トランプ氏、グリーンランド購入意欲を再表明 植木安弘さんらとThink!
日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。12月20日〜27日の記事では、上智大学特任教授の植木安弘さんが「トランプ氏、グリーンランド購入意欲を再表明」を読み解きました。このほか「ブラジル、BYD工場建設に停止命令」「iDeCoなど一時金受け取り、退職金控除の縮小『5→10年』」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)
「トランプ氏、グリーンランド購入意欲を再表明」をThink!
トランプ次期米大統領は22日、デンマーク領グリーンランドの購入に意欲を示した。第1次トランプ政権の時にデンマークに提案し、拒否された経緯がある。「絶対に必要」と改めて力説した。
【植木安弘さんの投稿】グリーンランドは、2009年の自治法で住民が望めば独立することも許されている。これまでに行われた世論調査では独立支持が多数を占めているが、財政面でデンマーク政府の支援に大きく頼っていることから、そのような支援が期待出来なくなることには反対している。もし米国が財政支援や鉱工業企業の誘致などを大々的に行うことを約束すれば、独立派への支持が高まることが考えられる。ただ、独立したとしても米国に国を売り渡すことは考えにくい。人口は5万7千人ほど。大多数は先住民の系列でデンマーク生まれの人口は少ない。領土の拡張という大国の地政学的要因の再興になるのか小国の主権とナショナリズムが勝つのか注目される。
「ブラジル、BYD工場建設に停止命令」をThink!
ブラジル当局は24日までに、中国の電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)が計画する工場の建設現場で作業員が「奴隷同然の状態にあった」として、工事の中断を命じた。BYDは55億レアル(約1400億円)を投じて、同国初の工場を建設中だった。
【益尾知佐子さんの投稿】これはおもしろい。ブラジルはルラ政権ですね。ルラ大統領は前回、ロシアのカザンで開かれたBRICSの首脳会議も直前にドタキャン。BRICSは新興国の団結をアピールする場として位置付けられていますが、その際ルラ大統領はロシアとは一枚岩になれないと行動で示し、今回は中国にも示したわけです。中国にとっては、ブラジルにおけるBYDの生産は新興国における自分たちの影響力を誇示する材料。しかし民主主義をとるブラジルは、中国とは価値観や社会制度で完全に一緒にはなれないと対外的に明示したことになります。西側先進国と中ロの間で中間的な姿勢をとることこそ、ブラジルにとっての利益、という判断でしょう。
「iDeCoなど一時金受け取り、退職金控除の縮小『5→10年』」をThink!
政府・与党は企業型確定拠出年金(DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の一時金を受け取る際の課税を強化する。退職金よりも先に受け取る場合に、控除を縮小する期間を現在の5年未満から10年未満に延ばす。
【野尻哲史さんの投稿】私も、定年時に一時金を受け取る際、退職所得控除を受けるためには、過去14年以内の退職金も遡って合算する必要がありました。過去の退職金の源泉徴収票を紛失していたことで右往左往したのですが、今はこれが19年に延長されています。記事にある控除縮小期間を5年未満から10年未満に延長するのも、DCの制度が拡充されたことに伴うものです。そもそも「DCを受け取ってから5年後に退職金を受け取ると税制上有利」といった仕組みの存在は、制度を複雑にしてしまいます。誰にとっても分かり易い制度にするためには「裏ワザ」的な仕組みはない方がいいと思います。制度は分かり易いことが大切です。
「トヨタ、ROE目標20%に倍増」をThink!
トヨタ自動車は自己資本利益率(ROE)の目標を2倍の20%とする。上場企業の平均(23年度で9%台)を大きく上回り、世界の車メーカーでトップ級となる。販売後の車にサービスを提供するなど事業モデルを革新し、株主還元を積極化する。日本企業が資本効率を重視する流れが強まりそうだ。
【井出真吾さんの投稿】ROE改善の方法は①純利益増加、②株主資本縮小の2つです。トヨタは両方取り組むようですが、収益力強化による純利益増加に特に力を入れる模様で、これはROE改善の"王道"といえます。というのも、コストカットによる純利益拡大や、自社株買いや増配による株主資本縮小には限界があるからです。トヨタの目標が一朝一夕にできないことは皆理解しているので、時間がかかったり途中で踊り場があったりしても実現に向けて前進してくれることを大いに期待したいですし、追随する企業が現れて欲しいと思います。
「Google検索、独禁法違反を認定」をThink!
米グーグルの検索サービスを巡り、公正取引委員会が独占禁止法違反(不公正な取引方法)を認定する方針であることが22日、分かった。スマートフォンメーカーに自社を優遇させる契約が不当に競争を制限していると判断した。対話型AI(人工知能)を使った検索の新規参入を見据え、公正な競争環境を整備する。
【森幹晴さんの投稿】公取委がGoogle検索サービスで独禁法違反を認定し、排除命令を出す模様だ。Googleがスマホメーカーとの取引で、端末にアプリストアを搭載する条件として自社の検索アプリを初期設定するよう要請したほか、他社の検索アプリの搭載を制限すれば広告収益の一部をメーカーに分配する契約を交わしていた点を違反行為と捉えているようだ。拘束条件付き取引あるいは排他条件付き取引と認定したものとみられる。検索サービスの独占状態に競争を促し、消費者の利益を向上する狙いがあるとみられる。ただ、検索サービスもAIも有力な日本企業は育っておらず、国として次世代を担う新たな企業や産業の育成をセットで考える必要があるだろう。
「野村元社員の強殺未遂、若手『お願い営業』脱却の矢先に」をThink!
「何か不安がある社員がいたら自然に早くつかんであげようということも含め、予兆検知に一番の思いを込めた」。元社員が強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪で起訴されたことを受けて野村証券が開いた3日の記者会見。奥田健太郎社長は対応策について重々しく話した。
【篠田真貴子さんの投稿】今の管理職たちは若手だった頃、当時の上司に「背中を見て盗め」「いいからついてこい」といった厳しい態度で接してこられたのではないだろうか。飲み会ではなく、業務時間中に1対1で上司にじっくり話を聞いてもらったり、悩みを打ち明けるといった経験はしてないのでは? そんな彼らに、さぁ、1対1の面談をして部下の話を聞きなさい、さもないとまた不祥事が起きるぞ、とプレッシャーをかけても、必ずしも実効性ある対策にならない。まず必要なのは、管理職自身がじっくり話を聞いてもらい、聞いてもらってよかった、自分の内面を少し話せたと実感することだ。良い面談をしてもらって、初めて自分も意味ある面談ができる。
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