富士山、世界文化遺産登録へ 鎌倉は見送り
政府は30日、世界文化遺産への登録を目指す「富士山」(山梨県、静岡県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関から登録を求める勧告が出たと発表した。構成資産の一つ、三保松原(静岡市)の除外が条件。ユネスコが6月にカンボジアで開く世界遺産委員会が最終決定する。勧告が覆った例は少なく、登録されれば国内で17件目の世界遺産になる。
一方、政府が推薦していた「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)は不登録が適当と勧告。登録は難しい情勢になった。
文化庁によると、富士山は日本最高峰として信仰され、浮世絵など芸術の題材にもなった。約7万ヘクタールが世界文化遺産の推薦対象で、富士五湖や白糸ノ滝、浅間神社など25の資産で構成される。
ユネスコの諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス、本部・パリ)は勧告に先立ち、三保松原を対象から外すよう求めていた。
富士山は1990年代前半、民間を中心に自然遺産として登録を目指す動きがあった。2003年の政府の検討会で候補から外れた。その後、文化遺産での推薦に切り替え、12年に政府がユネスコに推薦した。
イコモスの勧告は(1)「登録」(2)追加情報を求めて再審議する「情報照会」(3)推薦書を本質的に改定し、再提出が必要な「登録延期」(4)「不登録」の4段階ある。世界遺産は登録総数が千件近くに達し、審査は厳格化。鎌倉は茶や禅などの武家文化を生み出したとして推薦されたが、登録勧告は見送られた。
近藤誠一文化庁長官は「富士山が世界遺産にふさわしい旨の評価を受けたことは大変喜ばしい」とし、三保松原や鎌倉の評価については「残念」とコメントした。