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世相を映す確定申告、2024年の変更点は?

知っ得・お金のトリセツ(140)

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確定申告の季節(2月16日〜3月15日)がやってきた。億単位のお金の使途不明がまかり通る政治の世界と違い、我々庶民はこの期間に昨年1年間の自分の稼ぎに課せられる税金の総決算を行う。一定以上の所得のある自営業者やフリーター、年収2000万円超のサラリーマン等は納付する税額があればマストで行う必要があるし、普通のサラリーマンで納め過ぎた税金がある場合、任意で行えば還付金がもらえる「お得イベント」だ。

還付申告をする人は1333万人

世知辛い世相を反映してか、税金を取り戻すために還付申告をする人は増えている。2022年(令和4年)分のデータによると約1333万人と10年前に比べ6%増加した。それでも6000万人弱の給与所得者全体でみればまだ5人に1人程度。基本的に毎月の源泉徴収と年末調整で済むとはいえ、申告することで戻ってくる税金がないか試す価値はある。

かつては税務署に書面を持参するなど何かと手間だったが、最近は日進月歩。毎年何かしら新しい利便性が加わっている。今や24時間どこからでも行える「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」経由の申告が約7割を占める。健康保険証としては評判の悪いマイナンバーカードもここではお役立ちグッズで、納税者本人が自宅からe-Tax経由で申告する際、約7割がマイナンバーカードを活用。本人確認や必要書類の入手が格段に簡単になった。

裁量の余地は年々小さく

今年は消費税のインボイス制度導入の影響が所得税にも出始める点を除くと、大きな変更点はないが、傾向として課税が強化され、個人の裁量で節税できる余地が減っていることがうかがえる。

代表例が上場株式等の配当の申告方法だ。これまでは3つある課税方法(確定申告不要、総合課税、申告分離課税)の中から、個人が所得税と住民税で異なる方法を選ぶことができた。そうすることで所得税では源泉徴収された税金の還付を享受しつつ、住民税では申告不要を選び国民健康保険料など負担増につながる所得増を避けることができた。

今年の申告からはこの道がふさがれたため、申告書にもチェック欄がなくなった。去年まで「ここをチェックする」と覚えてお得を追求していた人にとっては悲報だ。

扶養の条件が厳しく

これまで海外に住んでいる親族を扶養に入れる場合、「親族関係書類」と「送金関係書類」を添付すればよかったが、今年からは条件が厳しくなっている。

30〜69歳の人は原則、扶養控除の対象から外されることになった。ただし①留学生②障害者③年38万円以上の生活費等の送金を受けている者――のいずれかに該当すれば大丈夫なので、新設された欄にその旨をしっかり記載しよう。

源泉徴収票の自動記載が可能に

作業面での今年最大の進化は、源泉徴収票の内容が申告書に自動入力される機能だ。かつては小難しい専門用語と数字がズラリと並ぶ源泉徴収票の紙を片手に、いちいち該当箇所に手書きで転記したものだった。15分はたっぷりかかった記憶がある。

近年は「パシャ!」とスマートフォンで写真を撮ると、粗々読み取ってくれる機能が加わった。漢字等の読み取りは苦手なようで手入力で修正する必要もあったが、それでもだいぶ便利になったと喜んでいたが、今年からはその一手間もいらず、あらかじめ申告書に数字が埋まった状態で出てくるというではないか。

とはいえ、全員が自動的に、というわけにはいかない。勤め先の対応と自分の事前準備がそれぞれ必要だ。

500万円超の源泉徴収票は税務署に提出義務あり

会社員の元に毎年12月か翌1月に会社から配られる源泉徴収票には、1年間の給与の支払い額と控除額、納税額などが記されている。企業は本人に配ると同時に税務署にも同じ内容を提出する流れだが、実は支払額が500万円超と以下で扱いが異なる。

年間支払額500万円超の人の源泉徴収票は税務署へ提出する義務がある一方、以下の人の分は任意だ。出さなくてもいい。わざわざ企業が自発的に税務署に提出していなければ、当然、自動入力はされない。

加えて提出方法にも条件がある。自動入力の対象になるのは税務署にオンライン(e-Taxや認定クラウド等)で提出されたものに限る。書面や光ディスクなどの記録媒体で提出されたものは対象外だ。中小企業はもちろん、大企業でも依然「オンライン中心」とはなっていないのが実情らしい。

個人でも事前準備が必要

会社側がハードルを越えていないと意味がないが、個人側でも事前に一手間必要だ。政府のオンラインサービス、マイナポータルで自分あての情報を一括収集する「マイナポータル連携」の手続きがキモになる。

マイナンバーカードをスマホ等で読み取り、マイナポータルにログイン。「確定申告の事前準備」の作業に進む。「取得したい証明書等の選択」で「給与」を選び、e-Taxとアカウントを連携させる。その後e-Taxのマイページで給与所得の源泉徴収票の情報取得希望の登録をすればいい。作業自体は数回のクリックだけなので難しくはないが、カード読み取り時に普段あまり使わない「券面事項入力補助用」(数字4桁)と「署名用」(英数字6〜16桁)2つのパスワードが求められるので要注意だ。

便利になるのに不満はないが、事ほどさようにサラリーマンの稼ぎはガラス張り。政治の体たらくを見るにつけ、職業による所得捕捉率の違いを示す慣用句「トーゴーサンピン(会社員10割、自営業5割、農業などが3割で政治家はたった1割)って本当だな」との思いを強くする今年の確定申告であった。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
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