紅麹、コレステロール低下で注目 小林製薬16年から事業
小林製薬が製造し、健康被害が広がっているサプリメントの成分「紅麹(こうじ)」は古くから食品に用いられてきた。血中コレステロール値を抑えるなどの効果があり、近年は健康食品の原料として注目された。欧州では過去に健康被害が報告されており、欧州連合(EU)などが規制を強化している。
紅麹は蒸した米や麦などの穀物をカビの一種である紅麹菌で発酵させたもの。発酵により紅色になる。伝統的に中国の酒や沖縄の「豆腐よう」や漢方薬の原料である生薬などに幅広く使われてきた。
発酵の過程では、血圧低下に効果があるGABA(ギャバ)や血中コレステロール値の抑制作用を持つモナコリンKといった成分が生成される。近年は健康食品にも使われ、小林製薬は問題になった機能性表示食品で「悪玉コレステロールの値を下げる効果がある」とうたっていた。
紅麹含む食品、販売違法の国も
ただ紅麹菌の中には有害物質「シトリニン」をつくり、腎臓の病気につながるものもある。欧州では過去に健康被害が報告されている。EUの執行機関である欧州委員会は2014年にシトリニンの基準値を設け、規制を強化した。
スイスでは紅麹を成分とする食品の販売が違法とされ、フランスはサプリメントを飲む際は医師に相談するよう呼びかけている。
小林製薬によると、同社のサプリはシトリニンを合成する遺伝子がない紅麹菌の株を使っている。2月上旬から成分の分析を進めたところ、原料からシトリニンは検出されなかった。
しかし、その後の調査で23年4〜12月に製造されたサプリ向けの原料に「意図しない成分」が含まれていると判明した。健康被害の原因は特定されていない。
小林製薬は16年にグンゼから紅麹の研究・販売事業を譲り受け、食品メーカーなど向けに食品の色づけや風味付けの原料として販売していた。
サプリ原料、ベニコウジ色素とは別
悪玉のLDLコレステロール値を低下させる効果をうたった機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を21年に発売。同ブランドの23年12月期の売上高は6億円だった。
小林製薬によると、同社のサプリメントを摂取後に亡くなった例は29日午前時点で計5人。同社への相談は27日時点で約1万2千件に上っている。
紅麹菌由来の製品では食品添加物のベニコウジ色素があり、チョコレートやカップ麺などに用いられる。ただ、これは紅麹菌の培養液から抽出した色素で、問題になっているサプリなどの原料とは別だ。
小林製薬は2024年3月22日、紅麹(こうじ)を使った機能性表示食品を自主回収すると発表しました。摂取した消費者から腎疾患などの健康被害が発生したためです。最新ニュースや解説記事をまとめています。