物件選び、役立つ無料データ 日照・高低差・将来人口……
公益財団法人不動産流通推進センターが9月中旬、不動産会社向けに調査報告書「オープンデータを活用した不動産DXのすすめ 今すぐできる顧客サービス向上・業務効率化」を公表しました。報告書は不動産会社が物件調査をする際に役立つ無料の関連データを取り上げ、利用方法を分かりやすく解説しています。これらのデータは一般の人も利用可能で、これから住まいを探す人にも使っていただきたい内容になっています。今回は、筆者お勧めの機能について紹介します。
日当たりの変化を確認
日当たりで気になることのひとつは、冬至の時に、南側の建物の影が自分の敷地にどの程度落ちるのかということです。例えば南側の建物が比較的近いところに建っている、北傾斜の敷地であるなどの場合は、特に日当たりが気になると思います。冬至の時期に物件見学できればよいのですが、必ずしも実現可能ではありません。これまでは「冬至の正午の南中高度から考えると、こんな角度で日差しが入ってきそうですね」といった曖昧な回答しかできませんでした。
しかし国土交通省が公開する「PLATEAU VIEW(プラトービュー)」を利用すれば、建物にかかる日影の状況を簡単に確認することができるのです。朝何時ごろから日が入ってきて、南中時にどの程度差し込み、午後は何時から日影になるかまで分かります。以下の2つの画像は神奈川県内の某所におけるもので、上の画像が冬至の朝8時ごろ、下の画像が南中時の日照を表しています。赤い丸の中にある長方形の大きな建物とその右側に並ぶいくつかの小さな建物を見ると、小さな建物にかかる朝8時ごろと南中時との日照の違いがよくわかると思います。
物件までの高低差を断面図で
最近、豪雨が多いこともあり、高台にある物件を探したいという人が増えつつあります。しかし高台に立地する物件は、最寄り駅から上り坂であることが多々あります。よく知っている地域ならどの程度の傾斜なのか分かりますが、初めての地域だとそうはいきませんし、気になる物件全てを見て歩くのも大変です。そこで使えるのが「地理院地図」の断面図です。地理院地図をウェブで検索し、画面右の「ツール」をクリックして断面図を選び、始点と終点を決めるだけで、高低差がわかる断面図が表示されます。図は東京都渋谷区の道玄坂上から宮益坂上までの経路を断面図にしたものです。
周辺の将来人口を確認
住まいを選ぶ際、値下がりしにくい立地を選びたいという声を多く聞きます。そういう場合、駅周辺の年代別将来人口を確認することもできます。国交省の国土数値情報サイトから将来推計人口のデータをダウンロードしたり、QGISという地図システムをダウンロードするなど少々面倒ではありますが、報告書「不動産DXのすすめ」に記載された方法を忠実に実行すればだれでも将来人口を地図上にプロットしたり、データを集計することができます。
不動産会社に依頼する手も
報告書はこのほかにもウェブ上で様々な確認や分析ができる方法を紹介しています。都市計画法などの公法規制、過去の地価動向などを確認することもできます。報告書はウェブサイトからダウンロードできるので、興味がある人は試してみるとよいと思います。一方、住まい探しをしながら、ここまで自分でやるのは難しいということもあるでしょう。「不動産DXのすすめ」は本来、不動産会社の業務効率化のために公表されたものですから、不動産会社の担当者に頼んでみるのもよいと思います。
(20代からのマイホーム考 第111回)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。
住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。
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