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米年末セール前哨戦始まる Amazon、消費鈍化で値引き

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【ニューヨーク=弓真名】米国で年間最大のかき入れ時である年末セールの前哨戦が始まった。11月下旬に始まる本格商戦期を前に小売り各社は特売キャンペーンに乗り出し、関連消費の早期取り込みを狙う。長引くインフレから米消費者のあいだで日用品以外の商品を買い控える動きが広がっており、各社の値引き競争は激しさを増しそうだ。秋の先行セールは米消費の持続力を占う試金石になる。

ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムは10日から「プライム・ビッグディール・デイズ」と銘打ち、2日間の期間限定でセールを始めた。秋の大規模な値引き販売は2022年から2年連続となる。

プライム会員向けにブロック玩具「レゴ」を従来の半額の27ドル(約4000円)で売り出すほか、ヘッドホンやスマート家電を3〜7割引きで販売している。大幅な値引きを前面に打ち出して需要を喚起する。

米小売り大手のウォルマートも同時期にセールを始めた。オンライン限定で実施し、会員ではない顧客にも同じ割引率で対応する。アマゾン同様に高額な家電や電子機器を半額で販売するなど、大手各社のあいだで価格競争が激化している。

年末商戦に先立って各社が秋のセールに乗り出した背景には、インフレ下で裁量消費の勢いが弱まっていることがある。

高インフレであらゆる商品の価格が高騰するなか、衣料や玩具、家電といった不要不急の支出を控える動きは定着しつつある。小売り各社はセールの実施期間を分散することで財布のひもを固くする消費者を刺激し、年末の需要を前倒しで取り込みたい狙いがある。

米国の年末商戦は11月末の「ブラックフライデー」や12月のクリスマスセールで本格化する。割引率が大きくなるこの時期を利用して高額商品を買ったり、家族や友人へのプレゼントを購入したりする人が多い。全米小売業協会(NRF)によると、11〜12月の年末商戦は例年、年間売上高の約20%を占める最繁忙期となっている。

秋の先行値下げで消費を盛り上げたい各社だが、需要の先食いに終わる可能性も高まっている。米デロイトは23年の年末商戦は全体の売上高が前年比3.5〜4.6%増の1兆5400億〜1兆5600億ドル(約230〜232兆円)にとどまると予測する。22年の7.6%増からは伸び率が大幅に鈍る見通しだ。

米国市民の消費余力が低下していることが大きい。ガソリン価格などの高騰が続くなか、余剰貯蓄は底を突きつつある。新型コロナウイルス流行期に政府が巨額の給付金を配ったことで、21年には2兆ドルを超える規模にまで膨らんでいたが、足元では数千億ドルにまで減っているとの試算が相次ぐ。

学生ローンの返済再開も影響が懸念されている。学生ローンの借り手は全米で4000万人超にのぼる。コロナ禍の特例で20年3月から3年半、支払いを免除されてきた。米家計は返済猶予分を他の消費に回せた形で、経済を下支えする効果があったとみられる。

ロシアによるウクライナ侵攻に加え、中東情勢もにわかに悪化し、経済環境の先行きは決して明るくない。ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は、8月の決算説明会で金利上昇やエネルギー価格の高騰を懸念事項として挙げ「家計は依然として圧迫されている」と指摘した。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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