今野真二「日本語日記」 櫨紅葉
江戸時代に仙台藩で起こったお家騒動(伊達騒動)を題材にした「慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)」という歌舞伎の演目があります。三代目市川猿之助(二代目市川猿翁)が一人で十役の早替わりを演じて「伊達の十役」と題したので、この通称が現在はよく知られています。題名は、恥も外聞もなく、真っ赤になって汗をかいた顔を見せるという意味です。
『新古今和歌集』に「鶉(うずら)なく交野(かたの)にたてるは...
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日本語学者の今野真二さんが、短歌・俳句や文学にあらわれる日本語、街中でみかけた言葉などを探偵します。