夕刊小説・有栖川有栖「折れた岬」21日連載開始
本紙夕刊小説、朝井リョウ氏の「イン・ザ・メガチャーチ」は6月20日で完結、21日から有栖川有栖氏の「折れた岬」を連載します。
有栖川氏は1959年大阪市生まれ。89年「月光ゲーム」でデビュー、2018年には代表作の一つ「火村英生」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞しました。起伏に富んだ物語と精緻な論理が特徴のミステリー小説で親しまれています。
今作は南伊豆の架空の町が舞台です。長年ミステリーを担当してきた編集者が引退し、折れ曲がった岬が見える家に移り住んだのは、ある作家の謎を探るためでした。真相を探るうちに、彼は自分がミステリーに登場する探偵になったかのような錯覚に陥っていきます。
挿絵は高いデザイン性に定評があるアートディレクター、大路浩実氏が担当します。
〈作者の言葉〉
ずっと謎解きもののミステリを書いてきたので、「この小説はこう始まってこう展開し、あれを手掛かりにこう真相が明かされる」と設計図を描いてから執筆に入るのが常でした。
今回は違います。
謎(ある作家の失踪)とその答え(まさかそんな理由で)は用意してあるものの、その二つの間でどんな物語が繰り広げられるのか、私も知りません。
主人公(リタイアした編集者)と一緒に、霧の中をさまようつもりです。いつもと勝手が違いすぎて怖いのですが。
冒頭から刺激たっぷりという小説ではなく、ゆるゆると進みます。同調してゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
自分と同世代の主人公・滝原との付き合いを楽しみながらの連載になりました。彼はよくひとり言を呟(つぶや)くので、「ネタになるな」と思えばすくい上げています。
無事に霧を抜けられますように。
シリーズの記事を読む
夕刊連載小説・有栖川有栖「折れた岬」(大路浩実 画)のバックナンバーをお読みいただけます。