地球の深部70キロ超、海洋マントルに生物由来の炭素
東京大学の秋沢紀克助教らの研究チームは、地球深部70キロメートル超にある海洋マントルが、魚やプランクトンなどの生物に由来する炭素を貯蔵していることを突き止めた。南太平洋のクック諸島に属するアイツタキ島の火山岩の成分を調べた。海における炭素の移動プロセスを明らかにし、地球温暖化のより詳細な実態解明につなげる。
地球内部は地殻、マントル、核で構成し、マントルは体積の83%、質量では67%と大部分を占める。これまでも複数の元素解析などから、炭素を長期間蓄える巨大な「貯蔵庫」だと推測されていた。
マントルなど地球深部には、二酸化炭素(CO2)などの形で温暖化ガスとして存在する大気中と比べてはるかに多量の炭素がある。計測や調査は困難なものの、マントルを含めて炭素の移動経路や量、起源を解き明かすことが温暖化などの現象を理解する上で欠かせない。
地球の深くでマントルは高温で溶けて液体のマグマになる。研究チームは、マグマに取り込まれてアイツタキ島の地表に運ばれた火山岩を調べた。採取した岩石のうち地球深部70キロメートル超でしか作られない「ザクロ石」の粒が散らばる部分にできた炭酸塩の炭素や酸素を詳しく分析した。
その結果、成分は一般的なマントルや大気中のCO2、海の堆積物などと比べて海の有機物に由来する結晶に近い特徴を示していた。海底の表面から生物由来の炭素がマントルの深くに入り込む経路があることを示す結果となった。
従来も、炭素で構成されるダイヤモンドの極めて細かい粒子が海洋のマントルの中で見つかったとの研究報告はあった。ただ、解析で岩石を切ったり、削ったりする過程で人為的に混入したとの可能性が指摘されていた。
今回はマントルの物質を含んだ状態で地表に出る火山岩「マントル捕獲岩」に注目して直接検出をした。海底にある生物由来の炭素が地球内部に入り込むほか、火山活動で地球の内部から地表に出ることも分かった。
今後は、他の島でも調査を進める。海洋マントルにある炭素について、貯蔵量の推定や排出量の定量化を目指す。秋沢助教は「マントルの炭素の実態をつかむことは、全地球規模で温暖化の実態を把握することにつながる」とみる。