日本、北方領土問題扱わず 93年東京サミット後進展狙う
外交文書公開
日本政府が1993年7月の主要7カ国(G7)東京サミットで対ロシア支援を優先し、北方領土問題を扱わなかった経緯が26日公開の外交文書で明らかになった。ロシアのエリツィン大統領はサミットの際に来日し、宮沢喜一首相との会談で、領土問題を話し合うための公式来日を10月半ばに実現することで合意した。
対ロ支援は欧米の関心が高く、日本政府は日ロ2カ国間の領土問題を持ち越した方が得策と判断した形だ。
G7がまとめる政治宣言では前年のミュンヘン・サミットで「領土問題の解決」が明記されたが、東京サミットでは盛り込まれなかった。同サミットは対ロ支援が主な議題となり、エリツィン氏はサミットに合わせて開催された「G7プラス1」会合に出席した。
サミット関連の文書などによると、93年2月、クリストファー米国務長官が渡辺美智雄外相との会談で「ロシア支援は日米双方の利益になる。北方領土が『シングルイシュー』となってはならない」と要求した。
外務省の小和田恒事務次官は3月、宮沢氏に「日本は領土問題があるから何もする気がないのだという感じが強いが、そうでないと明確にしていく必要がある」と強調。宮沢氏は4月、クリントン米大統領との会談で「領土問題にあまり深入りしすぎないように気を付けなくてはならない」と述べ、欧米と歩調を合わせる考えを伝えた。
宮沢氏の首相秘書官を務めた竹内行夫氏は取材に「宮沢氏は東京サミットとエリツィン氏の来日を2段階で考え、G7の場でエリツィン氏を追い込まないようにした」と狙いを説明した。
サミット時の日ロ首脳会談でエリツィン氏は再来日の際に領土問題を話し合う用意があると表明。政治宣言の内容について「同感だ」と評価した。
再来日時には細川護熙首相と会談し、北方四島全ての名前を明記した上で帰属問題解決の必要性を確認した東京宣言に合意した。今回公開された文書に日ロ首脳会談の内容に関する記録はなかった。
G7首脳は北朝鮮に核拡散防止条約(NPT)脱退決定の即時撤回を要求する政治宣言や対ロシア民営化支援、ウルグアイ・ラウンドの年内妥結を軸とする経済宣言を採択した。終了後、ロシアのエリツィン大統領を交えての「G7プラス1」会合も開かれた。
〔共同〕
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