NISA初心者こそ知りたい ロボアド・ETFとは?
知っ得・お金のトリセツ(139)
「NISA(少額投資非課税制度)どうしよう?」。職業柄、周りから聞かれることが増えた。「貯蓄から投資」熱の高まりを感じる。めでたい。だが、NISAはあくまで「器」。その器の中の利益に限り、本来差っ引かれる20.315%の税金分がお得になります、という非課税制度だ。
問題は器に何を入れるか?「NISA=もうかる」は所与ではない。損失を被れば税金ゼロは当たり前なのでNISAのメリットもゼロ。もうけ狙いより、まずは損をしない心構えが肝要だ。どの企業の株が上がるか、どの国が成長するか、当て続けるのは至難の業だが、世界経済全体ならば長い目でみて成長する確度は高い――。そんな考えに基づき、質問に答えると「世界株全体に連動する投資信託(投信)で手数料の安いもの」となる。
投信は「詰め合わせ」
次の質問は「投信って株と違う?」「世界株全体って買えるんだ」と続くことが多い。思うのだが、投信ほど何となく知っているけど中身が正確に理解されていない概念も珍しい。派閥みたいだ(ちょっと違うか……)。
よく耳にするし、知らない間に買っていたり(勤め先の企業型確定拠出年金=DCで選んだケース)さえする。だけど、インデックス型、アクティブ型、分配金、基準価格、信託報酬……次々押し寄せる専門用語の波に足をすくわれがちになる。
投信とは要は詰め合わせ。我々が少額ずつ出したお金を束ねてプロの運用者が世界中の金融市場・商品から何に、どれだけ投資するかを決めて運用。その成果を配分するために作られるパック商品だ。
投資の王道、第一歩は分散投資
NISA初心者ならいきなり個別の日本株に投資するより投信を選んだ方が安全だ。東京証券取引所に上場する企業だけでも約4000社。虎の子をその1つに集中投下し、万一倒産でもしたら目も当てられない。「卵を1つのかごに盛るな」は至言だ。
投資の王道は「長期・積み立て・分散」だと聞いたことがあるだろう。この3要素を押さえれば、リスクがある投資でもそれなりのリターンに収束することが過去のデータで立証されている方法だ。
3要素でまず取り組むべきなのは、実は分散だ。お金の投じ方、積み立て・一括については値動き次第で異なるし、先頭に掲げられることの多い長期は、結果として達成できるもの。心がけは別として、第一歩から取り組めるものではない。
ETFとの違いは?
まずは投信、と分かっても「自分の1本」選びは難しい。日本で販売中の投信は6000本弱もある。さらに少し詳しい人が遭遇する次なる疑問が「ETFは?投信と違うの?」だ。答えは「投信の一種」だ。Exchange Traded Fundsの略で、文字通りExchange(市場)で売買されるファンド。上場投資信託と訳される。
市場で売買されるということは、株の一種でもある。時々刻々値段が付き、株と同じように「指し値」「成り行き」といった買い方をし、需給に応じ売買が成立。間に販売会社を挟まないのでその手数料分だけでもコストが割安になる。販売窓口や口座の開き方も株に準じる。一方の投信は価格が1日1回しか算出されず、売買に時間がかかる半面、窓口は銀行なども含め幅広い。
ロボアドはETFでお任せ運用
そして話題のロボットアドバイザー(ロボアド)。ここまでの冗長な説明に耐えられず「ええい面倒だ。良きに計らってくれ」と思った人の味方だ。世界中のETFを組み合わせて、個々人に合った運用を志向してくれる。
富裕層向けお任せ運用は従来から存在した。ラップ口座もその一種。投資一任契約を結び、顧客に代わって投資判断をし投信を組み合わせた運用を行う。ロボアドはいわばそのスマホ版。富裕層がフカフカじゅうたんの応接室でする相談をネット上で行う。詰め合わせであるETFをさらにどう詰め合わせるか、アルゴリズム(計算手法)や人工知能(AI)を駆使して決定する。
分散効果はケタ違いだ。お金のデザイン(東京・千代田)の「THEO(テオ)」は約70カ国2万銘柄、最大手のウェルスナビは約50カ国1万2000銘柄をカバーする。5問程度の簡単な質問に答えるとその人に最適な資産配分を提示し、実際に運用までしてくれるタイプ(投資一任型)が一般的。毎日変わる運用成績をほぼリアルタイムでスマホで確認できる。
最大のデメリットは手数料
ロボアドは日々の値動きに応じて最適ポートフォリオに向けたリバランス(資産配分の調整)を行うため頻繁な売買が付きもの。NISAの場合、その分「枠」を費消してしまうことになり相性がよくなかったが、最近はNISA対応も進んでいる。ウェルスナビが新NISAのつみたて投資枠、成長投資枠両方に対応。sustenキャピタル・マネジメントの「SUSTEN」はNISA枠を節約する機能も標榜する。その他数社が同様に投信の枠組みを使い「ロボアド投信」化することでNISA参入の準備を進めている。
便利な機能にはコストがかかる。投資一任型のロボアドの運用手数料は年1.1%が標準的だ。インデックス型の投信を買えば信託報酬が年0.1%を切るものもある。30年間保有した時、単純計算で運用資産に占める手数料の割合が33%になるか、3%になるかの違いにつながる。それを上回るリバランス効果を期待しての手数料、ということを理解しておこう。
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
2024年からの新しいNISA(少額投資非課税制度)導入で、多くの人の目が投資に向いています。旧制度とどこが違うのか、新NISAを効率的に使うにはどうすればいいのかなどをわかりやすく解説します。
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