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あふれるマネー、金融市場に 株・債券・金…軒並み上昇

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【ニューヨーク=後藤達也】世界で金融資産の価格が軒並み上昇している。米国株は3月の安値から5割近く値上がりし、社債や原油、金も買われている。強力な経済対策と金融緩和でマネーがあふれ、投資家が積極的にリスクをとっている。ただ、景気と資産価格には開きがあり、投機的な色彩も出ている。

21日のダウ工業株30種平均は前日比159ドル高の2万6840ドルとだった。主力のIT(情報技術)株が多いナスダック総合指数は小幅安となったが取引時間中は史上最高値を上回る場面があった。アマゾン・ドット・コムの株価は新型コロナウイルスの逆風をはね返し、年明けから約7割上昇した。

株価だけではない。米社債にも資金流入が継続し、投資適格債の金利は2.0%と史上最低を更新(価格は上昇)。国際商品先物市場では景気との連動性が高い原油や銅だけでなく、安全資産とされる金も上昇が勢いづく。ニューヨーク市場では1トロイオンス1840ドル台に上昇し、2011年に付けた最高値(1911ドル)にも迫った。21日には銀も急上昇した。

政府・中央銀行が原動力だ。米連邦準備理事会(FRB)は3月以降、大量の国債を買い、市場に大量の資金を供給した。さらに政府の経済対策で企業や家計にもお金が行き渡りやすくなっている。民間経済に行き渡る資金量であるマネーストック(M2)は5月末に日米欧で4620兆円と1年前より550兆円増えた。過去にない圧倒的な増え方で、今後も拡大が続く公算だ。

マネーの膨張は企業や家計の経済活動を支えるとともに、民間全体でみるとあふれるような状況となる。米運用最大手のブラックロックは4~6月期に債券型上場投資信託(ETF)に570億ドルと過去最大の資金が流れ込んだ。

ブラックロックのゲイリー・シェドリン最高財務責任者(CFO)は「(3月の)金融市場の動揺のなかでも価格が上昇し、投資家心理が一段と強くなった」と指摘する。3月は安全性の高いドルや米短期国債が人気化したが、4月以降は社債や株、商品、新興国とリスクの高い資産へと徐々に流れていった。

市場ではこの構図が当面続くとの期待が優勢だ。新型コロナの経済への打撃は大きく、政府・中銀は強力な支援を続ける構えを崩していない。英資産運用ゼニファス・キャピタルの鈴木涼介・最高経営責任者(CEO)は「FRBが金融緩和を手じまったり、米財政への懸念が強まったりしない限りは相場は大きく崩れにくい」と話す。

米ファクトセットの集計で米上場企業の時価総額は35兆ドルを超え、19年末(34.6兆ドル)を上回った。だが、国内総生産(GDP)や企業収益は対照的に世界で大幅に落ち込んでいる。マネー主導の資産価格の上昇は「相場の過熱など金融の不安定性を招く恐れがある」(経済協力開発機構のパトリック・レナイン氏)との指摘もある。

米電気自動車のテスラ株は環境銘柄としての期待から昨年末の4倍近くに高騰した。今年、ようやく黒字転換が見込める段階にもかかわらず、時価総額は3000億ドルを超え、トヨタ自動車の1.5倍となった。個人投資家の短期売買が急増しており、価格変動が激しくなっている。マネーの膨張に過度に依存した状況が続くと、将来反動が大きくなるおそれもある。

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