南海トラフ地震、10県153市町村で最大震度7も
津波20メートルは6都県23市町村、有識者検討会
内閣府の有識者検討会は31日、東海、東南海、南海地震を起こす「南海トラフ」で、これらの想定震源域が連動し、最大級の地震が起きた場合の津波高と震度分布の推計を公表した。関東から四国の太平洋側6都県23市町村で最大20メートル以上の津波が予想され、震度7の地域は10県153市町村に及ぶ。避難などで被害を抑える「減災」に向け、自治体や企業は防災計画の見直しを迫られそうだ。
想定震源域内にあり、海抜18メートルの防波壁を整備中の中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)付近では最大21メートルの津波が到達し、地盤は2.1メートル隆起する。推計が原発の再稼働問題に影響を及ぼす可能性もある。
検討会は東日本大震災の教訓を踏まえ、想定を「数百年に一度」の地震から「千年に一度起こりえる最大級」に変更した。想定震源域を従来の約2倍に拡大し、震度はマグニチュード(M)9.0、津波は9.1と想定。15パターンの地震について地点ごとに最大の震度や津波高を推計した。
2003年の前回推計では津波高が20メートル以上の自治体はなかったが、今回は高知県黒潮町で最大34.4メートルと推計。東京都新島村で同29.7メートル、静岡県南伊豆町で同25.3メートルなど、10メートル以上は11都県90市町村(前回は2県10市町)に及ぶとした。
静岡、和歌山、高知の3県の一部は、地震発生から約2分で高さ1メートルの津波が到達。東京都(島しょ部)や愛知、三重、徳島、愛媛、大分、宮崎の各県でも3~13分で到達すると推計した。
前回推計では、7県35市町村(約300平方キロメートル)とされた震度7の地域は約7千平方キロメートルと20倍以上に拡大。震度6弱以上は24府県687市町村(前回は20府県350市町村)に及ぶとした。
31日記者会見した検討会座長の阿部勝征・東京大名誉教授は「津波到達時間が数分の地域は、揺れている最中に避難しないと巻き込まれる。どう逃げるか、対策を強化してほしい」と強調した。
検討会は6月までに死者数や建物倒壊戸数などの被害想定を公表。今秋には経済被害の想定も示す。国の中央防災会議も夏までに当面の応急対策をまとめる。また中川正春防災担当相は31日、来春までに対策大綱をまとめる考えを示した。
政府の地震調査委員会の長期評価では、従来の東南海地震(M8.1前後)が今後30年以内に起こる確率は70%程度。南海地震(M8.4前後)は同60%程度。2地震が連動するとM8.5前後になるとしている。東海地震はM8.0程度で88%の確率で起こるとの参考値を示している。今回の推計は、より巨大な地震を想定しており、発生確率は示されていない。
関連企業・業界