中国、尖閣は「核心的利益」と初めて明言
領土問題化へ圧力
【北京=島田学】中国外務省の華春瑩副報道局長は26日の記者会見で、沖縄県の尖閣諸島について「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国の領土主権に関する問題であり、当然、中国の核心的利益に属する」と述べた。中国が尖閣諸島を、妥協の余地のない国益を意味する「核心的利益」と公式に位置付けたのは初めて。
日本政府は尖閣諸島について「日本の領土であり、領有問題は存在しない」(菅義偉官房長官)との立場を一貫して主張している。中国は日本への圧力を強め、領土問題の存在を認めるよう迫る考えだ。
中国は従来、主に台湾やチベットの問題について核心的利益との表現を用いてきた。尖閣諸島が該当するかを問われても、核心的利益の定義を答えるのみで、明確な回答を避けていた。
習近平国家主席は1月末の共産党内の会議で、尖閣問題などを念頭に「平和的発展の道を堅持すべきだが、正当な権益を放棄したり、国家の核心的利益を犠牲にしたりすることは絶対にできない」と強調していた。
安倍晋三首相は26日、来日中の米軍制服組トップ、デンプシー統合参謀本部議長と会談した際に「日本固有の領土である尖閣諸島について、わが国は一切譲歩しない」と訴えた。一方で「わが国が状況をエスカレートさせる意図はなく、中国との対話のドアも常に開いている」とも述べた。
中国はフィリピンやベトナムなどと領有権を争う南シナ海の南沙諸島についても、核心的利益の対象にしたとの見方がくすぶる。今回の華副局長の発言は東南アジアの国々も刺激しそうだ。
東南アジア諸国連合(ASEAN)は25日に開いた首脳会談で南シナ海の問題について、国際法に基づく紛争解決を目指す「行動規範」の締結を中国に呼びかけることで一致したばかり。今年夏から秋にかけてのASEAN関連会議では、フィリピンなどの反発が強まることも予想される。