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コロナ猛威、労働者街に影 大阪・西成、支援者苦慮

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新型コロナウイルスの猛威は、日本最大級の日雇い労働者の街、大阪市西成区のあいりん地区(通称・釜ケ崎)にも影響を与えている。路上生活者(ホームレス)が多く、衛生環境の悪さから医療関係者は深刻化を懸念。住民への感染リスク周知は困難を極め、炊き出しが中止に追い込まれるなど支援団体も対応に苦慮している。

「世間はコロナで騒いでいるけど、この街では今日をしのぐ方が大事」。政府による緊急事態宣言発令後の4月中旬、あいりん地区の一角にある公園にいた無職男性(64)は語った。周辺でマスクを着ける人の姿はまばら。男性は「(感染拡大は)正直、実感ない。俺には関係ないよ」。

同地区の関係者でこれまでに感染確認が公表されたのは、「あいりん労働公共職業安定所」に勤務していた職員4人のみ。感染経路は不明だが、日常的に労働者への対応に当たっていたため、ある支援団体職員は「既に地区全体にウイルスがまん延している可能性がある」との見方を示す。

西成区によると、同地区は免疫力が低下した高齢者が多く、全国的に見ても結核の罹患(りかん)率が高い。地域医療を支える病院関係者は「防疫という概念に乏しく、感染症に無頓着な人が多い」とも指摘。新型コロナは基礎疾患があると重症化しやすいため、深刻な事態になることを懸念する。

地区の高齢者看護を手掛ける「山王訪問看護ステーション」代表の吉村友美さん(37)によると、労働者や生活保護受給者が多く身を寄せる簡易宿泊所(ドヤ)や福祉アパートは、部屋は個室だが、炊事場や風呂、トイレは共用が多い。衛生面で課題があり、マスク着用の習慣も根付いていない。吉村さんは3月中旬から協力者を募り、手作りマスクを住民らに無償で配布している。

仕事をあっせんする西成労働福祉センターの担当者は「求人数は明らかに減った」と話す。年度末は例年、追い込みのため公共工事関係の働き口が多いが、今年は感染拡大のため落ち込んだ。日雇いで生計を立てる男性(48)は「明日食う飯の心配ばかりで、もう限界」と肩を落とす。

影響は労働者支援団体の活動にも。毎月1回、カレーの炊き出しをするNPO法人「炊き出し志絆会」は、調理場を借りていた施設の休止で3月から活動を断念。他の団体もスタッフを集めるのが難しくなり、自粛に追い込まれた。

今も活動しているのは、毎日昼と夕方に約140杯のおかゆを配る「釜ケ崎炊き出しの会」。代表の稲垣浩さん(75)は「人は食べないと生きていけない。大変な状況だが待っている人がいる限り続ける」と話す。

収入が低く生活拠点のない人たちが無料で泊まれる市の「あいりんシェルター」(定員532人)は現在、5割程度の稼働率だが、休業要請が出たインターネットカフェの宿泊者や、コロナショックによる失業者が流入してくる事態も想定される。

シェルターを運営するNPO法人「釜ケ崎支援機構」の松本裕文事務局長(51)は「このままでは入所者が増え、感染リスクが高まりかねない。支援スタッフは疲弊しきっており、地域と行政が一体となって対策を取るべきだ」と訴えた。

〔共同〕

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