している日中関係の打開が望まれていますが、多くの中国人は日本を米国の完全な「犬」とみなしています。自分の考えなしに最大手の米国に付き従う日本なら、力で脅せばじきビビって屈服するだろうというのが、彼らの典型的な理解。そうではなく、日本とちゃんと向き合って交渉しなければ、対米関係も東アジアの安保もうまくいかないと中国に思わせるくらいでないと、これからの日本の首相は役割を果たせません。

益尾知佐子

労働者への日本語教育は重要ですが、文科省の日常業務のにおける大きな課題は「空白地域」での義務教育年齢の子供の日本語教育です。都市部では日本語のできない外国人用に、学校にサポート体制が存在します。でも地方ではそれが準備できず、でも子供は分散して存在している。この場合、教員は他の業務で忙しいので、子供はそのまま、ほぼ放置になるそうです。 こうした子供は潜在的には将来、日本と海外を橋渡ししてくれる貴重な存在です。せめてオンラインで日本語の補講を準備するなど、集団的な取り組みが必要でしょう。日本語ができないままの子供はドロップアウトして荒れたり無気力になったり、誰にとっても望ましい結果になりません。

益尾知佐子

米国政府は少し前に本件の分析を済ませていたようです。中国が25日、太平洋に向けてICBMの発射実験を行って軍事力を誇示したので、逆に公開を決めたのかもしれません。「中国の軍事力は宣伝しているほど強大ではない」というメッセージですね。 気になるのは沈没地点です。記事にある「湖北省にある長江に面した造船所」は、他紙によれば武漢(武昌)のようで、人口がとても多く、中国の心臓部です。仮に核燃料搭載前だったとしても、非公表なのは市民に対してあまりに無責任です。 本来なら本件も処罰対象になるはずですが、解放軍幹部は汚職で摘発が続いており、これまで追及すると、そろそろ組織がもたないのかもしれません。

益尾知佐子

王毅氏のコメントから、男児死亡事件を「偶発的な個別事案」として処理する、というのが中国の全体方針であるというのがよくわかります。二度あることは三度あると言いますが、中国は何がこのような事案を引き起こしているのかについては考慮しようとしていません。「核汚染水」への反対にしても、中国が科学や国際社会の反対を無視してこれに固執するのは、それを衝けというのが国のトップの指示だからでしょう。 中国では最近、すべての問題は米国のせい、という言い方がされますが、米中関係に脳内を支配された指導者が問題なのではとすら思えます。

益尾知佐子

93年前の満州事変の日に起きた犯行ですが、10歳の男の子には関係ありません。むしろ、いつまでも醜いナショナリズムを煽り続ける体制に怒りを感じます。中国政府は、国内の不満を外に向けて発散させるのはもういい加減にして、自国の経済回復に正面から向き合うべきです。政治がいびつすぎます。

益尾知佐子

具体的にどこの領空を侵犯したのかまだはっきりしませんが、男女群島沖のかなり広い海域を、中国は自分の「管轄海域」の主張に含めています。もしかすると中国はこの海域での日本の基線(おそらく離島が起点)は認められない、と行動で示し始めたのかもしれません。中国は東シナ海で広大な「大陸棚」を自国領域と主張しており、その外縁は男女群島沖に迫っています。 中国は日本の台湾有事への関与や南西諸島での防衛力強化を相当懸念しています。日本との対立の「前線」を北に広げて日本を消耗させることは、中国の利益にかなっています。 いずれにせよ、引き続き観察・分析し続けることが重要です。

益尾知佐子

新たな合意ですが、歴史は繰り返す、です。いまの国際的なパワーバランスの組み換えで、最も得をするのはインドでしょう。たびたびインドに通ってきた中国研究者としては、中国とインドを比べて、インドの方が民主主義的でルールを守る人権擁護社会だとはなかなか思えません。しかし結局、こういう変動期に一番重要なのは力なのです。他者に力を見せつける中国への脅威感が、日本をはじめ西側の多くの国々をインド支持に向かわせます。 改革開放初期の中国は、西側諸国のソ連に対する脅威感を利用し、経済発展と国力増強を進めました(新冷戦時代)。いま、インドに同じチャンスが訪れています。インドはそれをうまく利用できるでしょうか。

益尾知佐子

海警5901は排水量1.2万トンで、中国の報道によれば世界最大のコーストガード船です。このサイズを他国が作らないのは、船を大きくしても小回りが効かず実務向きではないためですが、中国の目的は弱い相手に対する脅しなのでそれにはかなっています。船には76ミリ砲、30ミリ砲、12.7ミリ重機関砲、高圧水砲、ヘリコプターを積んでいるそうです。 南シナ海には世界的な注目が集まっていますが(確かに危険ですが)、記事にある漁業については東シナ海でも同じことが起きています。新日中漁業協定で東シナ海のほとんどを事実上の自由水域にしたため、日本漁船は中国側に合法的に駆逐されてしまいました。人ごとではありません。

益尾知佐子

国際関係の今後の展開を考える上で、とても興味深い事例です。中国は他国に対して政治理由の経済制裁を多発しています。それは相手が自分に依存しているから懲らしめてやる、というような発想なのですが、それをやられた相手は中国の力の圧力から脱しようとする。そして、1年も経つと自助努力で新たな道を見つけ、立ち直っていったわけです。 (学術的なことをいうと、相互依存論における敏感性、脆弱性の事例です。調べてみてください。) もちろん、回復の前提には製品の付加価値の高さや関係者の努力があり、誰でもできることではありません。ただ、今後はこうした成功事例を念頭に、中国と距離をとる国が増えてくるかもしれません。

益尾知佐子

夏休み中に九州の山間部をうろうろしたのですが、結果的に災害被災地ばかり回っていたような気になりました。 もちろん、温暖化で気候が変わり、これまで想定外だったような天候が生じているというのが問題の基調です。しかし、それに加えて都市化に伴う人口移動があり、かつての里山が急激に荒れ果て、森林の保水力がなくなっているという人的要因があります。憤った自然の力が強すぎて、道路や崩れ落ちた山肌をもとの状態に戻し続けるのは現実的ではありません。いくら税金を投入しても足りません。 都市化を前提に、人がいなくなった地方の山を、安定した自然林に返す国家的なプロジェクトが必要だと思います。自治体レベルでは無理です。

益尾知佐子

振り返れば、この数年で日本の外交防衛政策は大きな変化を遂げました。統合司令部の具体的な中身を決める今回の2プラス2はもちろん重要な会議で、拡大抑止をめぐって別途、閣僚会議が開催されることにも大きな意義があります。変化する外部環境や不安定化・不透明化する国際秩序の中で国益と国民生活を守るには、合理的選択です。ただ、それによって中国やロシアがまた、「自分達は追い詰められている」と認識し、国際的な緊張が高まるのも事実(こちらも真剣にそう思っているのですが)。もはや話し合いも非常に難しくなるなかで、最後はなんとか力の均衡を保って、無理やり平和を維持するしかないようです。薄氷の上の平和、です。

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